BD2 帝国進撃! 帝国軍第十三艦隊司令鑑「シリウス」 捕虜室 「とにかくここから逃げださないと・・・」 ラムはテンを抱えながら、捕虜室のドアの覗き窓から外の様子を見た。別段変わった様子もなく、今飛び出せば、 確実に掴まる。 「チャンスを待ちましょう。慌てても怪しまれるだけです」 そういってシュガローは髪の毛の中から変なビー玉みたいなものを取り出した。それを床にたたきつけるとぽんと煙を上げた。 「それはなんだっちゃ?」 「木槌です」 煙が晴れるとそこには、黒い木槌が置いてあった。 「おまえはダーリンか!?」 「は?だれです?ダーリンって?」 シュガローは木槌を肩に掛けると少しダンディーな声で言った。一応、あたるのことも説明した。しかしラムのことである。 熱々の夫婦と説明したにちがいない。したがってシュガローからはこんな答えが返ってきた。 「へ〜、そのダーリンっていいひとなんですね」 しかし男がダーリン呼ばわりするのは花和先生以来の快挙であろう。 (お願いだからその声でダーリン呼ばわりしないでほしいっちゃ・・・) ラムは背を向けておえ〜っと気持ち悪そうにした。 「どうしました?」 「・・・」 部屋の端でラムは座り込んだ。壁の冷たさが背中に感じられる。しばらく脱出は不可能のようである。    ハイゼル要塞五号室 「いきなり准将か・・・」 「ま、大佐を倒したからな」 武装機動隊は強ければ強いほど階級が上になる。従って大佐を倒したあたる達は一気に准将である。快挙と言っても過言ではない。 しかし、機動隊の一番上と言うことは誰か一人、戦闘時における作戦会議に出席しなければならない。 それが面倒くさいので、問題を起こした。 「お前がいけ!アホの集大成!!」 面堂はあたるの右手で胸ぐらをつかみ、左手に刀だ。きらりと光る。 「なにを言うか!お前の方が適切だ、むっつりスケベの決定版!!」 あたるは面堂の右手を掴み外すと、メガネの頭を掴み、面堂の頭に突っ込ませた。ぼ〜んと鐘のような音が要塞無いに響き渡る。 兵員はどこかから聞こえてくる鐘の音に歩みを止めた。 しばらくして、面堂の頭に突き刺さったままのメガネはぼやける視界からあたるの姿が消えているのに気付いた。 (あのがきゃ〜、逃げやがってぇ〜) 床に降りると面堂を起こすべく、バケツに水を入れて面堂の頭からかけた。たらりと面堂の前髪が垂れた。 「おい!起きろ、面堂!あたるのがいない!!」 しかし面堂は起きない。メガネは今度はキッチンの流しを荒らし始めた。生ゴミ入れを取り出すと面堂にふっかけた。 それでも起きない。面堂はそのまま死んだ振りをして、面倒ごとはメガネに任せようとしているのである。 「はは〜ん」 そううなずくと、今度はカーテンをしめ、部屋の電気を消した。 「うわ〜、暗いの怖いよ〜!!せまいの怖いよ〜!!」 一度起きていると分かれば、面倒は 泣き叫ぶ面堂を尻目にメガネは部屋を後にした。ドアが開くと面堂はまた気絶した振りをして、ドアが閉まると再び泣き出した。 ドアのむこうから聞こえてくる叫び声に呆れながら、パーマ達のいる六号室に入った。 六号室 そこにはあたるがいた。 「よ〜、メガネ。決着はついたか?」 のんきにベッドの上で手を振っている。 「てめ〜、逃げやがって・・・」 「なにいってんだ。逃げるが勝ちって言うじゃありませんか」 「よくもぬけぬけとっ・・・」 少しひっくり返った声でひしゃげた顔をした。 「しかしなあ、どうなってんだ?お前ら軍に入った言うじゃねえか」 あたるに突っ込もうとしたメガネを遮るようにパーマが第一声を放った。 「事の成り行き状でな。お前等は何も入ってないのか?」 「いや、それがよ・・・」 そういうとパーマはポケットの中から銀色のバッチを取りだした。それには白い虎が描かれていた。