Chapter 6 Let's search for tomorrow 病室では、みんながジャンヌを質問攻めにしていた。 「あの、ジャンヌさん。さっきあなた、あたる君とラムの体の中に、 クリスタルがあるって言ってたわよね?クリスタルって、いったい何なの?」 まずしのぶが尋ねた。 「ええ。クリスタルというのは、とてつもないパワーを持った石のことです。 ある特定の誰かの体の中に、ごくまれに誕生するといわれているもので、 その石の持ち主は、日常生活の中において、通常では考えられないようなパワーを発揮するんです。 皆さんも、何か思い当たる節がおありじゃないですか?」 ジャンヌは答えた。 「そういえば、私、ラムのお父さんから聞いたことがあるわ・・・ ラムは30年に1人生まれるか生まれないかの天才児だって。 同年代の女の子と比較しても、空を飛ぶスピードの速さは驚異的で、 繰り出す電撃の発する強さも比類ないものだって言ってたわ」 お雪は子供の頃のラムのことを思い出しながら話した。 「あたるの奴も、ラムさんの電撃、しのぶの机、サクラさんの平手打ち、 竜之介の拳等々、どんなに痛めつけられても、どんなダメージを食らっても、 オレたちが『あっ』という間に立ち直っていたよなあ。 とにかく、化け物のような生命力だった」 メガネも今までのあたるのことを振り返りながらこう話した。 「そうなんです。レッドクリスタルは正の力、ブルークリスタルは負の力を持っているんです」 ジャンヌの答え方があまりにも抽象的な答え方だったので、 「ねえ、ジャンヌちゃん。もうちょっと具体的に答えて欲しいんだけど」 とパーマが尋ねるのは当然だった。するとまたジャンヌの話が始まった。 「つまり、ラムさんの体の中にあるレッドクリスタルは、積極的な力、 空を速く飛んだり、強力な電撃を発したりと、その人にプラスになるような力を与えるんです。 もっと分かりやすく言えば、その人に幸せを与える力があるんです。 逆に、あたるさんの体の中にあるブルークリスタルは、消極的な力、 大きな怪我や病気をしても普通の人より早く回復したり、 普通の人なら死は免れないような目に遭っても、死なずにすんだりと、 その人にマイナスをもたらす要素を排除する力があるんです。 要するに、その人を不幸から守る力があるんです」 ジャンヌの最後の言葉を聞いた瞬間、一同は首をかしげた。 あれだけの災いをあたるが呼び寄せていても、不幸から守られているのか、と。 「普通、不幸というのはその人の死を意味します。現にあたるさんは、今でも生きているでしょう? それと、これは私の推測なのですが、彼はまだ石の力を十分に発揮できていないのではないでしょうか?」 そのことを指摘されるとこのようにジャンヌは答えた。 「どうしてそう思うの?」 「お兄様はあたるさんがまだ『覚醒』していないと言ってました。 その言葉の意味は、私も詳しくは知りませんが、お兄様が言うようにあたるさんが覚醒すれば、 彼の持つ石の力を最大限に発揮できるんじゃないかと思います」 お雪の質問にジャンヌは自らの推測の根拠を述べた。 「でもジャンヌさん、どうしてフィリップ達はそんなにその石を欲しがるの?」 「しのぶさん、私の故郷であるインフェリオル星は、今大変な危機にさらされているんです。 1ヶ月ほど前から続く異常気象で、各地で災害が次々と発生し、たくさんの死者が出ました。 はっきり言ってもう、どうすることもできない状態なんです。 そんな時、お兄様がクリスタルのことを思い出して、これを使って星を救おうと議会に提案しました。 議会は承認し、さらにお兄様はメカに強いティモシーに命じ、クリスタルの持ち主を探させました。 そして見つけたのがラムさんとあたるさんなんです」 「と、いうことは、レッドクリスタルとブルークリスタルが両方とも必要ってことなの?」 「そうなんです。レッドクリスタルとブルークリスタルを両方あわせると、 パープルクリスタルという物ができるんです。 