友引町を奪還せよ-act1ー あたる達二年四組が友引高校を卒業して五年の月日がたった。 それぞれ結婚できるものはすませ、もちろんあたるとラムも例外なく結婚していた。 あたるとラムが結婚した際日本政府は鬼星と和親条約を締結、 あたるとラムは再び世界に名の知れる存在となった。 しかし鬼族の武装犯罪者は地球人の軟弱さをつけねらい、犯罪成功率の高い地球にその標的を変えた。 そのため日本警察や自衛隊では太刀打ちできないほどの武器は犯罪防止のため持参禁止にしたが 犯罪者達はたくみに法の目を逃れ数々の事件を起こした。 特に東京の鬼族武装犯罪発生数は圧倒的に多く、これに頭を悩ませた日本警察は会議を繰り返し「特殊武装装備隊」を設立を決定した。 これは警察内部から戦闘に優れた者を選抜する部隊であった。 ただし他の治安部隊、警備部隊の戦力を削らないように国民からの入隊希望者も採用した。 この「特殊武装装備隊」通称「特武隊」は条約の内容上犯罪者を殺すわけには行かないため、面堂家が新開発した空気銃を使用した。 骨を砕く程度の衝撃波を放ち、防弾チョッキも無効なので絶大な効果を発揮した。 隊員は勤務中、空気銃と軽量で頑丈な戦闘用スーツを常時着用し、いつでも事件が起きても良いように備えていた。 また面堂家警備部は特武隊の第三第四小隊を受け持ち、特武隊は初の公私警察隊となった。 そして終太郎は警備部の指令を一任されている。次期頭首としての判断力を養うためだからである。 さらに藤波夫婦(竜之介、渚)は驚異的格闘センスがかわれ第三第四小隊の隊長を任されている。 事実上終太郎の下で働いたいるのである。 二年四組のメンバーの殆どが友引町から去っていき、残っているのは諸星夫婦と竜之介、 司令官をしている面堂の五人だけであった。いつもの騒動は嘘のように静まりかえり友引町は平和な毎日を過ごしていた。 十二月二十九日午前七時諸星あたる一家宅 その日は冬にしては珍しく温かかった。あたるは布団から起きると窓を開け簡単に背伸びをした。 そして寝癖でぼさぼさの頭をぼりぼりかきながら台所に向かった。いつもならラムが朝食を作っているはずだがその姿はない。 (あのやろ〜、まだ寝てやがる) あたるは竹棒をとるとラムの寝てる部屋の下の部屋に入った。そして竹棒でどんどんと突いた。 「こりゃラム!早く起きんかい!!」 何も反応はない。 (防音対策してやがる) あたるはラムが寝ている二階へ上っていった。戸を開けるとカプセルの中にラムが寝ていた。 (さて防音対策しているこのカプセルをどうするか。たたき割るか。 いやラムのUFOが堕ちたときでも体に傷一つつけない代物だ、この手は無理だな。 (スクランブル ラムを奪回せよ参照)そうだ、カプセルの電源自体切っちまえ) あたるはコンセントを探した。カプセルの周りを四つ足で徘徊したが、なにもない。 (そもそも電源なんて無いんだよな。どうすりゃいいんだ・・・) あたるはその場に座り込み頭を悩ませた。 二十分経過 「ふぁ〜、今日はあたたかいっちゃ」 ラムはあくびをしながら重い体を起こしカプセルからおりた。 何かを踏んだ。あたるである。頭を思いっきり踏みつけていた。 「ダーリン、何してるっちゃ?」 「まずはその足をどけろ」 ラムは慌ててその足をどけた。 「ごめんちゃ。あ、ダーリンもう二十分だっちゃ。何で起こしてくれないっちゃ!?そろそろそのがさつな性格直すっちゃ」 ラムは急いで階段を駆け下りるとエプロンをつけて急いで朝食の準備にかかった。 「おまえな!言いたい放題言いやがって!起こせるもんならとっくに起こしとるわい!」 あたるは台所の隣の洗面所で顔をあらったり寝癖を直しながら言った。 どががががが、ズギュン、ドカーンばりばり・・・台所から恐ろしい音がした。 (はっ!?まさか・・・・) あたるはこっそり台所を覗いた。ラムはゴーグルと盾をもってマッチを擦ろうとしていた。 