―10― あたる「こ〜なったらアレしかないな。覚悟しろよ。ケガしても知らんからな。」 コースケ「そ〜だな。アレだな。決闘だな。そっちこそ覚悟しろよ。」 2人見詰め合って不敵に笑いあっている。面堂のほうは何がおかしくて笑っているのか、さっぱりわからない。 ロビー内で決闘なんかしないでほしいな〜と内心どこか他人事のように思っていた。 終太郎(会社ロビーで、いつのまに決闘するなんていう事になったんだ?決闘の余波でロビーが壊れると後片付けで また竜之介さんが怒るな…でも神聖な決闘に口をはさむ訳にもいかんしな…) この時点で面堂はある方法…自分が知っている唯一の方法での決闘を2人が行うものだと思っていた。 それにこんなに、マジメに2人が争っているのを最近見たことがなく、本気で戦ったらどちらが勝つのかと思っていたし、 自分に実害がなければ、それでもいいと思っていたので止める気も無かったのである。 あたる「いくぞコースケ!!手加減はしないからな!!」 コースケ「そっちこそ、今のうちに謝れ。泣かすぞ!!」 パーマ「あいつら何やってんだ?」 メガネ「愛と勇気と飯をかけての決闘だろ?あいつら飯を賭けの対象にするとは何事だ。 飯は人類にとって絶対必要かつ神聖なるものなのだ…それをあいつらは…(以下略)」 チビ「別に、今決めなくても時間的に早いから、先にカラオケに行くんだろ?」 カクガリ「俺は、今決めてもいいぜ、腹はいつでもレッツゴーだ。」 ラムやしのぶは無責任に、あたるとコースケを応援している。 竜之介「ま〜とりあえず、がんばれ!」 会社ロビーに集合していた者達一同は、2人いったいどんな技を繰り出すのか、内心ものすごく期待した。 コースケ、あたる同時に叫ぶ!!「いくぞ!!最初はグー、ジャンケンポン!!」 ………………………………………………………………………………………………………………………………………核爆!!! 余りのことに吹っ飛ぶ一同。吹っ飛ぶロビー。期待していた分だけ、失望も大きかった。 メガネ「なんじゃああ、そりゃあああぁぁぁぁぁ!!!!」 パーマ「ふざけんなよおおおぉぉ!!!!!!」 ロビーに失望と怒りの絶叫が響く。 あたる「期待してたのは、お前らの勝手だろうが?」 コースケ「チクチョー負けた。おごらせようとしたのに、俺の金づるが!!」 力んで叫ぶコースケ。それとは対照に勝ち誇るあたる。 あたる「フッ。かるいぜ、この俺様に勝とうなんて10年早い。」 コースケ「今度は勝つぞ、ファイト〜オー!!!」 そこへあきれたように見ていた若社長が会話に参加する。 終太郎「フン。バカバカしい。リンゴを頭の上に乗せてお互い大砲で撃ち合うのかと思っとったのに、何のことはない。 たかがジャンケンじゃないか?」 あたる「ほ〜、お前ジャンケン知っとったのか?」 終太郎「バカにするな、ジャンケンくらい知ってるぞ。」 あたる「そうか。でもリンゴを乗せて大砲で撃ち合うなんて、そんな決闘考えるのはお前だけじゃ。アホ。 とりあえず、ブイ。やったね。大勝利!!!」 そしてあたるは、高らかにVサインをして勝利宣言をした。 ―11― あたる「いいな、コースケ居酒屋で。」 コースケ「俺も男だ。真剣勝負に負けた以上、異存はない。」負けたのはコースケだが、何故か偉そうにふんぞり返っている。 終太郎「真剣勝負ってジャンケンのくせに。」すかさず面堂がツッコミを入れる。 ラム「ダーリンもう食べにいくっちゃ?」 しのぶ「時間的に少し早くない?」 あたる「とりあえずカラオケにでも行こうぜ。」 そこで一同は先にカラオケをすることとなった。 終太郎(…またか…) はっきり言って終太郎はカラオケが好きではなかった。あんなに騒がしいところは嫌いだったのである。 それにラムさん、しのぶさん自身の歌を聞くのはいいが、一体誰の歌を歌っているのか、さっぱりわからなかったのである。 もともと終太郎はTVを余り見なかった。 見るのは政治経済番組か、自然動物番組が主で、番組の間でのCMを見ても わずかなフレーズでは特に興味を持たなかったのである。 だからいつも、歌わずに盛り上げる方を担当していた。 カラオケ屋に集団で入る。 何回か来たことがあるし、来たときはいつも集団なので店員も慣れたものですぐ一番大きな部屋に案内してくれた。 それでも10人も入るとちょっと狭いかなという感じだ。 すぐにカラオケのリモコンの取り合いとなり、しのぶは店内電話で飲み物を注文する。 ラムはすでに盛り上げようのアイテムの鈴を鳴らしている。 メガネ「俺は同期の桜だ…(※1)」 パーマ「俺は宇宙戦艦ヤマト!!(※2)」 コースケ「メガネ…毎度の事ながらマニアックすぎるぞ…」 チビ&カクガリ「俺たちはB’zを歌うぜ。」 