その石は、たとえどんな荒れ果てた星でも、美しい水と緑の星へと変えるほどの力を持っているんです。 お兄様はこれを使って星の異常気象をストップさせようとしたのです。 レッドクリスタルもブルークリスタルも、本来はその石の持ち主しか使うことができません。 その石を持ち主の体から取り出すためには、その人を殺して体を引き裂くしかありません。 しかし不幸だったのは、ラムさんがスーペリオル族だったことです。 この事を知ったお兄様は、これを機にスーペリオル族をせん滅しようと議会に提案したんです。 自分たちの星は救われ、スーペリオル族は絶滅する、さらには地球という領土を獲得する。 スーペリオル族に恨みを募らせてきた人にとって、これほど都合のいいことはありませんからね」 しのぶの問いかけに、ジャンヌは1つ1つ丁寧に返答した。 「私はお兄様のこの計画に反対しました。そのため、私は今まで自分の部屋に軟禁されていたんです。 その後、お兄様たちと皆さんが戦っていた隙に、逃げ出してきたわけです」 ジャンヌはこのようにして、侵略者の計画を説明した。 するとそこに了子が現れ、 「皆さん!ただいまより友引町防衛作戦を開始します!諸星様の看病をする方を除き、 全員どこかの部隊に所属していただきます。 それを今から発表しますから、皆さん、よくお聞きになってください」 と伝えた。了子の発表が終わったあと、お雪とランを除き、全員が所定の配置に着いた。 外は雨が降り続けていた。 「あーあ。今となっちゃ、この雨だけがオレたちの唯一のバリアーなんだよなあ、メガネ」 「ああ。だがこの雨が降り続ける限りオレたちは安泰というわけだ」 与えられた武器の手入れをしながら、2人がこんな会話をしていると、 「そうとは限りません」 と言い、ジャンヌが横から会話に加わってきた。 「確かにインフェリオル族は酸性雨に弱いですが、それを防ぐ特殊スーツをティモシーは開発したんです。 それは体に直接フィットさせるものですから、着てから体に完全にフィットするまで丸1日かかりますけど。 たとえ雨が止まなくても、いずれは・・・」 ジャンヌがこう言った後、チビは、 「そ、そんな・・・じゃあ明日の昼ごろには・・・」 と言い、不安そうな顔をし、カクガリも、 「じゃあ、最悪の場合、あたるをガードしつつ、奴らを撃退しなきゃいけないってことか?」 と不安そうに述べた。 「悪いほうにばかり考えたって始まらないわ。今はとにかく、ラムたちが一刻も早く戻ることを祈りましょう」 しのぶはそう言って、みんなを落ち着かせようとした。すると、 「みんなー!ごはんができたわよーー!みんなで食べましょう!」 という声が聞こえた。ランだった。みんなの表情が少し緩んだ。 「あーあ・・・あと何回、こうやって静かにメシが食えるのかなあ」 ランの作ったおむすびを手に取り、パーマが呟くと、 「メシのときぐらい考え事はよせよ、パーマ!せっかくランちゃんが作ってくれたメシがまずくなっちまう」 メガネはパーマのその呟きを封じた。 そうこうしながら、その場にいた一同はそれぞれ食べ物を口に運んだが、 口に入れたその瞬間、みんなの表情が曇った。 (な・・・何だこりゃ・・・?) (このおむすび、甘い・・・) おむすびを食べた者は皆、こう思った。みんなの表情を見たランが慌てておむすびを口にすると、 「ご・・・ごめんなさい・・・お塩とお砂糖間違えちゃった・・・」 と謝罪した。おむすびだけでなく、ほかの料理の味もメチャクチャだった。 彼女らしくないミスだ。やはりレイの死が尾を引いているのだろうか。 「ごめんなさい・・・まずかったら残してね・・・」 うつむいたまま彼女が呟くと、彼女の気持ちを汲んだメガネが気を利かせ、 「い、いやー、いいんだよランちゃん!オレたち、甘いおにぎりも酸っぱいスープも大好きだから!アハハ・・・ なっ、みんな!?」 と周りを睨みつけ、賛同することを迫ったので、 「そ、そーだよ!オレたち、残したりなんかしないよー」 と周りのみんなも言った。 「えーーっ!?ウッソオーー!ホントにぃーーっ!?