時は夢のように・・・。  第三話『噂は色々ありますが。』(其の壱)  戸惑いと緊張(?)のうちに数日が過ぎた。  春休みが終わって、俺とラムは奇跡的と言うべきか、めでたく進級した。待望の高校三年生だ。  クラス替えとかしてないから、気分的には二年の時とあまり変わってないけどね。  4月4日 金曜日 AM8:15。  玄関の床に座って、慌しく靴紐を結んで、勢い良く駆け出す。 あたる「行ってきまーーっす!」 ラム「行ってきまぁす!」  50メートルくらい走ったところで、ふと、何やら耳に届いたんだ。 「行ってらっしゃーい!」  後方から黄色い声が俺たちに向けられていた。  振り返ると、唯が手を振って俺たちを見送っていた。 ラム「行ってくるっちゃ〜〜っ!」  大きく手を振って答えるラム。 あたる「おっと、こうしちゃいられん。遅刻しちまうぞ、ラム。」 ラム「今日遅刻すると放課後の掃除当番だっちゃよ!」 あたる「掃除当番なんて、ンな面倒な事やってられっか。走るぞ! 加速装置!」 ラム「だっちゃ!」  きびすを返すと、二人は全速力で駆け出した。  しかし、しばらく走るうちに忘れ物に気づいた。 あたる「いかんっ! 弁当忘れたっ!」 ラム「お弁当なんかもうあきらめるっちゃ! 今から取りに戻ってたら間に合わないっちゃよ!」  始業まであと15分も無かった。学校に到着するまでに要するギリギリの時間だ。自宅に戻るまで5分で、残り10分では到底間に合わ ない。 ラム「ウチのお弁当分けてあげるっちゃよ。」 あたる「ぬぬぬぬ・・。ええーーい、ままよっ!!」  きびすを返すと、全速力で自宅へと足を向けた。 ラム「あっダーリン! 遅刻しても知らないっちゃよ! もうっ、馬鹿なダーリン。」  ラムは矢の様に飛び上がると、上空まで舞い上がった。 ラム「ダーリン! 先に学校に行ってるっちゃよーーっっ!!」 あたる「分かったーーっっ!!」                             * 自宅。  自宅に到着すると、勢い良く玄関のドアを開けた。  ドアを開けるなり焦った。母さんが、待っていたかのように仁王立ちしていたのだ。 母「そろそろ戻ってくる頃だと思ってたわ。はい、お弁当。」 あたる「サンキュー! さっすが母さん! 分かってるぅー。」 母「何年あんたの母親やってると思ってんの? いいから早く学校行きなさい! 居眠りしてないで、ちゃんと授業受けてくるのよ!」  ちっ、いつもいつも一言二言多いんだから・・。  しかし、弁当を受け取ったはいいが、あと10分足らずでは間に合わん。流石の俺の脚力でも不可能だ・・。  こうなったら、諦めてゆっくり歩いて行くとすっか。  少々ヤケクソになりながら、覚悟を決めた。 あたる「(掃除当番でも何でもやってやらぁーっ。)」  振り返ってドアを開ける。                             *  玄関前には、ピカピカに磨き上げられたバイクが止まっていた。唯が大切にしているバイクだ。  そのバイクを見て、閃いた。遅刻せずにすむかもしれない・・・。 あたる「バイクか・・、バイクねぇ・・。」 唯「あらっ、あたるさん。どうしたの? 学校行ったんじゃなかったの?」  庭の方からヘルメットを抱えて唯が歩いてきた。 あたる「えっ? ああ、ちょっと忘れ物してね・・。」  唯は赤と黒で彩られた皮のつなぎを着ていた。ちょっと小さめなのか、ぴっちりしてて、唯のボディラインがくっきりと見て取れる。  ごくっと唾を飲んだ。唯ちゃん、ラムに負けてないかも・・・。 あたる「・・・・・。」 唯「なぁに? あたるさん。」  名前を呼ばれてハッと我に返った。あまりの魅力に、つい見とれてしまっていたのだ。 あたる「あ・・い、いやぁ、別に・・・。