Chapter 8 地球大攻防戦 「お雪ちゃん!ランちゃん!今戻ったっちゃ!!ダーリンは!?」 ラムは病室の窓から入るなり、お雪たちにそう尋ねた。 「こらあ、はよせんかい、ラム!!もうダーリンは虫の息や!!はよせんと手遅れになるで!!」 ランはラムをせきたてた。 「わかってるっちゃ!!お雪ちゃん!これがミラクルセージだっちゃ!!これを急いですりつぶして!!」 そう言うとラムはお雪にセージの束を差し出した。 「分かったわ!これをエキスにすればいいのね!?」 こう言うとお雪は部屋を飛び出した。お雪はすぐに戻ってきた。 「さあ、早くこれをご主人様に・・・!!」 お雪はラムにエキスの入ったビンを渡した。 「さあ、ダーリン。これが薬だっちゃ・・・飲んで・・・」 ラムはさじにエキスを入れ、飲ませようとした。しかし、何度口の中に入れても、 エキスがあたるの口から出てくるだけだった。 「ダーリン・・・どうして飲まないっちゃ・・・!?」 ラムは泣きそうな声でそう言った。 「まさか・・・もう薬を自分で飲み込めないほど体が弱っているのかしら・・・!?」 お雪がこう言ったあとも、ラムは何とか薬を飲ませようとした。しかし、何度やっても口から出てくるばかりだった。 「お願いだっちゃ・・・!!ダーリン、飲んで・・・!!お願い・・・!!」 ラムはそう言うと、エキスを口に含み、あたるの口に近づけた。口移しを試みたのだ。 そのラムの執念の前に、お雪もランもただその様子を黙って見ているしかなかった。 そんな時だった。 「ラムちゃん!お雪ちゃん!あれ・・・!!」 突然、ランが心電図を指差しながら叫んだ。 ピッ・・・ピッ・・・ピーーーーー・・・・・・ 病室内に長い調子の音がただ響いた。その音を聞いたラムはただ一言、 「そ・・・そんな・・・」 としか言えなかった。周囲をただ静寂だけが覆った。しかし、その直後だった。 ピッ、ピッ・・・・・・ あたるの心臓が再び動き出した。ラムの執念によりミラクルセージのエキスがあたるの体の中に届いたに違いない。 「ダーリン・・・?ダーリン生き返ったっちゃ・・・!?」 突然のことにラムは一瞬わが目を疑った。 「ラム・・・奇跡よ・・・奇跡が起きたのよ・・・!ご主人様の心拍数がどんどん上がっていっているわ・・・ 体内の毒もどんどん消え始めてる・・・!!もう大丈夫よ、ラム。ご主人様の回復は時間の問題だわ!」 お雪は戸惑っているラムにそう伝えた。 「やったァ!ラムちゃん、やったわねえ!!ダーリンこれで助かったわよ!!」 ランもあたるの回復を心から喜んだ。病室は一転して、歓喜の渦に包まれた。 「さあ、ラム。ご主人様のことは後は私たちに任せて、あなたは弁天たちを助けに行っておやりなさい!」 お雪にこう促され、ラムは、 「わかったっちゃ!ダーリンが目を覚ます頃までには、カタをつけてやるっちゃ!!」 と言って、再び戦場に飛び立った。 その頃各地では、地球人側とフィリップ軍団側との熾烈な戦いが続いていた。 「お兄様!それにメリッサ様も、もうおやめください!こんなことをして一体何になると言うのです!?」 「黙れ!この裏切り者め!!お前も全地球上の下等生命体どもと一緒に血祭りにあげてくれるわ!!」 ジャンヌは兄とその婚約者と戦いながら、何度も戦いをやめることを訴えたが、フィリップもメリッサも聞き入れなかった。 「きゃあっ!!」 メリッサの電撃をくらい、ジャンヌは地面に叩きつけられた。 「さあ、今度こそこれで最後よ!あなたのお姉さんになる私の手であなたに引導を渡してあげる!」 メリッサは手刀の手の形をし、ジャンヌの胸を貫こうとした。 「うわあーーーっ!!」 しかしその瞬間、またしても邪魔が入った。サクラとチェリーが協力して召喚した怪物の攻撃をメリッサは食らった。 