Chapter 3 The invaders have come 次の日の朝、あたるは例の夢でまた7時に目が覚めた。 今日から朝飯どうしよう、そんなことを考えながら居間に行ってみると、 庭に弁天がいることに気づいた。 「助かったぜ。どうも、ありがとよー」 遠ざかる1台のエアバイクに手を振りながら彼女はそう言っていた。 どうやら昨日言っていた修理屋らしい。 弁天はあたるがいることに気づくと、 「よう。何だ、早えな、おめえ」 と軽い感じで挨拶した。あたるも、 「まーね。ここんとこずっと見続けている夢のせいさ。もう今日で8日目なんだ」 と弁天に向かって返事した。 「ところで、起きたのは弁天様が最初?ほかのみんなはまだ寝てるの? レイはオレの部屋で寝てるけど・・・」 あたるがこう尋ねると、弁天は、 「ああ。起きたのはアタイが最初だ。昨日みんな遅かったからしんどいんだろうぜ。 特にお雪とランの奴は、あいつら2人ともすげえ低血圧だからよー、 たぶんあと1時間は何しても起きねえと思うぜ」 と答えた。それを聞いたあたるは、 「そういえばしのぶも寝起きが悪かったっけ。 弱ったなー、3人のうちの誰かに朝飯作ってもらおうと思ったんだけど・・・ あと1時間起きないのでは、それから作ってもらって食ってると、学校に遅れてしまう・・・」 と困り顔でぼやいた。その直後、 「たっ・・・大変やぁぁーーーー!!!」 という大きな声が聞こえ、その声の方向からものすごいスピードでスクーターが飛んできた。 テンが、血相を変えてあたるの家のほうに飛んできたのだ。 「・・・うるさいわねぇー・・・なによぉ、一体・・・」 「こんな朝早く、一体誰なのかしら?」 「何か、テンちゃんの声みたいね」 「テンちゃん?まさかぁ!だってテンちゃんは今日の夜までは帰らないはずだっちゃよ・・・」 天地を揺るがすような大きな声は、夜更かしで疲れていた、ラン、お雪、しのぶ、 そしてラムを起こすには十分過ぎた。 4人が眠そうに目をこすりながら窓から外を見てみると、思わずラムは声を上げた。 「て、テンちゃん!どうして?」 するとテンは、 「たたた大変やーーー!!らららラムちゃん、おおお落ち着いて聞いてやああ!!」 と噛んだりどもったり、慌てた様子でしゃべった。 「アホ!お前が一番慌てとるではないか。深呼吸せい、深呼吸!」 「ジャリテン。一体何があったってんだよ!?とにかく落ち着け!順を追って話せ!」 あたると弁天にたしなめられ、テンはようやく落ち着いた。 「ラムちゃん・・・ええか・・・気をしっかり持つんやで」 「分かってるっちゃ。ウチは大丈夫だから、遠慮なく話すっちゃ」 テンにこのように念を押され、ラムがうなずくと、テンは、 「ワイらの星が・・・異星人に攻められてるんやあああ!!」 と叫んだ。この言葉を聞いた瞬間、 「なっ!!」 「なにっ!!」 「何ですって!?」 「なんだとおっ!!?」 その場にいた一同は、みんなこう言って驚いた。 「どういうことだっちゃ、テンちゃん!」 ラムがテンを問いただすと、 「昨日ワイが星に着いて、お母はんに会うた直後やった。 突然空が暗くなったと思ったら、いきなりUFOが現れおって・・・ 辺りが騒がしゅうなって、それから人がぎょうさん集まっとるところに、 いきなり攻撃してきよったんや・・・」 テンの話は続く。 「その攻撃だけでも、人がぎょうさん怪我したり、死んだそうや。 ワイのお母はんは、火事やゆうてどっかの火災現場に行ってしもうた。 このことラムちゃんに伝えよ思うて、通信機使おうしたんやけど、通じんさかい、 せやから大急ぎで戻って来たんや!!」 これだけ聞いたあと、ラムはテンに、 「テンちゃん!ウチの父ちゃんや母ちゃんはどうしたっちゃ!?」 と尋ねた。するとテンは、 「急いどったさかい確認はしとらんけど、たぶん今もそいつらと戦っとる思うで!」 と答えた。