友引高校こたつ騒動 <SUNDAY> 月は9月末、友引町は緑色の葉をつけていた木々がその葉を茶色に染め、外は昼間でも服を重ね着しなければならないほど寒くなりいよいよ本格的に秋になってきていた。そんな中、一人の男が歩いていた。その男はふと黄色くなったイチョウに目をやり、 「ようやく秋ですねえ、読書の秋、スポーツの秋、芸術の秋、秋というものはほんといい季節です。 そしてこれから寒くなる・・・。」 とつぶやいた。そう、この日差しもあまり気にならなくなっている中ひときわ輝く頭にメガネ、そして優しそうな雰囲気、この男こそ言わずと知れた(?)友引高校の校長である!!しばらく物思いにふけった後校長は再び歩き出したがすぐに足をとめた。そこには巨大なネコ、コタツネコがいた。 「これはコタちゃん、お散歩ですか?」 コタツネコは首をふり、袋をとりだした。校長はそれをみて 「おや、焼いもですか、あなたには食物の秋といったところのようですねえ。」 と笑いかけて言い、そして 「実はこれから学校の私の部屋におくこたつを買いに行くんですよ、あなたもご一緒に行きませんか?」 と尋ねた。コタツネコはそれにうなずき二人(一人と一匹)は町の景色にみとれながら(片方はいもを食べ るのに夢中だったが)いつも校長が買っていたこたつ屋へとむかった。 しばらくして二人は目の前にあるものに驚いて足をとめた。そこには校長が見たこともない建物があり、看板に『こたつ専門店・コンタツ』とかかれてあった。 「コタちゃん、あなたここ知ってましたか?」 校長は尋ねてみるがこたつマニアのコタツネコもしらないようであった。 「まあ、入ってみましょう。」 校長がそう一言いうと二人はその店へと消えて行った・・・。 <MONDAY>  キ〜ンコ〜ン、1時間目の始業のベルが鳴り、学校全体が静まり返り勉強モードにはいった。もちろんこの2年4組も・・・。 この日4組は英語の授業からであり、もちろん教師は温泉マークである。 「え〜今日はテキスト38ページをするわけなんだが・・・、諸星!!きさまは朝っぱらから早弁をするな!!」 温泉は怒鳴りつけると同時に手元にあった黒板消しをあたるに投げつけた。ところがあたるはそれを簡単によけ黒板消しはあたるの後ろの美男子面堂終太郎にあたってしまい、面堂の顔は真っ白になってしまった。  「イエ〜イ!!」「きゃ〜面堂さん!!なんてひどいことを。」 と男子は面堂にあたったことを喜び、逆に女子はあわてふためき、投げつけた温泉を怒った。  「す、すまん面堂、諸星を狙ったんだ、諸星がよけたのがいけないんだ。わかってくれるよな?」 とあわてる温泉に向かって  「何を言うか!!こともあろうにおまえがこの俺に向かって投げたからいけないのではないか。しかも俺の早弁タイムを邪魔しおって・・・。」 とあたるが文句を言った。すると面堂がむくっと立ち上がりどこからともなく自分の愛刀を抜き罵声をとばした。 「きさまら!!二人でこの面堂終太郎を愚弄するとは、もはやゆるせいん!!」  「だ、だからあれは事故だ。おちつけ面堂。」 と温泉がなだめるが頭に血が上った面堂には通じていなかった。 「やかましい、この固太りが!!二人まとめてたたっきてくれる!!」 結局、ばかにされたと思い込んでいる面堂と早弁を邪魔されたあたる、そして固太りと言われ怒った温泉マークがバトルロイヤルを始めることになってしまい授業どころではなかった。 これを見た生徒たちは  「今日も授業はつぶれたな。花札しようぜ。」 などとそれぞれ自分のやりたいことはじめだした。 こうして2年4組だけは毎日こうれいのいざこざで実にうるさい授業を展開していた、が・・・。 数十分して授業中であるのに全校放送がなりひびいた  「授業中もうしわけありません。至急全員体育館に集まってください。」 その声は校長であった。この放送を聞いた例の3人は  「い、一時休戦だ、校長のご命令だからな。はあ、はあ。」 「しかたがないな。おい面堂、命拾いしたな。」 「なにをいうか、それはきさまのほうだ。首根っこ洗ってまっておれよ。」 あたる・温泉はぼろぼろになったハンマーを、面堂は折れ曲がった刀をおいて体育館へ向かった。  「ねーダーリン、なんで授業中に呼びだすっちゃ?」 空を飛び、緑色の髪をした美少女ラムはあたるに尋ねた  「そんなこと俺が知るわけないだろうが。」 先ほどのけんかの余韻のためあたるは少々邪険に答えたところ、  「おのれは、ラムさんに向かってなんという口の利き方を!!」 と横にいた面堂はあたるの言葉を聞いて怒って言った。  「ふん、俺がラムにどう言おうがおまえには関係ないだろうが!!」 