あの、お願いがあるんだけど・・。」 唯「お願い? んー・・、聞いてあげたいんだけど、私もこれから仕事だから・・。」 あたる「いやいや、大したお願いじゃないんだ、ただ、仕事に行くついでに、僕を学校まで乗っけてってもらえれば・・。」  バイクならなんとか間に合うかも知れない。残りあと7分少々。いや、バイクでも厳しいか・・。 唯「でも、職場は学校とは反対方向だし・・。」 あたる「分かった! 後でお好み焼き奢ってあげる!」 唯「えっ? マジっ?! んん〜〜♪ そう来られたら断れないわね〜♪」  にんまりと微笑んで、「待ってて」と言って、小走りで庭に戻って何やら抱えてきた。  そして、「はい」と渡されたのは、フルフェイスのヘルメットだった。  唯は意気揚々とバイクにまたがって、キーを差込んだ。 あたる「あと5分ぐらいしかないけど、間に合うかな?」 唯「楽勝♪」  またまたにんまりと笑い、ピースする。 唯「さぁ、乗って。ちゃんとヘルメットかぶってね。」  そう言うと、サラサラの髪の毛を手馴れた手つきでまとめ上げてヘアピンで止め、ヘルメットをかぶった。 あたる「あ、ああ。」  ちょっとキツメだったけど、ヘルメットをかぶり、唯の後ろにまたがった。  フルフェイスのヘルメットだから仕方ないが、周りの音がほとんど聞こえない。と、思いきや、  『もしもし、聞こえる?』  どういうわけか、圧迫されている耳元で唯の声がハッキリ聞こえた。 あたる「えっ? 唯ちゃん? どうして唯ちゃんの声だけがこんなにハッキリ聞こえるの?」 唯「へへへーっ、実はヘルメットの中に小型の特殊マイクとスピーカーを仕込んであるのだ。」  ワンパクぶった口調で、誇らしげに胸を張った。 あたる「そ、そう・・、でも、急いでもらえると嬉しいんだけど・・。」 唯「オッケー♪ じゃあ、シートベルトしてくれるかな。」 あたる「は? シートベルト? バイクに?」  唯のバイクはどこか普通ではなかった。シートベルトは付いてるし、やけにメーターやらスイッチが多くて、まるで飛行機のコックピ ットの様だ。  ハンドルの中央には色んなメーターがあって、メーターのカバーをパカっと開けるとスイッチがいくつか現れた。  まず一つ目のスイッチをONにすると、バイクのボディの幅が大きくなって、後方からは小さなスポイラー(ウイング)が出てきた。  二つ目のスイッチを入れると、ホイールの幅が大きくなって、タイヤが太くなった。 唯「このメーターに気をつけて。このメーターの針が±0から上に回る時、グンっとスピードが上がるから。」  小さなメーターを指差しながら話す唯。 あたる「何のメーター?」 唯「ターボメーターよ♪」 あたる「ちょっと待ってよ! 何でバイクにターボが付いてんの?!」 唯「えへへ・・。」  俺を見て微笑んでキーをONに回し、エンジンをかけた。  ブォオォォーーンッッ!!! ウオォォン!!!  2・3回アクセルを回し空ぶかしすると、近所迷惑な爆音が響く。  そして最後のスイッチを入れると、「ヒュゥーン」という音と共に、唯の言った小さなメーターの針が±0から−0.5に落ちた。 唯「ヘッドホンで音楽かけてもいいかな?」 あたる「そんな事より、あのぉ、急いでくれない?」  時間は5分も無い。もうダメだ・・。遅刻は決定か・・。 唯「シートベルト締めてる? しっかり掴まっててね。」 あたる「大丈夫!」  唯の腰に手を回すと、今にも折れてしまいそうなくらい細くて、ちょっと驚いてしまった。  とは言っても、べつに痩せているわけではなくて、スタイルが良いんだと思う。 あたる「(くそっ、このヘルメットがなけりゃ・・。)」  華奢な背中にスリスリしたいという衝動が込み上げてくるのを必死に堪える。  