友引町を奪還せよ-act3ー 十二月三十日午前十一時 面堂邸 終太郎は十二月三十一日午前七時に突入を決定した。 今その説明会を開いているところだった。参加者は小隊長の竜之介、渚、面堂軍援護武隊隊長の奥平、そして司令官の終太郎である。 「さて、竜之介さんや渚さん、奥平に集まって貰ったのは他でもありません。明日午前七時より友引町の突入作戦を開始するにあたっての作戦を説明するため です」 終太郎は竜之介と渚に説明するからなのか、敬語で喋った。 「で、どうするんだ。早めに説明しろ」 竜之介はせかした。渚もそれに合わせて首を縦に振る。 「では早速・・・」 終太郎はリモコンのスイッチを押すと上からスクリーンがおりてきた。そして部屋の電気が消えた。 「これを見てください」 スクリーンには友引町がCGでかかれたものが移った。UFOやビル、車などが正確に書かれていた。UFOは動いていた。 「これは、人工衛星が写している物をCGに変えたもので、今現在の友引町です」 竜之介と渚は感心そうに見ていた。幼い頃から貧乏だった二人にとって、最新設備の整った屋敷には当分慣れなかった。 最近は落ち着いてきたが、まだ驚かされることはたくさんある。 「この監視していると思われるUFOの動きを見るとお気づきだと思いますが、地面から下は全く警備が為されていません。 下水道の穴などがあるにもかかわらずそこにはUFOおろか人すらいません。さらに奥の方を赤外線探査してみましたが、 下水道内には一人も警備がありません。恐らく敵は下水道の存在を知らないと思われます。そこで、友引町が空に浮いた際出来た下水道の穴から進入します」 終太郎はそう言ってリモコンのスイッチを入れた。するとスクリーンの友引町の映像は下水道内の構造を映し出しだされた。 「まず、敵のもっとも死角になるこの場所から進入します」 スティックで一つの穴をしめした。 「しばらく進むと通路が二つに分かれ、そこで第一、第二、第四小隊が右側に向かいます。右側にはさらに枝分かれしていって ここで四つに分かれます。そして東西南北にそれぞれ向かい、地上に出ます。そして敵の戦闘武隊を襲撃。合図と共に地上から戦車、戦闘機が 攻撃します。攻撃終了の合図がきたら、第三小隊は敵が人質と共に潜んでいると思われる○○商会ビルに最も近いマンホールから ビル内に入り、そして救出作戦を行います。内部地図を後に配りますから、ビル内での作戦はあなた方に一存します、以上」 部屋の明かりがつき終太郎は部屋から出ていく。奥平も出ていき、部屋には竜之介、渚が部屋に残った。 竜之介は背伸びをし 「さあ、帰るか」 といって席を立った。渚は何か深厚な顔をしていた。これに気付いた竜之介は話しかけた。 「どうした?腹でも痛えのか?」 これに気がついた渚は 「竜之介様、私のこと心配してくれるの?」 といってごまかした。 「んなわけねえだろ」 はずかしながら部屋を出ていった。 第三小隊 オフィス 竜之介は部下に作戦を説明した。 「隊長、質問があります。その作戦で正しいのですか?」 「あ〜?」 竜之介は部下をにらみつけた。 「どういうことでい」 「いや、だから、その、なんていうか・・・隊長は・・・馬鹿だから・・・ちゃんとあってるのかなーって・・・」 竜之介は手をぱきぱきと鳴らした。 「んなもん、自分で確かめろ!!」 ドガシャーン!!部下を殴り飛ばした。すると他の部下達もぞろぞろと出ていった。 「お、おい何処行くんだ?」 「隊長が自分で確かめろっていったから司令のところに行くんです」 「・・・」 竜之介は隊長室に戻った。オフィスには気絶した隊員達が転がっていた。  一方 第四小隊 オフィス 「では、これで説明は終わり。何か質問は?」 手は上がらない。 「では、持ち場に戻って」 渚はおかまのように内股で歩いていった。そのたびに隊員達は退く。男っぽい服を着ると意外にも男に見えるのが怖いところである。 隊長室 ここは第三小隊と第四小隊の隊長が使うことになっている。従って竜之介と渚が使うことになる。 「竜之介様・・・」 「なんだ?」 「あの・・・今回の任務って第三小隊と一緒に出来ないの?」 「お前、面堂の話聞いてなかったのか?」 終太郎は上司であることを忘れて普通に呼び捨てである。 