じゃああたし、明日からもこの味付けで作ろうかしら!?」 ランは微笑みながら冗談交じりにそう言った。しかしその笑顔はどこか作為的なものだった。 (ああやって明るく振舞っているけど、やっぱりレイの死で・・・きっと相当辛いんだろうな。 なあ、あたる。お前がもし死んだら、ラムさん、どんな顔するんだろうな。 やっぱり、想像もつかないようなひどい顔になるのかなぁ・・・) メガネは甘いおむすびをかじりながらこのようなことを考えた。 「明日か・・・オレたちに本当に明日が来るのかなあ・・・」 チビは力なくそう呟いた。 「チィービィーーー・・・・・・!!」 その場にいたみんなはチビを睨みつけた。 「ご・・・ゴメンよお!そんなつもりはなかったんだよお!」 みんなからの視線を感じ、チビはあわてて謝った。 食事が終わると、皆また沈み込んだ。 「ふうー、どうやら着いたみてえだな」 その頃ラムたち4人は、亜空間ベクトルXYZの入り口に到着していた。 「何だか暗いところですね・・・空気も悪いし・・・それにこの寒さは・・・」 面堂がそう言うのを聞いて、竜之介も、 「ここに長くいると、胸クソが悪くなりそうだぜ・・・」 と不快感をあらわにした。 「ジェームスの森は、ミラクルセージはどこにあるっちゃ!?」 ラムがそわそわしながら言うと、 「とにかく情報を集めねえと・・・誰か知っている奴を探すしかねえな・・・ どこかに村かなんかあればいいんだけどな」 と言い、前に向かって進みだした。しばらくすると、村が見えてきた。 それにしても、村全体に活気が感じられない。人の話し声も聞こえない。 「何だか、暗い村だっちゃね・・・」 「まさか誰もいねえなんてことは・・・ねえよな」 「あそこに市場らしいものがありますよ。でも客はいないようだな・・・」 こんなことを話しながら村中を歩いていると、ようやく1人の男を見つけた。 髪もヒゲもぼさぼさで、体中が酒臭かった。 「おい、聞きてえことがあるんだけどよ。ジェームスの森ってどこにあるか知らねえか? アタイらそこに行きてえんだ。もし場所を知ってたら、教えてくんねえかな?」 弁天はその男に尋ねた。するとその男はいやらしい笑い声をあげて、 「・・・いいぜ。ただし、3万クレジット払ってくれたらな」 と報酬を要求してきた。 「そんなお金、持ってないっちゃ」 ラムはムッとした表情で答えた。 「そうか・・・じゃあちょうど2人女がいることだし、その体で払ってくれたら、 ロハで教えてやってもいいぜ?」 男はいやらしい笑いを浮かべ、ラムと弁天を眺めながら言った。 「おい!オレが目に入らねえのか!?言っとくけどなあ、オレは女・・・!!」 「およしなさい、竜之介さん。話が余計ややこしくなりますよ」 自分が女であることを名乗り出ようとした竜之介を、面堂は制止した。 「・・・わかったよ。だがな、こいつの体は勘弁してくれねえか? こいつは嫁入り前の大事な体なんでなあ。代わりにアタイが2人分がんばるからよお・・・」 「へっへっへ・・・ちょっと惜しいけど、まあいいや。オレの家はすぐそこだから、 せいぜい楽しませてくれよ・・・」 弁天の申し出に、男は承諾した。2人は路地裏に消えていった。 数分後、弁天は1人で戻ってきた。 「だめだ。あいつはちょっと勘違いしてたらしくてよ、ジェームスの森のことは何も知らなかった。 せっかくラムの分もがんばったのによお・・・しゃーねえ、ほか当たろうぜ」 弁天に促され、ほかの3人も動き出した。 一方男は、自分のベッドの上でボコボコになっていた。この男は、 初めからラムたちから金を巻き上げ、さらにはラム、弁天を暴行するつもりだったのだ。 4人は手当たり次第に周囲の人に尋ねたが、知っているという者はいなかった。 いたのは金目当て、ラム、弁天の体目当てで言い寄ってくる野郎ばかりであった。 「まったくどうなってやがるんでい、この村はよ!」 竜之介がそう叫ぶのも当然だった。 「ジャンヌさんの言ってたとおり、この世界の男どもは、本当に金と色以外興味がないんですね。 