Chapter 7 Choice in the utmost 「アンジェラ!あとどのくらいで着くんだ?」 「まだもうちょっとかかりそう!」 ラム、面堂、弁天、竜之介、そしてアンジェラの5人は、ミラクルセージのありかを目指して、 ジェームスの森の中をひたすら突き進んでいた。 一方その頃、あたるは小康状態が続いていた。 「ダーリン、今のところは落ち着いているみたいね・・・」 「ええ・・・あとは一刻も早くラムたちがミラクルセージを手に入れて戻ってきてくれれば・・・ そういえばラン、あなた食事をまだ取ってないんでしょう?ご主人様の様子は私が見ておくから、何か頂いてきなさいな。 それと今日はもう遅いから寝なさい」 お雪はランを気遣い、こう述べた。 「いいの・・・私、お腹空いてないから・・・それに私、今夜は眠れそうにないの・・・ お雪ちゃんこそ、ダーリンにもう何時間もかかりきりじゃない。お雪ちゃんこそ休んだら?」 ランはか細い声で答えた。 「だめよ、ラン。今度の戦いはいつ終わるか分からないのよ。少しでも食事を取って、 少しでも寝ておかないと、敵討ちの前に死んでしまうわよ。私は大丈夫。 明日の朝までは私が責任を持ってご主人様を看病するわ。だからそれまでお休みなさい」 あくまでお雪はランに休養を取るように求めた。 「あたしね、眠るのが怖いの・・・夢の中にレイさんが出てきそうで・・・ そうなったら私、私・・・1人じゃ心細いの・・・だからお願い。一緒に看病しましょう?ね?」 しかしランがこのように強く求めたので、 「・・・わかったわ。じゃあこうしましょう。私もあなたと一緒に寝るわ。 ご主人様の様子は誰か他の人に見てもらうということで・・・これでいいかしら?」 お雪がこのように提案すると、ランは小さくうなずいた。 「そう・・・そういうことなら私に任せといて。2人はゆっくりお休みなさい」 お雪はあたるの世話をしのぶに任せ、ランとともに、布団に入った。 「ねえ、まだだっちゃ?」 ラムは苛立った様子でアンジェラに尋ねた。 「もう少し・・・あそこに見える洞窟を抜けたら・・・」 アンジェラはそう言ってあせるラムをなだめた。 (さっきからもうそればっかりだっちゃ・・・早く、早く行かないとダーリンが・・・ こんなとき、ミラクルセージのありかまで一瞬でテレポートできればいいのにな・・・ ウチ、どうしてもダーリンを助けたいっちゃ・・・このままじゃ、 命がけでウチを守ってくれたダーリンに申し訳が立たないっちゃ・・・ ウチのこの手で、ダーリンを・・・ダーリンを・・・) そのときだった。突然ラムの体が青白い光に包まれ、弁天たちの前から消えてしまった。 「おい、ラム!どこ行ったんだ?」 辺りを見回しながら、弁天は叫んだ。 「ラムさん!いるなら返事してください!」 面堂もラムに呼びかけた。 「おーい、ラムーっ!」 草をかきわけながら竜之介も探した。だがラムの姿はどこにも見当たらなかった。 「どういうことなんだ、これは!」 弁天はアンジェラに尋ねた。 「私にも何が何だか・・・でももしかしたら、セージのありかが近いのかもしれないわ。 きっとそうよ。だって地図はこの洞窟を抜けたところで終わってる。 そこに近づくと、今みたいな不思議なことが起きるんじゃないかしら?」 アンジェラはこのように憶測を述べた。 「とにかく、この洞窟を急いで抜けましょう!その地図が確かなものであるなら、 少なくとも出口の付近に何かがあるはずです」 面堂はそう言うと、意気揚々と洞窟に突入した。 「わァーーーッ!暗いよ!せまいよ!怖いよォーーー!!」 その瞬間、面堂のいつもの発作が始まった。洞窟は天井が低く、とても圧迫感があった。 「なにやってんでえ、こいつ・・・」 「ああ、こいつはな、暗所恐怖症の閉所恐怖症なんだ。こういったところに来ると、 いつもこれなんだ。でもな、諸星いわく、女に見られてるときだけは大丈夫なんだとよ・・・」 弁天が面堂を指差しながら訝しそうに聞くと、竜之介がその訳を答えた。その瞬間、2人ははっとした。 「ちょ、ちょっと待てよ!