続けてカクガリとチビもとりだす。 「俺たち、機動武装隊の白虎組に入ったんだ」 「なんだ、お前等も機動武装隊か・・・。白虎組って事は二艦隊か・・・。俺たちは青龍組だ」 そう言うとあたるも青色で龍の絵が書いてあるバッチをだした。パーマは少し驚いたような顔をした。 「お前等階級は?」 「おれは大佐。チビとカクガリは少佐だ」 「だったら俺たちには敬語を使わねばならんぞ」 「なんでだよ?」 「だってそうだろ?俺たちはお前の一個上の准将だ。軍に置いて階級は絶対なんだぞ」 これにはパーマも返す言葉がない。 「にしても良く分かんないんだよな〜」 ここへ来てチビが初めて喋った。 「何がだよ?」 「いやさ、機動武装隊は第一から第三艦隊までしか持ってないんだろ?でもここには十二艦隊もあるじゃんか。残りの九艦隊はどうしてるのかな〜って」 「ああ、それな。実は十二艦隊とかってのは小艦隊のことだ」 今度はメガネだ。しかし意味は皆目わからない。 「はぁ?」 「つまり同盟軍は大艦隊、中艦隊、小艦隊にというように艦隊の単位みたいなのを作ってんだ。第一小艦隊から第十小艦隊までは第一中艦隊、 第十一艦隊から第二十小艦隊までは第二中艦隊になってるんだ。機動武装隊の青龍組は第一中艦隊、白虎組は第二中艦隊というわけだ」 「しかしココには第二中艦隊の第十二小艦隊までしかないぞ。残りの十三から二十はどうしたんだ?」 「ああ、それはハイゼル要塞周辺の警備部隊としてこの辺りの小惑星群の基地にかくれてるんだ」 「しかし良くそんなこと知ってるな」 「ああ、さっき小太りでサングラスかけたおっさんに聞いたんだ。まだ外にいるんじゃないか?」 そういうとメガネはドアを開けた。そこにはだれも居ない。シーンとしていて、誰かがいたような感じもしない。 「だれも居ないじゃないか?」 「おかしいなぁ・・・」 そのとき放送のチャイムが鳴った。 『これよりハイゼル要塞襲撃時の作戦会議を開始します。各小艦隊司令、砲撃部各チームリーダー、青龍組代表は会議室にお集まりください』 「面堂の出番だな・・・」 【捕捉1】砲撃部について ココで、砲撃部についての捕捉を入れたいと思います。 砲撃部は鑑の砲台を扱う部ですが、それはおまけみたいな物で、小型戦闘挺での戦闘を本来の任務としています。 砲撃部は、小艦隊ごとに四十隻前後いて、それを1チームとしています。戦闘時に置いては、敵の小型戦闘挺の迎撃か、敵陣の 細かいところを攻撃する際、出撃します。また、チームにはリーダーが存在し、フォーメーションやどこから敵陣に回り込むか それを指揮します。 今後、捕捉に書かれている事は、あたる達は既に知っている物とします。 「ええい、会議室ってのはどこにあるんだ?」 面堂はどこともつかない廊下を歩いていた。適当に部屋を覗いてみたが、だいたいが個室だった。 「だから、今ここで第二中艦隊を引いたら、間違いなくこの要塞は陥落します!」 どこからか抗議の声が聞こえてきた。面堂は会議が始まっているのかとその声のする方に向かった。 しかし音の根源はリーヤンの部屋であった。面堂は興味本位でドアに耳を当てた。中ではリーヤンが軍の上官と通信をしているようだ。 『だから何度も言ってるじゃないか。いま第二中艦隊が戻らねば本土は間違いなく襲撃される。 敵の艦隊がこちらに向かってるのを知らない君ではあるまい。本土には鑑数の少ないの第十一中艦隊しか いないのだ。敵が圧倒的に多かったら同盟は終わりだ。最強の破壊力をもつ第二中艦隊が必要なのだよ』 中には大きなテレビのようなものがあり、そこには堅い顔をした上官がいた。 「しかしまだ敵が来ていると言うことしかわかっていないんでしょ?