とある野望。  novel by 長谷川 やゆ。

 

   

 「ふふふっダーリンv」

    「なんじゃい。」

    「今日ね〜メガネさんから映画のチケットもらったっちゃ。」

    「それがど―した?」

  ぱりっ せんべいを一口かじる。

    「だから行こっ。」

    「めんどくさい。」

    「ねー行こう行こう。」

 ラムが俺に擦り寄ってくる。

  まるで主人から餌を待っているペットのようだ。

    「いーやーだー。」

    「もぅっ!」

 けっ 

    「なぁ、そのチケットメガネからもらったんだよな?」

    「っちゃ。」

    「メガネはお前と行きたかったんじゃないか?」

    「そうけ?うちにはそう見えなかったっちゃ。」

 鈍い奴・・・。

  そもそもあのメガネが映画のチケットをラムにやるわけないじゃないか。

 誘うならともかく。

    「でも、渡してくれた時笑ってたっちゃよ。」   

    「苦笑いじゃね―のか。」

    「とにかく!そんなことは置いといて映画行こうよ〜。」

    「嫌だ。」

    「なんで?ダーリン今ヒマだっちゃ。」  

    「漫画読んでるから忙しい。」

    「・・・こーなったら実力行使だっちゃ!!!!」

びーーーーーんばりばりばりばりばりばり

    「うぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!」

  

・・・・しーん。

       

    「それじゃ行くっちゃ。」

    「いやだ。」

    「どーして?映画見るだけだっちゃよ。」

    「だーって街に行って女の子にちょっと声掛けただけですぐ電撃するじゃないか。」

    「あーったりまえだっちゃ。」

    「だから嫌。」

    「もーそこまで言うんならメガネさんや終太朗を誘うっちゃ!」

    「おーそうしろそうしろ。奴らなら泣いて喜ぶだろうよ!」

    「ふんっ、ダーリンの馬鹿っ!」

 

ぴゅるるるる  ラムが窓から外に出て行く。

 

    「けっ。ラムの馬鹿。」

 どてっ 床に寝転ぶ。

    「映画ねぇ・・・」

   

   場所はここから一番近い最近出来た友引シネマ館だろう。 

決して嫌いではないが周りの女の子の方が気になる。

     

    「ラムだってちゃんとしてれば可愛いんだよなぁ。」

 

   しかしあんなにべたべたされるというのは嫌だ。

  俺は一人の女なんかに縛られたくない。自由なんだ。

 

    夢はハーレム。それは昔からのこの俺の夢。

 

    「しかしハーレムの前にラムを俺のモノにしないと。」

 

 そうじゃないと満足できない。

  しかしラムを俺のモノにするのは難しいことじゃない。

 そのうち出来るだろう。多分。

「そろそろ優しくしてやるか。」

           

     「今の話本当け?」

ぎぐっ

  ひょこっとラムが顔だけを窓に出す。

     「ら、ら、ラムっ!?」

がばっ 飛び起きる。     

「ねぇ、ほ・ん・と・う?」 

     「お前いつから・・・。」

     「誰も出かけたと言ってないっちゃ。だからずぇーんぶ最所から聞いてたっちゃ。」

べぇーっとラムが舌を出す。

     「卑怯者〜〜〜!!!」

     「わはっ。」

 ひゅるるるる ラムが窓から入っておれの首に飛びつく。

     「は、離れろっ〜!」 

     「嫌だっちゃ。」

     「離れろ〜ラムっ。」

     「“優しくしてくれる”んじゃなかったのけ?」

     「だれもそんなこと言っとらん。」

     「嘘だっちゃ。ちゃーんと言ったっちゃ。」

     「知らん。」

     「もぉ〜ダーリン。」

  甘えてくるラム。

 そんなラムを見てるとちょっとした遊戯心が出てきた。

     「ラム。」

ちゅっ  軽く触れるか触れないかのキス。

     「・・・ダーリン。」

     「さーて、ガ―ルハントしてくるか。」

 すくっ 立ち上がる。

     「あっ。」

ふわん ラムが宙に浮く。

     「と、言うことで。」

     「ことで?」

          

     「逃げるーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

   

  そう言って俺は部屋を飛び出した。

     「あっ、待つっちゃダー――リン!!!」

     「悔しかったらここまで追いで。」

 そして俺は映画館へと走った。

  まあ・・・優しくしてみるために。    

                                                             ―fin

 

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