「おぬしら!!決してこの地球は渡さぬぞ!!」 そう叫んだサクラであったが、強気の言葉とは裏腹に自らの体はいっぱいいっぱいだった。 召喚獣を呼び寄せるには、大量の霊気を放出し続けなければならない。もうサクラもチェリーも限界だった。 「お・・・おのれぇ・・・!!さっきから邪魔ばかりしおって・・・!!」 このように苛立ったフィリップもメリッサも、だいぶ疲れていた。そしてジャンヌもだった。 「この前の借りは返させてもらうぜ!なんせアタイには今回は頼もしい相棒がいるんだからな!!」 「2対2でオレたちに勝てると思ってんのかよ!?てめえら!!」 弁天と竜之介の言葉どおり、2人はステファニー、ジェニファー相手に有利に戦いを進めていた。 「ぐはぁっ!!」 竜之介のストレートを食らい、妹のジェニファーはビルの壁に叩きつけられた。 「今だ!弁天!!」 「わかってらい!くたばれーーーっ!!」 竜之介が叫ぶと同時に、弁天はマックスパワーでバズーカをジェニファーめがけて発射した。 「ああああーーーーっ!!」 大きな悲鳴とともに、ジェニファーの体は閃光の中に消えた。影も形も残らなかった。 「ジェ・・・ジェニーーーーっ!!」 ステファニーがそう叫んでみても、返事があるはずもなかった。 「ジェニー・・・!!おのれ・・・!!よくも私の妹を!!」 ステファニーは激怒し、2人のほうを睨みつけた。 「予定通りだな、竜之介」 「ああ。じゃあ今からオレはしのぶ達の援護に行ってくるぜ。どうやらあのデカブツに苦戦してるみてえだからな」 そう言い残すと、竜之介はその場を離れた。 「健闘を祈るぜ、親友・・・」 弁天はポツリと呟いた。 「ま・・・待てっ!!逃げるのかっ!!」 ステファニーはその様子を見て、竜之介を追おうとしたが、 「おっと!おめえの相手はこのアタイがたっぷりしてやるぜ。一人で戦ったらどの程度なのか、見せてもらおうじゃねえか」 不敵な笑みを浮かべる弁天に遮られた。タイマンなら勝てるという確信が弁天にはあった。 「おのれ・・・!!その気に入らない薄ら笑い、今すぐ消してやる・・・!!」 弁天とは対照的に、ステファニーは険しい表情だった。 Chapter 9 また若者が死んだ 「わが青春に悔いなァーーし!」 「お母ちゃあーーん!」 「バッキャロオーーー!」 「うおらあーーー!」 「男なんてえーーーっ!」 メガネ、パーマ、チビ、カクガリ、そしてしのぶの5人は、マシューと戦っていた。 5対1とは卑怯な、などと思うかもしれないが、これでもやっと互角という体たらくなのである。 面堂家から支給された様々な近代兵器を駆使して、休む間もなく波状攻撃をかけているにもかかわらず、 一向にマシューは倒れなかった。明らかに疲れてはいたが、5人の疲労はそれ以上だった。 「ハア・・・ハア・・・ちっくしょう・・・!!化け物かよ、あいつ・・・!!」 「い・・・一体いつになったら倒れるのよ・・・あいつは・・・!!」 パーマとしのぶは明らかに苛立っていた。2人以外も皆そうだった。 「あわてるな、パーマ!しのぶ!オレたちの攻撃は確実にヤツに効いている。もう少しの辛抱だ!!みんながんばれ!!」 メガネの言葉どおり、イラついているのはマシューも同じだった。 (ちくしょう・・・ドブネズミどもめ・・・!!5匹がちょろちょろ動き回って攻撃してくるから攻撃しにくいったらありゃしねえ!! このままこんな事続けていたら、こっちがジリ貧になっちまう・・・) 前にマシューと戦ったランのアドバイスにより、5人は常に散らばって攻撃し、決して固まって戦わないように努めていた。 ランが言うには、マシューの必殺技は確かに強いが、どれも有効範囲が狭く、一度に複数の敵を攻撃するのは苦手らしい。 