−3― 社長室はかなり広く、面堂がいつも使っているマホガニー製の机の前には、 来客用のこれまた大きい机とソファが置かれている。 いつもなら部屋の隅には生い茂った美しい観葉植物が置かれて、きちんと整理整頓されている綺麗な部屋だが 今は折れた刀とか、壁にめり込んでいる木槌、倒れた観葉植物などが社長室に転がっている。 机の上やソファの上の砕けた木槌の破片を払いながら来客用のソファに面堂が腰を下ろした。 あたる「そんで話ってなんだ?」そう言いながら俺もすわる。 終太郎「…なんで社長の僕より偉そうにふんぞり返ってるんだ?足まで組んで?」 面堂は軽くフンッと鼻を鳴らしたが、それから文句を言うこともなく話を始めた。 終太郎「…実はな…諸星…」何だか真剣そうに話を切り出す。 俺も真剣な顔をする。 あたる「やっぱり給料上げてくれるとか?」 ガタンと面堂が座っていたソファが後ろに倒れる!!手にはいつもの日本刀!!!すでに臨戦態勢に入っている!! あたる「冗談!!冗談だよ!!本気にするなって!!」 終太郎「貴様の言うことは冗談に聞こえん!!」 まさに斬りかかられようとされて第2次バトル開始かと思ったが、そこへしのぶが現れた。 しのぶ「ハ〜イそこまで。面堂君あたる君の挑発に乗っちゃダメよ。 あたる君もリクエストどおり、ケーキつけたからマジメにね。」 あたる「さすがしのぶ〜、ケーキなに?」 しのぶ「ジャンボイチゴが入ったロールケーキよ。紅茶は今日はピーチアプリコットティ。 面堂君の好きなフルーツフレーバーティよ。(※)」 あたる「お〜うまそ〜だな♪」 しのぶの後からポットとガラスの小瓶に入った茶葉を持ったラムも入ってくる。 ラム「ダーリンも少しはマジメに終太郎に協力するっちゃ」 あたる「俺はいつもマジメだぞ?」 終太郎「嘘ばっかり。」 ケーキ皿も紅茶セットも、面堂の趣味で何かブランド物の白磁のティーセットだ。 会話の間にもしのぶとラムは手際よくお皿を並べて、カップにお茶を注いでいく。 紅茶のいい香りが立ち昇る。 ラム「いいな〜ウチもケーキ食べたいっちゃ。」 しのぶ「秘書室で一緒に食べましょ」 終太郎「ここでみんないっしょに食べませんか?」 しのぶ「でもあたる君とお話があるんでしょ?」 終太郎「かまいませんよ、後で話の内容の正式通知を各部署に通達してもらわなければなりませんから。 ラムさんもオブザーバー(※)として聞いてて下さい。」 そしてラムとしのぶが一緒に3時のおやつをとる準備が終わってから面堂は話し出した。 つづく。 ※フルーツフレーバーティ―果物の香りを紅茶葉につけたものです。レモンティ、アップルティなどがよく知られています。 種類はかなりたくさんあります。 ※オブザーバー―意見は言えるけれど議決決定権を持たない人。