もしそちらに向かったのは少数で、こちらに大軍を差し向けたら 一個中艦隊しかいない我々に勝ち目はありません」 『それは君の英雄としての知恵と経験をもってすれば勝てないこともないだろう』 この言葉にリーヤンは歯を食いしばって、上官をにらみつけた。 『とにかく、第二艦隊を本土へ帰還されるんだ。これは命令だ』 そういうとぷつっと画面から憎たらしい上官の顔が消えた。リーヤンは机の椅子を蹴り飛ばした。 面堂の耳にこちらに向かってくる足音が聞こえ、慌ててその場を離れた。 しかし慌てるのはよくない。その場でこけてしまい、そして運命の扉のようにリーヤンの部屋の自動ドアが開いた。 「なんだ、聞かれてたのか」 リーヤンはこけた面堂に手をさしのべた。面堂はそれに掴まると起きあがり様に質問した。 「元帥、何か不都合でも生じたんですか?」 「いや、最近になって首都星に帝国軍が向かっているという観測結果がでたんだ。それでウチの第二中艦隊を帰還させろって言われたんだけど・・・」 「何か不都合でも?」 「それが、首都星の観測所のレーダーは超遠距離まで観測できるんだけど、数がわからないのが欠点なんだ。もしそれがハイゼル要塞の艦隊を絞り出す 作戦ならやっかいなんだよね」 「でも、首都星に向かったのが、本当の目的かもしれないのでは?」 「それが、その帝国軍の艦隊の司令が頭の切れるヤツでね。頭が切れるヤツだけどういう手で来るかわからん。ただ、帝国にとって首都星を 襲撃するよりも、まずこちらから陥落していった方が都合がいいんだ。帝国の首都星から同盟の首都星に最短距離で来る場合、この要塞のレーダー網に 引っかかり、同盟につく前に我々に襲われて、大きなダメージを受けてしまう。だからいつも首都星に向かうときはレーダーに引っかからないように、 遠回りをしていくから、そのたびに敵は時間と資金を大量浪費してしまう。だからこの要塞は敵にとって金食い虫なんだ」 面堂はリーヤンの考えに少し感心を持った。 「それよりはやく会議室に・・・」 「そうだね・・・」 【捕捉2】ハイゼル要塞の仕組みについて ここでハイゼル要塞の仕組みについて説明を入れたいと思います。ハイゼル要塞は月ぐらいの大きさの人工星で、 表面は現在の地球の町や森に似せて作られており、事情を知らない限り、ただの星として通り過ぎてしまいます。 第一話のほうで荒れ果てた町が存在したのは、そこに帝国軍の歩兵部隊が侵入し、その戦場となったためです。 地下には同盟軍の基地が存在しています。そこで鑑の修理や燃料の補充、けが人の治療、ストレスを溜めないための 娯楽施設、兵員の個室、希望者は兵員の家族が住んでいます。そのほかは軍の機関として機能しています。 また、大気圏のすぐ外には移動可能な浮遊砲台が五台が存在し、艦隊との連携した強力な波動砲撃を加えます。 そして極めつけとして、北極上空と南極上空には巨大な浮遊砲台が存在し、その破壊力は普通の波動砲の十倍に値します。 南極の砲台は分散型で、指定した距離まで来ると三百六十度の全方向に分散し、広範囲に渡って小さな波動が無数に襲いかかります。 一方北極の砲台は直進型で、巨大な波動が、せまい範囲ながら、驚異的な破壊力を見せます。 ただし、両者とも一回使うと冷却、充電に時間がかかり、次を撃つのに、三十分かかります。 南極砲台はストームと呼ばれ、北極砲台はインパクトと呼ばれています。 会議室 そこには各小艦隊の司令が集まっている。しかしなぜか第二中艦隊のはずのゼルクスがいた。それはリーヤンがゼルクスの保護者 である以上、第二中艦隊に連れて行くわけには行かなかったため、リーヤンがゼルクスに命令という形で第一中艦隊に移動した為であった。 他には砲撃部の人間もいる。 面堂が入ってきた後、リーヤンが入ってきた。他の会議出席者がそれに合わせて起立した。