BD2 武装機動隊「青龍組」 ハイゼル要塞 第五号客人用寝室 「しかしラムさんはどこへ行ったんだ?」 メガネは部屋にあるベットに座りながら、ぼやいた。 「そう言えばそうだな。あのバスの中からどこ行ったんだ?」 面堂はテーブルの上でコーヒーをカップにつぐと軽く飲んだ。面堂はメガネのとなりにあるベットに座ると、もう片手に あるコーヒーをメガネに渡した。 部屋割りは五号室があたるとメガネと面堂。六号室にはパーマとチビとカクガリ、七号室はサクラとしのぶである。 七号室は特別にパスワード製の防犯扉と多機能の監視カメラが設置させられていた。無論あたる対策である。しかし当のあたるは それどころではない。消えたラムのことで頭がいっぱいなのだ。どこにいるのか、無事なのか、それがあたるの頭の中に いっぱいになった。そう考えるうちに一つのことが頭に浮かんだ。 「もしかしたら、ラムはここにいるんじゃないか?」 「どういう事だ?」 メガネはコーヒーを飲み干して、流しに置こうとしていた。 「俺たちを拉致した理由は、不審なバスに乗っていたからではなく、最初からラムが目的だったんじゃないかと言ってるんだ」 「なっ・・・」 あたるは見ていたテレビを消すと体ごとメガネ達に向けた。 「そうだとして、ラムさんをさらった理由はなんだ!?」 「ここは異次元の世界だぞ。どれほどの科学力があるかわからん。ラムの電撃を利用しているのかもしれない。 俺たちをこうしてもてあましているのは、ラムの注意を逸らすためだろう」 「・・・」 (無論、仮説としてだが・・・) そのときしゃーっと言う音と共に五号室の部屋が開いた。同盟軍兵士のようである。あたる達はその姿を確認すると警戒心をとがらせた。 「私は同盟軍ハイゼル要塞方面軍第二艦隊通信士のゼルクス准尉です」 「な、何のようだ?」 警戒心のこもった声だ。ゼルクスはそれに困ったような表情をして話を続けた。ゼルクスは大分若い。十六歳と言ったところか。 「い、いや、リーヤン元帥がお呼びです。帝国側に捕虜が二人ほどいて確認をしたんですが、兵員名簿には無かったため、 もしかしたらあなた方の仲間ではないかと・・・」 「なに!?」 あたる達はゼルクスをはねとばすとそのままリーヤンの所に向かった。 「いたたたた・・・、乱暴な方々だ」 ゼルクスはぶつけた頭を撫でて、今度は六号室、七号室に知らせに言った。 ハイゼル要塞方面軍総司令長官室 「リーヤン元帥!!」 あたるは最初にリーヤンの元に飛び込んだ。部屋に入るなり、リーヤンの反応を見る間もなく、胸ぐらをつかんだ。 「帝国側の捕虜ってラムじゃないんですか!?どうなんですか!?」 胸ぐらを容赦なく大きく振り、答えようとするリーヤンに気づきもせず、降り続けた。 「ま、待ってくれ・・・・。話すから・・・、話してくれ・・・」 部屋に入ってきたメガネ他三名は暴走するあたるを見るとすかさずかけより、あたるを引っ張った。 「落ち着け!あたる!」 あたるは我を忘れていた自分に気付くと手をそっと手を離した。 「す、すいません・・・」 あたるは少し小さかった。リーヤンは乱れた胸元を整えると部屋の机に座った。 そして机のどこかをぽんと押すと、数個のスイッチが浮き出てきた。 そのウチの黄色い物を押すと、リーヤンの背後にスクリーンが降りてきた。 「まずはこれを見てくれ」 その言葉と同時に部屋の明かりが消え、スクリーンが輝き始めた。それは恐らく同盟側の艦隊の中から撮影された物であろう。 大規模な戦闘が繰り広げられていた。画面上で爆発が見える。あたる達は最初に見た映像で驚いた。 「宇宙戦闘なんですか!?」 「言ってなかったっけ?」 