「わっ!やめろラム!!」 遅かった。マッチは鍋に向かって投げられていた。カッ!と光ると同時にあたるは絶望に駆られた。 同時刻 諸星あたる宅から一番近い武藏友引駅ではコースケがあたるを待っていた。 あたるとコースケは同じ会社に勤めていていつも一緒に出勤していた。 (なにしてやがんだ、あたるの奴。また高校の時みたいにガールハントしとる訳じゃあるまいな。結婚したにもかかわらず・・・) そんなことを考えている内にあたるが手を振りながら走ってきた。口に包帯を巻いていた。 「よー、待たせたなコースケ」 コースケは包帯を見るや否や 「おまえ、またラムちゃんの激辛料理喰ってきたのか」 と言った。あたるは口に手を遣りながら答えた。 「あー、せっかく母さんが料理教えてやったのに、遅刻しそうな時はいつも早いからってあれ作るんだよ」 すると駅内からアナウンスが流れた。 「登り三番線より電車が発車します。白線の内側にお下がり下さい」 二人はこの放送を聞くと慌ててホームに向かった。  面堂邸 終太郎は連日の事件で疲れ果てており仮眠室で寝ていた。 すると黒メガネが猛烈な勢いでドアを開けた。 「若!緊急事態です!太平洋南部より多数のUFOらしき反応を確認しました!鬼星に問い合わせたところ犯罪組織が数ヶ月前に 鬼星艦隊から盗み出した物で戦闘用ではありませんが、超高速のため我が面堂家の戦闘機では捕捉は難しい物と思われます!」 黒メガネは全速力で走ってきたらしく疲れ果てた声で言った。 終太郎はすぐさま起きると司令官の制服に着替えた。 「おい貴様、今僕は司令官だ。若というのは仕事が終わったときだ。今後気をつけろ」 「はっ!」 起こしに来た黒メガネに一言注意すると司令室に向かった。扉を開けると司令用座席に座った。 「目標の首都圏到達時刻は!?」 「約二十分後です!」 「自衛隊の邀撃機は!?」 「何処もあがっていません!」 「第一から第三の空挺部隊は出撃準備!」 無数の戦闘機が整備工場から整備委員に滑走路まで誘導された。 「第一第二空挺部隊離陸準備完了しました」 「第三空挺部隊同じく離陸準備完了しました」 「全機離陸!自衛隊がでるまで足止めだけでもするんだ。一応自衛隊につなげ。出るまで続けろ」 「了解!」 (自衛隊でも捕捉は無理かもしれんが・・・) 「自衛隊三沢基地、つながりました」 終太郎は受話器を取った。 「こちら面堂邸、太平洋南部より鬼星の犯罪組織の物と思われるUFOが多数接近しています。現代こちらの邀撃機が向かいましたが、 捕捉は難しい物と思われます。応援を要求します」 「こちら三沢、現代離陸準備中です。上がり次第向かいます」 そういって終太郎は電話を切った。 五分後 「第1空挺部隊接触しました。第二第三部隊は三十秒後に接触します」 「第1部隊より無線はいります」 「速すぎます。捕捉はしましたが追いつけません」 無線の声は苦しそうな声で言った。 「第二第三部隊威嚇攻撃を許可する。接触次第発砲しろ。ただし反撃のそぶりがあった場合はすぐにその場を離脱しろ」 面堂は相手の正体が分からない以上不用意に攻撃を受ける訳にはいかなかった。 「指令!目標は急降下しています。十三秒後にレーダーから消えます!」 (海に潜る気か!?くそ、今から海挺部隊を出しても間に合わん!) UFOは陸が近くなると海面から姿を現した。低空のため海上に強力な衝撃波を放っていた。 陸上にでると衝撃波で町は崩壊し、さらに海上で起きた波が町を襲い二次被害を出していた。 あたるの会社 あたるは会社の窓から外の景色を眺めていた。 車が下をひっきりなしに通る音、冷たい北風によって飛んでいく落ち葉、雪を降らせそうな黒い雲・・・。 ひじをつき、つまらなそうな目で眺めていた。すると急に胸騒ぎがし始めた。 (なんだ?この胸騒ぎは・・・) ふとラムのことが頭に浮かんだ。 (ラム・・・?) あたるはラムに何か起きるんじゃないかと不安になってきた。そのうち昼休みの時間になった。 「おいあたる、昼飯喰いにいこーぜ」 そう言ってコースケはあたるの肩を叩いた。 「あ、ああ・・・」 あたるとコースケは食堂でラーメンを食べていた。コースケは会話を進めていくが、 あたるは「ああ」とか「ふーん」としか答えずずっと考え込んだ顔をしていた。 コースケは不思議に思った。 「どうしたんだよあたる、おい」 コースケはあたるの肩をつかむとあたるは驚いてラーメンを喉に詰まらせた。コップ一杯急いで飲み干した。 「なんかおかしいぜ、おまえ」 「ああ、なんか胸騒ぎがすんだよなあ。なにか大変なことが起きそうで・・・」 「いきなり食堂が爆発して会社のビルがなぎ倒れるとか?」 「気にするな、ただの思い過ごしだ。さて食後の運動にガールハントでもしてくるか」 「おまえ、結婚してんだろ、いい加減止めた方がいいぜ。つーか止めろ」 コースケはあたるの肩をつかんだ。 「たとえ妻子ある身でもガールハントは一生止めるきはない!」 あたるはコースケの手を振り払うと背を向けた。しかしコースケは予想していた物と違う反応を示した。 「・・・お前今なんて言った?」 「だから妻子ある身でも・・・」(しまった!) あたるは口を紡いだ。 「おまえ、子ども出来てたのか!」 コースケはあたるにアップで近づいてきた。 「い、いや、まだ妊娠中だ・・・。それよりアップは止めろ!」 「なぜ俺に言わない!?」 「だってメガネとかに知られたら俺は一生怯えて暮らさにゃならんではないか・・・」 「メガネには黙っといてやるよ」 「他の二年四組の奴に言うつもりだろう?」 「当たり前だ」 あたるは木槌を振り上げた。 「や、やめろ、冗談だ!」 そのときいきなり食堂の端っこ側から爆発がおきた。正確には衝撃波が襲った。 「なんだ、何が起きたんだ!?」 一面パニックに陥っていた。しかしあたるとコースケは場慣れしているせいか冷静に辺りを把握した。 あたるはがれきのしたから手がでているのをみつけて走り出した。 「何処行くんだ、あたる!」 「コースケ!こっちに誰か埋もれてるんだ、手伝え!」 あたるはがれきのをどけようとするが、なかなか動かなかった。 コースケはなにかないかと周りを見渡すと、ちょうど「くのじ」に曲がった頑丈そうなパイプを見つけた。 (あれだ!) コースケは、てこの原理で持ち上げ、中の人を助け出した。 「社長!」 あたる達の会社の社長だった。 「ありがとう助かったよ、本当にありがとう」 社長はあたるとコースケに深く礼を言った。 「それより君たちの家は大丈夫かね、早く家に連絡した方がいいんじゃないか?」 「いえ、大丈夫です。UFOの向かっている方向とは違いますから」 するとコースケがちょんちょんとあたるの肩を叩いた。 「あのUFO進路変えたぞ。あの方向は・・・友引町だ!」 あたるはどこからともなく双眼鏡をだした。 「くそ!」 崩れたがれきの中につっこんで強引に外に出ると近くにあったバイクで友引町に向かった。 「あー、俺のバイク!」 「スマン!出来るだけ原型をとどめて返す!」 バイクの主にとんでもないことを言ってそのまま全速力で友引町に向かった。 あたるの乗ったバイクが交差点を過ぎると後ろからパトカーがつけていた。 「そこのバイク止まりなさい!」 「今回だけ許してくれ、急ぎのようがあるんだ!」 すると運転をしていた警官が窓から顔を出した。 「そんな言い訳が通じるとおもってんのかー!貴様のような暴走する馬鹿に警視庁交通課は聞く耳持たーん!! 貴様みたいに若いくせにバイクで暴走する奴があるからこの世から犯罪が消えんのだ!!その様な若者が現代社会に無用な混乱を招き そして社会は衰退していくのだ!!我々はその衰退を防ぐべく働いておるのだ!!おとなしくお縄につけい!!」 あたるははっとした。そしておそるおそる後ろを向いた。 (まさか・・・) メガネであった。今や現代警視庁交通課の新米刑事である。 「メ、メガネ!?」 「あたるか!?なに速度違反しとるか!」 「ラムがあぶねーんだ、今回は見逃してくれ!」 再び前を見るとさらにスピードを上げた。 「おい、もっとスピードを上げろ、逃げられるぞ」 メガネの上司が言った。 「・・・。」 「おい、きこえとんのか、スピードをあげろ!」 「そんなこと言わなくてもスピードはあげますよ・・・」 メガネは不気味に低い声で言った。 「だが、あいつことなどどーでも良い!今はラムさんの事が先決だー!!」 パトカーはスピードを上げるとあっという間にあたるを追い越した。 「何をわけのわからんことを・・・」 メガネは上司をにらんだ。 「訳のわかん事だと・・・!貴様今の発言は聞き捨てならん!俺が運転しとる車にその様な者の搭乗資格はない。ここからでていけー!」 そう言って助手席の窓を開けるとそこから放り投げた。 「何するかー!!」 上司の言葉に耳を傾けずメガネは運転席の窓から顔を出し、あたるに叫んだ。 「あたる、乗れ!そのバイクはガソリン漏れしとる!」 たしかにガソリン漏れしていた。 「げ!」 メガネは後ろの座席の窓をあけるとさけんだ。 「ここから中に入れ!」 あたるは中腰の状態で飛ぶタイミングをはかった。そしてパトカーから五十センチぐらいに近づくと 車に飛び乗り窓にしがみついた。 「くっ!」 あたるは何とか窓から中に入り込んだ。そして座席に着くとふーっと溜息をついた。 すると後ろの方で爆発が起きた。あたるがのっていたバイクである。 「どうすっかな、あのバイク。人から借りた奴なんだ・・・」 「おい、今はそんなこと考える場合ではないぞ」 「ああ、そうだな・・・」 あたるとメガネを乗せたパトカーは友引町にむかった。 諸星宅 ラムは居間でくつろいでいた。 「なんだか騒がしいっちゃね」 ラムは二階に登り自分の部屋から周りを見渡した。 (!・・・あ、あれは!) ラムは驚いた。鬼星で今問題となっている犯罪組織の盗んだUFOが友引町のあちこちに浮遊していたからである。 (何で地球にいるっちゃ!?) ラムはとっさに押入を物色しバズーカ砲をとりだした。 そして屋根にむかって発射した。真上にいたUFOの一つにあたり降下していった。 (やったっちゃ!) しかしそのUFOは諸星宅にそのまま堕ちてきた。 「こっちに来たっちゃ!」 ラムは窓から外にでた。しかしそのUFOは諸星宅をかわしラムの方向に飛んできた。 「効いてなかったっちゃ!?」 バズーカ砲は効いてなかった。ラムはさらに遠くに逃げようとしたが、そのUFOは光線銃撃してきた。 ラムは素早くかわしていったが量が多く、さらに妊娠中なので動きが鈍くなっていたため避けるのは困難な状態だった。 そのうち右肩にあたりそして腹部へ命中した。ラムは意識が遠のいていった。 (ダーリン・・・) パトカー 「ラム!」 あたるはぴくっとした。 「どうしたあたる」 「いや、今ラムの声が・・・ラムに何かあったのかもしれん。もっと速度を上げろ!」 「これでも最高速度だ!」 「くそ〜・・・」 あたるは貧乏揺すりをしていた。 (俺が行くまで無事でいろよ・・・) すると急にパトカーは速度が落ち始め、強く車体が揺れた。 「メガネ、まさか・・・」 「そのまさかだ。パンクした!」 「くそ何でこんな時に!」 メガネは急ブレーキをかけ車と止めると、二人は車のドアをあけ外に出るなり全速力で走り始めた。 すると町の中心から何かが打ち上がった。そしてカッ!と強烈な光をはなった。 「わ、何だ!?」 まぶしさのあまり目をつぶり二人はなかなか前に進めなかった。 光が収まるとッそーっと目を開けた。しかし恐るべき情景が二人の目を奪った。 なんと友引町のあった所に巨大な大穴が開いていたのである。そして友引町は要塞のごとく空に浮いていた。 「な、な、なんだこれは!?」 ー続ー