面堂も所定の席に立つと、 リーヤンの敬礼に合わせて、全員も敬礼する。 「ではこれより、会議を始めます」 リーヤンの隣にいるのはフレリーのようだ。飾り気のない優しそうな女性である。二十代後半のようだ。 (ほ〜、なかなかの美人だな。後で口解いてみるか・・・) 「提督、帝国軍は現在首都星に向かっているはずです。我々ハイゼル要塞軍の出番は無いはずです。ココは、護衛の第二中艦隊と 第十一中艦隊、それから迎撃に向かった第六、第八中艦隊に任せるべきでは無いでしょうか?」 第一声を放ったのは、第九小艦隊司令、ライル・チョリフ中将である。一つの小艦隊で帝国軍3000隻を相手にし、勝利を得た同盟軍の英雄の一人だ。 第九小艦隊は小回りの利く艦が多く、敵を包囲殲滅、又は後ろに回り込む事に長けている。 性格はまじめで規則正しく、信頼する上官に忠誠を誓うほどの人間ではあるが、頭の固い人間ではない。五十代前半と言った所であろう。 ハイゼル要塞内では規則を取り締まっている。 「私が心配なのはその首都星に向かったのはおとりではないかと言うことだ」 その後、リーヤンは面堂に話したのと同じ事を会議室の全員に告げた。一同は驚いたが、リーヤンの言うことは筋が通っていた。 「なるほど・・・、確かに首都星に向かった敵は我々に気付かれぬよう、恐らく大きく遠回りをしたことでしょうな。 そしてその事に気付かなかった我々は慌てて要塞の艦隊を出撃させ、鑑数の減った要塞を大群を用いて殲滅する・・・。 本土の連中はこの作戦にまんまと騙されたと言うわけですか」 「冷静な判断をしていれば気付くことだ。いくら要塞が難攻不落だからと言って、こんな鑑数が少なかったら勝てるはずがない。 無論、本当に敵がこちらに来ればの話だがね」 「元帥は首都星に向かって欲しいのですか?」 「そりゃあ、そうだよ。こっちは兵力が圧倒的に少ないんだ。出来れば首都星に向かってそこで迎撃の第六、第八中艦隊と 護衛の第十一、第二中艦隊に戦って貰いたいね」 しばらく沈黙が続いた後、面堂が少し控えめに手を挙げた。 「あの〜、戦闘時における作戦会議じゃ無かったんですか?」 全員があっと言うような表情をして、咳払いなり、書類を整えるなりして、やっと会議の姿勢になった。 しかし会議と言うが、だいたいがリーヤンの立てた作戦を考えて、それを説明する。 いわば、作戦の報告会で、後は戦闘に置いて臨機応変に対処するのがリーヤン率いる第一中艦隊のやり方なのだ。 しかし、会議を始めようとするとドアが開き、一報が入ってきた。 「失礼します。帝国軍約10000隻の艦隊がこちらに向かっています!方向は帝国第二惑星方面!」 「分かった。浮遊砲台で迎撃。その後、第一から第四小艦隊4000隻をそちらに向かわせろ。浮遊砲台と4000隻あれば十分だ」 指示を出したのはリーヤンではなく、第五小艦隊司令、ロージャン・エベル少将である。ロージャンもゼルクス動揺、戦争孤児で、 まだ子供だったリーヤンの家に養子になり、そして幼なじみとして、リーヤンを後押ししてきた。この男がいたからリーヤンは実力以上の物を発揮できたのだ。 「こら、勝手な指示を出すな・・・」 リーヤンは呆れた声でそう言う。 「でも、最初からそうするつもりだったんでしょう?」 リーヤンは返す言葉がつまった。実際そうしようとしていたのだ。 (さすがは幼なじみだな。よくわかってらっしゃる) 冗談交じりか、面堂は敬語でそう思った。面堂はシューベルとの戦いのあと、あたる達と共に、ゼルクスからおおまかの人物紹介を受けていた。 報告に来た兵士は敬礼の後、ドアを閉め、走り去っていく音が会議室に聞こえた。 「来ましたな・・・」 ライルが指を組んだ手を机の上に置いた。 「おかしい・・・」 「何がですか?」 今度は第八小艦隊司令、ゼブラン・ワルサー中将だ。