------------------------------- うる星やつら「朝、目が覚めたら」 ------------------------------- (チュンチュン、チュンチュン) 面堂 「う・・ん・・朝か・・・」 面堂 「・・・おかしいな、うちで雀なんぞ飼っとったかな・・・・」 (目を開けると、知らない部屋にいる) 面堂 「うんっ?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ここはどこだ?」 面堂の父「目が覚めたかな?」 (どかっ) 面堂 「なるほど・・・・父上のいたずらでしたか。 それにしても手がこんでいらっしゃる。寝ている間にこんな薄暗いどぎたない部屋に連れ込まれるとは、面堂家次期当主としてあるまじき失態。今後はますます用心して、二度とこのようなことがないよう・・・・・」 面堂の父「・・・・終太郎、何をいっている? ここはお前の部屋。十七年暮らしてきたお前の部屋ではない・・・」 (どかっ) 面堂 「茶番はもういい! あくまでしらを切られるのなら、こちらから出ていくのみです」 (襖を開けて部屋を出る) 面堂 「・・・部屋だけかと思っていたら、家全体を作っていたのか。 それにしてもまあ、こんな悪趣味なものをよく作ったものだ。一般庶民でももう少しよい家に住んでいるものを・・・ ・・・はて、この家、どこかでみたような・・・・・・・・・」 (玄関から外に出る) 面堂 「そうだ、諸星の家だ! こんなところに連れ込まれていたのか・・・・」 (表札をみる) 面堂 「・・・・・・んなっ、んなっ、んなっ、 なんだとおおおおおおおおおお!」 (表札には「面堂」、以下住人の名前が書いてある) 面堂 「ばかな・・・そんなばかな・・・ なぜ僕がこんな家に住まなきゃならんのだあああああ!」 錯乱坊 「いまさら何を言うとる」 (ちゅどーん) 面堂 「ええーい、きさまあ! ・・・・まあいい、今は非常事態だ。 錯乱坊、サクラさんはどこにいる? 早く会って事態を収拾してもらわねば・・・・」 錯乱坊 「どうやらお主、記憶を失っとるようじゃのう。 サクラはとうに結婚してここにはおらん」 面堂 「なに・・・・いったいどうなっているんだ?」 錯乱坊 「よし、わしがひとつ今までの経緯を物語ってやろう。 ことの起こりはこうじゃった・・・・ ・・・・・・・・・ (花柄のUFOが上空に浮かんでいる) 黒子「えー、ご町内の皆様、お騒がせいたします。これより地球は、了子様の支配下に入ります。それでは了子様より皆様へのお言葉でございます」 了子「みなさんこんにちは。私は宇宙より参りましたインベーダーでございます。たった今から地球を侵略いたします。でも、すぐに勝負がついてしまってはおもしろくないので、ひとつ趣向を凝らしたゲームをいたしませんか。私のかわいいしもべ「オクトパス」を友引町に放ちます。「オクトパス」を止めることが出来たら、侵略をやめてさし上げましょう。オクトパス、行きなさい」 怪獣「ぷぎー」 住民「うわあ・・・・たこのおばけが友引町を破壊してる・・・」 (逃げ惑う住民の中で) 面堂「おのれインベーダー、罪なきたこを侵略の手先に使いおって・・・」 怪獣「ぷぎー、ぷぎー」 面堂「オクトパス、待ちたまえ! 君は了子に利用されているのだ!」 怪獣「・・・・・」 面堂「さあ、僕の目を見て・・・・おびえることはない、ぼくらは敵どうしじゃないんだ、仲間なんだよ。君は利用されていただけ・・・・ぼくらが戦う必要はないんだ・・・」 住民「ああ、みろ! たこがおとなしくなった」 住民「あの少年と心が通じ会ったんだ!」 住民「すごい・・・あほらしいがすごい・・・・」 住民「地球は救われたんだ! あの少年のおかげだ!」 (その様子をUFOの中で見ながら) 了子「ああ、オクトパスと心を通じ合わせるなんて・・・・それは私と心を通じ合わせたのと同じこと・・・・決めました。私はあのお方の、「妹」になります。ただちに準備なさい!」 こうして面堂家にやっかいな家族が一人増えたのであった・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ うん? 面堂のやつ消えおったわ。まったく最近の若いもんは人の話を最後まで聞かん。困ったものじゃ・・・」 (走りながら) 面堂 「くそ、認めたくないが、僕はどうやらまったく別の世界に来たようだ。 何とかもとの世界に戻る方法を探さないと・・・」 (通りの先にラムを見つける) 面堂 「あ、ラムさん!」 あたる 「面堂!」 (あたるの一撃を面堂が真剣白刃取り) 面堂 「ええい、貴様はどこから湧き出した! おまけにいつからそんな物騒なものを振り回すようになった!」 あたる 「何を言うか! 貴様こそ突然ラムにちょっかいだしおって」 ラム 「ダーリン、こいつダーリンの友達け?」 あたる 「面堂終太郎という、折り紙付きの女たらしだ!」 面堂 「貴様にそこまで言われたくないわい!」 ラム 「ふーん、お前終太郎って言うのけ」 面堂 「ラムさん! 僕を忘れたのですか!」 ラム 「うち初めて会うっちゃ。 じゃあ、知らないっちゃねー・・・・・・・・・・・ (あたるの腕をとる) うちら婚約してるっちゃ。」 面堂 「なにいいいいいいい!」 あたる 「うそだっ。俺は一度として婚約をした覚えなどないっ! 勝手なことを言いおって、お前は俺の「妻」ではないか! 「妻」と婚約できるか!」 面堂 「つ、つ、つ、・・・・・つまだとおおおおおおおお!」 ラム 「こいつ、うちに気があるっちゃ。かわいいっちゃねー」 あたる 「ええい、ラム、こいつとのつき合いなど俺は認めんぞ! おのれ女たらし面堂、今日こそ刀の錆にしてくれる!」 ラム 「何言ってるっちゃ、うちとろくにデートもしないで・・・・・・・ ダーリン、人の恋路をじゃますると・・・こうだっちゃ!」 (バリバリバリバリーッ) ラム 「さ、終太郎、今のうちに逃げるっちゃ。後でうちの家に来るっちゃ」 面堂 「ありがとうございます、ラムさん。ではまた後で・・・」 あたる 「ラム、何で面堂の手助けをするー!」 ラム 「終太郎がうちに惚れるのは、終太郎の自由だっちゃ。 ちょうど退屈してたし、ダーリンとうちと終太郎の三角関係なんて結構おもしろそうだっちゃ」 あたる 「おまえは面堂の恐ろしさを知らんからそんな気楽なことが言えるのだ! 面堂は俺とは比べものにならんほどの・・・・・あたた・・・・さっきの電撃はきいた・・・・あ・・れ・・・」 (走りながら) 面堂 「・・・良く考えると、なにも逃げることはなかったな。日本刀を持ったぐらいで諸星が強くなるわけでなし・・・」 テン 「めんどー、おまえはまともな面堂かー?」 面堂 「ジャリテン、貴様僕を愚弄するのか! 僕は今、気が立ってるんだ」 テン 「ちゃうちゃう、お前、ここの世界とうまく融合しとんのか聞いとんや」 面堂 「残念ながら、僕はここの世界のものではない。 君とまともな会話が出来ないのはそのためだろう。まあ、元の世界であってもそれほどうまく話の通じる相手ではなかったがね・・・」 テン 「腹にいちもつあるやっちゃな。 まあええ。とにかくわいらは仲間や。実はわいも、朝目が覚めたらここの世界に来てしもうとったんや」 面堂 「そうかい、テン君! ぼくらは元の世界に戻るために努力しなければならない!」 