「なにっ、お前もか?」 「エッ、ダーリンも?」 偶然にもあたるとラムの中学時代の同窓会が同じ日に行われることになった。 ちなみに、あたるはしのぶ、それに4人組と一緒の中学であるし、 ラムも弁天、お雪、ランと一緒の中学である。 しかも、両者とも、今名前が挙がったメンバーと3年間それぞれクラスが同じだった。 いわゆる、腐れ縁というやつである。 2人とも当日になって何を着ていこうか迷ったが、 結局ラムはいつもの服で、あたるはブレザーで行くことにした。 ラムは会場が遠いこともあって、あたるより先に出発することになった。 「じゃあ、ウチ、そろそろ行って来るっちゃ。明日の朝には帰るっちゃ。 でもダーリン、昔の友達と旧交を温めるのはいいけど、 ウチがいないことをいいことに、会場に来た女の子にチョッカイ出したら・・・ 許さないっちゃよー」 あたるの鼻を指差し、名残惜しそうに言うラムに対し、あたるはそれを払いのけて、 「あーっ、わかった、わかった。わかったからさっさと行って来い。 ところでお前、ランちゃんと一緒に行くんだろ?待ち合わせに遅れるんじゃないのか?」 と言って、ラムをせきたてた。すると、時計を見たラムが、 「いっけなーい!もうこんな時間だっちゃ。待ち合わせに遅れるっちゃ」 と叫ぶと、あたるが、 「ほら見たことか!ほら、とにかく急げ!」 と、早く出て行けとでも言いたげに言った。ラムはUFOのある空へ飛んでいった。 ラムが急いでUFOでランを迎えに行くと、かんかんに怒ったランがお待ちかねだった。 「くぉらぁーっ、ラムーっ!おんどりゃあ、いったい今まで何さらしとったんじゃー!! ワシを10分も待たすとは、どーゆー了見じゃい!」 ランは毎度おなじみの河内弁で、ラムを散々怒鳴りつけた。 「ご、ごめんちゃ・・・ランちゃん。これには諸々の事情が・・・」 とにかく怒ったランの怖い顔をこれ以上見たくないので、ラムは一応謝った。 しかし、頭の中では、たかが10分遅れただけなのに・・・ひどいっちゃ、 と思っていた。 何はともあれ、2人はラムのUFOで同窓会会場へと向かった。 出発して10分後、UFOの中でランが突然、 「ラームちゃん!あたし、クッキーとクレープをおやつに作ってきたんだけど、 食べない?とーってもおいしいのよー」 と甘えたような口調で言った。 その姿は、10分前の彼女とはまるで別人だった。 ラムは突然の彼女の変化にいつもの事ながら驚いた。 さっきの勢いはどこにいったっちゃ、いったい10分間に何があったっちゃ、 ラムはそう思った。 今は特にお腹は空いていない。食べたくないとラムは思っていたので、 「い、いいっちゃ!今ウチダイエット中だから・・・」 と断ったが、ランは、 「えーっ、冷たいわねぇ・・・せっかく作ってきたのに・・・一緒に太りましょうよぉ!」 と答えた。 ラムはこれ以上断ったら後が怖いと思い、仕方なく一口クレープを食べた。 お腹が空いていないから、味などよく分からなかった。当然食は進まない。 手と口の動きが鈍いラムの様子を見てランが、 「やーねェ、毒なんか入ってないわよぉ!遠慮しないでどんどん食べて」 そうニッコリと笑いながら言うので、ラムは愛想笑いを浮かべながら食べた。 ランがどうしてクッキーとクレープを作って来たのか、今でも不明だ。 いや、たとえ意味があったとしても、どうしてこんなときに食べさせるよう仕向けるのかが分からない。 そうこうしていると、いつの間にか会場に到着していた。 一方そのころ、あたるも同窓会会場に向かっていた。 あたるがニヤけた顔で、 「うははははは・・・ラムのアホが。地球におらんというのに、 どうやってオレがほかの女に手を出したと証明できるんじゃ。 まさに、『鬼の居ぬ間に洗濯』じゃな。今日は思いっきり羽が伸ばせるわい。 あやちゃんやミキちゃんやリカちゃんとあんなことやこんなことを、うひひひひ・・・」 と、しまりのない顔でひとり言っていると、 「何ひとりでぶつぶつ言ってんのよ。気持ち悪いわね・・・」 突如しのぶが現れ、そう言い放った。