煩悩が活発に動き出し、頭の中が妄想でいっぱいになるまで、5秒もかからなかった。  フルフェイスで顔が隠れてたから分からないだろうけど、ヘルメットの下では、きっと見られた顔じゃなかったと思う。 唯「じゃあ、出発進行っ!」  腕時計のストップウォッチのタイマーを押して、アクセルを回す。  ギギャギャギャギャギャッッ!!! あたる「どわあぁっ!?」  不意に急発進したもんだから、衝撃で首が変な風に曲がってしまった。  唯のバイクの加速は凄まじく、メーターはすぐに100kmを越えた。アクセルをさらに開ける。  猛烈なGで、俺は振り飛ばされそうになりながらも、両腕と両膝に力を入れる。 唯「近道教えて!」 あたる「じゃ、じゃあ、たばこ屋の角を右に!」  コーナーはあっという間に近づいてきた、ブレーキングで減速するけど100kmは切れていない。  そんなスピードでコーナーに突っ込んだら間違いなくすっ飛ぶ。  ギャギャギャギャッッ!!!  後輪が滑った。 あたる「や、やばっ!!」  唯は瞬時にカウンターをあてる。アクセルを数回まわして体勢を維持しつつコーナーの出口にバイクをスライドさせる。  コーナーの出口にさしかかると体勢を立て直し、一気にアクセル全開。メーターの針は一気に180kmまで跳ね上がった。 あたる「た・・助かった!」  涙がちょちょぎれそうになる。 唯「そう簡単に転んだりしないから安心して。このバイク前輪も駆動してるから、後輪が滑っても大丈夫♪」  常識というものを完全に無視しとる・・。  こんなスピードで転んだら絶対死んじまうぞ。だけど唯は顔色ひとつ変えない。それどころか楽しんでいる様で、なおもアクセルを 回す。急なコーナーを次々とかわし、車や歩行者を神業の様に避ける度、音楽に合わせて上機嫌な鼻歌がヘッドホンから聞こえてくる。 唯「ん〜〜・・。のんびりしてたらホントに遅刻しちゃうわね。」 あたる「えぇっ?」 唯「あたるさん、ヘルメットのバイザーを閉めて。ギア比を加速モードにしてとばすから。」  ガチッという音と共に身体にGが襲いかかった。そこいらのジェットコースターなんてぜんぜんメじゃない。  そしてあの小さなメーターが±0から+0.5、+1.0に回ると、さらに強烈なGが身体に乗っかってきた。  その時、スピードは実に、250kmを超えていた! あたる「つ・・次の交差点を、さ・・左折・・っ!!」 唯「左折ね。」  信じられないようなコーナリングで左折すると、目の前に友引高校が見えてきた。 唯「あとは直線か・・。」  グリっとアクセルを全開にすると、加速で前輪が浮き上がり、ウィリーしてしまった。  どんどん加速していく、さっきよりもっと速く感じられた。おそるおそるメーターを見ると、メーターの針は限界に達していた。  時速300km。  学校の正門まで500メートルくらいだけど、ワープした様な感じだった。  ギギギギギギギギギッッ!!!  正門手前でフルブレーキ。一気に減速したもんだから、勢いで後輪が浮き上がってしまった。  バイクが停止すると同時にストップウォッチのタイマーを止める。 唯「やったね♪ 3分12秒!」 あたる「お・・お見事・・・。」  ふらふらしながらバイクから降りてヘルメットを脱ぐ。 唯「大丈夫? お顔が真っ青だけど・・。」 あたる「は・・はははは・・。か・・カラーでお見せできなくて、残念ですぅ・・。」  唯はヘルメットを受け取るとカギホックにひっかけた。 唯「じゃあ、私、行くね。勉強頑張ってね!」  アクセルを何回かふかして、ホイルスピンしながら走り出して、あっという間に見えなくなった。  唯がいなくなって、すぐに、今度はラムが空からやってきた。 ラム「あれっダーリン?! お弁当取りに家まで戻ったんじゃなかったのけ?」  