紛れもなく宇宙空間での戦闘である。あたる達は最初、古き時代の戦争と思っていた。つまり空の撃墜劇や海戦をイメージしていたのである。 「聞いてません!」 「元帥。もしかしたら此処の要塞って・・・」 「なんだ?」 「この星全部ですか?」 「そうだよ」 全く間抜けな返答である。当然と言っているかのようなその答え方に異次元の科学力のすごさを思い知らされた。リーヤンは驚きで 言葉が出ない一同を見て、焦った。科学力の違いで、もしかしたら話の意図がつながらないかもしれない。そんな不安がよぎりながら 話を続けた。一時停止していた画面を再生した。 画面の中で敵の司令部がズームアップされた。この世界の技術は相当の物のようだ。ズームアップされても画面は鮮明だ。 その司令部に誰かが掴まったような動きが見えた。 「あれは!?」 あたるが指さしたその先にラムの姿があった。電撃を放って縛り上げているワイヤーのような物を引きちぎっている様子だ。 しかしちぎれない。あたるはその姿を少し嫌そうな目で見ていた。そして画面は消えた。 「・・・」 「君たちの仲間かね?」 「ええ・・・。あれは俺の・・・」 あたるは少し言葉を詰まらせた。 「俺の?」 「いえ、何でもありません」 その三日後、ハイゼル要塞領域に帝国軍艦隊22000隻が侵入を開始した。 「本部より第一艦隊、第三艦隊へ。要塞領域に帝国軍に22000隻が侵入。直ちに出撃せよ。健闘を祈る」 要塞内全てにこの放送が流れた。 第五号客人室 「遂に来たか・・・」 メガネはありったけの武器を作り出し、皆に分けた。その製造方法は定かではない。 「それはいいんだが・・・、もうちょっとましな武器はできんのか?」 それは槍にカエルや蛇、ゴキブリなどの「げてもの」と言われる物が突き刺さっていた。確かに人によってはこれ以上強い武器はいない。 だが、相手は兵士である。そんな物効く人間など指で数えられる数であろう。 「なにをいうか!これ以上がどこにある!だいたい・・・」 「また始まった・・・」 あたるは耳をほじくりながら、呆れた目でメガネを見ていた。熱弁する姿はもう見飽きたのであろう。 「ほっとけ。そのうち言い疲れてたおれるさ・・・」 あたると面堂は背を向けてトイレに行った。しかし・・・。 「こらぁ!俺の話はまだ終わってないぞ!!おまえらな日頃の・・・、しかるに・・・、かくも言うなら・・・」 メガネは二人のエリをつかむと部屋に強引に引きずり込み、座布団に正座させた上で、長台詞が始まった。 (と、トイレいかしてくれっ・・・) (も、もれる・・・) 「はぁはぁはぁ・・・。解ったか?つまり・・・。こらぁ人のは聞く気あんのか!?」 そこには三時間トイレに行けなかったことで気絶した。 「ど、どうした!?誰に襲われた!?敵はどこだ!?」 あたるはわずかに気が付くと少し、ぴくぴくしていた。 「と、トイレ・・・。無念なり・・・」 そう言って再び気絶した。 医務室 「危ないところでした。いや〜発見が早くて良かったですよ」 「まさかちょっと目を離したときに襲われるとは・・・」 医療室である。メガネが敵に襲われたと勘違いし、あたるの残した「トイレ」の言葉に、まずはトイレに向かった。 そしてだれも居ないことを確認し、部屋に戻るとコーヒーを飲んだ。その後一時間テレビを見て、武器の制作に二時間、部屋に掃除に三十分、 そしてやっと医療室に連れて行ったのだ。 あたると面堂はは意識が回復し、医療班担当とメガネの会話をこっそり聞いていた。 (ちょっと目を離した隙だと・・・) (三時間半も目を離しとったんかっ・・・) あたるは木槌を取り出し、面堂は刀を10pほどにきながら、枕に隠れて歯を食いしばり、メガネをにらみつけた。 