あたるは慌てた様子で、 「よ、よーう、しのぶー、久しぶりーィ」 と、しのぶに向かって右手を高く上げながら言った。 「昨日も会ったでしょ!相変わらず白々しいわね」 しのぶは冷たくあしらった。 あたるはさっさと先に行こうとする彼女の前にに立ちはだかって、 「ふっ、しのぶ。今日着ているその服、とても素敵だよ。世界一、いや、宇宙一の美しさだ。 その美しさの前じゃ、この夜空に輝く星たちもみんな嫉妬してしまうだろう・・・」 と歯の浮くようなこと言って、しのぶの機嫌を取ろうとした。 そのときしのぶの着ていた服は、ピンクのツーピースで、化粧も少ししていたせいか、お世辞でなくなかなか素敵だ。 「今日は曇り。星なんか1つも見えないわ。いいわよ、社交辞令なんて! 早く行かないと開始時間に遅れるわよ!」 空を指差し、あくまで冷たく接する彼女に、あたるは両手のひらを前に差し出し、 「まあまあ、ここで逢ったのも何かの縁じゃ。一緒に行こーよ、しのぶ」 と言ってしのぶの肩に右腕を回そうとしたが、 「馴れ馴れしくしないでよっ!」 と、右手の甲を思いきりつねられた。あたるは悲鳴を上げた。 一方こちらはラムの同窓会会場。ラムとランが会場に続いている廊下を歩いていると、弁天の後ろ姿が見えたので、ラムが、 「弁天!」 と声をかけると、弁天が振り返って、 「おーっ、ラム、ラン、久しぶり。・・・といっても1週間前に会ったばっかりだったっけ」 2人にそう言うと、2人のほうに向かってきて、並んで歩き出した。 「今回の同窓会、結構人来るらしいぜ。まったく、よっぽどみんな暇なんだなー。そして、おめえらもな」 弁天が再び話し始めると、ランが、 「あーら、そういう弁天だって、暇だからここに来たんでしょ?」 と言うと、弁天は、 「まーな。それに、ここに来る連中に会うのも卒業式以来2年ぶりだもんな。 結構いいヤツらが多かったし、ちょっと懐かしくなって、顔が見たくなったんだよ」 と返事した。ラムが、 「そういえば今回の同窓会の幹事、お雪ちゃんがやるんだって?」 と弁天に尋ねると、弁天は、 「ああ。ほら、あいつクラス委員で生徒会長だっただろ? 『適任者はお前しかいない』って、アタイと友達何人かであいつに頼み込んだんだ。 本当はアタイがやってもよかったんだけど、やっぱ面倒くせえからなあ。 たぶんもう会場にいるはずだぜ。『一緒に行かないか?』って誘ったら、 『いろいろ準備があるから・・・』って先に行っちまったから。 それにしても、あいつ相当張り切ってやがるな。こんな豪勢な会場手配するなんて」 と、事の次第を2人に細かく伝えた。しばらくして、3人は入り口の前に到着した。 「さあ、入ろうぜ。みんながお待ちかねだ」 弁天がそう言うと、3人はドアから中へ入った。 一方こちらはあたるの同窓会会場。あたるとしのぶが並んで歩いていると、 「よう、お前ら!久しぶりだな。元気にしてたか?」 と、1人の男が声をかけてきた。 「大輔・・・」 「松井君・・・」 意外な人物の登場に、2人はそれ以上言葉が出なかった。この男の名前は松井大輔。 友引高校の生徒だったが、隣の仏滅女学院の生徒を妊娠させたことが原因で退学処分となっていた(コミックス「この子はだあれ?」参照)。 「何でお前がここに・・・」 あたるがようやく口を開くと、松井が眉をしかめながら、 「何だよ、2人とも!人を厄介者扱いしやがって。オレだってこの中学のお前らのクラスメートじゃないか。 それとも、高校を中退したヤツは、同窓会に参加する権利はないって言いたいのか?」 と言うと、 「い、いや、そういう意味ではなくてだなー、お前があの事件以来、 例の女の子とどっか遠くににずらかったって聞いとったから、 てっきり来ないんじゃないかと思っていたのだ」 あたるは慌てて弁明した。松井は、 「あははははは!!何だよ、それ?それは噂だ、ガセネタだ!今でも友引町に住んでいるよ。 今な、オレ、定時制の高校に通ってるんだ。