てことは、女に見られていれば、ああはならねえんだよな? すると・・・」 弁天がこう言った瞬間、疑問は確信に変わった。 「てめえっ!!オレたちを女扱いしてねえなっ!!」 2人は怒鳴り声を上げ、泣き叫ぶ面堂を思い切りどついた。面堂は気絶し、これで静かになった。 その頃ラムは、湖のほとりにいた。突然の出来事に彼女は当惑していた。 「ここは・・・どこだっちゃ・・・?弁天!終太郎!竜之介!アンジェラ!どこにいるっちゃ?いたら返事するっちゃ!」 周囲をきょろきょろと見渡しながら仲間を呼んでいると、突然後ろに大きな影が現れ、その影が、 「ここはジェームスの森の奥地にあるシャルル湖のほとりだ」 とラムに告げた。ラムが後ろを振り向くと、さすがに驚いた。声の主は大きな銀色の竜だった。 「・・・お前、誰だっちゃ?」 しばらく間をおいたあと、ラムは竜に尋ねた。 「我が名はハインリヒ。この湖の管理人だ。何の用で来たかは分かっているぞ。 愛する夫を救うべく、ミラクルセージを求め、はるばるここに来たのだな?」 ハインリヒと名乗った竜はこのように答えた。 「どうしてそのことを・・・?」 ラムはハインリヒに尋ねた。 「ここはな、湖の裏の世界なのだ。湖の中を見てみろ」 ハインリヒに促され、湖面を見てみると、弁天たちがうろうろしているのが見えた。 大方湖畔の周りを探しているのだろう。 「みんな・・・」 「これで分かっただろう。ここは通常はある条件を満たしたものだけが入れる聖域なのだ。 向こうの声は普段はこちらに聞こえることはないし、逆に今お前があやつらを呼んでみたところで、 返事が返ってくることもない。 この世界は、誰かを救いたい、そう強く願う者だけを招き入れる特別な世界なのだよ。ラム」 ハインリヒは今ラムのいる世界について事細かに説明をしたが、そんなことは今の彼女にはどうでもいいことだった。 「ミラクルセージは今ここにあるっちゃ?だったらウチに譲って欲しいっちゃ! ダーリンは今大変なことになってるっちゃ。一刻も早く治療しないと、ダーリンの命が危ないんだっちゃ!」 ラムはハインリヒに強く求めた。 「まあ待て。まずはお前の仲間をすべてここに呼び寄せる。彼らにも協力してもらわんとな」 そう言うとハインリヒは、4人を呼び寄せた。 「うわっ!あいたたた・・・えっ、ここ、どこなんだ?」 「・・・あっ、ラムさん!ご無事でしたか」 「ここは・・・もしかしてここが、ミラクルセージの群生地・・・?」 4人は現れるなり、突然の周囲の変化に驚いた。 「ハインリヒ、協力ってどういうことだっちゃ?ミラクルセージはどこにあるっちゃ!?」 「あれを見てみろ・・・」 ラムに言われて、ハインリヒは大きな木を指差した。その幹の周りには、しおれかけた草が生えていた。 「見てのとおりだ。あれじゃとても万能薬としての用はなさん」 「そ・・・そんな・・・じゃあダーリンは・・・」 ハインリヒにこう告げられ、ラムは愕然とした。目の前が真っ暗になった。 頭の中に、「死」の文字がよぎった。 「そんな・・・!じゃああたしのパパはどうなるの!?ラムのだんな様はどうなるの!? そんなのかわいそうじゃない!!ねえ、何とかならないの!?」 アンジェラはハインリヒに必死に訴えた。 「方法がないわけではないが・・・」 踏ん切りの悪い声でハインリヒは話した。 「ウチ、ダーリンを救うためなら、どんなことでもするっちゃ!!だからお願いだっちゃ!どうしたらいいのか教えて!!」 ラムは真摯な態度で頼み込んだ。するとハインリヒが口を開いた。 「息絶えた直後の人間1人分の血を丸ごとあのしおれかけたセージにかけることだ。 そうすれば、セージは再び活力を取り戻す」 その言葉を聞いた一同は仰天した。それは、この中の誰かを殺さなければ、 あたるもアンジェラの父も救えないと告げられたも同然だからだ。 そんな時だった。ラムが持っていた心電図と脈拍計が警告音を鳴らした。 「どうしたんだ!?ラム!!」 弁天が叫ぶと、 「ダーリンが・・・ダーリンが危ないっちゃ!!」 ラムは脈拍計を見ながらそう告げた。