「お目覚めですか?」 ドアを開け、敬礼の後、入ってきたのはゼルクスだ。外の宇宙空間では激しい戦闘が繰り広げられているにも関わらずのんきなものだ。 ゼルクスは第二艦隊司令補佐なので、要塞待機である。 「何でしょうか?」 医者が代わりに返事をした。あたると面堂は上半身だけを起こすと、ゼルクスの返答を待った。 「いえ、待機と言っても帝国軍は一行に責めてこないし、寝ていたら、リーヤン元帥があなた方の世話をしろとの通信が入りましたので・・・」 「こりゃあ、どうも」 あたるは愛想良く返事した。 「一応要塞のおおまかなところを案内するつもりですが、宜しいでしょうか」 「ま、それもいいな」 面堂とあたるはさっと起きてゼルクスと肩を組んで、すたこらさっさと部屋をを後にした。 「お、おい待て!」 メガネも部屋を出ていこうとしたが、部屋を出た瞬間横に隠れていたあたると面堂に袋たたきにされた。 「死にませんか?」 ゼルクスがやばそうな顔をしてメガネを見ていた。 「殺されるよりましだ」 「殺したんじゃないんですか?」 「死んだんだ」 「・・・」 分けのわからん会話だ。三人はメガネを背に消えていった。床にはメガネが惨い格好で倒れている。 第五号客人室 「ぶは〜。疲れた・・・」 最初の一言を行ったのはあたるだ。それに続いてメガネ、面堂が続く。 「まさか全部回るのに半日もかかるとは・・・」 「でかすぎるんだよ、この要塞は・・・」 あたると面堂はベッドの上で大文字を描いて倒れていた。メガネは椅子に腰掛けて、背もたれに、もたれている。 「おやおや、屋敷がでかいだけの面堂らしからぬ台詞だな〜」 「いやいや、貧乏人にはこの気持ちはわからぬよ」 二人はベッドの上で構えた。メガネは椅子にもたれながら目頭をおさえた。見慣れぬものを見過ぎたせいか極端に、目が疲れたのだ。 「今頃ラムさんは何しているだろうか・・・。俺たちはこんな事をしている暇なんぞあるわけがないのに、何はしゃいでいるのだ。情けない・・・」 「・・・」 あたると面堂は、お互い武器を納め、ベッドの上に座った。ラムの事を忘れ、はしゃいでいた事に激しく後悔した。 翌日 「お目覚めですか?」 「昨日と同じ事言いやがって・・・」 あたるはぼさぼさの頭をかきながら、ベッドから起きあがった。 「今日は何のようだ?」 「はい、実はあなた方にもこの戦争に参加して貰おうと思って・・・」 「え?」 「なんでやねん?」 メガネが関西弁で答えた。驚いたときはこの男ほど豹変の激しいものはいない。 「実は他の兵士から抗議がありまして・・・。客人室に戦いもせずにぬくもっているなど腹立たしい。我々と同じ戦場に行かせろ、とのことです」 「まあ、確かに・・・。で、どこに配属なんだ?」 「え、良いんですか?」 ゼルクスは少し驚いたような顔をした。普通なら嫌がるものだが、こんなにあっさりとOKを貰うとは思わなかったのだろう。 「いいから早く教えろよ」 「あ、はい・・・」 ゼルクスはポケットから紙を取り出した。 「えっとー、第一艦隊武装機動隊です。組名は「青龍組」です」 「龍神組?」 あたるとパーマは寝間着から私服に着替えていた。パンツ一丁で部屋を忙しなく動き回っていた。 修学旅行で私服を持ってきていたため着る物にはこまらない。 「ええ、第一艦隊の武装機動隊の組名です。因みに第二艦隊は「白虎組」第三艦隊は「朱雀組」です。あと補欠的存在の「玄武組」があります」 「ほ〜、四神か〜」 メガネは感心した声を出して、腕を組んだ。 「四神?」 するとメガネはどこからともなく辞書を取りだした。そしてパラパラとページをめくっていき、それが終わると眼鏡を光らせて言った。 