どうやら、唯のバイクはラムを追い越してしまっていたようだ。 あたる「あ・・あぁ・・。」 ラム「ダーリン、どうかしたっちゃ? 気分が悪そうだっちゃ。」  ラムが俺の顔を見るなり驚いた声を上げる。不調って事が一瞬で分かってしまうくらいだから、よほど顔色が悪いのだろう。  まだバイクに乗っている感じで、周りの風景がひどく歪んで見えるのだ。 ラム「もうすぐチャイムが鳴るっちゃ、さぁっ、ダーリン急ぐっちゃ!」  俺はラムに背中を押されて歩き出したが、2・3歩あるいた所でばったりと倒れてしまった。                            *  授業はいつもの如くぶっ潰れた。理由は他愛の無い些細な事である。俺がしのぶに声をかけて、ラムがブチ切れ、面堂やメガネがラム に加勢して、最後には止めに入った温泉マークを叩きのめして、ジ・エンド。今日も一日、終ぅ〜〜了ぉ〜〜〜。  ・・とはいかなかった。朝、唯に送ってきてもらったにもかかわらず、遅刻してしまったのだ。  ラムに連れられて、時間ギリギリで教室にたどり着いたのだが、腹の底から込み上げてくるモノがあって、トイレに駆け込んだのだ。  朝のホームルームに間に合わず、結局、放課後の掃除当番になっちまった・・・。  俺は教室の窓を開けて、遠くの景色を眺めていた。どこもかしこも春の到来を感じさせる風景に変わっていた。 あたる「あ〜あ、春だなぁ。」 「何ボケたこと言ってんだよ、あたる。ほら、そいつやって。」  ぼーっと遠くを眺めて溜め息をついてると、黒板消しが飛んできた。  投げたのは俺の悪友の一人、パーマ。 パーマ「まったく、あたるが遅刻なんかすっからだぞ。罰掃除なんて、いまどき小学生でもあるめぇし。手伝ってやってんだから、早く     片付けちまおうぜ。」 あたる「はんっ。俺は別に手伝ってくれなんて・・・。」 パーマ「あ、そう。じゃあやめだ。」  そう言うと、パーマはくるりと向きを変えてすたすた歩き出した。 あたる「イヤだなぁ、パーマ君。冗談だよぉ、感謝してるって。」  俺は黒板の落書きを消し終えると、教室の後ろにあるクリーナーのスイッチを入れた。  ゴォーッ、ゴォーッ・・。チョークの粉を吸い取るクリーナーの音がうるさくて、周囲で何を言ってるのか聞こえなくなる。 パーマ「・・・・・・・のかよ、あたる。」 あたる「なに? なんか言ったかぁ、パーマ。」 パーマ「なんか隠してる事があるんじゃないかって聞いてんだよ。メガネも心配してたぞ。授業中、ボーっとしてたり、呼びかけても返     事しなかったりさぁ。遠くを眺めたり・・。絶対おかしいぞ! いつものあたるじゃない!」  ぎっくーーーっ!!  その時、ダダダダダッと足音がしたと思うと、教室の引き戸がいきなりガラっと開いた。 「おい、諸星! 諸星はおるかーっ!」  面堂終太郎だ。相変わらず捻たツラしおってからに・・。  面堂は俺たちが二人きりで教室の掃除をやってるのを見て、呆れ顔をした。 面堂「・・・キミたち、ナニ地味なことやっている。罰当番? 女子の更衣室でも覗いたか?」 パーマ「こいつ遅刻したろぉ、掃除当番にさせらちまったのさ。で、俺はラーメン一杯で手伝ってやってんの。」 あたる「ちょっ・・ちょっと待て! ラーメンどーのこーのは言っとらん!」 パーマ「あ、そう。じゃあ帰ろうか面堂。」 あたる「ぐぬぬぬぬ・・。足元見やがって・・。」  俺はふところから財布を取り出して中身を確認した。もうすぐ破産しそうな経済情勢だ、本気で泣けてくる。 面堂「自業自得だな。」  面堂は鼻で笑った。 あたる「面堂、俺に用があるのではないか? 何だよ?」 面堂「おおっ、そうだった・・・。」  ゆっくりと振り返って背を向け、天井を見つめる面堂。 面堂「諸星・・、お前に一つ聞きたい事が・・・あるのだ!!」  