弁天が、 「おい!敵の正体は何だ!?何人ぐれえなんだ!?」 と尋ねると、テンは、 「敵の正体は確認できんかった!敵が何人いるかも正確にはわからへん。 けどなぁ、かなり大きなUFOやってん、頭数は結構おるんちゃうか?」 と答えた。 テンの情報が不確かなものばかりであったので、あたるは、 「ジャリテン!もっと正確な情報は分からんのか!?」 とテンに向かって言ったが、 「向こうとは通信できんねん。せやから行ってみんことにはわからへん!!」 とテンは答えた。 その後一同はしばらく黙り込んで考えていた。しばらくするとランが、 「とにかく、ここにいても始まらないわ。今すぐ鬼星へ行くべきよ! 行けばすべてが分かるわ!」 と言った。無理もない。鬼星には彼女の家族もいるのだ。しかしお雪は、 「ラン、冷静になりなさい。今鬼星はとてつもない混乱状態なのよ。 今行ったらどんな目に遭うか分からないのよ」 と、ランのはやる気持ちに釘をさした。 行くべきだ、いや待つべきだ、2つに立場による議論が平行線をたどっていると、 突然大きな影が辺りを覆った。空に大きな船が浮かんでいた。 それはラムの父のマザーシップだった。 「ラムーー!こっちやーーーっ!!」 ラムの父が大きな声でみんなを呼ぶので、ラムとその場にいたみんなはマザーシップの中に入った。 「父ちゃん・・・父ちゃんが地球に来たってことは・・・もう敵はやっつけたっちゃね? あー、よかったっちゃー」 ラムは胸をなでおろし明るい顔でそう言ったが、父は深刻な表情だった。そして、 「ラム・・・落ち着いて聞きや。ワシらの星な・・・完全に攻め落とされたんや。 ほとんどの人が死んだんや。生き残ったんは、この船に乗っとる連中だけや・・・」 と答えた。この事を聞かされた瞬間皆、特にラム、ラン、テンの3人は大きなショックを受けた。 「父ちゃん!じゃあ、母ちゃんはどうしたっちゃ!?どうして姿を見せないっちゃ!?」 ラムが父にそう尋ねると、父はまた深刻な表情で、 「ラム、母ちゃんはな・・・母ちゃんはな・・・インベーダーの攻撃を受けて・・・ 死におった・・・」 と声を震わせながら娘に伝えた。それを聞いてラムは、 「う・・・うそ・・・うそだっちゃ・・・そ・・・そんな・・・」 とショックのあまり震えながら首を横に振りそのことを否定したが、父が、 「ラム・・・」 と厳しい表情で言うと、急にそれが現実であることを受け入れられるようになった。 それと同時に抑えようのない悲しみがラムの胸に込み上げてきた。 「う・・うう・・・ダ、ダーリン・・・ダーリン・・・・!!う・・・うわああああああああー!!!」 ラムは右にいたあたるに抱きつき、張り裂けそうな大声で泣きじゃくった。 そんな様子を見て不安になったのか、テンも、 「お、おっちゃん!!ワ、ワイのお母はんはどないしたんや!?どこにおるんや!?」 と叫んだが、父は、 「テン・・・お前のお母ちゃんはな・・・消火活動中に崩れてきた建物の瓦礫の下敷きになって・・・ 殉職しおった・・・」 と沈痛な面持ちで答えた。それを聞かされたテンは、 「そ・・・そんなアホな・・・う、嘘や!嘘やァ!!ワ、ワイは認めへん!認めへんどーー!!」 首を横に振りながらそう言うとその場を飛び出してしまった。 「ちょっと、テンちゃん!」 そう言って止めるしのぶのことなど気にも留めずに、テンはいるはずのない母探しに行ってしまった。 「・・・おっさん。それで敵は何人だ?どこの星のモンだ?首謀者の名前は?」 畳み掛けるように弁天が聞くと、父は口を開いた。 「ワシらの星を攻め落としたときは、ざっと見て100人ぐらいやった。 そいつらの正体はな、ワシらの星から1万光年離れとるインフェリオル星に住むインフェリオル星人、 もといインフェリオル族や。 実はな、こいつらワシらと同じ、鬼族やねん」 それを聞いて一同は驚いた。