ハッピー・バースデー〜後編〜

 

岩淵「・・・あたるさんは・・・、もう助かりません・・・・・。」

 

ラムの悪い予感はあたった。

 

ラム「・・・・・すすっ・・・」

岩淵「詳しく言いますと、もしあたるさんが普通の精神力・体力・人間ならば助かってはいません。現在治療中です。」

ラム「すすっ・・・そ、そうですか・・・すすっ」

岩淵「ただ、万が一奇跡が起きて、あたるさんが助かったとしても、何らかの障害を負うことになります。」

 

障害を負う・・・。なぜか?それは弾の撃たれた所である。

頭に1発、肺に1発、心臓に2発・・・。普通の人間ならば即死状態である。

不幸中の幸いは、全ての弾が貫通していたこと。残っていたらあたるの異常な生存率でも、ぐっと下がっていただろう。(この状態でも生きているのも凄いが)

 

岩淵との電話が終わり、ラムは畳の上に横になった。どっと疲れが押し寄せてきたのだ。

横になったラムは物思いにふける。

 

ラム「(もし、ダーリンが助からなかったら・・・)すすっ」

 

あたるの事を思うと、目に熱いものがこみ上げてくる。

その時、携帯の着信音が鳴った。

 

ラム「もしもし・・・?」

??「ラムさんですか?!僕です!僕!分かりますか?」

ラム「終太郎・・・だっちゃ?」

面堂「そうです!よかった〜。ラムさんに忘れ去られていたらどうしようかと思いました。」

ラム「用件は何だっちゃ・・・?」

面堂「諸星が撃たれたそうですね。病院は何処なんですか?

ラム「東京大学病院だっちゃ・・・。」

面堂「それはいけない!すぐに面堂家メディカルセンターへ運びましょう!」

 

いくらあたるが嫌いであっても、面堂にとっては大切なライバルであった。

だからこそ、あたるを死なせまいと面堂がメディカルセンターへ運ぼうとしていたのだ。

 

ラム「じゃあ、おねがいするっちゃ・・・。」

面堂「分かりました!すぐに手配します!ラムさんもメディカルセンターへ・・・。」

ラム「わかったっちゃ・・・。」

 

あたるが搬送された東京大学病院のヘリポートに着陸する面堂家専用救急ヘリ。

あたるが酸素マスク等、医療機器を付けてヘリへ運ばれる。

 

岩淵「後のことは頼みました。」

医者「分かりました。」

 

そう医者が言い終わると、ヘリへ乗り込んだ。

ヘリのエンジンが起動し、ヘリポート内には風が吹き荒れた。

10秒もすると、赤い夕日の中心ら辺に黒いヘリの影が見えていた・・・。

 

こうして、メディカルセンターへ移送されたあたる。

あの事故から1週間が過ぎようとしていた。

ラムは面堂の屋敷に泊めてもらい、大学には長期休養届けを出した。

メディカルセンターへあたるが来てさらに一週間がたった・・・。

 

面堂「諸星・・・。そろそろ起きろ、ラムさん達が心配しているではないか・・・。」

サクラ「う〜む。さすがに諸星の生命力も、銃にはかなわんな・・・。」

しのぶ「起きて・・・、あたる君・・・。」

あた父「あたる・・・。起きて早く社会人になって、家のローン払ってくれ・・・。」

あた母「どうせなら・・・、産むんじゃなかった・・・。」

ラム「ダーリン・・・。」

 

今日は珍しくしのぶとサクラ、それに両親が来ていた・・・。

しばらくの沈黙が続く・・・。部屋には医療器械の音や、生きている証のリズミカルな単音が響いている。

その時・・・。ラムはあたるの手が、「ピクッ」と動くのを見た。

 

ラム「ダーリン?ダーリン!起きるっちゃ!ダーリン!!」

 

あたるが目覚めた・・・。ゆっくりと瞼を開いた。

ラムは大喜びした。あたるが助かったから・・・。

しかし、次の一言でその場が凍り付く・・・・・。

 

あたる「あんたら、誰?」

 

あたるの友人全員の名前はともかく、浮気のことまで忘れていた。

記憶喪失になったのだ。

ラムはショックを受けた・・・。

 

ラム「うちの事・・・、覚えて・・・いない・・・?」

あたる「う〜ん・・・。わからん。覚えていない。しかし・・・───」

 

あたるが続ける。

 

あたる「ココは何処だ?病院のようだが・・・。」

ラム「病院だっちゃ。」

面堂「僕の家のメディカルセンターだ!諸星、本当に覚えていないのか?」

あたる「俺の名前は諸星というのか?苗字のようだな。下の名前は?」

面堂「あたるだ。(どうやら本当に記憶喪失になったみたいだな・・・)」

あたる「ほ〜、諸星あたると言うのか。ところで、ココにいる人達との関係を誰か教えてくれないか?」

ラム「え〜っと・・・。」

 