2人の家族のためにも、高校ちゃんと卒業して、もっといい仕事に就きたいもんな」 2人?あたるとしのぶは彼のこの一言にぴくっと反応した。そして、 「エッ・・・2人って・・・あなた・・・まさか・・・彼女にあの時の子供を?」 しのぶが驚いた様子でたずねると、 「ああ。産んでもらったよ。身勝手な話だけど、最初はオレは反対したんだ。 あいつの両親も反対した。金もないのに育てられるわけないんだから、絶対おろせって言ったんだ。 でもあいつは、オレたち「3人」にどんなに責められても、絶対産みたいって言って譲らなかった。 しかもあいつ、どこから持ってきたのか、中絶が行われる様子を撮ったビデオを持ってきてオレとあいつの両親にに見せたんだ。 そのビデオの内容が何ともむごたらしくて・・・見た後はとてもおろせなんて言えなかった。 それと同時に、あいつが本気だってこともよくわかった。 だから最後はオレも覚悟を決めたんだ。彼女の両親も協力してくれたよ」 松井がそう2人に話すと、子供の写真を差し出した。 「まあ、かわいい・・・この子、女の子でしょ?あなたに似てるもの」 写真を見てしのぶがそう言うと、 「そうなんだ。目の辺りなんか特に似てるだろ?やっぱり女の子は父親に似るもんだなー」 と、松井は自慢げに答えた。するとあたるが、 「本当だ。こりゃ将来美人になるぞ。惜しいなー、オレがあと10歳若かったら将来デートしてあげたのに・・・」 と写真を食い入るように見ながら言うので、 「いや、あたる。それだけは、それだけはどうか勘弁してくれ!」 と慌てて土下座のまねをして答えた。冗談だよとあたるが言うと、 「冗談は顔だけにしろよな」 と松井が返したので、3人は一斉に笑った。 「でもお前、奥さんと娘さんほっぱらかして、こんなところに来ていいのか?」 「大丈夫だよ。それに、幹事が参加しない同窓会なんて、聞いたことないぜ」 これまた意外な事実に、あたるとしのぶはまた驚いた。企画したのも彼だった。 再びラムサイド。会場に入ると、お雪が現れた。 「あら、あなたたち、いらっしゃい。僭越ながら今回は私が幹事をやらせていただくことになったわ。 開始までまだ時間があるから、それまでゆっくりくつろいでいてね」 そう言うと、彼女はどこかに去っていった。 そこで、ラム、ラン、弁天の3人は、中学時代の友人を探して会場内を一緒に歩いた。 友人と適当にしゃべり、一通り会場内を歩いたところで、ランが、 「そういえば、あいつ、来るんかなー?」 と言うと、 「あいつって、誰だっちゃ?」 とラムが言うので、ランが、 「あいつや、あいつ!ほら、担任のカニ道楽のことや。ワシらの事何かと目の敵にしとった・・・覚えとるやろ?」 と答えると、ラムはああっと言った。どうやら思い出したようだ。 弁天がいやそうな顔をしながら、 「来て欲しくねーよなー。せっかくの楽しいパーティなのに、あいつのツラ拝みながらじゃ、おちおちくつろぐこともできねえ」 とぼやくと、ラムも、 「だっちゃねー。来て欲しくないっちゃねー。ウチ、できれば一生会わなければいいのにって思ってるっちゃ」 と同調した。ランは、 「あたしたちの気持ち、お雪ちゃんがちゃんと理解してくれていれば、カニ道楽を呼んだりなんかしないと思うんだけど・・・」 と、お雪に対して過大な期待を寄せた。 3人がこんな会話をしていると、突如会場が暗くなった。 すると、突然スポットライトが光り、その中にお雪が現れた。 ずいぶん凝った演出だなとラム、ラン、弁天の3人は思った。 「皆様、大変長らくお待たせいたしました。ただいまより、惑星中学3年P組の第1回同窓会を開始いたします。 私、今回の会の幹事を務めさせていただきます、お雪です。 いろいろと至らぬこともございますでしょうが、どうか最後までよろしくお願いいたします。 なお、担任のカニ道楽先生は・・・」 来るな来るな・・・ラム、ラン、弁天は祈るような思いでお雪の冒頭の挨拶を聞いていた。 