でも若い女性の姿がまったく見えないなんて、変ですね・・・?」 「ウチもそう思うっちゃ。初めから1人もいないなんてありえないし、どこかに隠れているのかなあ?」 面堂の疑問に、ラムはそう答えた。 「まさか・・・かくれんぼじゃあるまいし・・・とにかくこの村はもう出たほうが・・・ あっ、何だあれ!?」 弁天の指差す方向から、馬車がやってきた。大男が馬を操っていた。いや、正確に言えば馬のような生き物だった。 「どーう。よーし、ここで止まれ」 男はそう言うと、馬から降りて、弁天の目の前に立った。 「こ・・・こいつだよ親分!オレをこんな目に遭わせたのは!」 見覚えのある男が、大男のほうを向きながら、弁天を指差して言った。 弁天が最初にぶっとばした男だった。このほかにも弁天は20人近い男をぶっとばしていた。 「お前、オレの子分たちをずいぶんかわいがってくれたそうだなあ・・・ここがどこか分かってるのか?」 大男は弁天を睨みつけた。 「へえー、あいつらみんなおめえの子分か。もうちょっとちゃんとしつけといたほうがいいぜ。ん・・・?」 弁天は馬車の中を見てみた。きれいな女性が10人ほど乗っていた。 「おい、馬車の中の女たち、ありゃあ何だ?」 弁天は大男に尋ねた。 「この村の選りすぐりの女どもさ。こんなチンケな村にしては、結構上玉ぞろいだろ? こうやって遠出するときは、いつもこれぐらいはべらしているんだ」 大男は平然と答えた。 「なんか全員、自発的にそうしているようには見えねえけどなあ」 弁天は馬車を眺めながら再び尋ねた。 「この村の奴らはほとんどがオレに借金をしていて、そのカタとしてオレに自分の娘や妻を渡したのさ。 もっとも、正確に言えばオレがいただいたんだけどな。 オレの屋敷には、まだ何人か娘たちがいるぜ。その娘たちでハーレムを作っているというわけだ」 大男は再び淡々と答えた。これで若い女性が見当たらないわけが分かった。 「ひどいことするっちゃね!金の力で女を自分のおもちゃにするなんて!! お前、男として恥ずかしくないっちゃ!?」 ラムは女を金と同レベルに扱う大男に猛然と抗議した。 「この村、いや、この世界は金と力がすべてなんだよ・・・これが答えだ」 ラムの抗議に対しても、大男は顔色一つ変えなかった。 「お前・・・最低だっちゃ・・・!!男として、人間として最低だっちゃ!!」 そう叫ぶと、ラムは強烈な電撃を大男に浴びせた。大男はその場に勢いよく倒れた。 「く・・・くそっ!おい、かまわねえ!やっちまえ!!」 大男は起き上がると、周囲に隠れていた子分をけしかけた。ほとんどが弁天に一度焼きを入れられていた。 「あーあ、あいつすっかりムキになってやんの。しょうがねえ、助太刀してやっか!」 弁天が面堂と竜之介に向かって言うと、 「当然でしょ?」 「へへへ・・・腕が鳴るぜ」 2人は快く承諾した。 まだカップラーメンもできないくらいの時間で、大男とその仲間たちは全員叩きのめされた。 「ま・・・待ってくれっ!!金ならいくらでもやるっ!!だから殺さないでくれえっ!!」 大男は右手を振りかざし、止めを刺そうとしていたラムに命乞いをした。 「うるさいっちゃ!!お前みたいな外道は絶対に許せないっちゃ!!」 ラムは聞く耳を持たなかったが、弁天が止めに入り、 「まあ待てよ、ラム!こんなカスども、殺すにも値しねえような奴らのために、 おめえが手を汚す必要はねえよ。 その怒りは、この後の戦いまでとっておきな!」 と説得した。 「おい!アタイらはジェームスの森ってところを探してんだ。 ミラクルセージっていう万能薬を作る薬草がそこにあるって聞いたもんだからよ。 何か知ってることがあったら全部教えろ。それと、おめえが囲っている女たちを全員解放しろ。 そうすりゃアタイらも鬼じゃねえ。命までは取るつもりはねえよ」 弁天は鋭い目つきで大男を睨みながら、取引を提案した。 「へっ、ジェームスの森ですか?だったらこの村から西に3キロほど行った所にありますぜ。 