脈拍が一定のレベル以下になったとき、 つまりあたるが危篤状態になったときにアラームが鳴るようにセットしてあったのだ。 そんなラムにさらに追い討ちをかけるようなことが発生した。 「おい、あれ!」 竜之介が指差した方向に信じがたい光景が映っていた。ミラクルセージが完全に枯れ始めていたのだ。 一方その頃面堂邸では、あたるの容態が急変したのに気づいたしのぶが、大慌てでお雪とランを起こしに行っていた。 「あたる君が・・・あたる君が・・・!!」 興奮のあまり、しのぶはそれ以上言葉が出てこなかった。 急いで病室に駆け込んだお雪たちの目に、苦しそうに呼吸するあたるの姿が目に映った。 「まずいわ・・・脈も呼吸もどんどん弱くなっている・・・!!中和剤の効き目が完全に切れて、毒が全身に回り始めたんだわ! とにかく、ラムたちが戻るまで最善を尽くすわ!ラン、しのぶさん!手伝ってくれるわね!?」 お雪の問いかけに、2人は小さくうなずいた。もう1つの戦いが、今始まった。 「さあ、どうする!?もうお前たちにはあまり選んでいる時間がないぞ! この草が枯れきってしまったら、次にまた生えてくるのは100年後だ!! この中の誰かを犠牲にするか、それとも愛する者たちを犠牲にするか、早く決断するのだ!さあ!!」 ハインリヒは追い詰められた5人に容赦なく決断を迫った。そんな時だった。 「ラムさん、ボクを殺してください!」 面堂の口から信じがたい言葉が飛び出した。一同は一瞬言葉を失った。 「な・・・何言ってやがるんでい、面堂!!そんなバカなこと・・・」 竜之介は思わず叫んだ。 「竜之介の言うとおりだっちゃ!終・・・」 「いいんです。あなたの手にかかって死ねるなら本望です。それであなたの悲しむ顔を見ないですむのなら・・・」 ラムが何かを言おうとしたのを遮るように、面堂は呟いた。その顔は真剣そのものだった。 いつものように、かっこつけて冗談で言っているときの彼ではなかった。 「ウチに・・・そんなことできるわけないっちゃ!!」 ラムはあくまでこの申し出に拒否した。 「ラムさん。この際ですから白状します。ボクはあなたのことが・・・ ボクのあなたに対するこの思いは、誰にも負けないと思っていました。 たとえその相手が諸星であろうと誰であろうと・・・でもそれは間違いでした」 「間違い・・・?」 面堂のこの告白の意味が、このときのラムには分からなかった。 「あなたがあの時、フィリップの手によって体を貫かれそうになったとき、 諸星は後のことなど何も考えずに、なりふり構わず飛び出してあなたを守りました。 でも、あの時ボクとラムさんの距離は、諸星よりも近かったんです。本来ならボクが助けに向かうべきだったんです。 でも、できませんでした・・・」 面堂は淡々と話した。 「あん時は、おめえはティモシーから徹底マークされて動けなかったんだ。 諸星はフィリップからのマークが外れたからそうしたんだ。助けに行って当然だろ? おめえのことは誰も責められねえよ」 弁天は面堂にこう告げた。しかし面堂は聞く耳を持たなかった。 「そんなの・・・理由になりません!!言い訳にさえならないですよ!!」 面堂は突然叫んだ。周りの者は皆驚いた。 「ボクは・・・怖かったんです・・・怖くて一瞬助けに行くのをためらったんです。 ボクが恐怖をはねのけ、ようやく動こうとしたときには、すでに諸星はラムさんの前に飛び出していました」 面堂はこう話したあと、しばらく黙り込み、再び口を開いた。 「・・・人間というやつは、極限状況においてその本性を表すものです。 ボクは、口ではいつも耳障りのいいことを言っていましたが、あの時のボクは、 その言葉どおりのことを実行しませんでした。ラムさんのために命を捨てることができませんでした・・・ あの時のボクには、ひとかけらの勇気さえもなかったんです。 ボクのラムさんに対する思いというものは、所詮その程度のものだったんです」 「終太郎・・・」 ラムはただこれしか言えなかった。 「ボクは今まで、諸星のことを軽蔑していました。何でこんな奴をラムさんが、とも思いました。 