―4― 終太郎「前々からある商品の事をある人から聞いて思っていた事なんだが、それをそろそろ実行に移そうと思う。」 しのぶ「なあに?」 終太郎「ある所からのある物の輸入販売…」 あたる「何だもったいぶって?ちゃんと言えよ。」 終太郎「…太陽系第8番惑星海王星からのシャーベット輸入販売だ。」 あたる「海王星?お雪さんのところか?」 終太郎「海王星女王お雪様とは、実は昔から関係があるのでな…」 この言葉を聞いた瞬間、あたるとしのぶ、そしてラムが立ち上がる。 あたる「なに〜面堂!!お前いつの間に〜!!お雪さんは俺がいつかハーレムに…」 ラム「ダーリン!!まだそんなこといってるっちゃ〜!!」ラムはあたるに放電現象を起こす。 しのぶ「面堂君のバカァァァァ〜!!」しのぶは若社長が使っている大きな机を持ち上げる。 終太郎「しのぶさん違います!!取引先としての関係です!!」あわてて面堂が説明する。 しのぶ「取引先?」 終太郎「そうです、落ち着いて机を置いて下さい。説明しますから。」しのぶが机を置いて、ラムもソファに座りなおす。 あたる「あ〜びっくりした。おどかすなよ。しかし何だ?面堂家って地球外の商品なんて扱ってたか?」 しのぶ「私、地球外の商品なんて店頭で見たこと無いわよ?」 終太郎「取引といってもそんな大規模なものじゃないし、商品取引というものでもない。技術協力だ。ラムさんの仲介でな。」 あたる「ラムの?お前いつそんなことやってたんだよ?」 ラム「高校の時からだっちゃ。ウチら鬼族が地球に来て、お雪ちゃんが遊びに来てた頃からだっちゃ」 しのぶ「そんなころから?」 あたる「どうして話さなかったんだよ?秘密にしてくれって面堂に言われてたのか?」 ラム「別にお雪ちゃんからも、終太郎の方からも、秘密にしてくれなんて言われてないっちゃ。 ウチら鬼族は、別に商売に興味なかったから。それにどちらかというと商売熱心だったのは、お雪ちゃんのほうだっちゃ」 あたる「なんで?」 終太郎「海王星は、同じ太陽系にある地球と交流を、持ちたかったんだよ。ずっと以前からね。 でも地球はいまだに統一されていない。多くの国がひしめきあってる。そんな中ラムさんがいる国、この場合日本だが、 それでも一国だけの交流は出来なかったんだ。正式には今もそうだ。」 あたる「なんで?」 終太郎「一つの国が技術独占をしたら他の国が黙っちゃいない。 それに海王星の技術が流出すれば平和目的外…つまり軍事目的に利用される恐れがあるからだ。」 ラム「お雪ちゃん、言ってたっちゃ。地球とは交流持ちたかったけど、国としては未熟で、まだ関わりを持ちたくない。 でも一企業なら、ウチのクラスメートなら良いだろうって。」 あたる「なるほどね…しかしそれなら一企業でも技術独占はマズイだろ?」 俺はロールケーキを口の中に放り込んだ。面堂も、紅茶を少し飲みながら答える。 終太郎「だから海王星と共同開発したものは、面堂家からは、公開してないんだよ。」 あたる「一体どんなものが、今まで共同開発されたんだよ?海王星と地球の科学じゃレベル違うだろ?」 終太郎「確かに失敗もあったが成功もあった。それに科学といっても海王星と地球、 つまり面堂財閥が保有している科学技術と比べてだが、得意分野の違いがあるんだよ。 例えば海王星は生物バイオ技術とか不得意なんだ。」 あたる「生物バイオ技術?お前の家、また変な物を造りだしたんじゃないだろうな、電気野菜みたいなのとか?」 電気野菜。面堂の庭に10年ほど前から異常増殖した電気を帯びている植物群。 何の為に面堂家が、そんな食えないものを作り出したのか、まったくもって今になっても意味不明だが、 そこで昔、子供の頃遭難して今は面堂家お庭番となっている奴とラムをめぐって戦ったことがあるのだ。 そのことは俺以外、面堂、しのぶ、コースケも知っている。 同じ疑問を持っていたのか、しのぶが聞いた。 しのぶ「ねぇ面堂君、電気野菜なんかどうして作ってたの?食べたら感電するのに?」 終太郎「話に聞くと、当時あれはもともと花に対して発光細胞(※)を組み込んでいたんです。 観賞用として暗いところでも自然発光するように。 使っていた細胞は蛍の遺伝子でした。でも蛍のように弱い光だと植物に遺伝子を組み込んだ場合、 人間の目には見えないわずかな光だったので発光細胞ではなく、発電細胞を組み込んだらしいんです。」 あたる「発電細胞?」 終太郎「全ての生物はわずかながら電気を発している。その中で強い電気を帯びても平気な生物。 つまり電気ウナギとかの発電細胞の遺伝子を植物に組み込んだ…」 しのぶ「それが強すぎて研究放置されて異常増殖してあんなジャングルになったのね。」 あたる「それで海王星の生物バイオ技術は、不得意って言う話はどうなったんだ?」 ラム「海王星のバイオ技術が不得意な理由は、太陽に遠くて地球より植物の種類が余りないからだっちゃ。」 あたる「ふ〜ん、なるほど…それで海王星との共同開発で成功した物ってなんだ?」 終太郎「お前もよく知っているものだよ。…僕は今でも腹が立つがな。」 つづく。 ※発光細胞―発光細胞遺伝子を組み込んだ実験による生物は存在します。たしか発光するネズミの成功例があったと思います。 ただし発光細胞、発電細胞は正式名ではありません。私の勝手な名前です。 興味ある方はニュートンやネイチャーなどの科学雑誌を見ると良いでしょう。日本語版も出ているし、面白いですよ。