「『天の四方の方角を司る神。すなわち東は青龍、西は白虎、南は朱雀、北は玄武の称。四獸』広辞苑第五版参照」 「ったく、どこから出してんだ?この非現実主義者め」 「ふん!」 メガネはその場ですね、人差し指で地面に円を書くように動かした。どうやら幼児退行化現象、あるいは被虐待者になったようである。 あたるはそのメガネを見て呆れた。そんな事をよそにゼルクスはさらに付け加えた。 「しかし青龍組は武装機動隊の中でも精鋭揃いです。しかも練習は並の人間じゃついていけません。いまなら他の部署にも行けますけど・・・」 「白虎組とかでも良いのか?」 「いや、武装機動隊以外の場所です。ここに入れるなら青龍組意外は認めないとの意見も少なくありませんので・・・。他の部署は、 士官部、砲撃部、保安部、整備部、通信部などがあります。士官部は作戦や戦闘時の指令、砲撃部はそのまま砲撃担当、保安部は艦隊内での事件、事故の管理、 整備部はエンジンを初めとした機種の整備及び修理、通信部は首都星や他の鑑や艦隊との通信です」 「どれも向いてないな〜」 あたるは腕を組んで少し悩んだ。このような軍などでの訓練はおろか、基本知識さえ知っているはずがない。武装機動隊以外は無理のようである。 「仕方ない、武装機動隊で我慢してやるか・・・」 「それでは早速行ってみましょう」 「ま、待て朝飯ぐらい食わせろよ」 「あ、すいませんでした・・・」 ゼルクスは部屋を出ていこうとしていた身を翻して、顔を赤くした。 第一食堂 あたる達は要塞の食堂でカレーを食べていた。朝っぱらからカレーとはいい気なもんだ。 「へ〜、あなた達は地球の出身なんですか・・・」 「まあな。しかしただの地球じゃない。お前等から見たら異次元の地球だ」 「え、あなた方は異次元を渡る技術を持っているんですか?」 ゼルクスは少し前に体を乗り出して、声を大きくした。 「い〜や、たまにあるんだよ、こういう事が・・・。理由はわからんがな・・・」 「ふ〜ん・・・」 しばらく沈黙が続いたが、あたる達にとってここはまだに、三日程度しか滞在していない。まだまだ疑問は出てくる。 「しかし、ここもあれだな。軍とかにしては結構空気が張りつめてないな」 食堂では規律正しく食事を食べる姿もないし、固ッ苦しい話もない。トランプをしたり、腕相撲をしていたり、自分の彼女の写真を見ていたりと 階級に関係なく遊びほうけているかんじだ。 「リーヤン提督のせいですよ。一応英雄と呼ばれるだけあって戦闘時での指揮ぶりは驚くばかりだし、犠牲も少ないですが、性格がスチャラカしていて、 独身の時は部屋は汚いし、皿も洗わず、ゴミもすてないでと軍隊にいなかったら町をさまよう浮浪者だったでしょうね。 それでそのスチャラカな性格が兵士にも移っちゃったと言うわけです」 目の前で一緒に食事をしているゼルクスが答えた。 「結婚しているのか?」 メガネはカレーを食べるスプーンの手を止めて、驚いた声を出した。 「ええ、副官のフレリー・ハンツ准将です。記憶力がもの凄く良いんです。物忘れの激しいリーヤン提督には打ってつけの パートナーですよ」 「美人か?」 あたるらしい質問である。 「そりゃあもう。この要塞内ではアイドル的存在ですし、リーヤン提督には勿体ないと言う声もしばしば・・・」 「お前もそう思っているのか?」 「いや、僕はお似合いだと思いますよ。一緒に生活していて、そう思います」 「お前、その二人の子供か?」 「いや、僕は戦争孤児なんです。父は戦死しました。そして二年前、保護者として白羽の矢が立ったのがリーヤン提督です。 同盟軍隊は十五歳から採用しますから軍人になる前の一年間はリーヤン提督の世話をしていたわけですが、それがもう大変でした。 