ラムたち以外にも鬼族と呼べる宇宙人がいたことも、 仲間であるはずの星を攻めてきたことも。 あたるはしくしくと泣き続けるラムを抱きかかえたまま、 「お父さん。どういうことです?どうして同じ種族であるそいつらがラムの星を攻めてきたんですか!?」 とラムの父に尋ねると、彼は、 「そのことはワシのおじいはんにしゃべってもらいますさかい・・・おじいはん!」 と言って、彼の祖父、つまりラムの曽祖父を呼んできた。 そもそも1ヶ月前の鬼ごっこの元の原因は、彼が交わしたいい加減な約束であった。 「おい、ワシを呼んだかね?」 曽祖父が高齢のため震えた声でそう言うと、父は、 「何でこんなことになったか聞きたいゆうてますさかい、話してやってください」 と言った。すると彼は口を開き、 「オー、そーかそーか。では早速話そうかの・・・えーっと・・・あらら・・・?あれれ・・・?ありゃりゃ・・・?」 と、こんなことをしばらく続けていると、 ぐーっ、ぐーっ。 曽祖父は寝てしまった。それを見たあたるは、 「寝るなァ!!」 スッパァーーーン!! と叫びながら曽祖父の頭をハリセンでどついた。その後曽祖父は、 「あああー、さ、三途の川がぁー・・・・・・」 と言って、両手を前に上げ、川を渡るようなジェスチャーをした。 「コラコラーっ!渡ったらあかん!!ボケとんのか、あんた!!」 父はそう言って止めた。再び話が始まった。 「さて、そもそもインフェリオルというのは、『劣格民族』という意味でのう、 ワシらから見た奴らの呼称なんじゃ。 ちなみにワシらのことは、正確にはスーペリオル族というんじゃ。 『優等民族』という意味じゃな。 じゃが元々そのような区別をしていたわけじゃないのじゃよ・・・ 今を去ること90年前・・・ある事件がおきて・・・」 ここまで聞いてお雪が、 「ある事件とは、一体何なのですか?」 と尋ねると、彼は再び話し始めた。 「クーデターじゃよ。それが起こるまでは、ワシらと奴らは同じ星に住んでおったのじゃ・・・ まあ、そもそも区別すらされとらんかったのじゃから、当然じゃな。 当時ワシらの星を支配しとったのは、ハト派で知られとったウィリアムという男じゃった。 ワシも彼の支持者じゃった。 ところがある日、タカ派で知られとったジョージ2世という男が、 政権奪取を狙いクーデターを起こしたのじゃ。 その男は周辺の星を侵略し、領土拡大することで当時の経済危機を乗り切ろうと企んでおったのじゃ。 そのクーデターは星中に広がり、住人は皆、体制派と反体制派に分かれ、 激しい内戦となってしもうた。ワシは無論体制派について戦った。 数ヶ月にわたって激しい戦いが各地で繰り広げられたのじゃが、結局体制派が勝利し、 クーデターは鎮圧されたのじゃ。 その後裁判が行われ、首謀者のジョージ2世は死刑、残りの反体制派支持者はすべて星外追放となり、 当時まだ未開の状態で、恐ろしい伝染病が蔓延しとったため、 『死の星』と呼ばれとったインフェリオル星に追放されおった。 ・・・もっとも、その星の呼称は後からワシらがつけたものなのじゃ。 そやつらが『劣格民族』のレッテルを貼られたのと同時にな・・・」 彼が話し終わると、弁天が口を開き、 「そうか。てえことは今回鬼星を攻めて来た連中は、そのときの反体制派の末裔ってワケだな。 それでそいつらは90年前から今まで受けてきた屈辱の数々の復讐として、 じいさんたちスーペリオル族を大量にぶっ殺したんだな」 と言った。すると父は、 「そうや!奴らはワシらのすべて、つまりスーペリオル族を根絶やしにしようと企んどるんや。 それと、奴らはラムと、なぜか婿どののことをしきりに探しとった。 ラムは分かるけど、何で婿どのなんやろ・・・?」 と言った。するとようやく泣き止んで落ち着いたラムが、 「父ちゃん・・・これからウチらはどうしたらいいっちゃ?」 と尋ねると、 「それを決めるために、ここまで命からがら逃げて来たんや。 