離れた所から攻撃を続け、倒れたところを一気に止めを刺すというのがランのアドバイスに基づいたメガネたちの作戦だった。 (何とか奴らを1箇所に集めねえと・・・でもどうすれば・・・) 一方マシューはこのように考えていた。そんな時だった。 「うわあああーーーー!!!」 考え事をしていて動きが止まっていたマシューの隙を突いたチビが、後ろに回りこみバズーカでマシューの背中を撃った。 「うごああーーー!!」 突然のことにマシューは反応できず、背中に砲撃をまともに受けた。彼はうつぶせに倒れ、動かなくなった。 「で・・・でかしたぞチビッ!!みんな今だ!突っ込めーーーっ!!」 その様子を見るなりメガネはこう叫び、作戦通りスパートをかけた。 「いた!あそこだ!!」 メガネたちがスパートをかけようとしていたその時、竜之介がたどり着いた。 しかし次の瞬間、マシューが突然仰向けに向きなおした。そしてにやりと笑った。 「な・・・!?」 5人はバカなという気持ちになった。そしてその直後マシューの体が光ったかと思うと、5人は皆吹っ飛んだ。 これこそマシューの作戦だったのだ。わざと倒れた振りをして、敵が一斉に襲ったところを、 威力は抜群ながらも射程距離が狭い全身から発射する怪光線で倒すというものだった。 作戦勝負はマシューの勝ちだった。この攻撃を受けた5人は、しのぶを除き皆即死した。 「し・・・しのぶ!みんなァーーーっ!!」 竜之介はあわててしのぶのもとに駆け寄った。しのぶももはや虫の息だった。 「しのぶ・・・しっかりしろ!しのぶ!!」 「りゅ・・・竜之・・・介・・・君・・・セ・・・セージは・・・あたる君は・・・」 しのぶは抱きかかえられたまま今にも消えそうな声で尋ねた。 「心配いらねえ。今頃ラムの奴が諸星に薬を飲ませてるはずだ。あいつはじきに回復するさ」 竜之介はしのぶを安心させるように答えた。 「じゃ・・・じゃあ・・・助・・・かるの・・・ね・・・よか・・・った・・・」 これだけ言うと急にしのぶの力が抜けたのか、竜之介はしのぶか重くなったように感じた。 「お・・・おいっ!しっかりしろ!!お前もミラクルセージで助けてやる!!コラ!目ぇ閉じんじゃねえっ!!」 竜之介はしのぶの頬を叩き必死にそう叫んだが、しのぶは竜之介を見つめて微笑んだあと、二度と目を開けることはなかった。 「しのぶ・・・しのぶ・・・!!ち・・・ちくしょお・・・・!!」 竜之介は唇を噛み締め、目から涙を流ししのぶの死を悲しみそして悔しがった。 自分があともう少し早く着いていたら・・・そう思うととてもやりきれなかった。 「おい!いつまでセンチメンタルしてるんだ?泣き虫野郎・・・」 竜之介を見下しながらニヤニヤと笑い、マシューは言った。 その言葉を聞いた瞬間、竜之介は憤怒し、マシューに飛びかかった。 「てめえーーー!!オレは女だあーーーー!!!よくも・・・よくもしのぶ達をーーーーっ!!!」 Chapter 10 了子の最期。兄、怒る!! (待ってろよ・・・了子・・・!今すぐこの兄が助けに行くからな・・・!!それまで無事でいるんだぞ!!) 面堂は雑魚を蹴散らしながら、了子が率いている面堂家私設軍隊の戦っている面堂邸近くの戦闘地まで急いでいた。 その頃了子はあたるの体を狙うティモシー率いる大部隊を相手に善戦を続けていた。 「味方がやられてもひるんじゃだめよ!撃ち続けなさい!!」 了子はここまで実によく兵隊たちを指揮し、数で勝るティモシーの部隊相手に効果的にダメージを与えていた。 (ちいっ、あの小娘め・・・なかなかの切れ者だな・・・数ではこちらが勝っているというのに・・・ このままではこちらが全滅してしまうかもしれん・・・なんとかせねば・・・) ティモシーは面堂軍団をなかなか攻略できないことに苛立ちを感じていた。 