でもミラクルセージなんて、あっしは聞いたことありませんぜ」 大男が話したことに、4人は驚いた。 「何いっ!?でたらめじゃないだろうなあ!?」 面堂は大男の胸ぐらを掴み、猛然と迫った。 「ほ・・・本当でさあ、だんなあ!これがあっしの知っていることすべてでさあ! む・・・娘も全員返すからよお!見逃してくだせえ!」 男が嘘を言っているようにも思えないので、面堂は胸ぐらから手を離した。 ここにこれ以上いても仕方ないので、とりあえず大男に言われたとおり、 西のほうに進むことにした。 「ちっきしょう・・・ジャンヌの奴、アタイらにガセネタ掴ませたんじゃねえだろうなあ? もしそうだったら、戻り次第ぶっ殺してやる!!」 森のほうへ歩きながら、弁天は鼻息を荒くして言った。 「ありそうな話だぜ・・・オレたちのいない隙にフィリップって野郎を手引きするつもりかもしれねえ」 竜之介もジャンヌがスパイなのではという疑惑を拭えずにいた。 「むやみに人を疑うのはよくないですよ。さっきの奴らがたまたま知らなかっただけという事もあるんですよ。 もしかしたら、もうずっと大昔から語り継がれている伝説みたいな感じで、 実際に見たことがないのかもしれませんよ。 とにかくボクはジャンヌさんを信じます。もしこれが嘘だったら、諸星はもう死ぬしかないわけですからね」 面堂はジャンヌを援護した。この話が事実でなければ、ラムはさらに深い悲しみを経験するしかないからだ。 (ラムさん・・・あなたの悲しみはボクの悲しみだ。諸星の死があなたにとってそうであるならば、 ボクは喜んで諸星を救う手助けをしましょう。そのためにボクはついてきたんです) 面堂はラムの後ろ姿を見つめながらこう思った。すると突然、 「誰かあーー!助けてえーーーっ!!」 ラムたちの向かっている方向から、10歳ぐらいの女の子が叫びながら走ってきた。 誰かから逃げてきたようである。案の定、 「待てえーーー!!」 2人の男が少女のあとを追ってきた。 「さあ、お前の持っている金と食料、かなぐり置いていけ!!」 片方の男が少女に迫った。 「い、いやよ!このお金と食料は大事な・・・!!」 お金を入れていると思われる袋を背中に回し、少女は首を横に振った。 「よこせったらよこせーーーっ!!」 2人の男が同時に少女に襲い掛かった。しかし、 「だーーーーっ!!」 その2人を竜之介が撃退した。 「てめえら、大の大人が2人で寄ってたかってこんな小せえガキに何てことしやがんでい!」 竜之介は2人の男を睨みそう言った。 「うるせえーーーっ!!」 2人は光り物を抜き、竜之介に再び襲い掛かったが、またしても竜之介に倒された。 「おい、おめえら!まだやるか?」 ファイティングポーズをし、竜之介は2人を威嚇した。すると2人は、 「お・・・覚えてろーーー!!」 と捨て台詞を残し、その場を去って言った。少女は竜之介のほうを向き、 「ありがとう、お姉ちゃん!」 とお礼を言った。これを聞いて竜之介はもちろん、ラム、弁天、そして面堂も驚いた。 初対面で竜之介を女と見破ったのは、彼女が初めてだったからだ。あたるですら最初は男と間違えたのだ。 「あ、いや・・・どういたしまして。それにしてもおめえ、よくオレが女だって分かったな?」 竜之介は照れくさそうに返事し、少女に疑問を投げ掛けた。 「だって、声が女っぽかったんだもん。もしお姉ちゃんが男だったら、もう少し野太い声してないとおかしいもん。 それに、おっぱいはあんまり大きくないけど、腰はくびれてるし、お尻も大きいから分かるわよ」 竜之介のサラシを巻いた胸を見つめながら、少女は答えた。 「それは違うっちゃよ。竜之介はサラシで胸を押さえつけてるからそう見えるだけで、 実際はウチやウチの隣にいるこのお姉ちゃんに負けないくらい大きいっちゃよ」 ラムは弁天を指し示しながら少女に言った。 「へえー。じゃあいっぺん見せてよ。でなきゃあたし信じられなーい!」 少女は竜之介にそうせがんだ。 「しょうがねえなあ・・・じゃあ、ちょっとだけだぞ」 そう言うと、竜之介はサラシを取り始めた。