ラムが言う前に面堂が言った。

 

面堂「おまえとラムさんが一応夫婦ということになっている。それと、僕としのぶさんは学校の同級生。サクラ先生は学校の保健医だ。」

あた母「私とこの人はあなたの親よ。」

あたる「おまえの名前は?しのぶって奴は?サクラ先生って言うのは?ラムって言うやつは誰だ?指で指してくれ。」

 

面堂がそれぞれ指を指しながら、苗字・名前・関係の確認をし、そして最後に自分自身の紹介をした。

 

あたる「う〜ん、そうだったのか・・・。ところで面堂、ラムにはなぜ角が生えている?」

面堂「それは・・・」

 

面堂が説明する前にラムが口を出した。

 

ラム「それは、簡単に言うとうちはインベーダーだからだっちゃ。」

あたる「い、いんべーだー?!」

 

しばらく沈黙が続く・・・。そして・・・。

 

あたる「いんべ−だーって何だ?」

 

ちゅどーん!

 

次の瞬間、一瞬にして辺りが吹っ飛んだ。

 

ラム「簡単に言うと、宇宙人だっちゃ。」

あたる「そうだったのか!」

 

2週間が経った。しかし、まだあたるの記憶喪失は治らない・・・。

 

あたる「・・・・・(なぜだ・・・?思いだせん。)」

 

あたるはあることで悩んでいた。それは・・・───

 

あたる「・・・・・(何で面堂に木槌をプレゼントされなきゃいかんのだ!)」

 

そう、面堂から木槌のプレゼントがあったのだ。

面堂は、あたるの愛用の武器、木槌をプレゼントすることによって、記憶を戻そうとしたのだ。なぜ、木槌をプレゼントしたかも言った。それで悩んでいるのだ。

 

あたる「ん〜、しかし、なんか思い出してきたような・・・。」

 

さらに一週間・・・

 

あたる「しかし、どうもしんじられんな〜・・・。(こんな綺麗な女と夫婦だ?あり得ない・・)」

ラム「何がだっちゃ?」

あたる「いや、何でもない・・・。(黙っておいた方が無難だな)」

 

さらに1年がたって、あたるの誕生日を迎えた。

 

あたる「そうか〜。今日は俺の誕生日か!」

ラム「誕生日おめでとう、だっちゃ!」

みんな「誕生日おめでと〜!」

 

しばらく経って、みんなが帰り、二人だけになった。

 

あたる「俺、ちょっとトイレ・・・。」

ラム「待つっちゃ!」

 

ラムが止めようとしたが・・・。

逆にあたるを押してしまった。あたるはバランスを崩していく。

目線の先には・・・、机の角。

ラムが止めようとしたが間に合わなかった。

 

「ゴツンッ!」

 

病室中に鈍い音が響く。その後、あたるが床に倒れ込む。

 

あたる「いってぇ〜・・・。」

ラム「大丈夫だっちゃ?」

あたる「おま〜な〜・・・。ん?」

ラム「どうしたっちゃ?」

あたる「ラム、ココは何処だ?俺は確か、犯人に銃で撃たれたような・・・。」

ラム「え・・・?記憶が・・・、元にもどったっちゃ?!」

 

ラムは、あたるが撃たれてから、今までのことを全部話した。

 

あたる「そうだったのか・・・。」

ラム「一時はどうなるかと思ったっちゃ!」

あたる「あほ、そう簡単に死んでたまるか!」

 

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あの時・・・。あたるは何を見ていたか・・・。

そう・・・。犯人に撃たれた後・・・。あたるは夢か現実か分からないものを見ていた・・・。

 

あたる「なんじゃここは・・・?花畑・・・。」

 

一面に花畑が並んでいた。

あたるが耳を澄ますと、水の流れる音が聞こえてくる。

 

あたる「川じゃ!助かった!」

 

その川縁には、小舟が一艘止まっていた。

あたるはその小舟に乗り込もうとする。

その時・・・。

 

??「ダメだっちゃ!それに乗ったら本当に死んじゃうっちゃ!」

 

誰かの・・・、聞き覚えのある声があたるを止めた。

そして、小舟は崩れ、その世界も崩れていった・・・。

その後は、あたるだけが知っている・・・。

 

不幸は突然やってくる。しかし、幸せも突然やってくるのだ・・・。

 

誕生日に起きた、不思議な不思議な奇跡の物語・・・・・。

 

***あとがき***

あ〜あ・・・、初小説でダークな物書いちゃったよ・・・。

はっ、いかん!丁寧に喋らなくては・・・。

はい。どうでしたか?初作品でダークって言うのはちょっと引くと思います・・・。

変換ミス、無変換が多いと思います・・・。すみませんです・・・。