でも今は違います。身を挺してラムさんを守った諸星を心から尊敬しています。 そんなすばらしい男を・・・みすみす死なせるわけにはいきません!! だからラムさん。諸星を救うために、ボクを殺してください!! たとえあなたによって命を奪われたとしても、ボクはあなたを恨んだりしません。 むしろ感謝したいくらいです。これでボクも英雄になれるのですから・・・」 面堂がこう言い終わった直後、ラムは面堂の頬に思い切り平手打ちをした。 「バカなこと・・・そんなバカなこと言うんじゃないっちゃっ!!」 涙目で、ラムはそう叫んだ。 「ラムさん・・・」 ぶたれた頬を押さえながら、面堂は呟いた。 「終太郎。みんなとの約束忘れたっちゃ!?必ず全員生きて帰るって。これ以上新たな犠牲者は絶対出さないって! ・・・確かにダーリンがもし死んでしまったら、ウチとても悲しいっちゃ。 悲しすぎて、あとを追って死のうなんて思ってしまうかもしれないっちゃ。 でもウチは・・・ダーリン以外の他の誰かがこれ以上死んだとしても、同じくらい悲しいっちゃ! 弁天が死んでも、竜之介が死んでも、もちろんお前が死んでもだっちゃ!終太郎!! だから・・・死ぬなんて・・・殺してくれなんて・・・二度と言うんじゃないっちゃ!!」 ラムは泣きながら面堂の両肩に触れ、そう言った。 「もっと自分の命を大切にするっちゃ!自分の命の大切さも分からない奴に、どうして他人の命が救えるっちゃ!!」 ラムはそう言うと、その場にしゃがみこんですすり泣きを始めた。 「ラムの言うとおりだぜ。ヒーローなんかじゃねえ!死んだら惨めなだけなんだぜ。おめえだってラムの親父さん、ジャリテン、それにレイの死体見ただろうが?」 「弁天様・・・」 面堂の肩を叩き、弁天は静かにそう言った。 「何か他の方法があるかもしれないだろ?それを探そうぜ、面堂」 「竜之介さん・・・」 竜之介もこのように述べた。 (ダーリン・・・ごめんちゃ・・・ウチ、ダーリンのためならなんでもするつもりだったけど・・・ でもやっぱり、この中の誰かを犠牲にすることはできないっちゃ・・・ 本当にごめんちゃ・・・ダーリンが死んだら、必ずウチもすぐあとを追って、ちゃんと謝りに行くから・・・) 頭の中でこう思ったあと、ラムは竜のほうを振り返り、 「ハインリヒ!やっぱりウチにはそんなことできないっちゃ!他の方法で、何とかダーリンを救ってみるっちゃ!!」 と告げた。そして5人がその場を立ち去ろうとした直後だった。 「よし、合格っ!!」 ハインリヒが大きな声でそう言った。 「なな、何なの?合格ってどういうことなの!?」 アンジェラはそれを聞いて鳩が豆鉄砲食ったような表情でそう言った。 「ミラクルセージをくれてやると言ってるんだ!さあ、時間がないんだろ!?早くこっちに!!」 状況が飲み込めぬまま、ラムたちはハインリヒに言われるがままにあとをついて行った。 程なくして、大きな木の前でハインリヒは止まった。その木の周りには、ミラクルセージが青々と生い茂っていた。 「好きなだけ持っていくがいい。それをすりつぶしてエキスにして飲ませればよいのだ」 ハインリヒは5人にそう告げた。 「ど、どういうことです・・・さっきミラクルセージはすべて枯れかかっていると・・・」 面堂の問いかけに、ハインリヒは答えた。 「さっきまではお前たちをテストしていたのだ。ミラクルセージを与えるにふさわしい者かどうかのな・・・」 それを聞いてラムは、 「どういうことか説明して欲しいっちゃ」 と言った。 「もしお前が、自分の夫を救うためなら仲間さえも犠牲にするような輩であったら、 自分の欲望のために平気で人を殺すような輩であったら、ミラクルセージは与えず、お前を殺すつもりだった。 邪な心の者には、これを得る資格などないと私は思っておるからな。 ・・・早く夫の元に戻るがいい。危険な状態なのだろう?」 ハインリヒはこう答えた。ラムは小さくうなずいた。その直後、 「あーーーっ!!しまったあ!!」 突然弁天が大きな声を上げた。 「どうしたんでい、弁天!」 