18世紀に始まった産業革命は、工業・経済の驚異的発展を遂げ 文明はあらゆる土地に広がってゆくこととなる だがそこにはかつて闇の領域だった場所も含まれる 経済の発達と共に、人類は再び古代の魑魅魍魎と対決し始めたのである 現代社会の利益と安全、経済活動を脅かす妖怪・悪霊たち それらと戦うプロ、現代のエクソシスト・陰陽師 ―それがゴーストスイーパー(GS)である― 《GSサクラお払い大作戦!!》 ・・・私の名は諸星あたる。 現在わけあって、高校時代の恩師サクラ先生の下で除霊の アシスタントのバイトをしながら友引大学に通う、一端の大学生である。 何故、除霊のバイトかというと、理由はもちろん、 未知への挑戦とロマンを追い求めるためである・・・・ 「(ガチャッ)も〜〜ろ〜〜ぼ〜〜し〜〜・・・・」 浴室のドアに張り付き、今開けんとしたその時、扉は独りでに開き、 いつもの如く剣幕したサクラ先生が仁王立ちしていた。 「あ!サクラ先生〜〜♪にゃははは・・・」 「毎度毎度・・・・風呂場を覗くなっちゅーとろーがー!たわけもんがーーー!!!(ドバキャ!)」 そう。理由は、未知への挑戦とロマンのためである。 サクラ先生の強力な脚力で蹴られ、空高く舞いながら私は今一度、 先ほどのシャワーを浴びるサクラの姿を回想・・・・もとい。決意を確認したのであった・・・ *********************************************************************************************************** 「ほら、ダーリン。じっとしてるっちゃ!」 「いちち・・・もーちっとそっと消毒できんのかい!?」 「ダーリンがサクラがシャワーを浴びようとする度に  覗こうとするから悪いっちゃ!はい、これで終わり!(バンッ!)」 思いっきり絆創膏を傷口にたたきつけたのは、ラム。 こいつも俺と同じ、友引大学に通っている。(立場は「留学生」ということになってるらしい) しかも頼みもせんと、サクラ先生の除霊バイトにまでついて来る、うっとーしい存在である。 「くぅぉ〜〜しみる〜・・・おまーなー!!!」 「なんだっちゃーー!?(ドババッ)」 「えーーい!よさんかおぬしら!少しは成長せいっ!」 私を初めとする、旧2-4組の学年が卒業すると同時に、 サクラ先生は『肩の荷が下りた』と言って、保険医の仕事もほどほどに 今まで以上に巫女としての仕事に従事するようになったのであった。 (我々はそんなにうるさかったのであろうか・・・今でも不明である) 「さて・・・と、そろそろ仕事の時間じゃな。ラムは制服に着替えい。  諸星は対地縛霊用装備ヘ―8番型装備を車に詰め込んでおくんじゃぞ。今日の相手はちと厄介そうじゃ。」 「りょ〜かい〜」「わかったっちゃ!」 ここで少し説明しておこう。 サクラ先生は一応、『GS(ゴーストスイーパー)』という免許を持つ正規の除霊士である。 サンデーで一時期、この職種を扱ったマンガがあったが(ぉ) サクラ先生も『GS協会』と呼ばれる組合に登録している、一GSである。 神道系の除霊を得意としているが、他にも呪術・西洋魔術・精霊術・錬金術にも精通している、一級GSらしい。 (噂では試験のとき、そうとう凄かったそうだ・・・) アシスタントはラムと俺の、我々2名のみ。(もちろん免許なぞ持ってない) 少数精鋭がモットーの、愛と正義感あふれるGSチームである。(←注、自称です) なお『ラムの制服』とは、悪霊等に存在を感知されにくくする効果を持つ、巫女装束の袴の事である。 サクラ先生ほど経験を積んだGSには必要ないのだが、素人でしかも異星人であるラムが持つ帯電体質より、 非常に強い電磁波を体から発しているため、とりわけ霊に感知されやすいらしい。 そのため、サクラ先生からラムには特別に制服として袴を渡されているのだ。 無論、帯電体質はマイナス面ばかりではない。 低級クラスの霊ならば、電撃によって動きをマヒさせるくらいのことができる。 これは『幽霊とは電磁波・プラズマの一種ではないか』という仮説と関係あるのかもしれないが ひっとらえて成分分析したことがない以上、詳しいところはよく分からない。 (最近ふと疑問に思ったのだが、ひょっとして俺は「おとり」なのではなかろうか・・・酷な話である。) ガレージで最近サクラ先生が購入した愛車TVRに護符など除霊に必要な装備一式が入った登山用リュックを 入れていると、用意を終えたサクラ先生とラムがやってきた。 