「おい、あの娘だ!あそこで指揮しているあの娘を狙え」 「だ、だめです!あの娘、自分の部下を指揮しながら自分もしっかりガードしていて・・・手が出せません!」 ティモシーの命令に部下はこう答えた。 「だったらオレがやる!ジャマール!今からオレに代わって部隊を指揮しろ。そして敵の注意をオレからそらせ!」 そう言うとティモシーは戦車の上から降りた。その姿は了子の目にも見えた。 「指揮官が代わった・・・?さっきの男は一体何をするつもりなのかしら・・・?」 了子がそう言ってティモシーの動きを目で追おうとした瞬間、了子の足元にライフルの弾が飛んできた。 命中はしなかったものの、そのために一瞬ティモシーから注意がそれた。 了子が再びその方向を見てみると、ティモシーは茂みにでも隠れたのか、いなくなっていた。 (さっきの男を見失ってしまった・・・でも今はそんなこと気にしてはいられないわ・・・) 了子は不安を感じながらも部隊の指揮を続けた。敵はそろそろ全滅に近くなった。 その頃面堂は息を切らしながら必死に走っていた。そしてようやく了子たちが戦っている戦場に着いた。 そんな面堂の目に、衝撃的な光景が映し出された。ティモシーが了子の後ろからライフルで狙いをつけているではないか。 「了子ォ!!後ろだ!!伏せろぉーーーーっ!!」 面堂は叫び、あわてて了子のほうに向かった。しかし、手遅れだった。 ティモシーの放った3発の銃弾はすべて、了子の左胸を貫いた。 「あ・・・ああああっ!」 了子は悲鳴を上げたあと、その場に倒れた。 「りょ・・・了子ーーーっ!!」 「お嬢様ーーーっ!!」 面堂と兵士は皆叫んだ。面堂が真っ先に了子のところに向かった。 「わ、若!!いつお戻りになったのですか!?」 面堂の姿を見て1人に兵士が了子のほうに近づきながらそう言った。 「何をしとる!?敵はもうすぐ全滅する!敵を取り囲め!一斉に攻撃をかけろ!!」 面堂はそんな兵士を手で払い、こう命じた。しかし面堂は胸中穏やかではなかった。 「了子!しっかりするんだ、了子!!」 「お・・・にいさま・・・来て・・・くれたんですね・・・」 了子を抱きかかえたまま面堂が必死に呼びかけると、了子はかすかな声でしゃべりだした。 「お兄・・・様・・・諸・・・星様は・・・」 「大丈夫だ!今頃はラムさんが持っていったミラクルセージの力ですっかりよくなっているはずだ!! 了子、お前も絶対に助かる!だからお前もがんばるんだ!!了子!!」 今にも絶えそうな声であたるのことを気にかける了子を、面堂は必死に励まし続けた。 「今・・・まで迷・・・惑ばかりかけ・・・てごめん・・・なさい、お兄・・・様・・・」 了子は死を覚悟したのか、今までの兄に対する仕打ちに対するざんげを始めた。 「な・・・何を弱気になっとるんだ!気をしっかり持つんだ!」 面堂はそれでも励まし続けた。 「お兄・・・様・・・ありが・・・と・・・」 「う」を言おうとする前に、了子は息絶えてしまった。 「りょ・・・了子?了子!?おい、しっかりしろ!!おい、目を開けろ!!了子!了子ぉーーー!!」 面堂がどんなに叫んでみても、了子はもう何も言わなかった。彼が妹の亡骸に頬を摺り寄せて泣いていたその時であった。 ドォーーーン・・・・・・ 面堂の後ろのほうからとてつもなく大きな爆音が聞こえた。 振り返ってみると、面堂家の軍隊も、ティモシーの軍隊も全員息絶えていた。 さらによく見回してみると、バズーカを構えたティモシーの姿があった。彼の仕業に間違いなかった。 「気が済んだかい?面堂」 ティモシーは面堂を見つめ、そう言った。 「ティモシー・・・キサマ一体何を考えているんだ!!ボクの家の軍隊はともかく自分の仲間まで殺すとは・・・!!」 