一年前、フレリーさんと結婚されて、大分楽になりましたね」 あたるは水を飲みながらふ〜んともへ〜ともつかぬ声を出した。 「そう言えば君はなぜファミリーネームが無いんだ?」 今まで黙って会話を聞いていた面堂が話題を変えた。 「何で知ってるんです?ファミリーネームがないことを・・・」 「最初に名乗ったとき、ファミリーネームを言わなかったじゃないか。初対面の時にはフルネームで答えるものだろう」 「ははは、頭が良いですね、面堂さんは・・・」 面堂は髪をチラッと触ってきざったらしい声で 「僕は育ちが良いのでね。ここにいる貧乏人のろくでなしとは次元が違うんだよ」 「やるか?」 あたるは木槌を取り出し、また面堂も刀を取り出した。最初に面堂が雄叫びと一緒に刀を振りおろした。あたるは上にジャンプし、わざわざ 面堂の頭を足蹴にすると面堂の背後に降り立った。そして面堂に木槌をぶつけようとすると、刀で振り払われ、木槌は周りにいた野次馬に直撃した。 無防備のあたるにとどめの一撃と言わんばかりに斬りかかると、あたるは得意芸である真剣白刃取りをして、そのまま硬直した。 その後面堂は刀を捨て、刀出しの次に得意な釣鐘割りを応用した怪力で、テーブルを次々に投げつけては周りに被害を与えた。 第四監獄所前 「いくら周りがスチャラカだからといってあんまり調子に乗らないでくださいよ」 あたると面堂はあの後保安部によって拘束され、立った今リーヤンの釈放書を持ってゼルクスが迎えに来たところであった。 「面目ない・・・。このアホについ調子を合わせてしまった」 「やるか?」 「望むところだ」 さっきまで反省していたかのような表情はどこへ行ったのか、またしても喧嘩、及び拘束された。 「は〜・・・」 ゼルクスは溜息の後面倒くさそうに、また保安部の管理室に釈放書を書きに言った。あたる達に反省や学習と言った言葉は知らないのだろう。 機動武装隊青龍組道場前 「で、ここは青龍組の道場です」 見るからに日本風の道場で、神棚もちゃんとある。入り口には力強く「青龍組」と漢字で書いてある。 「ほ〜、ここに来て初めて日本語を見たな〜」 「そう言えば地球は同盟側の星で唯一言葉が統一されたなかったんでしたよね。歴史の授業で習いました」 「一応世界共通語と言って英語が使われていたんだ。でも日本では本格的には習わなかったな」 「しかし、良く日本語が書ける奴がいたな」 「ああ、それは武装機動隊隊長で青龍組組長のシューベル・モロヴァシー大佐が地球出身なんです。なんでも曾祖父が、 残り少ない日本民だと自慢げに話していました」 そう言うとゼルクスは道場の戸に手を掛けた。そのとき 「でやぁぁぁ!!」 という叫びと共に戸が破れ、胴着を着た隊員が、ゼルクスを巻き込み、床に倒れ込んだ。あたる達は呆然とそれをみていた。大分厳しい特訓のようだ。 「どうした!?この程度で倒れるくらいなら、軍隊を退役しろ!!」 中ではシューベルが、竹刀を持ちながらこちら側に叫んでいる。ゼルクスががれきの中から立ち上がり、痛そうに立ち上がった。 この痛々しい姿をシューベルは見た。 「ゼルクス、なにやってんだ?」 そう言ってゆっくり歩み寄ると、よろめくゼルクスの体を支えた。 「大丈夫です。それより新しい隊員です。諸星あたるさんと面堂終太郎さん、それから・・・」 メガネを見てゼルクスは止まった。 「メガネでいい・・・」 何処か悲しげな声だ。 「この三人が青龍組に入ることになりましたんで、けいこの方を頼みたいと・・・」 「しかし、見るからにアホ頭等でスケベそうで、やる気が感じられんが・・・」 あたるは上目使いでシューベルをにらみつけた。