その日の帰りは、なんだか気まずくて俺は頭の中で言葉を探していた。
 
あたる「そ、そういえば ジャリテンはどうした?」
そんなこと今更聞いてもアレなんだが、ほかに言葉が見つからず言ってみた。
ラム「あーーっ!テンちゃん忘れてたっちゃ。ダーリン迎えにいくっちゃよ!」
あたる「どこ行くんだ?」
ラム「サクラのところだっちゃ。そこにテンちゃんあずけていたんだっちゃ。」
 
そして、サクラさん家まで行くことになった。
ラム「遅くなったっちゃ。テンちゃんごめんちゃ。あっ、どうもありがとうございます だっちゃ」
錯乱坊の妹「いいえ、テンちゃんとってもいい子で、全然手のかからないのよー。」
テン「おばちゃん 照れるやないかー。」
あたる「猫かぶりやがって・・・」
テン「なんやとー」
ラム「まあまあ二人とも!」
錯乱坊の妹「あっ、そうだわ!ちょうど夕食の仕度ができたところなの。召し上がっていってね。」
ラム「でも・・・」
錯乱坊の妹「遠慮なさらずに、大勢で食べたほうがおいしいですし・・」
あたる「んじゃっ、遠慮なくいただきまーす。」
(やったー!ラムの手料理を食わなくてすむぞ!)
 
あたる「ぷはー、食った食った。」
テン「うまかったなー。ラムちゃん」
ラム「うん。」
あたる「まったくラムの手料理とは大違いだ。少しは見習ったらどうだ?」
俺はいつものようにラムに愚痴を言う。
テン「お前ラムちゃんに何てこと言うねん!俺はラムちゃんの手料理ウマイ思うでー。」
ラム「どうせ、うちの手料理はダーリンの口に合わないっちゃ。」
テン「ラムちゃん・・・」
あたる「よく解ってるじゃないか。おまえの料理は辛すぎる。俺達地球人には、食えたものじゃない。
いや、あれははっきり言ってあんなの食いもんじゃない! だいたいあの調理器からして・・・・・・」
そこまで言った所で、ラムの体が小刻みに震えているのに気がついた。
ラム「ダーリンの・・・・ダーリンの・・・」
あたる「うわっ待てっ!」
俺は電撃がくると思って手で顔を覆った。
しかし電撃はこない。あたる「・・?」
俺は顔を上げた。
 
ラムの頬には、涙がボロボロとつたわっていた。
あたる「えっ?」
ラム「だぁりぃんのばかぁ!・・・んっ・・・なっなにもそこまで・・い、言わなくても・・うち、だぁりんに
喜んでほしくって・・一生懸命つくってるのにぃ・・なのに・・・んっ・・」
あたる「えっ?あ、あの、その」
俺は予想もしていなかった展開に驚きを隠せなかった。
普段、気の強いラムが今、目の前で 泣いている。
(そんなに傷ついたのか?いつも言っていることじゃねーか。)
しかし、俺はさっき言った事を後悔していた。
ラムが泣いているのをみると胸がズキズキしてくる。
テン「ラムちゃん、泣かんといてや。おい、アホ!ラムちゃんに謝れや!」
心では、すまないと思ってるのだが、俺は思わず
あたる「ふんっ!」 と、ソッポを向いてしまった。
 
ゴッッ・・・・。ジャリテンが火を吹いてきたのだ。
あたる「うわっ熱っ!アチ−!」
ラム「テンちゃん!やめるっちゃ!・・・ほらっ帰るっちゃよ。」
と、ラムは、歩き始めた。
俺は、あたる「おい、待てよ。」と言いながらとっさにラムの手をとった。
ラムは、無言で俺の手を振り払って、スタスタと歩いて行ってしまった。
それには俺も腹がたった。
 
家に着いたのは9時半。
ラムは、ジャリテンを寝かしつけに二階の俺の部屋にいる。
俺はテレビを見ていた。
三十分ほどたったであろうか・・・ラムが下りてきた。
(フンっ!いまさら謝ったって、許してやんねーからな。)
ラムは、俺の右側に座った。
 
ラムは何も言ってこない。
俺は、ますます腹がたった。
 
ラムが下りてきて、1時間が経った。
ラムは、一言も話さないばかりか、俺と視線も合わさない。
テレビを、ボー−っと見ている。
俺は遂に我慢できなくなって、席を立ち、上にあがって、ふとんを敷いた。
しばらく横になっていたが、ラムは、上がってこない。
俺は、そーっと下におりてみた。
ラムは、テーブルの上に顔を埋めて寝ていた。
 
あたる「ったく。しょーがねーなー。よっと。」
おれは、ラムを抱きかかえて二階に連れて行き、ふとんの上に寝かせてやった。
ラムの体は、俺の体よりすごく小さい・・・
 
ラムのわずかにシャンプーの匂いのするサラサラした髪。
涙の跡が残っている赤みがさした頬。
大きくてつぶらな瞳。
柔らかそうな赤い唇。
その全部を俺が守ってやりたいと、心から想った
 
あたる「ラム、ゴメンな・・・・。」
そう言ってラムにキスした。
 
あたる「おやすみ。ラム。
ラム「おやすみ。ダーリン・・・」
あたる「えっ!」
ラム「フフフッ。」
あたる「お前、起きてたのか。」
ラム「うん。 ダーリン、うちのほうこそごめんちゃ。」
あたる「いや、もういいよ・・・」
ラム「ダーリン。」
あたる「なんだ?」
ラム「愛してるっちゃ」
おわり。