リバースリバース〜先祖をたどれ(2) ----------------------------------------------------------------------------------- あ・ラ「先祖がえり!?」ふたりは声を合わせていった。 テーブルの上にのっていたコップがグラグラとゆれるほど大きな声であった チェ「左様、おぬしのその牙はおそらく先祖のものじゃろう。めったにないようなものをよく起こすのう」 あたるはまだ困惑しているらしくなにやら深く考えこんでいたがラムの方は明るくとてもうれしそうな顔をしていた。 {ちなみに先祖がえりとはある先祖の姿や能力が何代か後になって突然現れるというものである} 急にラムがあたるの後ろに回って頭を触り始めた。 ラ「おかしいっちゃねー」あたるの頭をさわりながら言った。 あ「いったいなにがしたいんだ?」 髪をぐしゃぐしゃにされ不機嫌そうにラムに聞いた。 ラ「角を探してるっちゃ」さらっとラムが軽く言った。 あ「角だ〜?」なにをいっとるんだというような目でラムを見た ラ「たぶんこの辺にあると思ったんだけど・・・」 自分の角の位置と同じぐらいのところを触りながら言った。 ラ「まだないみたいだっちゃ」少し残念そうである。 あ「これに角まで生えてくると言うのか?」あたるの脳裏にさまざまなことがよぎった。 (もし角が生えてでもしたら弁天様に嫌われてしまうじゃないか。 さらにお嬢さんたちにも嫌がられるにちがいない、ラムだって付け上がるはずだ・・・) チェ「では、わしはこれぐらいで帰るかのう」珍しい事もあるもんだとあたるとラムは思った。 あたるはチェリーが部屋から出て行くまで何気なくお茶菓子をガードした階段を降りていく音が聞こえた。 ラムはなにやら落ち着かない様子だ。 よほどうれしいにちがいないと、あたるはラムの表情を見て悟った。 あ(さて、これからどうしたものか。) 真剣な顔つきで悩むあたるをラムは見ていなかった。 あ(先祖に鬼族がいたなど馬鹿げた話がないこともないが・・・いまいちしっくりこない)するとラムがこんな事を言った。 ラ「ダーリンの先祖ってどんなのかな〜うち見てみたいっちゃ」これにあたるはひらめいた。 あ(そうか、実際にその先祖に会ってみればいいじゃないか) 普通では考えられないような事だが一人できそうな人物が身近にいる。 ラムはいつのまにか窓の外を見ていた。 あ(チャンスだ!!) ラ「ダーリン今日は星がきれいだっちゃ」窓から顔を出しながら言った。 雲ひとつなく三日月が浮かんでいた、そのまわりに星たちが輝いていた。 ラ「ダーリンも見てみる・・・」振り返ってみるとさっきまで後ろにいたはずのあたるがきれいさっぱり消えている。 ラ「もう、ダーリンどこいたっちゃー」 あきれたという気持ちと、もっとしっかり注意しなくてはとつくづく思いながら、窓からあたるを探しに飛び出していった。 そのころあたるは・・・ あ「ラムのやつまだ気付いてないみたいだな」月と星の光で明るい路地を走っていた。 5月下旬ぐらいのまだ涼しい風の中ひたすらあるところに向かっていた。 だんだん目的地である怪しい建造物が見えてきた。 まわりには木がざわざわとゆれておりそこだけは月も星の光も失せているように感じられた。 石段の上の方に赤い鳥居が見える遠くからでもその古さはわかるほどだ。 こんな不気味なところへ誰が好きで来るだろうかと思うが、石段を驚くべき速さで登る影があった。あたるである。 鳥居の奥にこれまた古そうな建物が見えてきた。風は強くなりまわりの木が大きく音をたててゆれている。 石段を登り終えたあたるは玄関らしき前に立った。 呼吸をととのえ、ちょっと服装を直しているそして・・・ 「さくらさ〜ん」 扉の奥からドスドスと廊下を歩いてくる音がした。 