面堂は振り返りものすごい目でにらみ返しながら言った。 「このバズーカは破壊力が調整しづらくてな・・・お前さんの仲間だけを狙ったのだがうまくいかなかった」 ティモシーは淡々と答えた。この言葉を聞いて面堂は一瞬ぞっとした。 目的のためなら仲間さえも平気で犠牲にするティモシーの残酷な性格をまざまざと見せ付けられたからだ。 「でもちょうどいいじゃないか。これでオレとお前と1対1で決着をつけることができる。 第2ラウンドといこうじゃないか、面堂・・・オレもお前と同じく剣で戦うぜ」 そう言うと彼は、左の腰に提げていた剣を抜いた。そしてご丁寧にもそれ以外の彼の武器をすべてその場で壊した。 「いいだろう!了子と、今までキサマが殺したすべての人間たちの敵・・・キサマの体で取らせてもらう!!」 面堂は鞘に刀をさしたまま居合抜きをするために全力で走り間合いを詰めた。 「はぁーーーーーっ!!」 Chapter 11 弁天、そして竜之介、絶命! 「ぐああーーーっ!!」 弁天はステファニーに棒で殴られ、10メートルほど飛ばされた。 妹のジェニファーの死の悲しみを怒りに変えて戦うステファニーに、弁天は予想外の苦戦を強いられていた。 「うっ!!ぐおっ!!」 仰向けになった弁天はステファニーに馬乗りされ、タコ殴りにされた。 「このアマァ!!調子に乗るんじゃねえーーーっ!!」 弁天はステファニーの両手を掴み、起き上がってヘッドバットを食らわせた。そして彼女の顔面に強烈なパンチを浴びせた。 弁天はさらに追い討ちをかけようとしたが、空中で体勢を整えたステファニーのカウンターの餌食となった。 弁天はビルの残骸でできた大きな壁に背中から叩きつけられた。そして動かなくなった。 (し・・・死んだか・・・?だが念には念を入れて、きっちり止めを刺しておかねばなるまい・・・) ステファニーは自身もかなりのダメージを受けていたため、ふらつきながら弁天のもとに歩み寄った。 そして弁天のそばにたどり着いたステファニーが右手を熊手のような形にし、弁天の心臓をえぐり取ろうとした瞬間だった。 ズドォーー・・・・ン 弁天は背中に隠し持っていたバズーカを突然取り出し、それを発射した。至近距離にいたステファニーの腹を貫いた。 ステファニーは膝から崩れるようにその場に倒れ、そのまま絶命した。 「悪いな。おめえ個人には何の恨みもねえけどよ、アタイはこの地球が、地球の奴らが気に入ってんだ。 おめえたちがそんな奴らを抹殺しようってんなら、こうするより仕方ねえんだ・・・」 弁天はステファニーの遺体を見つめながらこう呟いた。その時だった。 「べんてーん!」 30メートルぐらい離れたところから彼女の名前を呼ぶラムの姿が現れた。こちらに向かって走ってきていた。 「へへへ・・・ちょっと来るのが遅えんじゃねえか・・・?ラム・・・」 ラムの姿を見て、弁天は気の抜けた声でそう言った。 しかし、その時、弁天の目に信じられない光景が映し出された。それを見て弁天は仰天した。 壊れたビルの残骸に隠れたフィリップ軍団の兵士の生き残りが、マシンガンをラムのほうに向けているではないか。 「ラムーっ!!来るなーっ!!来るんじゃねぇーーーっ!!」 弁天はそう叫びながらラムのいる方向に全力で走り、ラムのところにたどり着くと、彼女を突き飛ばした。 次の瞬間だった。 ズガガガガガガーーン 「ぐおわあああーーーーーっ!!!」 マシンガンを構えていたのは1人ではなかった。弁天は3方向からのマシンガンの一斉射撃を食らい、蜂の巣にされた。 「ぐはぁっ・・・・・・!!」 口からは吐血し、全身からもおびただしい量の出血をし、その場に仰向けに倒れた。 「弁天!弁天!!しっかりするっちゃ!!」 