横で面堂とメガネがあたるを横目に、にやにやしている。 「誰がだ?」 重くずっしりとした声でシューベルに言った。 「三人ともだ」 面堂とメガネはずるっとこけて、起きあがるついでに武器を取りだした。 「貴様ぁ〜」 「まて、戦うつもりならこちらに来い。勝負してやる。無用な殺生は避けたほうがいい」 (何が殺生だ、このバカタレ) 「勝負は時間無制限。ルールは特になし。どちらかが気絶するまで戦い続けろ。以上だ」 あたる達の目前にいるのは、道場の手練れらしき人物二人だ。相手はそれにシューベルがついて三人。三対三なのだ。 相手側はスポコン漫画で出てくる敵のように余裕の笑みを浮かべている。手練れの余裕と言ったところか。 「最初の相手は誰か?」 相手側から一人の隊員が一歩前に出た。 「私は・・・」 「能書きはどうでも良い!さっさとはじめんか!!」 あたる達の一番手はメガネだ。一歩前に出た隊員の前置きを払った。その隊員はそれにかちんと来たようである。 「組長、こんな奴らに一人一人相手なんかせず、いっぺんにやりましょう。時間の無駄です」 「それもそうだな、スマンがゼルクス、審判をやってくれ」 あたると面堂が立ち上がると、シューベルともう一人の隊員も立ち上がった。 (複数戦は我々三人がもっとも得意とする分野。三十秒で片付けてやる) シューベルはそう言う企みで複数戦を許可したのだ。せこいと言えばせこい。 「両者戦闘準備!」 ゼルクスが右手を挙げ、 「初め!」 の声と同時に右手を振り下ろした。ドカ!バキ!ペン! 「な〜にが手練れだ。弱いじゃないか」 面堂は刀をしまうと少ししか乱れていないオールバックの髪を整えた。 「これなら教師共と張り合った方がなんぼかマシじゃ」 あたるも木槌をぽいっと捨て、重なって気絶している三人を見た。 「全くだ。卑怯な手を使わずともかてたな」 メガネは上半身裸で、しかも下は空手胴着の袴だ。いつの間に着替えたのだろうか。 端のほうで見ていた他の隊員は唖然とした顔で、あたる達三人を見ていた。手練れに無傷で勝った事にも驚きだが、 いつの間にか面堂は刀を、あたるは木槌を、そしてメガネは袴を着ていた事に驚いたのである。 「ま、これで青龍組のナンバーワンからスリーは俺たちのものだ」 珍しく、三人の意見が合致した。 帝国軍第十三艦隊司令鑑「シリウス」 捕虜監禁室 「ん〜、ん〜」 ラムはその頃、この戦艦シリウスの捕虜室に閉じこめられていた。そこには二、三人の同盟兵もいる。ラムは電撃が危ないと言うことで 耐電式ロープで体を縛られ、ガムテープで口を塞がれていた。 「大丈夫ですか?」 一人の兵がラムに話しかけてきた。ラムを縛っているロープとガムテープを取ってくれた。 「最初から取ってほしいっちゃ」 「すいません・・・」 意外と気弱な兵士だ。よくこんな状況下で生きて行けたものだ。 「私の名は、シュガロー・メンダー少佐です。武装機動隊青龍組のものです」 「青龍組?」 ラムにはわっぱり解らない。その後シュガローは同盟と帝国の五十年来の戦争について詳しく話した。 あたる達とだいたい同じ内容のことを聞くとラムはあたるがどうしたのか聞いてみた。しかしシュガローには知るよしもない。 「ラムちゃん・・・。重い・・・」 さっきからラムに座られっぱなしで、しかもラムはロープをちぎろうとして何度も放電していたため、テンは気を失いつつあった。 「て、テンちゃん!ごめんちゃ!」 ラムそう言うとテンを抱き上げた。 「はははは・・・、こんぐらいなんでもあらへん・・・」 明らかに無理をしている。これも男の意地というものなのか。 「とにかく、ここを脱出しないと・・・」 〜続〜