「聞いてたけど、やっぱり竜之介様と一緒の方がいい」 第三小隊と第四小隊はほとんどいっしょに任務を遂行している。従って常に竜之介と一緒に仕事が出来ていた渚にとって辛いことなのである。 「馬鹿野郎、仕事の場で個人的な事はやめろ」 「でも・・・] 渚は間をおいて言った。 「竜之介様は私のこと嫌いなの?」 「きらいじゃねえよ。いちいち変なこと聞くな」 「じゃあ、好き?」 竜之介はカッとなった。 「てめえ、うるせえっつってんだろ!」 竜之介はがたっと立ち上がった。 「ごめんなさい・・・」 渚は最近になって夫婦の危機を感じていた。度重なる出動によって二人きりで過ごす時間がなのである。 しかも諸星夫婦同様、竜之介は渚に『好きだ』と言っていない。それどころか夫婦としての自覚がないように感じられる。 竜之介にとって『恋』というものにあたる以上に奥手なのだ。 そのとき放送が入った。 「明日の出動に備えるため第三小隊・第四小隊共に準待機とします。そのため臨時に第五小隊を発足します。志願者は第四ホールに集まってください、以上」 「第五小隊だぁ?」 「来なかったら、どうやって、かき集めるのかな?」 「おおかた、黒メガネ武隊でも使うんだろ。それより明日の準備しなきゃならんからな、俺は行くぞ」 「明日の準備って?」 「作戦会議だ」 「あ・・・」 そう言って第三小隊は会議室に集められた。 コースケ宅 あたるとコースケは職を失ったため何もすることがなかった。 二人は二階のベランダから外を眺めていた。 「なあ、あたる・・・」 「なんだ?」 あたるは昨日より少し元気な声で答えた。 「・・・仕事・・・探すか?このままじゃ俺、あいつと暮らしていけないから・・・」 コースケは妻のいる台所の方を見た。 「そうだな・・・」 「まず適当に町を歩いてみてそれでもなかったら、面堂に頭下げるしかない。それで良いか」 「面堂の下で働くつもりはないぞ、俺は」 あくまであたるは終太郎の下で働くつもりはなかった。 「とにかく外に行ってみることだ」 そう言って二人は部屋を出るとコースケは妻に 「じゃ、仕事探してくるから」 とことわって家を出た。 「何処で働くかな。慣れ親しんだ商店街はみんなあそこに・・・」 あたるは友引町を見てそれ以降言葉が続かなくなった。 「あたる、今は町を見るな。今は仕事を探す事だけを考えろ。ラムちゃんが帰ってきてから仕事が無かったら、困るだろ?」 「ああ・・・」 二人は無言で歩いた。もう昼であり、正月前と言うことで町はにぎわっており二人はその人垣をかき分けて歩いた。 「ホントはラムちゃん助けに行きたいんだろ」 「・・・」 コースケの質問にあたるは黙り込んだ。 「助けに行きたいんだな?」 「分かってるなら聞くな」 「だったら、助けに言った方がいいんじゃねえか?心配で夜も眠れんぞ」 「そんな、軟弱物ではない!」 「昨日ずっと起きてたのは誰だったかな?」 コースケはからかった声で言った。一応あたるを元気づけようとしているのだ。あたるもまた、元気を出そうとした。 そのとき 「番組の途中ですが、ここでニュースをお伝えします」 と言う声が聞こえた。二人は友引町の事について何かあると思い、テレビに食いついた。 「ちょっとあんた達なんなのよ」 テレビを見ていた大きなオバチャンが口をとがらせながら言った。 「やかましい!それどころではない!」 あたるはぐわっと言った。コースケはあたるが少しは元気になったと思い、少し安心した。 「先日、警察と面堂財閥の面堂終太郎司令は特武隊の第一から第四の全小隊を友引町に突入させることを決定したことを発表しました。それに先立ち・・・」 「面堂、遂に動くか・・・」 「お前はどうすんだ?」 コースケは言った。今ならあたるは行くかもしれない、そう思ったからだ。 「言ったはずだ。俺は行かない。絶対に・・・」 あたるの決意は固かった。 (この頑固者を動かせるのは、ラムちゃんだけかもしれないな・・・) コースケは少しあきらめ顔だった。そのとき 「あーたーるー!!」 という奇声が聞こえた。 「ん、メガネ?」 この声はメガネのだった。両手には木槌が握られていて既に振り上がっている状態だった。 「ば、ばか!あたるを殺す気か!!」 コースケは止めに入った。しかし怒りに狂ったメガネの相手では無かった。