不幸というものは突然やってくる。
しかし、幸せもまた突然やってくるものなのだ・・・。
不運・幸運〜前編〜
ココは友引町。
いつも何かと騒ぎがある友引町。
しかし、今日の騒ぎはちょっと大きいようだ・・・。
駅員「1番線、ドアが閉まります。ご注意ください!」
駅員がそう言うと、発車ベルが鳴り、電車のドアが閉まった。
ドアのすぐ近くに手をポケットに入れているのは諸星あたる。
友引高校を卒業後、電車で10分の友引大学へ入学。
現在、大学3年生。
そして、あたると(無理矢理)腕を組んでいるのがラム。
同じく大学3年生。
駅を出発して2分後、次の駅に着いた。ドアが開く。
30秒ぐらい経ったろうか?発車ベルが鳴る。
駅員「3番線、発車致します。ドアにご注意ください。」
ドアが閉まり、発車する。
8分後・・・
あたる達は改札口を出て、大学を目指して歩きだした。
あたる「・・・・・・・・・」
ラム「・・・・・・・・・」
二人の間には張りつめた空気が流れていた・・・。
と、ココでラムが口を開いた。
ラム「ねぇ、ダーリン。うちのこと、好き?」
あたる「ん?さあな・・・。」
いつも通りの会話。しかし、ラムがいつもと違う事を言った。
ラム「真剣に答えるっちゃ!」
あたる「・・・・・しらん。」
あたるはいつもと違う事を言われたので焦った。どう答えようか、と。
ラム「ダーリン!(怒)」
パリパリッ・・・パリッ・・・
ラムが放電し始める。
あたる「ん?なんか騒がしいぞ・・・?」
あたるはさっきより焦ったが、命綱があった・・・。
なんだか人だかりが出来ている。
早速二人も近づいてみた。
男の声「オラオラ!早く警察よばんかい!」
あたる「よく見えんな〜・・・。訓練でもやっているのか・・・?」
ラム「もっと前に言って見るっちゃ!」
二人は人だかりをかき分けて一番前に出た。そこには・・・─────
そこには、ハンドガンを持って人質を捕まえている二人組の犯人がいた。
そして、そのそばには子供が一人・・・。
人質の男「たっ、助けてくれぇ・・・!」
犯人A「うるせぇよ!ぐだぐだ言ってると撃ち殺すぞ!」
犯人B「死にたくなかったら黙ってろ!オイ、警察はまだこねぇのか?!」
犯人A「早くこねぇと撃ち殺しちまうぞぉ!」
あたるはそのハンドガンが本物だと悟った。そしてそのそばには子供が・・・。
その時何を思ったか、あたるは犯人達の方へ走り出した。
ラム「ダーリン!何考えているっちゃ!行っちゃダメだっちゃ!」
ラムの制止を振り切り、あたるは走って犯人達の方へ走り出す。
ラムは我が目を疑った。あたるは人質の男の子供を助けようとしていたのだ。
しかし犯人達は、こちらに向かってくるあたるをハンドガンで撃とうとする。
犯人A「アホがぁ!死ねぇぇぇぇぇ!!!」
ハンドガンの標準が定まった。犯人が引き金を引く。
ドシュッッッ・・・!!!
鈍い音がしたかと思えば、あたるの背中から血が噴き出す。
群集達は一瞬、時が止まったような錯覚に追い込まれた・・・。
ラムはじっとその現場を見ていた・・・。
本当に一瞬のことだった・・・・・。
・・・・・・・・・ドサッ・・・・・・・・・。
あたるが地面に倒れ込む。
犯人A「まだ懲りちゃいないようだな!」
そう言うと・・・
容赦なく引き金を引く。
ドン!ドン!!ドン!!!
犯人B「そろそろずらかるぞ!」
犯人A「ハッ、一生そこにいるんだな!」
犯人達が逃げてから数秒後。
ラム「ダ・・・ダー・・・リン・・・?」
女「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
ラムが震えた声であたるを呼ぶ。
群集の一人が、はっ、とした声で言った。
男「きゅ、救急車!」
ラムがあたるの近くへ行き、しゃがみ込んだ。
ラム「ダーリン・・・?返事するっちゃ・・・。」
しかし、あたるはピクリともしない。
しかも、辺り一面はあたるの血の海。
ラムの頭の中に、最悪の事態がよぎった・・・。
ラムの目に熱いものがこみ上げてくる。
その時、ラムの耳に、かすかな声が聞こえた。
あたる「ラ・・・ム・・・?聞・・こ・・える・・・か・・・?」
ラム「な、何だっちゃ・・?ダーリン・・・。」
あたる「今日は・・・何・・月・・何日・・だ・・・?」
ラム「今日は・・・。」
ラムははっとした。そう。今日、4月13日は紛れもなくあたるの誕生日だからである。
ラム「今日は・・・、ダーリンの・・・誕生日・・だっちゃ・・・。」
そう言うと涙が一筋、頬を伝い流れた。
あたる「そうか・・・。なんて・・・最悪な・・・誕生日だ・・・。」
その時、救急車のサイレンが聞こえてきた。
救急車の運転手「緊急車両が通ります!道を開けて下さい!」
あたるは担架に乗せられて、救急車に入っていった。
救急士「電話番号、教えてくれますか?搬送先の病院をお教えしますので。」
ラム「はい、わかりましたっちゃ・・・。」
携帯の電話番号を教えると、救急士は救急車に入っていった。
ドアが閉まり、救急車が走っていく・・・。
ラムは気づくと、あたるの血で手も服も血まみれになっていた・・・。
ラムはそのままタクシーを捕まえ、自宅へ戻っていった。
自宅は6畳1間のキッチン・トイレ付き格安アパート。
あたると同居していた。
ラムはさっさと着替えて、病院から連絡があるまで、出来る限りの知り合いに緊急の電話を入れた。
ラム「もしもし?しのぶだっちゃ?うち、ラムだっちゃ。あのね・・・」
と、このように。
一段落したその時、携帯の着信音が鳴った。
ラムはすぐさま出る。
医者「もしもし?あたるさんのご家族ですか?私、外科の岩淵といいます。」
ラム「初めまして・・・。うち、ラムだっちゃ・・・。」
岩淵「え〜、ラムさん。搬送先の病院は東京大学病院です。それと・・・」
ラム「それと・・・?何だっちゃ?」
岩淵「それと・・・。ゴホン。え〜、単刀直入に言いましょう・・・。」
ラム「・・・・・・・・・・」
ラムは黙りこくった・・・。何か悪い知らせに違いない。そう思ったからだ。
岩淵「・・・あたるさんは・・・、もう助かりません・・・・・。」
後編に続く・・・。