「サクラ先生、用意できましたよ〜♪」 「うむ、ご苦労。よし!では行くぞ!」 オープンカー状態のTVRに俺達3人は乗り込むと、サクラ先生はアクセルをふかし、 独特の荒っぽい運転で(「下手」ではないのだ。「荒い」のである・・・)走り出した。 (ギャギャギャギャ!!!キキーッ!) 「なぁーー!!!ちょっ!サクラ先生ーー!!!俺、まだ乗ってな・・・あ゛ーー!!!」 しっかりつかまっていなかった俺は、振り落とされそうになったというのは言うまでもない・・・ *********************************************************************************************************** ―車を走らせること、数十分後― ようやく今回の依頼主の家にたどり着いた。 友引町のはずれにあるその屋敷には、車がン十台は入る駐車場やテニスコート、プール等 金持ちの静養には持ってこいの、豪華な別荘であった。 ただ一点、屋敷自体が古いのが問題であろう。 除霊用のリュックを背負い、ラムと俺はサクラ先生の後についていった。 待っていたのは、スーツを着た40代ほどの不動産業者であった。 「あ、お待ちしておりました。GSのサクラ様ですよね?」 男はこちらに気が付くと、非常に切迫した顔で歩み寄ってきた。 「うむ、いかにも。貴方が今回、ワシに仕事の依頼をした・・・?」 「あ、はい、友引不動産の大島と申します。」 手短に自己紹介すると、男は名刺を差し出してきた。『大島』・・・オーシマ・・・ どこかで聞いたことあるような名前だが、思い出せない。まぁいいか。 「えぇっと・・・後ろのお二方は?」 「あぁ、ワシのアシスタントの・・・」 「ども〜諸星あたるです。外野で〜す。」 「ウチ、ラムだっちゃ!ベンチで〜す。」 「あぁ、どうも、宜しくお願いします。では、着くなり早速で悪いのですが、依頼の内容について説明させて頂きます。」 「あぁ、宜しく頼む。」 「昔、この別荘はさる資産家の静養地だったのですが・・・」 『さる』?『さる』と言うと、あのキキッっと鳴く、アレか?・・・ 「20年ほど前に資産家がこの別荘で亡くなって以来、ずっとほったらかしのままになっていたのです。  テニスコートやプールは、元々この別荘の持ち物だったのですが、近くの別の別荘主が買い取られて、  使用してきたので、補修もされていて十分綺麗なのですが、さすがに屋敷の方が老朽化してしまったようでして。  しかし近くに温泉が発見されたこともあり、この別荘地の価値は一段と高くなると見込んで、今回建替えた後、  売りに出そうと思っていたのですが、取り壊そうとする度に関係者が謎の死を遂げるので、困り果てていたのです。」 「ふむ・・・事前の依頼書にもあった通り、地縛霊の気配は確かにするのう・・・今までに他の霊能者に除霊を頼んだことは?」 「はぁ、今までにも何人もの霊能者に頼んできたのですが、皆失敗してしまって・・・  それでこの度、最近話題になっている敏腕GSであるサクラ様に、お願いした次第でありまして・・・」 ・・・ゴクッ・・・今までに何人もの関係者が死に、何度も除霊に失敗しているだと?・・・ 「サ、サクラ先生〜、今回の依頼、キャンセルしましょうよ〜・・・」 「何でじゃ?諸星。」 「だって、わけの分からん『猿』が持ち主で、しかもこの別荘で死んでるし・・・  おまけに今までにもたくさん関係者が死んだり、除霊に失敗したりしてるじゃないすか〜・・・」 「何をわけのわからんことを・・・」 と、その時、向こうから一人の女性が走ってきた。 「大島部長!本社から今、連絡があって、今週中に工事に着工しないと来年の納期に間に合わないと催促が・・・」 「あ、こちら、秘書の火暮(ひぐらし)君で・・・」 「どもーー!!!ボク、諸星あたるでっす!GSのアシスタントやってまーーす!!!」 説明を聞くまもなく、俺は本能と理性に基づく公然たる自己紹介をした。 「あ、はぁ・・・」 「ダーリン。火暮さん、困ってるっちゃよ・・・」 「・・・で、諸星。『キャンセル』がどーかしたって?」 「・・・『キャンセル』?何を言ってるんですサクラ先生!?