ワシらの星は、奴らに完全に占領されてしもうたからなあ・・・」 と答えた。 その後、舞台を面堂家に移し、メガネ、パーマ、カクガリ、チビ、竜之介、 それにサクラ、そしてチェリーも集まって、作戦会議が会議室で行われた。 そこに黒メガネの一人が現れ、面堂に耳打ちすると、 「・・・うむ、そうか・・・わかった。ご苦労であった。下がってよい」 と面堂は言った。そう言われて、その黒メガネは部屋を出た。 「だめでした・・・日本政府は侵略者が宇宙から攻めて来るということを、 まるで信じてくれません・・・」 面堂はラムの父のほうを向いて静かにそう告げた。 「くそっ、攻めてこられてからじゃ遅いというのに・・・ おい、面堂!お前の力でどこかほかの国に口利きはできんのか?」 メガネがもどかしそうに面堂に叫ぶと、面堂は、 「無茶言うな!いくらボクでも、そんなことまではできん!」 と答えた。 「となると結局、攻めて来るのを待って、それからそれぞれの国の首脳の対応に任せるしかないってワケだ。 ところでお父さん、今回の事件の首謀者たちはどんな奴らなんですか?」 あたるがラムの父に尋ねると、彼は話し始めた。 「首謀者の1人はフィリップと名乗っとりました。 何でも、おじいはんのゆうてはったジョージ2世のひ孫やゆうてました。 背格好は婿どのと同じくらいですねん。 こやつはラムと同じで電撃を扱うのですが、その破壊力はほんま凄まじいでっせ」 話は続く。 「ほかには、女が3人いてました。名前はそれぞれ、メリッサ、ステファニー、ジェニファーというてました。 3人ともかわいい面しとりますけど、3人ともごっつ腕っ節が強うて、 ワシらの主力の軍人を次々に撲殺しよりました。 特にメリッサゆう奴は、けったいな妖術を使いおって、油断なりまへん」 この話を聞いて、あたるは、 「え、かわいこちゃん?だったらオレ、その娘たちとデートしたいなー。グフフ・・・」 といやらしい声で言った。すると、 「ダーリンッ!!こんなときに不謹慎だっちゃ!!!」 とラムは激怒してあたるに強烈な電撃を浴びせた。凄まじい悲鳴をあげたあと、 「は・・・ははは、もう立ち直ったか・・・これならどんな敵でも勝てそーじゃな・・・ラム」 とあたるは呟いた。 「おっさん、それだけなのか?」 弁天が尋ねると、またもや父は口を開いた。 「いや、あと2人男がおってん。それぞれティモシーとマシューって名のっとった。 ティモシーは剣の達人や。一振りだけで何百人も惨殺しよったほどや。 あと銃の扱いにも慣れとって、全体的にメカに強そうやった。 マシューは山のような大男で、ものすごい怪力の持ち主や。 しかも体が頑丈で、銃で撃たれてもびくともせん。 しかもテンと一緒で口から炎を吐くんや。テンの母親が消火活動に当たったのも、 こいつの起こした火事やった」 これを聞いて、テンは、 「そうか、ということは・・・ワイのお母はんの敵っちゅうワケや・・・そいつが・・・」 と言った。そうこうしていると、さっきの黒メガネが血相を変えて、 「わ、若あっ!!一大事です!!」 と叫びながら、会議室に入ってきた。 「どうした!!何があったんだ!?」 面堂が叫ぶと、その男は、 「ニュースを・・・ニュースを見てくださいっ!!」 と叫んだので、会議室のモニターにニュースを映した。 「・・・たった今、アメリカのホワイトハウスを爆撃した犯人から連絡が入り、 彼らからの声明を発表するとのことです」 爆撃・・・!?ニュースが流れた瞬間、会議室内に戦慄が走った。 「なお、このとき大統領は外出中で無事・・・あっ、今繋がった模様です。 それでは皆さん、お聞きください」 ニュースキャスターがそう言うと、映像が切り替わった。1人の男が映っていた。 いや、少年といったほうがいいかもしれない。 どこかの部屋に立ち、マイクを握っているその姿は確かにあたると同じくらいの背格好だった。 