あたる「B’zっていう顔かよ!」 爆笑する一同。その笑いの中であたるは、ふと面堂の方を盗み見る。 機嫌が悪かったらおごってもらう確率は低くなってしまうからだ。そして…面堂の方はあまり笑っていなかった。 B’zって誰だ?みたいな顔をしている。が、それでも雰囲気につられているのか、微笑している。 あたる(や〜っと初めて来た時よりかは、なじんだみたいだな…。そうだ!今日は面堂に何か歌わせてみるか。 あいつ歌ったことないもんな〜怒らせてしまうかもしれんが、やってみようか?) メガネ「貴様と俺とは〜同期の桜 〜(中略) 咲いた花なら散るのは覚悟〜見事散りましょ〜国のため〜」 メガネがしぶい歌を披露する。そんな中、面堂に話しかけるあたる。 あたる「な〜面堂、おまえいつも、盛り上げるだけだろ〜そろそろ何か歌ってみんか?」 終太郎「嫌だ!!」案の定すぐに即答される。 あたる「歌わんと実力行使に訴えるぞ〜それでもいいのかな〜?」 終太郎「何だ?実力行使って?」 あたる「タコヤキを注文してお前の目の前でみんなで食ってやる。ラムやしのぶ、竜ちゃんもみんな喜んで食うだろうな〜」 面堂は目をつむり、眉を寄せて考え込んでいる。その間にパーマが歌いだした。 パーマ「さらばぁ〜地球よぉ旅だ〜つ船はぁ〜宇宙ううぅ戦艦〜ヤァマァトォ〜宇宙のかなたイスカンダルへぇ〜 運命背負い、今〜飛び立つぅぅぅ〜」 チビ「あいかわらずスゲエ音痴だな?」 カクガリ「耳が壊れるぜ!」 あたるはもう一押しすることにした。 あたる「な〜面堂、お前の歌声、聞いたらラムやしのぶはホレなおすぞ〜やってみろよ?」 終太郎「…でも僕は…最近の歌は本当に知らないんだ…歌っている人さえ知らないのに…」 あたる「あのな…メガネなんかど〜なるんだよ?メガネが歌ってた歌なんて、骨董品もいいとこだぞ?」 終太郎「…わかった…とりあえず僕が知っている歌…歌ってやる。」 あたる「お〜やったね♪楽しみだな〜♪」 ―12― 面堂がリモコンに手を伸ばし、番号のコード本を見ながら歌の番号を入れていく。 あたる「何歌うんだ?」 終太郎「内緒だ。」 あたる「すぐ順番が来るのに〜う〜ん終ちゃんのイケズ〜♪」 終太郎「気色の悪い声をだすな、バカ。」 その間にもチビ&カクガリのB’zの歌を身振り手振り歌っていく。歓声を上げて盛り上げるラムたち。 チビ&カクガリ「〜ミエナイチカラで、だれもが強く繋がっている〜」 竜之介「英語が、ところどころあってよくわかんねぇえけど、一生懸命なのはわかるぞ!!」 メガネ「さっきのパーマの音痴と、どっちもどっちだな。」 パーマ「俺のほうが、かっこいいに決まってるぜ!!」 コースケ「スゴイ自信だなぁ、パーマ!」 一同、好き勝手に感想を述べて笑っている。 チビ&カクガリのB’zの歌が終わった。礼をして席に着く2人。次の曲のメロディが流れ出す。 コースケ「このイントロは…演歌か?メガネお前か?」 メガネ「いや違う。誰だ?」 あたる(…演歌〜??まさかこの曲を選曲したのは…) 終太郎「僕だ。」 あまりの事にぶっ飛ぶ一同。そんな中ステージの方へ歩いてマイクを持ち、歌いだす若社長。 終太郎「〜人生いろいろ〜男もいろいろ〜♪(by島倉千代子)」 メガネ「あいつなんか悪いもんでも食ったのか?」 チビ「…怖いよう…」 コースケ「あたる…お前、日頃から木槌で面堂ぶん殴りすぎて、その影響でおかしくなったんじゃあ?」 みんな、もし面堂が歌うとしたらJ−POPのような、それこそB’zのような歌でも歌うのかと思っていたのだ。 あたる「人聞きの悪い。それに木槌でぶん殴っていたのは俺だけじゃないぞ?お前らだって殴ってたじゃないか?」 高校の時から今に至るまで、一応勤めている会社の社長に対して、毎度の事ながら、お互いむちゃくちゃである。 あたる「とりあえず、面堂が初めてカラオケしたんだ。盛り上げようぜ。イェ〜イ!!」 一同、気を取り直し色とりどりの紙テープを投げたり、 紙ふぶき入りのパーティ用の花火クラッカーを鳴らしたりして、盛り上げた。 あたる「い〜ぞ〜終ちゃん(演歌でも)かっこいいぞ〜ピューピュー。イエ〜イ!!」 つづく。 (1)同期の桜―戦時中の軍歌です。なぜかメロディ知っている私…そんな世代じゃないのに。カラオケはあるかどうかは不明です…。 (2)宇宙戦艦ヤマト―ビューティフルドリーマーで友引町脱出時パーマが歌っていた元ネタの歌です。  あの歌をワザとあの音痴さで歌うパーマ役の声優さん、すばらしい演技力だと思います。初めて見てわかった時には大爆笑。  「さらば〜友引〜旅だ〜つ船は〜♪」映画では、ここまででしたが…。