傍にいる  *―後編―* 
 
 
  病室にいるラム。その横で眠りつづけているあたる。
 あたるの体からは酸素呼吸器や生命維持装置が繋げられている。
  脈拍、心拍、呼吸は正常。しかし目覚めるそぶりはない。
   そっとラムがあたるの前髪を撫でる。
 
 
 
 あの日―・・・
 
  病棟からラムの父親と母親が出て行く。
 
 
    ・・・・しかし、結果は効果がなかった。
よほど打ち所が悪かったらしい。
 
   それからラムは毎日あたるの元に通いつづけている。
 体に毒だからって皆ラムの事を心配しているがラムは一切耳を貸そうとしなかった。
 
 
 
 
 
  とある喫茶店でつぶやくサクラ。
  心配そうに尋ねるサクラの婚約者つばめ。
   
 
これまた違う喫茶店。
  しのぶが俯く。
   こちら某牛丼屋。ラム親衛隊の面々だ。
   チビは泣きそうな顔でメガネを見る。
メガネらしくないセリフに面々は振り返る。
どてっ  メガネ以外のメンバーがこける。
 
 
 
 
 
 
 
―ぴっぴっぴっぴっぴ―
あたるの心拍と共に動く。
 
ラムはぼーっといつものようにその行動を見つめる。
 
がらららっ パタン
   看護婦が部屋から出て行く。
 
 
 
   あたるからの返事はない。
 聞こえるのはモニターの電子音と、病室の前を時折通る人の足音のみ。
ぎゅっ  ラムがあたるの手を握る。 
  この手が今、握り返されることは決してない。
ぐしっ ラムが慌てて右手で目を擦る。
いろんなことが浮かんできて、いろいろ考えて・・・涙を誘う。
 
 
 
 
 
 
  その日から6日後・・・いやあたるの事故から・・一ヶ月の一日前
     
ちゃき  面堂が刀を取り出す。
  がちゃっ 了子が終太朗の部屋から出て行く。
しゅっ ごとん  面堂が刀でワラで作られた人間と実物大の人形を切った。
 
 
 
 
 
がらららっ 病棟の扉が開く。
そこに立っていたのは、しのぶやサクラやラム親衛隊の面々。
しーん・・・・。
し〜ん また沈黙が訪れる・・・。
  サクラが沈黙を破る。
こくっ  校長の隣に座っているコタツネコが頷いた。
               
 
 
 
 
がららららっ 皆が出て行く。
 
ぎゅっ ラムがあたるの手を握る。 
ぽたっ  ラムの涙が床に落ちる。
 ぐいっ 涙をぬぐう。
ぽたっ あたるの手がラムの涙で濡れる。
 ラムの顔は涙でぐしゃぐしゃである。
 
  
―ぴくっ―
 
 
  はっ ラムが慌ててあたるを覗き込む。
 
―ぴくっ―
 
 ラムがあたるの手を握り返す。
 
そ〜・・・ ゆっくりあたるの目が開く。
あたるの目がゆっくりとラムの方に動く。
 
 
 
 
あたるが自分の顔を覗き込んでいるラムの瞳に手を当てて涙を軽く拭う。
 
   
お互い見つめあったまま沈黙が続く。
 
 
 
 
*―数週間後―*
 
 
  はしゃいでるラム。
 
多分前の笑顔より輝いている事だろう。
うぃーん ラムとあたるが病院から出る。
 
 
  あたるが駆け出す。
 
 
あたるがしのぶやサクラや龍之介のところへ走り飛びつく・・・。
 
ばきっ べしっ びしっ
 あたるがしのぶに抱きつく。
ばりばりばり〜〜〜〜!!!! 
 
病院の土手ではタンポポの綿毛がその光景を見守っているかのように風に揺られて飛んでいた。
                                   
                                                             
                                                               ―fin―