始めはゆっくりと温和に話していた面堂が急に声を荒げ、同時に、振り向きざまに刀を抜いて切りかかってきた。 あたる「どわあぁっ!」  反射的に真剣白刃取りして、二人は固まった。 あたる「い・・いきなり何をするのだ面堂!」 面堂「貴様・・、ラムさんという女性がありながら、他の女性と共に生活しておるというのは、まことかぁっ!!」  げーーーーっ!!  なんで? どうして? どこでどうバレちまったんだ? 面堂「どうした諸星ぃ・・。動揺している様だなぁ〜〜っ! まさかとは思っていたが、正直に答えろ諸星ぃぃっ!!」 あたる「面堂! 落ち着かんか!」 パーマ「あたるぅ! てっ、てめぇっ! その話ホントなのかよ?!」 面堂「この学校の生徒で、木下という、少々気に入らないヤツなのだが、諸星の近くに住んでいるのだ、知っているか? そいつが生活指    導に告げにきた。最近、超可愛い娘が諸星さんちに住んでいるとな、近所では評判らしいな。」  俺は面堂の刀を力で押しのけて、焦った面持ちのまま大声で言った。 あたる「面堂、お前は『超』とかってゆうな。そんなキャラじゃないって。なんだよ、俺は何もやましいことはしとらん!」 面堂「ほほぉ、少々ためらったところをみると、少しは真実が混じっているようだな。」  すかさず心理の隙をついてくるのは、面堂の得意技だ。 パーマ「そういえば、最近、あたるの様子がおかしかったのは、そのせいなのか?! ああんっ!!」  パーマは胸ぐらを掴んで激しくガクガク揺さぶるし、面堂は真剣を突きつけて睨み利かせてるし・・。  二人の威圧に圧倒され、俺はついにしらを切り通せなくなった。 あたる「わ・・わかった、話すよ。」  話すと言ったら言ったで、二人が血走った目つきで、なおも詰め寄ってきた。  正直に話したら、殺されるかも知れん・・。話さなくても結果は同じようなもんだろうけど・・。 あたる「落ち着いて聞いてもらいたい・・、今、我が家では・・・。」  話しかけたところだが、教室の戸がカラカラと開いて、話の腰を折った。  顔を出したのはラムだった。 ラム「ダーリン、掃除終わったっちゃ? もう待ちくたびれたっちゃよ〜・・。」  ラムは俺たちの側まで来ると、この異様な雰囲気に気付いたのか、不思議そうに俺たちの顔を眺めた。 ラム「また何か悪い事したっちゃね、ダーリン。」 あたる「いや俺は・・。」 面堂「これからするんです。」  俺の言葉を断ち切って、面堂が強調した口調で言い放った。 あたる「なにもせんわいっ!」 ラム「で、今度は何をやらかしたんだっちゃ?」 面堂「『やらかす』んです、ラムさん。」 あたる「何もやらかしてないし、やらかさないっちゅーねん! 聞いとるのかお前等!!」 パーマ「全然聞いてないみたいよ。」  俺たちは掃除を終えて(中途半端だったのだがバックレた)学校を出た。  商店街に向かう道すがら、春休みから唯という娘が我が家にやってきたことと、彼女の事情を、二人にかいつまんで話した。そして、 彼女がどんなに可愛いか、純真がゆえの小悪魔的魅力で、どんなに俺を翻弄しまくってくれるかってことを力説したのだ。 あたる「・・・ってなワケでよ、で、ナニする度にラムから電撃リンチだよ・・。まいるよなぁ〜・・。」 ラム「でも、それはダーリンが唯に対して悪さするからだっちゃよ。」  すると、どうしたことか面堂の態度が急変した。 面堂「そうかー! 諸星・・いや諸星君! そういうことだったのか! ならば僕からもその方に挨拶せねばなるまい!」  目を輝かせて、俺の手を取る面堂なんて、もう一生見ることは無いだろうと思ってたぜ。 あたる「何? なんでお前が唯ちゃんに挨拶しなきゃならないわけ?」 面堂「なんでって、僕は君の親友だからに決まっているではないか! 