テン 「・・・・ええわい、わかってくれたら」 (向こうの通りを女子生徒逹が通って行く) 女子生徒「あたるくんがいてさー、お金持ちなんだけど、ちょとね・・・・」 しのぶ 「玉の輿なのは認めるんだけど・・・・・」 女子生徒「そうよねー。せっかく大金持ちなんだから、あの面堂君ぐらいかっこよくてもいいわよねー」 しのぶ 「面堂君か・・・・地球を救ってくれた大恩人よね」 (さりげなく会話を聞きながら) 面堂 「なるほど・・・・さっきの会話から我々に必要な情報を抜き出すと・・・・」 テン 「どうやら、あたるのあほが元の世界の面堂の家に住んどるみたいだな」 面堂 「地球を救った大恩人か・・・こちらの世界もなかなかいいな・・・」 テン 「とにかくラムちゃんに相談しよ。たぶんあたると同じところにいるはずや。 おい、面堂、はよおまえの家に行こう」 (元の世界の面堂邸、現在諸星邸に忍び込む) テン 「あっちからラムちゃんの気配がするど」 面堂 「うむ、たぶんあの部屋だな」 (部屋に入る) テン 「ラムちゃん!」 面堂 「ラムさん!」 ラム 「終太郎! 忍び込んできたっちゃ!? ・・・・もう一人の子は誰だっちゃ? 終太郎の連れ子け?」 テン 「ラムちゃーん、ぼくのことおぼえてへんのんかー?」 (テンに抱きつかれる) ラム 「え・・・・あ・・・・確か・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・テンちゃんだっちゃ?」 テン 「ラムちゃーん!」 ラム 「あれ・・・・・・うちどうしてここに・・・・」 面堂 「よかった。ラムさん、目が覚めたんですね」 (部屋にあたるが入ってくる) あたる 「おのれ面堂、性懲りもなくラムにちょっかいをだしに来おったか! 今日こそは刀の錆にしてくれる! ラムは絶対に、誰にもわたさーん!」 ラム 「ダーリン・・・・・その言葉にうそ偽りはないっちゃね・・・・・・・・ うち、うれしいっちゃ!」 あたる 「わー、お前目が覚めてたのか! 待て待て、さっきのは言葉のあや・・・・・・」 面堂 「諸星・・・・・・・・ラムさんはお前のなんだ? 言ってみろ」 あたる 「ぐっ・・・・・・・・・・・ くだらんことを・・・・・・・・・」 面堂 「答えられない・・・ということは、貴様も目を覚ましているな! さもなければ即座に「妻」だと言うはずだ!」 あたる 「くそう・・・目が覚めていると分かったら、この億万長者の生活を捨てねばならない・・・・そんなひどいことが、父さんや母さんのためにできるか!」 面堂 「ばかめ。全部話したな。」 テン 「おんどれはほんまのあほやのー」 ラム 「・・・・・・ダーリン・・・・・・・・・・」 あたる 「待て、ラム・・・・・おまえの周りの空気がこわばって火花が飛び出てるのが、俺にはよーく分かるぞ。なあ、ここは話し合おうじゃないか。いや、それより先にもとの世界に帰る方法を考えないと・・・・」 面堂 「おのれのくだらん欲のために、ラムさんに偽りの告白をしたのだ。ラムさんの受けた心の傷を思えば、その罪万死に値する。 ・・・・・・あきらめて、罰を受けろ」 あたる 「人ごとだと思いやがって! おい、ラム!・・・・・いや、あの、その・・・・落ち着いて下さい・・・・・」 ラム 「ダーリン!」 (ピカッ、ごろごろどっかーん!) 錯乱坊 「こうして友引町内に轟いたラムの雷のおかげで、皆は正気に戻れたということじゃ。めでたしめでたし。南無南無・・・・・」 (面堂家の廃墟の中で) あたる 「・・・俺は、激怒するほどのことではない、と思うのだが・・・」 ラム 「怒ったんじゃないっちゃ。嬉しさの感情表現だっちゃ。 やっぱりダーリンはうちが一番大事だっちゃ」 --------------------end--------------------------