弁天の体を揺すりながら必死に呼びかけるラムにも、狙撃隊は容赦なくマシンガンを撃ってきた。 「うわあああああーーー!!」 ラムは空中にジャンプしてかわすと、電撃を3連発して瞬く間に3人の敵を倒した。 その後もラムは必死に弁天に呼びかけた。 「弁天!弁天!!」 すると弁天が口をパクパクさせた。 「ラ・・・ム、諸・・・星・・・は・・・」 「ダーリンはもう大丈夫だっちゃ!助かったっちゃよ!!」 弁天の必死の問いかけにラムは答えた。 「そう・・・か・・・よかっ・・・たな・・・・・・」 弁天は消えそうな声でそう言った。 「弁天も今すぐ助けてやるっちゃ!今からミラクルセージを飲めば助かるっちゃ!!」 ラムはそう叫んだが、弁天は、 「無理さ・・・アタイは・・・死ぬ。自分の・・・体の・・・ことは・・・自分が・・・一番・・・よく・・・」 と答えたあと、咳き込み血を吐いた。 「な・・・何弱気になってるっちゃ!弁天らしくないっちゃ!!それより、もうしゃべっちゃだめだっちゃ!!」 ラムは必死に弁天を励ました。 「へ・・・へへ・・・おめえと・・・諸星の・・・結・・・婚式に・・・出れねえのが・・・心残りだ・・・ぜ」 微笑んでいるのにどこか悔しそうな顔でそう言った後、弁天は息を引き取った。 「弁天・・・!弁天!弁天!!うう・・・・・・」 ラムは泣きそうになったが、声を上げるのを必死にこらえた。 「弁天・・・敵は絶対にとってやるっちゃ!!弁天からもらったこの命、絶対に無駄にしないっちゃ!!」 そう言うとラムは空に飛び立った。フィリップ達の方向に向かっていた。 一方その頃竜之介対マシューの戦いも大詰めを迎えていた。 しのぶ達5人の攻撃を受け続け疲弊しきったマシューは、竜之介の敵ではなかった。 「ぐあああーーーっ!!」 竜之介のとび蹴りを食らい、マシューは倒れた。すると彼は歩み寄る竜之介に対し、 「ま、待ってくれ!参った!もう降参だ!!だから頼む!命だけは・・・命だけは助けてくれぇっ!!」 とうろたえた様子で命乞いを始めた。 「散々人を殺しておきながらよくもそんなことがぬけぬけと言えたもんだな・・・!!」 竜之介はあきれた様子でそう言ったが、そのあまりの惨めな姿に、竜之介は殺意が薄れた。 「・・・しょうがねえ、分かったよ。だがな、オレの気がかわらねえ内にとっとと地球から消えやがれ! そして二度と地球に来るんじゃねえ!分かったか!!」 そう言うと、竜之介はマシューに背中を向け、歩き出した。 10メートルほど歩いた直後だった。 「うわああーーーーー!!」 サバイバルナイフを手に取ったマシューが竜之介を後ろから刺し殺そうとした。 しかし竜之介はその手をねじり、ナイフをマシューの胸に突き刺した。 「ぐぎゃあーーーっ!!」 叫び声を出し、後方に2,3歩下がった後、マシューは仰向けに倒れた。 返り血を浴びた竜之介はただ一言、 「ケッ、救いようのない野郎だぜ・・・」 と呟いた。しかし、次の瞬間だった。 バアーーン 「うっ!」 ライフルの銃声が響くや否や、竜之介はそう叫んだ。思わず左胸を押さえた左手を見てみると、真っ赤だった。 竜之介の薄れゆく視界に、ライフルを抱えた一人の兵士の姿が映った。 「て・・・てめえ・・・!!よくも・・・!!」 竜之介は血で染まった左手を前に突き出しながらその兵士の方向にふらふらと歩いた。 その姿を見た兵士は恐怖のためか、ライフルを捨て逃走した。 竜之介は5メートルほど歩いた後、うつぶせに倒れた。 「へへへ・・・結構あっけなかったな・・・オレの死に様は。劇的な人生を歩んできたわりには・・・ あーあ・・・せめて死ぬ前に、ブラジャーをつけて、セーラー服を着て、学校に行きたかったなあ・・・」 これだけ言った後、竜之介は力尽きた。 To be continued......