コースケはどこかに吹っ飛び、メガネは高くジャンプした。 「くーらーえー!!」 あたるは落ち着いた顔で手を構えた。そして振りおりてくる木槌をがっしりと手で受け止めた。 「真剣白刃取りの第一人者をなめるなよ」 「貴様、昨日の悲しみに満ちた顔は何処行った!?」 「やかましい!一日で人は変わるものだ!」 「ほ〜、だったら助けに行け!」 メガネは手の力を強めた。あたるの足が少し曲がった。 「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ・・・」 「・・・すこし・・・休まんか?」 あたるの提案だった。メガネは 「良かろう、五分許す・・・」 と提案を受け入れた。自分も休憩したかったらしい。 二人は道のど真ん中に堂々と座り込んだ。コースケが気を利かせてジュースを持ってきた。 「後で二人とも金払えよ」 メガネはジュースを飲み終えると飽きもせず木槌の標的をコースケに変えた。 「勝手に買っておきながら、なんだそれは!びた一文もっておらん!」 コースケもがっしりと受け止める。 「ええい、飲んでから言うな!」 コースケは足でメガネの顔を蹴った。 するとメガネはいきなり木槌から手を離し、あたるの方を見た。コースケはがっしりと受け止めた木槌を受け止めたままただ何をすればいいか分からなかった。 「ところであたる、貴様、昨日、助けにいかんと言っていたがどういう事だ?」 「コースケに聞いてくれ・・・」 あたるはジュースを飲みながらコースケを指さした。 「おい、コースケ、どうした起きろ」 メガネはコースケの胸ぐらを振りながら言った。コースケの目は死んでいた。 「き〜さ〜ま〜、コースケに何をした!?返答次第ではただではスマンぞ!」 「ええい!自分の責任を人になすりつけるなー!!!」 コースケはフリーズ状態からやっと蘇生した。その場の流れから状況を読みとった。どう読みとったかは定かではない。 「実はな、かくかくじかじか・・・と言うわけだ」 コースケはかれこれと説明した。あたるはメガネの反応に妙に緊張していた。 「なるほど・・・、あたる!」 メガネは納得するとあたるの方にずかずかと迫ってきた。 「貴様の命と引き替えにラムさんを助けに行け。ラムさんがそれで悲しむなら俺が慰めてやる!だから行け!」 「何を言うか、貴様に慰められるぐらいならこの手でラムを殺した方がましだ!」 「なんだと〜!」 メガネの額には血管が見えた。さらに目はもう人間の物ではなく、飢えた獣に等しかった。そのときあたるの耳に 「次のニュースです。今日、△△病院の×○容疑者が無免許で逮捕されました。診断した患者の殆どが嘘で、死を宣告された遺族の方々は、 ほっと胸をなで下ろしていました。現場の・・・」 っと言う何ともぬけぬけとした言葉が聞こえてきた。あたるはメガネを吹っ飛ばしてテレビにしがみついた。 「こっ・・・こいつは・・・」 「どうしたあたる」 コースケがひょいっとあたるの横に顔を出した。あたるの顔には汗が出ていた。 「こいつ、俺を診断した奴だ」 コースケははっとした。 「ってことは・・・お前の頭にある塊は・・・」 息を飲み込んだ。 「ない!」 「じゃあこれでラムちゃん助けに行けるじゃねえか!」 「ああ・・・」 あたるは嬉しくてたまらなかった。しかし・・・ 「だったら、お前の頭の違和感とやらはなんだ」 メガネは吹っ飛ばされた際、ぶつけた後頭部をさすりながら言った。 「そう言えばそうだ・・・。あたる、一応病院言ってこい」 「あ、ああ・・・」 あたるは何もないことを願った。病院に向かい、玄関のところについたところであたるは、あることに気付いた。 「お・・・おれ・・・」 「どうした?」 メガネとコースケはどきっとした。 「保険証を持っていない!」 「だったら、早く取ってこい!!」 二人はあたるを吹っ飛ばした。あたるは実に三年ぶりに吹っ飛ばされたのである。 「う〜ん、こんなに痛かったかな」 あたるは空中で腕を組みながら考えた。そう考えているウチに降下し始めた。予想落下地点はコースケの家だった。幸いあたるは保険証を 常に持ち歩いていたためコースケ宅にあるのである。 「お〜」 最初はやっとたどり着いたという感じの声だった。しかし頭が下にあることに気づき 「おわーーー!」 っと絶叫した。どか!バキ!ばりばり!