二人は今にもまたけんかを始めんばかりの形相であった。そこに怪力机投げで有名なしのぶが、  「もう、いいかげんにしてよ二人とも、さ、面堂さんはやく行きましょ。」 と言って面堂をひっぱって行き、さらにラムが  「ダーリンもはやく行くっちゃ。」 とラムがあたるをひっぱって行った。 体育館は全体的にどよめきがおこっていた、それはそうだ、いきなり呼び出されたのだから。 やがて校長・・・だけでなくコタツネコも出てきた。  「いきなり呼び出したりしてすいませんね。実はついさっき私の部屋であるものが盗まれたのです。」 その校長の言葉に館内はさらにどよめき、  「か、金か?」「皆の成績かしら?」「大事な書類じゃないのか?」 とさまざまな意見がだされた。そんな中校長が口を開いた。  「それは・・・、私とコタちゃんの大事なこ・た・つです。」 ちゅっっっっど〜んっ!!そのあまりにもおかしなことに生徒全員が弾けとんだ。  「ということでこれからの授業はカットしますので。もし犯人がいたらすみやかに出てきてください。   また、生徒全員こたつ探しに今後の時間を費やしてくださいね。」 しかし犯行が行われたのは授業中、このなかに犯人がいるはずがない。しかも皆授業カットと言う言葉をきくやいなやいっせいに帰ってしまい館内は先生方、コタツネコ、それ以外ではいつのまにかいがみあいを始めていたあたると面堂、そしてラム、しのぶだけになってしまった。この4人を見て校長は涙をながしながら  「みなさん、よく残ってくれました。先生はあ〜たがたを信じていましたよ。」 と言った。いましていることに夢中でなにがあったのか知らなかった4人はようやく状況を理解し、自分たちも逃げようとしたが急に生徒たちに踏まれぼろぼろになった温泉が現れ  「おまえらは逃がさんぞ〜。」 とちのそこからわきでるような声で言った。  「そこをのかんかきさま!!授業をせんのならガ〜ルハンドをする絶好のチャンスだと言うのに、こ の俺をまっているランちゃんサクラさん竜ちゃん了子ちゃん飛鳥ちゃん弁天さまおユキさん、それにしのぶに申し訳ないとは思わんのか〜〜〜!!」 そう言いながらしのぶに向かって行った  「誰もまっとりゃせ〜〜ん!!」どか〜〜ん!! あたるはしのぶにおもいっきり弾き飛ばされたうえに  「ダ〜〜リン!!」バチバチバチ ラムの強力な電撃をあびダウン  「先生うちら二人協力するっちゃ。いいっちゃねダーリン!!」  「私も。面堂さんはどうするの?」 しのぶが尋ねた  「そうですね、これも人助け、協力しましょう。」  「ありがとうございます。持つべきものは生徒ですなあ。」 と校長。  「なんだっちゃ、それ?」 そのときもう回復を果たしたあたるが立ち上がり  「ちっ、しかたがない。まあとにかく校長室に行ってみるか。」 と提案した。 あたるたちが校長室にきて目にしたものはひろびろとしている部屋だった。  「ここに昨日かったばかりのこたつを置いていたんですよ。」 たしかにそこのじゅうたんには古く目立ったこたつのあしの跡とついさっきできたばかりのような薄い跡があった・・・しかしそこには他の跡もあったのだ、そしてそれは動物の足跡のようであった。みんながそれを見ていると背後で  「入るぞ!!」 といいながら巫女姿のサクラさんが入ってきた。  「どうしたんですかサクラ先生、今日はあなたお休みだったのでは?」 校長がそう尋ねたのに対して  「うむ、実は・・・」 と話そうとしたが話そうとするやいなや  「サクラさん、僕にあいにわざわざ来てくれたんですね。さっくっらっすわ〜〜ん!!」 あたるがサクラさんに向かって突進した!!  「たわけも〜〜ん!!」ばきっ!! サクラさんは突進してくるあたるを床に打ちつけ再び話しだした。  「おほんっ。実は近くを歩いていたら微弱ではあるが探知機が妖気を感知してのう。それできたのがここじゃったというわけじゃ。」 サクラさんのお祓い串はゆらゆらと揺れていた。  「で、これはいったいどうしたことじゃ?」  「実は、かくかくしかじかで・・・。」 はい上がってきたあたるがおおまかに説明した。 「なるほど、それは面妖な話じゃのう。」  「こたつが歩いていったのかもしれないっちゃ。」 ラムが真顔で言った。地球ではへんなこともラムが育った環境の中ではそうでもないのだ。  「あほ、こたつが歩くわけないだろう非常識な。」  「そうよ、非常識だわ。」 あたる、しのぶがラムのへんな発言に反論した。  「いや、ありうるかもしれんぞ!!」 サクラさんは動物のものらしき足跡を見ていった。  