傍にいる。 〜前編〜
「あーもうダーリン!遅刻〜遅刻!」
「わかっとるわい!」
「ほらっ急ぐっちゃ!」
いつもと変わらぬ同じ日常。
「それじゃお母様いってきますっちゃ。」
「気をつけて行ってらっしゃい。」
「ほらーダーリン早く早く〜」
家を駆け出す。急がないと遅刻である。
あたるが自分のほぼ真上にいるラムに向かって言う。
がさこそ あたるがかばんの中をさぐる。
あたるの足が止まる。
それにつられてラムの動きも止まる。
「いかん忘れた!」
「何をだっちゃ?」
「弁当!温泉マークには頭痛って言っといてくれ!」
「分かったっちゃ!」
あたるが駆け出していく。
―きーんこーん―
ざわざわしている教室内。
「おや、ラムさん諸星の姿が見えませんが
「ダーリンならお弁当取りに帰ったっちゃ。」
「そのままガールハントしてたりしてね。」
意地悪く言うしのぶ。
それに輪になって入るメガネ。
「今日の体育はプールですからね。」
「えー・・・つかぬ事をお聞きしますがラムさん。」
「なんだっちや?」
「今日の体育は・・・」
「もちろん出るっちゃよ。」
「「ぃやった〜〜」」
そこで叫びだすラム親衛隊+面堂。
「全くもうっ」
「ダーリン遅いなぁ〜」
「体育一時間目だからもうそろそろ来るはずよね。」
「うーん・・・」
どたどたどたどたっ 階段から聞こえるすごい音。
ばんっ ドアが開く。
そこにいたのは温泉マーク。
「あ、先生おはようございますっちゃ!」
「ラム君!!!!」
「どうしたっちゃ?先生顔色悪いっちゃよ。」
「・・・ラム君、落ち着いて聞きなさい。」
「なんだっちゃ?」
温泉がラムの両肩に手を置く。
しーん・・・・
ラムが窓から飛び出していく。
面堂がトランシーバーを取り出す。
教室からメガネ達、面堂、しのぶ、温泉が出て行く。
「なにいっ!諸星が事故!?」
「そのようですね。」
保健室からサクラの声。
そこにいたテンも声をあげる。
「本当ですか校長?」
「はい。子供を助けようとして・・・」
「でも、あのアホの生命力じゃ大丈夫やろ。」
「それが普通の人間だと絶対に即死してないとおかしい事故なんですね。
15tトラックに轢かれた上、そのトラックに積んであった一本15kg
もある鉄パイプ5本以上の下敷きになったんですからね。」
「・・・生きてる方が化けもんやな・・・。」
「確かに・・・。」
「しかしあの諸星君でも今回は・・・。」
「わっ、わい弁天達呼んでくる!」
テンが保健室から飛び出す。
どんっ チェリーのどアップ。
ばこーんっ サクラがチェリーを殴る。
チェリーとサクラが保健室から出て行く。
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ラムが病院の病棟に飛んで突っ込む。
そこにいたのはあたるの母。
母の目には涙。ラムも何時の間にか涙目である。
そこに駆け出してきたしのぶ、面堂、メガネ達・・・。
窓の外には弁天。おユキ。
沈黙が生まれる。
涙声でラムが言う。
―ぱーんー・・・・
「・・・だらしないわよラム。」
「・・・しのぶ。」
ラムの左頬を引っ叩いたのはしのぶ。
「あんたはこれでもあたる君の妻なんでしょ!?」
こくん ラムが頷いて涙をぬぐう。
・・・・しーん・・・・。
あたるの母が目をハンカチで拭きながら言う。
廊下からの声。一斉に振り返る。
そこに居たのはすらっとした女の人。
女の人が深く頭を下げる。その女の人の後ろには4歳ぐらいの小さな女の子。
たっ 女の子が母親の所からラムの方に駆け寄る。
女の子が花を差し出す。タンポポだ。
・・・・・・。
ラムがその子からタンポポを受け取る。
淡い色の花びら。
周囲は温かく見守る。
*―数時間後― *
さっきの女の子はラムにもたれて寝ている。
ラムはぼんやりとあたるの事を考える。
しのぶ、面堂、メガネ達、弁天、おユキ、女の子の母親、あたるの母、後で来た、あたるの父、ラムの両親、因幡、竜之介、ラン、レイ、校長、テン、
こたつ猫達は長いすに座っている。
―ぱっ― 手術室の電気が切れる。
ウィーン 手術室の扉が開く。
手術室から酸素呼吸器をつけられて台にのって眠っているあたるが運ばれる。
医者らしき人物が出てくる。
「先生!ダーリンは!?」
「ラム・・・落ち着きなさい。」
冷静におユキがつぶやく。
「われわれも何とか手を尽くしたのですが、後は本人次第です。」
「先生、息子は息子は大丈夫なのでしょうか?」
「・・・今は昏睡状態に陥っており、無理やり起こすことは出来ません。」
「本人次第・・・か。」
「・・・誠に言いにくいのですが・・・あと1ヶ月以内に彼が起きなければ・・・」
「起きなかったらどうなるっちゃ!?」
しーん・・・・・。