かつて帝国で宇宙海賊として犯罪を犯し、さんざん悪事を働いた後、 同盟に亡命してきたのだ。同盟では犯罪を犯すことなく、普通の日々を過ごしてきた。しかし宇宙海賊としての血が騒ぎ、 軍に入隊。帝国ハンターとしてリーヤンやライルのように帝国に恐れられる人物の一人である。 第八小艦隊は第九小艦隊と違い、重量艦が多く、中央突破を得意とする。 「帝国軍の量が少なすぎる・・・。かつてこの要塞を攻撃しようとした敵は少なくとも20000隻ぐらいで来ていた。 それを10000隻で来るのはおかしい。何かあるはずだ」 「確かにそうですな。10000隻程度で落とせる要塞では無いことを向こうは知ってるはずだ。こちらが揺動なのか・・・」 ライルは要塞戦を知らない面堂他ゼルクス等に説明するようにわざとらしく言った。 「うーん・・・。まさか・・・」 リーヤンは急に立ち上がると後ろにあるモニター付き電話で総司令室に電話をかけた。 「私だ!浮遊砲台を三台を今すぐ引っ込めろ!逆方向に回すんだ!!」 「それは無理です!一度動き出した浮遊砲台は設定した場所に来るまで止まりません!」 「くそ!」 そういって電話をたたきつけた。 敵を目前にして砲台を逆に向けようとした行為に幹部に驚きが走った。するとロージャンがただ一人冷静な声でリーヤンに尋ねた。 「どういう事です?」 リーヤンはまた椅子に座ると深呼吸して話し始めた。 「これは裏の裏をかいた作戦だ。最初、敵は首都星に侵略する振りをした。私は首都星のレーダーが数を確認できない事を利用して、この要塞の隻数を減らす 作戦だと思っていた。そして敵が真っ正面から来ると思い、敵は案の定、正面からやって来た。そして浮遊砲台を全部正面の敵に向けてしまった。 これが、敵の作戦だった。恐らく首都星に向かった敵軍は急速反転し、こちらに向かってくるだろう。浮遊砲台とは反対の方向からな・・・。 しかも浮遊砲台は一度設定したところまで来ないと操作できない。ストームとインパクトを使ったとしても三十分は身動きが取れないだろう。絶対絶命だ・・・」 要塞に緊張が走った。 「敵が来る前に浮遊砲台を反対側の敵に向けられないんですか?」 何も知らない面堂の発言である。 「無駄だ。浮遊砲台は移動速度が遅い。反対方向に向けるには半日かかる。しかも、現在、浮遊砲台は移動できない・・・」 リーヤンはしばらく黙り込むと、決断を出した。 「前戦に向かった第一から第四小艦隊は反転!要塞から第五、第六小艦隊も出撃し、敵艦20000隻の迎撃に迎え!これは私が指揮する! 第七から第九小艦隊は浮遊砲台の援護射撃を利用しつつ、敵を殲滅せよ!これはロージャンに少将に一存ずる! 第十小艦隊はレーダーもう装備をし、脱出に備えろ!」 「しかし・・・」 「これ以上話している場合ではない!行くぞ!」 その後、要塞後方に新たな敵軍20000隻が、接近していることが分かった。 「警戒!警戒!新たに敵艦20000隻がハイゼル要塞に進行中!総員、戦闘準備!」 要塞内でサイレンが鳴っている。あたる達もこの非常事態について面堂から説明を受けた。 「一番隊から二番隊は前戦に参加、三番隊は敵侵入時の進行妨害をしろということだ」 一番隊はあたるが長、二番隊は面堂で、三番隊はメガネだ。武装隊は上三つの上位を持つ、人間が番隊の組長を務めることになっている。 一番隊にはシュガローと新たに配属されてきたゼルクスもいる。 「第二中艦隊がいない今、我々に勝ち目はない。今回は脱出の為の時間稼ぎだ。総員、心して掛かるように。以上!」 「はっ!」 全員が敬礼し、面堂は答礼をすると、あたるとメガネに招集をかけた。 「なんだ面堂?」 「先ほど、リーヤン元帥から聞いたんだが、どうやら敵艦隊の中の一つにラムさんが居ることが分かった・・・」 「何!?」 