愛と正義と平和の為に、  我々GSが悪しき地縛霊を退治せず一体誰がやると言うんです!?やりましょうよ!」 こうして、サクラGSチームの除霊が決定したのであった。 「・・・ところで火暮さん。あとでご一緒に食事でも・・・」 「・・・ダ〜〜リン〜〜〜?(バリッバババ)・・・・」 「・・・報酬の貴社のチェーン料理店の1年間無料券、お忘れなく(ボソッ)・・・」 「・・・はぁ・・・・」                            ・                            ・                            ・ 算段がついたところで、俺達は屋敷へと案内してもらった。 昼間だというのに、何とも言えない不気味さと暗さを持った屋敷である。 昔は立派な屋敷だったのだろうが、今となっては見る陰もない。 「今までに何人もの霊能者が除霊しようとしたのですが、皆このような有様で・・・」 そういうと、大島氏は何枚かの写真を取り出した。 どの写真にもズダズダのボロボロに怪我した霊能者らしき人物が写っていた。 「おーおー、猟奇殺人真っ青じゃな。これでは。」 「・・・となると、後はプロに任せて引き揚げた方がいいでしょうね。」 「だっちゃね」 「そうじゃな」 「そ、そうですね・・・」 「それじゃ!サクラ先生・ラム。後で迎えに行きますから、がんばってください!  ささっ、火暮さん。ここに居ては危険です。向こうへ向こうへ・・・」 「『お約束』しとらんと、はよ来んか貴様ーー!!!(ドバキャ)」 おもいっきし殴られた後、サクラ先生は俺を引きずって歩き出した。 「あ゛ーー!やめてーー!!!やっぱりホラーな雰囲気はビビるんですよー!な?ラム?(ずるずるずる)」 「ウチは別にヘーキだけど・・・」 サクラ先生に引きずられながら、俺達3人は屋敷へと入っていったのであった。 「・・・部長、あの人達、大丈夫なんでしょうか?・・・」 「・・・わからん・・・」 ************************************************************************************************************ 屋敷の中は、湿っていて薄暗く、今にも何か出てきそうな気配だった。 「ん〜・・・この気配は・・・  寝室でペンを片手に心臓発作を起こして病院に運ばれたものの善処の甲斐なく午後12時14分に死んだ霊!!!」 「い、いきなりそこまで分かるのけ!?」 「依頼書にそう書いてあっただけじゃ。霊能者にハッタリは付ものでな。」 「サクラ先生・・・よその霊能者が聞いたら怒りますよ・・・」 資産家が死んだ部屋は、屋敷の2階にあるようだ。 今まで怪我した霊能者のほとんどが寝室近くで発見されている点から、 地縛霊は寝室近くに出没すると断定してよい、という結論に達した。 「さて・・・奴をおびき出して退治する方法じゃが・・・」 「何か作戦でもあるんですか?サクラ先生」 「ある。これまで除霊に失敗したGSを見てみたんじゃが、どれも皆、  男の方のやられ方が尋常ではない。・・・・とゆーわけで諸星・・・」 「はい?」 「おぬし、『おとり』になれ!」 「え?・・・えぇ゛ーーー!?ちょ、ちょっとーーー!!!」 「ダーリン、がんばるっちゃー!『男』を見せるっちゃー!」 「そ、そんな〜〜!殺生なーーー!!!」                            ・                            ・                            ・                            ・                            ・                            ・ ・・・暗い・・・寒い・・・怖ひ・・・ ・・・結局引き受けさせられることになってしまった、可哀想な俺であった・・・ にしても、歩くたびに床はきしむし、昼とは思えぬ暗さで、いかにも幽霊な出てきそうな気配がする。 いかに素人の俺でも、全身の鳥肌が立つのだ。 そもそも『地縛霊』とは、その場所で、憎しみ・怨念・恨み・欲などを持ったまま死に、 その念が絡み、永遠に負の世界よりその念を発し、多くの災いを起こす凶悪なる霊魂のことである。 