「・・・先ほど連絡がございまして、お乗りになられていた宇宙船が交通事故に遭われたそうです」 こうお雪が言った瞬間、声こそ出さなかったものの、3人はやったと思った。 これで楽しい同窓会が・・・しかし、ここで話は終わらなかった。 「ですが、先生は、少し遅れるそうですが、参加については差し支えないそうです。 必ず来る。たとえ天と地が逆転するようなことになっても絶対に来るとおっしゃっておられました。 皆さん、どうかご安心ください」 この言葉で、3人の淡い期待は打ち砕かれた。3人ともがくっとした。 そして、このことがラム、ラン、そして弁天のその後の運命を決定づけてしまった。 弁天は、彼女を幹事に指名したことをとても後悔した。 開会の挨拶が終わった後、弁天は真っ先にお雪のところに行き、 「バッキャロー!!お雪、てめえ何でカニ道楽なんか呼ぶんだよ!?」 とものすごい剣幕で詰め寄った。しかしお雪は、 「だって同窓会でしょう・・・?私たちの担任として大変お世話になった先生を呼ぶのは当然じゃない」 と言って取り合わなかった。 ラムがテーブルの料理をつつきながら、 「あーあ、結局カニ道楽のヤツ、来るんだっちゃね。せっかくの楽しい同窓会が台無しだっちゃ!」 と言うと、ランもジュースを飲みながら、 「ほーんと、がっかりだわ。あのクラブ8式折檻型サイボーグ・・・考えただけでも寒気がしちゃう!」 と言うので、弁天も続けて、 「まったくおめえらの言うとおりだぜ!アタイらには、あいつとのいい思い出なんて、これっぽっちもねぇからなあ」 とぼやいた。 3人がこれほどまでにカニ道楽のことを嫌うのには、それなりのワケがあった。 ランが言ったとおり、担任はカニの形をしたサイボーグである。性別は男。 折檻型と言う呼ばれ方のとおり、彼は折檻が得意なのである。 話は2年前にさかのぼる。 ラムと弁天の悪童ぶりは、小学校時代にも増して激しくなっていた。 一方ランも、そんな2人に引きずられるように、小学校時代と同様(本人いわく嫌々)悪事を働いていた。 しかしお雪は、これまた小学校時代と同様、周囲の環境に惑わされることなく、 自分が今何をするのが一番よいのかを常に判断できる、したたかさを持っていた。 もっとも、普段は周りの人(例えば、あたる)からよく、しとやかだと言われるが。まあ外れてはいない。 そんな4人組の3年生のときの担任が、カニ道楽だった。 4人の性格は上で述べたとおりであったから、当然お雪は彼に褒められ、優等生とたたえられたが、 後の3人は、彼によって問題児、劣等生のレッテルを貼られた。 当然、3人は折檻の対象となったが、そのやり方がすさまじい。 彼女たちが今でも忘れられない折檻についてのこんなエピソードがある。 ある日のことだった。 午後からの授業が、たまたまラムと弁天の嫌いな授業で、天気もよかったことから、2人はエスケープしようとした。 もちろんランも「強制連行」した。 しかし程なくして彼に見つかり、彼は、 「こおらぁーっ!!また君たちかにーっ!!エスケープはいかんがにーー!!」 と叫びながら、カニ歩きで3人を追ってきた。 3人で必死に逃げている最中に弁天が、 「チッ、しつこいヤローだぜ!くらえぇっ!!」 と叫び、バズーカを彼に向かって乱射したが、彼はカニ歩きで軽快にかわし、 「必殺・・・カニタマーっ!!」 と叫んで、ボール状の弾丸で反撃した。弾は3人に見事に命中した。 3人がその場に倒れたところで、 「続いて必殺カニミソーっ!!」 で追い討ちをかけた。ネバネバしていて3人は動けない。さらに、 「とどめは拘束カニシューマイだがにっ!!」 で、3人をほかほかの巨大シューマイにしてしまった。 これで拘束されると、シューマイが冷めるまで身動きが取れない。 「ちくしょーっ!!!」 「おぼえてるっちゃっ!!」 弁天とラムはそれぞれこう言うだけで精一杯だった。横ではランが泣いていた。 3人はそのまま放課後まで、さらし者になった。 その様子をお雪が横目で冷たく眺めていたのは、言うまでもない。 この日の折檻は、いつにも増してひどかったので、ラムと弁天の怒りもいつも以上だった。 