「この足跡から妖気がでておる、そして足跡がのびているさきの窓、こたつを出すには小さすぎる!!」 たしかにその窓は小さかった。それにその足跡は部屋から外には出ているのに逆に外からのものはなかった。  「てことは何かがこたつに化けていたってこと?」 しのぶがおそるおそる言った。  「すると化けていたのはきつねってところですね。」 ずっと口を閉じていた面堂が言った。  「きつね・・・そうだ、しのぶあのきつねはどうした?」  「どうって最近みかけないけど・・・って、あんたまさかあの子を疑ってるんじゃないでしょうね!!」 しのぶは怒って近くにあった校長の机を持ち上げた。  「そうだっちゃダーリン、あんなかわいい子ぎつねがこんなことするわけないっちゃ!!」 ラムもこれにはすこし怒った様子であった。  「ふ、たしかにあんな子を疑うとはな、きさまもつくづく非常識なやつだ。」 さらに面堂もあたるに文句をいった。  「じょ、冗談だって。きつねと聞いたから初めにあのきつねのことが思い浮かんだんだよ。」  「いいかげんにせんかおのれら!!けんかはよそでやれい!!」 サクラさんが一喝して4人は固まってしまった。  「ふう、とにかく校長、そのこたつを買った店に案内してはくれぬか?」  「え、ええわかりました。」 ということであたるたちはそこに行くことになったわけだが、しばらく歩いていて  「ねえダーリンこのあたりにこたつ屋なんかあったっちゃ?」 とラムが口を開いた。  「いや、俺は知らんが・・・。」  「私も知らないわよ。面堂さんは?」  「いえ、僕も知りませんが・・・。」 どうやらサクラさんも知らないようだった。  「ここです。」 またしばらく歩いた後、校長が口をひらいた。  「・・・どこですか?」 サクラさんは校長に尋ねた、他の4人も同じことをいいたそうな顔をしていた。 そう、そこにはなにもなかったのだ。  「・・・・???!!!」 校長は驚いてなにも言えないようだった。  「ここ、ずっと前からただの空き地よ。」 しのぶが重く口を開いた。  「そ、そうなんですか・・・。」  「ん?どうしたんだ諸星。」 なにかを考え込んでいるあたるに面堂がきいた  「いや、なにかがこういつもと違うような・・・ほらこういうとき誰かかいつもいるだろ。」  「あ、あ〜チェリーか。」 あたるが慌てて面堂の口を封じた・・・が!!  「よんだか?」 ちゅっっっっっど〜ん!! どこからともなくチェリーがわいてでてきた。 どか、ばき、どす!!「いきなり出て来るな!!」 チェリーはそこにいたものすべて(校長以外)に袋叩きにされた。  「で、おじうえ、なぜわいて来たのじゃ?」  「なんちゅう言いぐさじゃ。」「まあよい、ここら一帯に妖気のかすがこびりついておるのでの。」  「やはりそうか・・・。」 ごとっ 突然すみのほうで音がした。 「む!!!そこだっ!!」 あたるはそばにいた面堂を投げつけた!!。 「こん!」 そこにいたのは大人のそれはそれはとても美しいきつねであった。きつねは一度「こんっ」とたからかに鳴き姿を消した。  「ほんとうにきつねじゃったのか・・・。」 「結局私はあのきつねにだまされたんですね、お金もとられたし。でもこの秋のなかあのようなものを見られて本当によかったです。」 「だっちゃ。」 「よくない!!」  「へ?」 驚いたあたるの後ろには頭に大きなこぶをつくった面堂がいた。その手にはこれまたどこから出したのか新品の刀をもっていた。  「も〜ろ〜ぼ〜し〜き〜さ〜ま〜。」  「お、おちつけ面堂、おまえのおかげで・・・。」  「うるさ〜い!!今度という今度はもうかんべんなら〜ん!!そこになおれ!!」 じゃき〜ん!! 面堂の振り下ろした刀をあたるがみごとに真剣白刃取りうけとめた。  「さて、みなさんもう帰りましょうか。」 校長がさわやかな声で言った。みんなその声で各自家路についた。  「ダーリン、先に帰るっちゃよ。」  「わ、待ってくれラム。おい面堂いいかげんにせんか!!」  「やかましい!!」 面堂はまったく離そうとしなかったためあたるは面堂が疲れはてるまで帰ることができなかった。 <TUESDAY> 今日もまたいきなり生徒全員が体育館に集められた。校長を待っているあいだ生徒たちの間では昨日のうわさでもちきりだった。 やがて校長が姿をみせ一言、  「また私の部屋のこたつがなくなりました。」 どっっっっっっっっっか〜〜〜〜〜〜ん!!! ・・・なんとか体勢をもちなおした昨日のできごとにかかわった者たちはみんな一言こう言った・・・  「こ、校長、こんどはたぬきに化かされたのでは?(だっちゃ)」         <END>