つるん!どんがらがっしゃーん!!と屋根を突き破り、屋根裏にある柱をおり、天井をぶち破って コースケの妻がかけていたワックスに足を滑らせ壁に激突した後、壁に人型に跡をつけた。 「いてて、すいません今すぐ出ていきますから・・・」 そう言ってあたるは荷物を物色し保険証をとりだした。コースケの妻は何もしゃべれなかった。驚異的な生命力に驚いたのである。 「じゃあ、迷惑をかけました」 あたるは軽く頭を下げた。 「はあ・・・、それより大丈夫ですか?」 「大丈夫ですよ、お嬢さん・・・」 あたるは思わず手を取った。ガールハントの癖が再発したのだ。しかしラムの事が頭をよぎった。 「ラ、ラム・・・」 何かを振り払うように頭を横に振ると、 (こんな事をしとる場合か、急がねば・・・) 「じゃあ奥さん続きは後ほど・・・」 と爽やかに歯を光らせ、玄関から去っていった。コースケの妻は 「なんなの・・・」 と床にぺたっと座り込んだ。 あたるは病院を目指した。何かを決意したようだった。 「よう、待たせたな」 「あれだけぶっ飛ばされたら検査する必要も無かろう。いくぞ・・・」 「でも一応検査した方が・・・」 コースケは心配しながらあたるの方を見た。 「あ、あれ・・・あたる?」 あたるの姿はない。既に病院に入っていた。 数十分後 「何もなかったな」 あたるは安心した。 「しかし、なんなんだ頭の違和感って?」 「さあな・・・」 そう言って頭に手をやった。 「ん?」 あたるは何かねちょっとしたものを触った。 「こ、これは・・・ガム!?」 するとあたるの頭の違和感は消えた。するとメガネはヤバイっといった動きをした。あたるはこれに気付くと 「さて、説明して貰おうか・・・、メガネ君?」 あたるはもはや事情聴取する刑事である。コースケもまねする。 「さあ吐け。楽になるぞ・・・吐かないと牛丼はお預けだ」 メガネはうっとした。 「じ、実は・・・」 メガネは渋々と喋った。 「なに〜、結婚の腹いせにガム投げつけた〜!?」 「もはや裁判をする必要もないな。死刑だ」 あたるとコースケは何処か人通りの多いところにメガネを連れてった。 「いやだ〜!」 メガネは泣いた。 「聞く耳持たん!」 そして・・・ 「これより、公開死刑をはじめる。被告人、何か言い残すことは?」 あたるはメガネを電信柱に縛り付け、メガネに向かって語った。 「なぜ俺が貴様に処刑されにゃならんのだ!?この縄をほどけ!」 「構え!」 あたるは無視してコースケに命令を下す。コースケはエアガンをメガネにむけた。 「こんな事しとる場合か!さっさと助けにいくぞ!」 メガネは弁解するかのように言った。足をばたばたさせ、奇声をあげ、はっきりって近所迷惑である。するとあたるはずかずかと寄ってきて胸ぐらをつかんだ。 「きさまこんなところでなにをしてんだ!ラムはどうなっても良いのか!!」 あたるはメガネの縄をほどき、責任をなすりつけた。 「このやろ〜、全てが終わったらラム親衛隊最高幹部会の名の下に成敗してくれる!」 「ごちゃごちゃいっとらんで、面堂のところに行くぞ!」 あたる・コースケは聞いちゃいなかった。既に先方五十メートルと言ったところにいた。 「・・・」 面堂邸 第4門警備室 「さて、どうするか・・・」 三人は口をそろえて言った。後ろには口をハンカチでふさがれ、縄で体と手を縛られた警備員がいた。 「侵入しかないな?」 メガネは提案した。面堂に電話して、説得するという方法を思いつかなかったらしい。 「ああ、そうだな。前、五人でここに侵入したことあるんだろ?(死闘!あたる対面堂軍団!!より)」 コースケも同意する。しかしあたるは 「いや、無理だ。面堂家のセキュリティシステムは何倍も良くなっている。事実、俺が確認した」 と、言った。 「いつ確認したんだよ」 「んなもん作者に聞け!」 「作者って・・・だれだよ?」 「俺が知るか。とにかく一人では無理だ。ありゃあ、二十人ぐらい必要だな」 「だが、どうやって二十人も集めるんだよ?」 コースケの言うとおりだった。メガネもうなずく。 「いるではないか・・・」 あたるは余裕の笑みを浮かべる。 「だ、誰だよ・・・」 「元友引高校二年四組のメンバーだ!」 「あっ・・・」 二人はそうかといったような声を出した。 そして三人は動き出した。 ー続ー