その様子を少女とオールバックの男が眺めていたので、 「何でてめえまで見てやがるんでいっ!!」 と白い学ランの男を空のかなたにぶっ飛ばした。そして、サラシを取り終わった。 「どうでい!これで信じるか?」 竜之介はあられもない姿を少女にさらし、そう叫んだ。 「うわあーっ、すっごーい!ほんとだ!ねえ、どうしたらお姉ちゃんたちみたいにおっぱいが大きくなるの?」 竜之介の胸を見るや否や、少女はそう尋ねてきた。 「えっ?何でっておめえ・・・そんなこと言われてもよー・・・」 竜之介が答えに詰まっていると、ラムが、 「いっぱい食べていっぱい寝て、そしていっぱい恋すればいいっちゃ!」 と横から答えた。こうやって3人の胸の話で盛り上がってしまっていたので、 「あの・・・ちょっといいですか?皆さん、大事なことを忘れてませんか?」 面堂が脱線をストップさせた。5人は自己紹介を始めた。 「あたし、アンジェラっていうの!さっきは本当に助けてくれてありがとう」 「へえー、変わった名前だなあ。オレは竜之介、藤波竜之介だ」 「リューノスケ?あなたのほうがよっぽど変わってるじゃない!じゃあそっちのトラジマビキニのあなたは?」 「ウチ、ラムだっちゃ!よろしくー」 「ボクは面堂終太郎だよ。同じく、よろしく」 「アタイは弁天様よお。それにしてもおめえ、こんなところで何してんだ?」 弁天は自己紹介すると、アンジェラに質問した。 「この先にあるジェームスの森って所に、ミラクルセージっていう薬草があるらしいのよ。 それを採りにここまでやってきたの」 アンジェラがそう答えると、ラムが血相を変えて、 「ア、アンジェラ!それ、本当だっちゃ!?ミラクルセージは本当にあるっちゃねっ!?」 と叫び、アンジェラに詰め寄った。 「本当よ!だって私の村の人で、それを使って命が助かった人がいるんだもん。 でもなんでそんなに驚いたの?」 アンジェラがそう聞くので、弁天は今までのいきさつを彼女に話した。 「・・・なるほど、ラムの愛しいだんな様の命を救うために、わざわざ表世界から来たってワケね」 弁天の話を聞いたあと、アンジェラはそう言った。 「ところで、君はミラクルセージを誰のために使うつもりなの?」 面堂はアンジェラに尋ねた。 「半分は私のパパのためなんだ。パパね、最近この世界ではやっている伝染病にかかっちゃって・・・ 薬を買おうにも、ウチは貧乏だから・・・だからミラクルセージを使ってパパを助けようと思って」 アンジェラはそう答えた。 「小さいくせになかなか感心じゃねえか、アンジェラ。でも半分はって何だ?残りの半分はどうしたんだ?」 弁天がそう尋ねると、 「残りの半分は自分のためなの。うふふ、私ねえ、あなたやラム、それに竜之介のようなボインに憧れているの。 もし大人になっても今みたいにペチャパイのままだったら、セージを使って大きくしようと思ってるの」 とアンジェラは答えた。女3人はそろってずっこけた。 「そ・・・そんなことのために・・・」 竜之介は呆れ顔でそう言った。 「そんなこととは何よ!この世界ではねえ、女の美しさの大事な要素の1つなのよ、胸の大きさは。 あんたたちだって、道中で散々男から声かけられたんじゃない?」 アンジェラはそう答えた。そう言われると、竜之介たちは村での出来事を思い出した。 「心配しなくても、あんたもそのうちに大きくなるっちゃよ。ウチだってあんたぐらいのときは・・・」 ラムは慰めるように言った。その後だった。 「ねえ、セージ採りに行くんだったらさあ、あたしも一緒に連れて行ってよ! あたしねえ、セージのありかを示した地図持ってるのよ。連れて行って損はないと思うな。 もちろんセージが手に入ったら、山分けでいいわよ」 1人では心細いからと、アンジェラはこう申し出た。 「どうするっちゃ?弁天・・・」 「まあ、悪い奴じゃなさそうだし、いいんじゃねえか?」 こうしてアンジェラが、セージ発見隊に加わった。 To be continued...... Toshio