それと同時に、 サ「どこのどいつじゃ、こんな時間に間の抜けた声をだしておる奴はー」がらがらっと玄関の戸が開いた。 なぜか今のいままで御祓いでもしていたかのように巫女の服を着ていた。 サ「やっぱり諸星か・・・あの間の抜けた声はおぬしだろうと思っていたが」 あ「サクラさん待っていてくれ・・・」抱きつこうとした瞬間にもうなれた手つきでサクラの肘鉄が炸裂  サ「どうしてそうなるんだ。まったく」あ「そんな恥ずかしがらずに」あたるは背筋を指でなぞる。 これにはサクラも(だれでも)怒るパンチやらなにやらをあびせられた。 サ「それで?どうしたのじゃこんな時間に」ふう、と一息ついてしゃべり始めた。 あたるは先祖がえりにあった事を話した サ「で、どこが変わったんじゃ?たいして変化は見られない様だが・・・」あたるは口を開けて見せた。 少しとがりすぎな歯がサクラの目に入った。 サクラはよく注意しながら(あたるに注意している)牙を観察した。 さ「う〜ん、いまのところはなんとも言えんな牙のある動物はたくさんおるからな」さらに続けてこう言った。 サ「まあ先祖が関係している事には間違いなさそうだ」 あ「じゃあその先祖を呼び出したりできないのか?」いったいどんな先祖なんだと気になった。 サ「無理じゃな、どこまで前の先祖かわからなければできないのだ。まあ安心せいたいして害になるものでもあるまい」 あたるは少し安心した。、 あ(そうだよな、先祖に鬼がいるなんてありえないもんな。まあ牙だって考えようによっては悪くもないかもしれないし) サ「まあ今は様子を見ることじゃ」 あ「わかりました、では最後に」急に真面目な口調。 サ「最後に?」あ「おやすみのキスを・・・」また間抜けな声に変わりサクラに飛びつく。 サ「いいかげんにせんかー」エルボーが命中する瞬間に夜の闇がピッカっとまばゆい光に包まれた。 あ「ぎゃーーー!!」 あたりいったいに叫び声が響く。住宅地でなくて良かったもののきっと家々に届いているだろう。 上を見るとラムが電撃を放っていた ラ「急にいなくなったと思ったら」まだ怒りがおさまらないらしくバチバチと体のまわりで音をたてている。 ラ「ダーリン聞いてるのけ?」立ち尽くしているあたるのそばへラムは着地した。するとまたあたるは地面に倒れこんだ。 ラ「ダーリン!!」地面倒れる前にラムが引っ張り上げる。 すぐにサクラが近寄ってなぜ倒れたのか調べる。 サ「たいした傷もないしまだ感電してるわけでもなさそうだな。」不思議そうに立ち上がりながら言った。 サ「どうやらまた昼間の時と同じようだな。しょうがないここに置いておくわけにもいかんし、とりあえず中に運ぶか」 サクラがひょいっとあたるを持ち上げて玄関をくぐる、続けてラムも入っていった。 廊下もかなり古くなっており、歩くたびにきしむ(ラムは飛んでるので鳴らない) ラ「サクラは寝るときもそんな格好をしてるのけ?」サクラの服装を見て尋ねた。 サ「そんなわけなかろう、なぜか今日は妖怪が大量に発生してな、着替えるヒマがなかっただけじゃ。ここでいいだろう」 ついたのは畳張りの部屋だった。 電気をつけると壁には読めないような字が書いてある掛け軸がありその近くにつぼが置いてあった。 真ん中にテーブルがありそれ以外は何も無かった。 ひとまずあたるをそこらへんに置いたサクラは茶でも持ってくるかと出て行った。 ラムは心配そうにあたるを見つめていたがふとあるものに気付いた。 錯覚ではないかと目をこすりもう一度見たがやっぱりそこには実在していた。あたるの髪の中にとがった物が2つ見える。 おそるおそるそれを触ってみる。左右に動かそうと力を加えてみても動かず、硬く、頑丈でなぜか暖かかった。 それはあきらかに作り物などではないとラムは思った。そして思わず ラ「角だっちゃー!!」 その声にはうれしさが存分に詰まっていた。 サ「どうしたのだ?大きい声などだして」サクラがお茶を持ちながら現れた。 つづく