あたるとメガネは一歩前に出た。ゼルクスもピッと動いたのに面堂は気付いた。しかしメガネがその注意を逸らすように 次なる質問をした。 「で、どこにいる!?」 「敵艦シリウスだ・・・」 ゼルクスからメガネに視線を向けると声を低くしていった。鼻の上当たりに影ができた。 「し、シリウス!?」 大声を上げたのはゼルクスだ。まだ道場に残っていた。その場で鳥肌を立てている。 あたるはそれを見て、どう言うべきか迷っていた。 「なんか・・・、あるのか・・・?」 「シリウスって言ったら、周りの親衛艦の機動力が帝国最強を誇って居るんです!そう簡単に救出にはいけません!」 ゼルクスの顔には焦りが見える。しかしあたる達は表情一つ変えなかった。それを見たゼルクスは気持ちを落ち着かせ、 さらに口を開いた。 「それでも行きますか?」 「行くと言ったら?」 少しゼルクスは黙り込んだ。 「僕は止めません・・・」 面堂は少し驚いた。外は戦闘が始まっているのか、道場が時々揺れた。神棚がゆれ、今にも堕ちそうな感じだ。 「どうしてそんなに肯定的なんだ?」 「そのラムさんというのは僕の先祖なんです・・・」 「は〜!?」 「でもココは異次元だ。異次元のラムさんの子孫なわけだから我々には関係ない・・・」 メガネは少し焦りながらも、そのことを否定した。 「実はそうともいえん」 外から入ってきたのはサクラ、しのぶ、竜之介だ。 「サクラ先生、しのぶ、竜ちゃん・・・」 「どういう事です?ココは異次元だとサクラ先生自身がおっしゃったじゃありませんか?」 面堂はあくまで紳士的に答えた。 「ココは地球ではないことはもう分かっているな?つまり、あそこにあった友引町も偽物じゃ」 「!」 「つまり、ココは本当に未来の世界の可能性がある」 100%だとはサクラも断定できなかった。それになぜ未来に来たのか、その謎も出てきた。 「何か呼んだっちゃ?」 ラムが監禁室でシュガローに尋ねた。耐電性ロープで今度は人でもほどけないような結びで、シュガローにも ほどけなかった。 「いえ、何も・・・」 シュガローは手に写真を持っていた。それを先ほどから眺めている。 「何見てるっちゃ?」 ラムはロープを縛り付けられたままその写真を覗こうとした。シュガローは顔を赤くして、写真を隠した。 「何で隠すっちゃ?」 「いえ・・・、何でもありませんから・・・」 「何でもないなら何で隠すっちゃ?いいから見せろ!」 ラムは両手が効かないままでも足を器用に使って写真を取り上げた。そして写真を指にはさんで目の前に持ってきた。 シュガローはそれを取り返すべく飛び上がったが、ラムは空に飛んで、シュガローはそのまま顔面ごと床にぶつかった。 「なーんだ、家族の写真だっちゃ・・・」 社長のような顔をした男とその家族が四人ほど写っている。シュガローはそのウチの一人だ。後ろには巨大な豪邸が写っていた。 「は、ハイ・・・そうです」 「何で隠す必要があるっちゃ?」 「いや、なんとなく・・・」 シュガローが写真を隠した理由は見られたくないからではなく、ラムがシュガローの目の前に顔を持ってきたことにあった。 それを見たシュガローは緊張し、とっさに写真を隠してしまったのだ。 ラムは写真に写っている社長男がどこか見覚えのある顔に思えた。 「ん、これは・・・」 ラムはその男の胸にある家紋をよくよく覗いてみた。 「これは・・・、ひょっとこ・・・?」 〜続〜 この世界での階級 1、元帥 2、大将 6、大佐 9、大尉  13、曹長 17、上等兵        3、中将 7、中佐 10、中尉 14、軍曹 18、一等兵       4、少将 8、少佐 11、少尉 15、伍長 19、二等兵      5、准将      12、准尉 16、兵長