竜之介に尋ねられると、 「バイク・・・あの村に置きっぱなしだ・・・」 弁天は呆然とした表情で答えた。 「まずいですよ、それは!今から森を出て村に戻るまでどれだけかかることか・・・もう諸星が・・・!!」 アラームが鳴り響く中、面堂もそう言った。すると、 「バイクとはこれのことか?」 突然ハインリヒがそう言った。彼の目の前には弁天のエアバイクがあった。 「あれー!?どうしてこんなところに!?」 弁天は不思議そうに言った。 「そんなことはこの際どうだっていいだろう。早くお前たちの世界に戻れ! お前たちの世界に出るための次元のひずみを私の力でここに開けておいた。 そこを抜ければ、お前たちの住む町まで出られるはずだ」 ハインリヒはそう答えた。 「本当に・・・ありがとだっちゃ!これでウチのダーリン、きっと助かるっちゃ!」 ラムは心からの礼をハインリヒに伝えた。それと同時に、アンジェラともお別れとなった。 「おめえにも、いろいろ世話んなったな。ありがとよ」 弁天にこう言われると、 「何言ってんのよ。お礼を言うべきなのはあたしのほうよ。本当に何から何まで・・・ありがとう!」 アンジェラもこう返した。 「あばよ、アンジェラ。おめえの親父さんによろしくな」 最初にアンジェラを助けた竜之介もこのように別れの言葉を告げた。 4人はバイクに乗り、人工の次元のひずみに突っ込んだ。こうして4人は亜空間ベクトルXYZをあとにした。 一方面堂邸では、あたるに対する懸命の処置が施されていたが、あたるの脈も呼吸も弱くなる一方だった。 「だめ・・・もう中和剤は全然効果がないわ・・・はっきり言って、もう私のできることは・・・」 お雪はまさに、さじを投げてしまった。 「そんなあ・・・このままじゃダーリン・・・死んじゃうわ・・・!!」 「ねえ、何かないの!?何かやることはないの・・・!?」 ランもしのぶもこう言ったが、 「今の私たちにできるのは、少しでも早くラムたちが戻って来るのを祈るだけだわ・・・祈りましょう」 お雪はこう答えるのがやっとだった。そのときだった。 チュドォーーーーン 大きな爆発音が鳴り響いた。部屋の中が揺れに揺れた。 「な・・・何や!?一体何が起こったっちゅうんや!?」 ランはパニックを起こした。しのぶはおもむろにテレビのスイッチを入れた。 「・・・日本を除くすべての国が侵略者の攻撃により壊滅状態になりました。 その中には無条件降伏し、日本が降伏した時点で彼らに従属することを決めた国もあります・・・」 しのぶはチャンネルを変えた。 「・・・先ほどついに、侵略者たちが日本に襲撃してきました。 東京など、各地の大都市を中心に、次々と無差別爆撃を・・・う・・・わああーー・・・!!」 画面は砂嵐になった。 「こうしちゃいられないわ!私、行ってくる!後はお願いするわ!!」 しのぶは隅においてあった銃を取り、病室を飛び出した。 「はははは!!壊せ!ぶっ潰せ!!降伏していないのはこの国だけだからな!!ユートピア完成は近いぞ、皆の衆!!」 フィリップは高笑いをしながら兵隊たちに命令した。 ラムたちもひずみを出た直後、目の前にこのような惨状が映った。 「くそお・・・遅かったか!!」 面堂は悔しそうにそう叫んだ。 「ひでえ・・・なんてことを!!」 竜之介も唇を噛み締めそう言った。 「弁天!ウチ1人でダーリンのところに戻るっちゃ!!弁天たちは早くメガネさんたちの援護に行って!!」 ラムがこう言うと、 「分かった!でも、もし途中で敵に遭っても無茶すんなよ!諸星の命を救うことが最優先だからな!!」 弁天はこう返事して、ラムを降ろして爆発のあったほうに向かった。 ラムもまた、全速力であたるにもとに飛んだ。その途中、やはり敵の兵隊がラムを襲ってきた。 「邪魔だっちゃ!!どくっちゃーーーっ!!!」 大きな叫び声を出し、兵隊めがけて超特大電撃を繰り出した。 それをまともに食らった兵隊は皆、地上に叩きつけられた。 こんなことを繰り返しながら、何とか面堂邸内の病院までたどり着いた。 To be continued......