その男はやはり2本の角が頭の左右にあり、まさに鬼の姿であったが、 髪の毛は青く目は真っ赤で、爪も長く肌もスーペリオル族に比べると黒かった。 おそらく地獄のような星の環境に順応するため、そのように進化したのだろう。 そして彼はゆっくりと口を開いた。 「わが名はフィリップ。この星から遥か彼方の惑星インフェリオルからやってきた。 私はこの惑星の代表者である」 (こいつがフィリップ・・・思ったより普通だな) こんなことを考えながらあたるは画面を見続けた。さらに話は続く。 「先ほどの爆撃はわれわれの力がどの程度かを示す、言うなればデモンストレーションだな。 なんでもかなり人が死んだそうで・・・ククク・・・」 フィリップが薄笑いをしながら話すのを聞いて面堂は、 「くそっ!何がデモンストレーションだ!人の命を何だと思ってるんだ!!」 とテーブルを叩きながら怒鳴った。地球に来た目的はと聞かれたところで、フィリップは、 「要求は2つ。1つは今地球にいるすべてのスーペリオル族をわれわれに引き渡すこと。 もう1つはこの星の支配権をわれわれに委譲すること。以上だ。 今から1時間以内に回答せよ!!さもなくば・・・分かっているよな?」 と答え、不気味なほのめかしを残し、突然画面は砂嵐になった。 ほかのチャンネルに変えたが、同じだった。 「とんでもないことになっちゃったわね・・・」 しのぶがそう言うと、その横にいたサクラも、 「うむ、地球始まって以来のピンチじゃな・・・」 と同調した。 「地球側はどんな対応をするのかしら・・・?」 ランがそう呟くと、 「あなたじゃあるまいし、そんなに簡単に彼らの要求に応じることはないわよ」 とお雪はランの日和見な性格を思い切り皮肉って言った。 「どーゆー意味やっ!!」 ランは皮肉られていることが分からなかった。 「ほなワシ、一旦船に戻るさかい・・・」 ラムの父はそう言って、船に戻った。 しかしこの選択が、この語の彼の運命を決定づけてしまった。 そのころインフェリオル族の乗るUFOでは、フィリップが会見の成果を仲間に伝えていた。 「お前たちも見ていたと思うが、1時間だけ待ってやることにした。 もっとも地球人どもは、従うしかないと思うがな。フフフ・・・」 すると青のストレートのロングヘアーで、ホワイトタイガー柄のビキニを着たグラマラスな女、メリッサが、 「ねーえ、フィル、こんなまどろっこしいことしなくても、 さっさと地球人と一緒にまとめてスーペリオル族をぶっ殺してしまえばいいんじゃない?」 とずいぶん物騒な口ぶりで言った。するとフィリップは、 「まあ待て、メリー。奴らの態度次第では、奴隷として使うという道もある。 何せオレたちのユートピア造りには、いかんせん人手がいるからな・・・」 と答えた。この2人は婚約者同士ということもあって、すこぶる仲がよい。 「ステフ!ジェニー!オレがいない間、ジャンヌはおとなしくしていたか?」 フィリップがステファニーとジェニファーのほうを向いて尋ねると、 これまたメリッサに負けず劣らずグラマラスで、 髪の色はメリッサと同じで青いが、巻き髪である女2人が、 「ええ、特に変わった様子はなかったわ」 と2人で異口同音に答えた。この2人は双子の姉妹で、ステファニーが姉である。 「なあ、ティムよう、地球人はどの程度の強さと科学力を持っているんだろうな?」 2メートルは軽く越え、筋肉質であるスキンヘッドの男マシューが、 痩せ型で長髪でやはり青い髪の男ティモシーに尋ねると、ティモシーは、 「さあな。だがオレたちの地球への侵入をやすやすと許し、あの程度の爆撃でくたばるぐらいだから、 少なくとも、オレたちよりかは大したことはないんじゃないか?マット」 と愛用の剣を磨きながら答えた。そんな2人の会話を聞いてフィリップは、 「フッ、ティム、マット、今回はお前たちの実力を発揮できる場は、なさそうだな」 と2人に向かって言った。 