ついにラムたちはある作戦を実行することに決めた。 ランは、 「ねぇ、やめましょうよぉ。先生にそんなことしたら、怒られるぐらいじゃすまないわよぉ・・・」 と言ってぐずったが、弁天は、 「うるせぇっ!あそこまでメチャクチャしばかれて黙ってられっかよ!!」 と完全に頭に血が上っていて、後のことなどまったく考えていなかった。 「後は時間をセットするだけだっちゃ・・・」 ラムはただそう言った。 おわかりいただけたであろうか?なんと、爆弾をカニ道楽の身体に仕掛けようというのである。 恐ろしい中学生である。日本で同じようなことをしたら、少年院ではなく、少年刑務所に行くのは確実であろう。 1番身が軽く、今回の作戦の提案者でもあるラムが爆弾を取り付ける役を務めた。 背中に乗り移ると、なにやっとるがにとカニ道楽が尋ねるので、 「背中にごみがついてるっちゃよ。ウチが取ってあげるっちゃ」 と言って、爆弾を背中に取り付けた。そして時限装置のボタンを押した。そして、 「先生、取れたっちゃよ」 と言って、カニ道楽が、 「すまんに」 と言うのを聞いたあと、その場をそそくさと去った。 ラムは弁天たちのところに戻り、 「2分後に爆発するっちゃ」 言うと、弁天は、 「オーシ、早速エスケープしよーゼ!」 と言った。 その声と同時に、3人は教室とは反対の、校舎の出入り口のほうへ走った。 しかし、それに気づいたカニ道楽が、 「君たち、もうすぐ授業だがに。そっちは教室じゃないがに!待たんがに!!」 と叫んで3人を追いかけてきた。 しかし、カニ道楽の身体には爆弾が仕掛けられている。 捕まれば自分たちまで爆発の巻き添えを食ってしまう! 「つ、ついてくるなっ!!」 と弁天が叫んでも、彼はいつも同様、しつこくついてくる。 バズーカを使おうと考えたがやめた。誘爆の恐れがあるからだ。 「も、もうすぐ爆発するっちゃ!それまで2人とも、何とか逃げ切るっちゃっ!!」 とラムが言うと、 「あーん、だからあたしイヤだって言ったのにー!!」 とランが、何を今さらと突っ込みたくなるような泣き言を言った。 3人の必死の逃亡も空しく、 「必殺・・・カニばさみっ!!」 の声と同時に、3人は捕獲されてしまった。そしてタイムリミット。 ついに爆発・・・しなかった。3人は結局、昨日と同じオシオキを受けた。 「おい、何で爆発しねえんだよ!?2分経っただろ?」 と、弁天がラムに尋ねると、 「お、おかしいっちゃねー。不発弾かなぁ?」 と答えた。 そこにお雪が通りかかった。彼女がカニ道楽に、 「先生、何かあったんですの・・・?」 と尋ねると、彼は、 「いつものことだがに。いいから早く教室に入るがに」 と答えた。 お雪はカニ道楽の背中に爆弾が付いているのを見て、ラムたちに向かって、 「あの爆弾、あなたたちの仕業ね?でもあれ、2年後にセットされていたわよ。 そんなに先の未来にセットしてどうするつもり?」 と言った。それを聞いて、3人は「へっ?」と思った。 そしてあきれたような口調で弁天が、 「おまーなー。分と年の違いもわからねーのかよ?」 と言うと、お雪もくすくす笑いながら、 「うふふ、ラムったらうっかり者ねェ」 と言った。ラムは恥ずかしそうに顔を赤くした。 3人(正確には2人か)の計画はこれでおじゃんになった。 3人は回想から現実に戻ると、 弁天「結局卒業するまで・・・」 ラン「オシオキされっぱなし・・・」 ラム「だったっちゃねー・・・」 と、ローテーショントークした後、深くため息を吐いた。 こんな過去があれば、たとえ自業自得といえども、その人を嫌いになって当たり前だろう。 3人がそんな風に話しをしてると、また会場が暗くなり、お雪の声が聞こえた。 「皆さん、大変長らくお待たせいたしました。カニ道楽先生がたった今ご到着なさいました。 皆さん、どうか盛大な拍手でお出迎えください・・・」 盛り上がる会場の空気とは裏腹に、3人の気持ちは盛り下がっていた。 To be continued......