そこに居る人と、想念・魂神と調和が取れない時、その地縛霊は凶悪なる負のエネルギーをもって人に襲いかかり 多くの災い・災難・事故・病死などを引き起こし、低き世界に引きずり落とそうとする。 地縛霊は憑依はせず、永遠に負を発し続けるらしい。 事故死の現場、戦場の跡、または人が多くの恨みをもって死んだ場所などに多く発生するようだ。 ・・・ん?ということは、あの霊は寝室に何か心残りでもあるのだろうか? などと考えながら歩いていると、寝室に着いてしまった。 息を呑んで、中をのぞいて見る。 ・・・・何もない・・・・ と、その時であった。古びたベットの上に、いかにも『幽霊』と呼んでちょーだいと言わんばかりの、 ゆらゆらっとした霊体が現れたのは。 《誰じゃ貴様はーー!!!なめとったらあかんぞコラーー!!!》 「あ゛あ゛ーーー!!!やっぱ出たーーー!?」 非常識にも、その地縛霊は乱暴な言葉でメンチを切ってきたのである。 《帰ーれっちゅーとんのにズカズカ上がってきくさって!貴様どないな教育受けとんねんコラ!不法侵入やぞ!!》 「わー、スンマセン!スンマセン!!!」 《いてこますぞ貴様!死ねーー!!!(ぐぉぉっ!)》 「ひーー!!!」 言うやいなや、霊はものすごいスピードで襲い掛かってきた。 が!甘い。『三十六計逃げるにしかず』これは私の座右の銘でもある。 体当たりしてくる地縛霊をひらひらとかわすことぐらい、朝飯前なのであった。 《ハァハァハァ・・・ぬぅ、おのれ、人間離れした身軽さなんぞ持ちおって・・・》 「ニャーッハッハッハ!甘い甘い。そんな攻撃じゃこの諸星あたる様に傷一つ付けることなど不可能じゃい!」 「自慢することか!(バキッ)」 「いてっ!」 高笑いする後ろから、サクラ先生からおもいっきし突っ込まれた。 いつのまにやって来たのだろう。 「貴様がこの屋敷の元の主、御寸釘宗太朗(ごすんくぎ・しゅうたろう)か!?」 《なんじゃ貴様達はー!?何しに来たー!?》 「問答無用。数々の悪行、もはや見過ごせぬ。このワシが黄泉の国へと送ってしんぜよう。」 《・・・な・・・》 サクラ先生はそう言い放つと、除霊用の武器であるお払い串を静かに天に掲げ、 ゆっくりと左右に振り出した。 「はらったま〜きよったま!はらったま〜きよったま!・・・」 《・・く、くそっ・・・》 苦しそうな声を上げると、地縛霊はスゥっと消え去っていった。 「消えた?やっつけたんですね!?」 「いや、まだじゃ。一時的に逃げただけで、まだ近くに潜んでおる・・・」 「サクラ、この部屋の下、小さな部屋があるっちゃ。一階にはそんな部屋なかったはずだっちゃ!」 ラムは何やらまた怪しげなセンサーを見ながら、床の下を指した。 「ほほぅ・・・隠し部屋というわけか・・・フンッ!(ドカッ)」 サクラ先生がベットを一蹴りすると、ホコリが舞った後、隠し扉が見つかった。 どうやらこの扉から、下の隠し部屋にいけるようだ。 とゆーことは、地縛霊はこの扉を守っていたわけである。これはますますクサくなってきた。 「よし、行くぞ。あと、諸星。霊相手では役に立つかわからんが、一応これ持っておけ。」 「へ?」 サクラ先生がリュックから取り出して俺に渡したものは、拳銃だった。 「こ、これは、コルトパイソン!?」 『コルトパイソン』 世界最高の量産リボルバーと言われ、ダブル・アクションの機構は優秀で品質水準も非常に高い。 また極めて丈夫なので寿命の続く限り、.357マグナム弾を目一杯発射する事が出来る6連発リボルバーである。 また、ベンチレーテッド・リブバレルのスタイルも美しいのも特徴の一つである。 ただ、値段が高い事でパイソンを使用できない警察も多く、この銃を持つ事は一種のステータスと言われている。 『シ○ィーハ○ター』で冴○リョウが使っていた銃もこれであった。 なんか面堂がやたら詳しく話してたのを覚えている。なんでだろう・・・ 「ちょ・・・サクラ・・・それ・・・・」 「銀の弾丸が入ってるから、効くかもしれん。」 「いや、そーじゃなくて・・・なんで持ってるっちゃ?そんなもの。」 「この前ちょっと面堂の家から一丁失敬してきてな。」 「でもサクラ先生・・・これって銃刀法・・・モガッ・・・」 「それ以上言うな!よし!それでは行くぞーー!」 ・・・違反だよなぁ・・・ 心の中で続きを言い、俺とラムもサクラ先生の後に続いた。 *********************************************************************************************************** 隠し部屋は、机と本棚しかない部屋であった。 「・・・何もないっすね・・・」 「・・・うむ・・・」 「あ、詩集だっちゃ。作者は・・・御寸釘宗太朗?」 「え?この本棚いっぱいにあるの、全部そうなのか?・・・」 さっそく俺達3人は、御寸釘が残した詩集を読んでみた。 内容はあえて言わないが、読まれたらかなり恥ずかしいことば長々と書き連ねてある。 なるほど、これを見られたくないという一心から、怨念と化し、地縛霊となったのであろう。 《こらー!貴様らーー!!!よ、読むなそれをーー!!!》 どこに隠れていたのか。 先ほどまで逃げていた地縛霊が、突然姿を現した。 「今じゃ、ラム!!!」 「了解!電撃〜〜10万ボルトー!(ドババババッッ!!!)」 すかさず、ラムが電撃を食らわした。 気のせいだろうか、いつも俺に喰らわしている電撃より弱いような気がするのだが・・・ (すると何か?俺は地縛霊より始末が悪いってか?) それでも結構効いているようだ。地縛霊は身動きが取れなくなったようだ。 「よ、よし、俺も。喰らえー!(ズドォォン・・・)」 俺も先ほどサクラ先生から拝借したコルトパイソンで、銀の弾丸を撃ち込んだ。 ・・・スカッ・・・ 「あ、あれ?」 「う〜む・・・やはり幽霊相手では銀の弾丸は効かんか・・・」 「分かってるなら最初から言ってくださいよーー!!」 「しょうがない、使いたくなかったんじゃが・・・諸星、リュックから破魔札を出せ!」 「は、はひ・・・」 俺はリュックから錯乱坊特製の破魔札を出すと、サクラ先生に渡した。 『錯乱坊破魔札』 どこからともなく沸いて出ては迷惑をかけるあの錯乱坊であるが、 やはりサクラ先生の叔父だけあって霊能者としては超一流らしい。 この破魔札は、その妖怪坊主が霊気を込めて書いた、特製のお札だそうだ。 いざというときの『必殺除霊兵器』である。(錯乱坊印が入っているのが本物) 受け取るやいなや、サクラ先生は何やら唱えだした。 「いまわしき黄泉の使者よ!!何故生者に害を為すかっ!?我、サクラ、自然の理と正義の名において命ずる!!!」 《や・・・やめ・・・》 「退け!悪霊!!!退散!!!!!!(バシッッ!!)」 《ぐわぁぁ・・・ぁ・・・》 「汝の魂に、幸あれ・・・」 こうして、錯乱坊破魔札と共に、地縛霊:御寸釘宗太朗は成仏していったのであった・・・ *********************************************************************************************************** 「う〜ん・・・にしても、世間に恥ずかしい詩集見られるのが嫌で、地縛霊なんかになって・・・」 「しかも、わざわざウチ達を見られたくない部屋なんかに案内させてるっちゃ・・・」 「『バカ』・・・この一言につきるのう。まったく。」 「にしても錯乱坊破魔札、すごい威力だったっすね〜。」 「まったく。腐っても叔父上。ワシでもあれほどの破魔札は作れん・・・」 ようやく除霊を終えた俺達は、屋敷の外へ出た。 待ってましたと言わんばかりに、大島氏と火暮さんが寄って来た。 「ど、どうでした?結果は?」 「うむ。除霊成功じゃ。一階に隠し部屋があるからそこに置いてある本を全部、御寸釘氏の墓に供養してやるとよい。」 「あ、ありがとうございます。なんとお礼を言ったらよいやら・・・」 「礼なんかいらないさ・・それより火暮さん、ボクと一緒にお食事にでも行きましょーー!住所は?電話番号は?」 「ダーリンーー!!!(ドババババッッ!!!バリバリー!)」 「うぎゃ〜〜!!!!」 ・・・やっぱり強い。やっぱり地縛霊に使った電撃より、今俺が喰らってる方が強い・・・そう思った。 −ゴーストスイーパー− それは常に死と隣り合わせの危険な仕事である。 それでも私は、この職場を愛していた。 理由はもちろん、 未知への挑戦と冒険を求める為である。 「ふは・・・ふははは・・・か、雷の核が見る・・・新魂さん、いらっしゃ〜い・・・」 「ちょ〜っち、やり過ぎたっちゃ?・・・」 「いや、そんなとこじゃろう。」                             −終わり−