この2人はかつてフィリップに勝負を挑んで惜敗し、それ以降フィリップと行動をともにしている。 しかし、決して2人とも彼に屈したわけではない。 今でも勝負したいという気持ちを持ち続けている。チャンスを窺っているのだ。 そうこうしているうちに、1時間が経った。 「・・・そろそろ1時間だ。まあ結果は分かっているが、一応確認しておくか・・・」 フィリップはそう言うと、国連の安保理事会に連絡した。 その頃地球は大パニックになっていた。人々は安全な場所を探し、無駄な努力を続けた。 国レベルでも。アメリカはイラクと戦争の休戦協定を結び、北朝鮮、イランに対する敵視政策も中断した。 それだけではない。すべての国々が敵対国との一時的緊張緩和を行い、 この地球始まって以来の強敵を迎え撃つ準備を進めた。 戦争はないも解決しない、そう言って平和を訴えてきた左翼の人間たちからすれば、 宇宙からの侵略者に対し共同戦線を張ることで、結果的に地球が1つになったことは、 まことに皮肉な結果と言わざるをえない。 安保理では、地球総動員体制が完成するまでの時間稼ぎのため、 フィリップ側に待つよう求めることですべての国が同意した。 そのことを連絡してきたフィリップに伝えると、 「何ィ?待てだとお!?ふざけるな!!たかがスーペリオル族と地球の引渡しに、 一体何時間かかってるんだ!!」 とフィリップは常任理事国のアメリカ大統領を怒鳴りつけた。 「し、しかし、われわれは君らの言うスーペリオル族なる者たちがどこにいるかわからんのだ! それに、地球には60億の人々がいるんだぞ!? 君らに地球支配の権限を委譲するにしても、その人々すべてを説得するのには時間が・・・」 大統領はそう言って話をはぐらかそうとしたが、フィリップは、 「もういい!どうやらわれわれの警告の仕方が弱すぎたようだな・・・ いいだろう。これ以上話をいたずらに引き伸ばすとどうなるか、たっぷりと見せてやる!!」 と言い残し、通信が途絶えた。 フィリップはUFOに戻ると、ティモシーのほうを向き、 「ティム!あれを使え!愚かな下等生命体どもに目にもの見せてやれ!!」 と怒鳴りつけた。 「フッ・・・フィル、お前も相変わらずせっかちだな」 ティモシーは涼しい顔でそう言うと、赤いボタンを軽く押した。 一方面堂邸でも、1時間経ったころには、世界情勢がどうなったのかが気になり、 みんなテレビにかじりついていた。 「・・・先ほど侵略者側から連絡が入ったそうです。 詳しいことはまだ分かっておりませんが、どうやら・・・」 その瞬間であった。凄まじい爆音が鳴り響いた。 明かりが点滅し、邸内は揺れに揺れ、作戦室はパニックになった。 「な、何じゃ、何じゃあ!!?」 あたるがそう叫ぶと、周りは皆連鎖反応的に、 「ワァーーーーッ!!!」 「キャアーーーーーッ!!!」 このような悲鳴を上げた。そんな中、面堂が刀の鞘を握り、 「落ち着くんだ!みんな!!大した揺れじゃない!!」 と叫び、周囲の人々を落ち着かせようとした。さらに、部屋に備え付けの電話で、 「おいっ、終太郎だ!外で一体何が起こったんだっ!?」 とコントロールルームにいる私設軍隊隊員に問いかけると、 「空にあった何かが爆破されたようです!!トラジマ模様の・・・」 という答えが返ってきた。 「何イーーーッ!?トラジマ模様の物体が爆発しただとお!?」 面堂が電話に向かって大きな声でそう叫んだのを聞いて、ラムは、 「ねぇっ!それ、まさかウチの父ちゃんの・・・!!」 と面堂の手から受話器を取り上げ、大慌てで尋ねると、 「さあ・・・詳しいことは只今調査中です・・・」 という答えが返ってきた。それだけ聞くと、ラムは外へ飛び出した。 「おいっ、待たんか!ラム!!」 あたるはそう叫ぶと、彼女の後を追いかけ、ほかの何人かも一緒に彼女のあとを追った。 「あ、あたしも!」 遅れてしのぶも行こうとすると、竜之介が、 「おいっ、テレビでさっきのことやってるぜ!」 と言うと、しのぶはその場にとどまり、テレビを見た。 「・・・大変ショッキングなニュースを皆様にお伝えしなければなりません。 先ほど新たな情報が入り、国連安保理と侵略者との交渉が決裂、 侵略者側は地球の主要都市を一斉爆撃しました。 アメリカのニューヨーク、イギリスのロンドン、日本の東京・・・」 キャスターがそう言った瞬間、大爆発するラムの父のマザーシップが映し出された。 「こ・・・これは・・・何てことだ・・・」 メガネはそれ以上言葉が出なかった。 「ひ・・・ひどい・・・うう・・・」 しのぶはその場にうずくまり、両手で顔を押さえながらすすり泣いた。 「な、なんて野郎どもだ!あいつら、人の命をなんとも思っちゃいねぇ!!」 拳を握り、怒りに震えながら竜之介は言った。 「皆の者、こやつらは悪魔じゃ」 チェリーがそう言うと、サクラも、 「そのとおり!オジ上の言うとおり、こやつらは悪魔じゃ。 そしてわれわれは、この悪魔どもと戦わねばならんのじゃ」 とみんなに向かって言った。その後はしばらく誰も何も言わなかった。 (父ちゃん!どうか無事で・・・!!) そう祈りながら、ラムはマザーシップがあったところの近くまで急いだ。 「弁天様!もっと速く!!これじゃラムに追いつけん!」 「無茶言うな!4ケツじゃこれが目いっぱいだよ!!」 あたるは面堂、お雪とともに、直ったばかりの弁天のエアバイクに乗り、 ランとテンはレイの背中に乗ってラムを追いかけた。 たどり着いてみると、あたりは一面焼け野原だった。 まるで終戦直後の日本のようだった。 そしてそこには信じられない、もとい信じたくないものが横たわっていた。 「と、父ちゃん!!」 「お父さん!!」 「おっちゃん!!」 「おっさん!!どうしたんだ!!」 それを見て一同は口々に叫んだ。ラムの父が黒こげ、血まみれになって倒れていたのだ。 「ラ・・・ラム・・・婿・・・どの・・・」 一同のほうを振り向いた彼はもはや虫の息であった。 「父ちゃん!しっかりするっちゃ!!父ちゃん!!」 彼のそばに駆け寄り、彼の体を揺すりながら、ラムは叫んだ。 「ラム・・・生きるんや・・・・・・婿どの・・・後は、頼んます・・・」 ラムの手を握り、今にも絶えそうな声で、父はただそう言った。 「い・・・いやだっちゃ!父ちゃん死んじゃいやだっちゃ!!」 「な、何バカなこと言ってるんですか!お父さん!!」 2人の必死の叫びもむなしく、父はそのまま息を引き取った。 「ラムちゃん!ダーリン!いますぐ救急車を・・・」 2人に向かってランがそう言いかけると、 「ランちゃん、もう、救急車はいらないよ・・・」 と、あたるは力なく答えた。そして開いたままの父のまぶたを閉じてやった。 「お、おい、まさか・・・」 弁天があたるの方を向いてそう言うと、彼は首を横に振った。 その直後、ランはレイに寄りかかり、声を出さず泣いた。 面堂も弁天もお雪もうつむいて、何も言わなかった。 「ラムちゃん・・・」 目に涙をためながら、それでも慰めようとテンがラムのほうに向かおうとすると、 「どうして・・・?どうしてこんなことになってしまったっちゃ・・・? どうして父ちゃんと母ちゃん、ほかのみんなは死ななきゃならなかったちゃ・・・!? どうして・・・!!」 ラムは体を震わせながら、放電を始めた。そして、 「フィリップーーーーッ!!お前ーーーーっ!! 一体ウチらが何したっていうっちゃーーーー!!! ウチらに何の恨みがあるっちゃーーーーっ!!!」 ズバババババババァーーーーーーッ 空に向かって大放電をした。 しかし、これで終わりではなかった。これは始まりに過ぎなかったのだ・・・ これからの地獄の日々の・・・ To be continued...... Toshio