『友達がいつもお世話になってます』と一言いいたいのだ。」 パーマ「なら俺だって、友人の為に挨拶に行かなきゃなぁ。」 あたる「何が親友だ? にやけたツラしてそんな話されても、説得力がからっきし無いぜ。」 パーマ「う・・。」 面堂「ま・・まぁ、それはそれとしてだが・・。そもそもキミの話はどこまで信じていいのか、わからんからなぁ。キミが言う程、美女で    もない様だし・・。一緒に生活しているのに諸星が手を出さないのがいい証拠だ。第一、共に生活していて、その娘が無事で済むは    ずが無い。一日も持たずに逃げ出すだろう・・・いやいや、一時間・・三十分とあの家には居られまい。」  後から後から、よぉも言ってくれるよな・・。 あたる「だからさっきも言ったように! 手を出せんのだ!」  面堂のヤツ、この話に人一倍のめり込んで熱くなってたくせに、今度はいち早く脱して冷めちまいやがって、鼻で笑いやがる。  こ、このヤロウ・・。デコに青筋が出てきたが、ぐっとこらえた。  商店街の中ほどの喫茶店の向かいを通りかかった時だ。喫茶店の入り口でたたずんでいた女の子が、こっちを見て、手を振った。 「パーマく〜ん!」 あたる「あの娘、パーマの彼女のミキちゃんっていう・・。待ち合わせてたのか。」  パーマが掃除を早く終わらそうってったの、このせいか。  ミキちゃんは、以前、ラムと初めてデートしてる時に出会ったんだ。ミキちゃんとパーマも初めてのデートだった。  ラム親衛隊のパーマがメガネに内緒で付き合っている。メガネにバレた日にゃ豪いことになるだろうに・・。 あたる「いい度胸してるよなぁ、パーマ。メガネに会わない様に気を付けろよ。」 パーマ「前にも言ったろぉ、それとこれとは話が別だって。じゃあラムさん、また明日っ!」 ラム「バイバ〜〜イ♪」  道路を渡ってミキのもとへと駆けていった。あいつめ、俺と面堂には目もくれなかった・・。 面堂「では、ラムさん、僕もここで・・。」 あたる「なんだ、面堂。お前にゃ彼女はいないだろ?」 面堂「この場で切り捨ててもかまわんのだぞ、諸星。」  剣の鞘から刃をちらつかせて、俺を冷ややかな眼差しで睨みつけた。 ラム「終太郎。ウチらと一緒にどっかでお茶するっちゃ。」 あたる「そうだよ、面堂。一緒にお茶しようじゃないか。」 面堂「ラムさん、誘ってくださるのは光栄なのですが・・・すみません。諸星、貴様が言いたいのは、『奢ってくれ』だろ?」 あたる「さっすが面堂クン。分かってるね〜〜♪」  言い終わった瞬間、俺の目の前には鈍く光る刀身が突き付けられていた。 面堂「残念だが、これから僕は面堂家の代表として、各界の代表が集まる食事会に出席せねばならないのだ。」  俺を一睨みして刀を鞘に納める。それを見計らったように、俺たちの後方からピカピカに磨き上げられた黒塗りのベンツが現れ、 俺たちの真横に止まった。颯爽と運転手の黒メガネが降りてきて、後部座席のドアを開けた。 黒メガネ「遅れて申し訳ございません。」 面堂「かまわん。」  面堂が車に乗り込むと、黒メガネは静かにドアを閉めた。そしてまた颯爽と運転席に戻っていった。  スモーク張りの窓が開いて面堂が顔を出した。 面堂「そういう理由ですので、ラムさん・・。」  少々申し訳なさげな表情で頭を下げる。 ラム「いいっちゃよ、気にしないで。」 あたる「行っちまえ行っちまえ。どいつもこいつも付き合いの悪い・・。」  ってな具合にぶーたれた俺を、またしても面堂が睨みつけた。 面堂「では、ラムさん、明日学校で・・。」 ラム「さよなら〜〜だっちゃ。」  車は静かに走り出して、交差点を右折していった。  くっそ〜、面堂のヤロウ・・。捻じ曲がった性格はいつまでたっても治らん様だな。 あたる「ふんっ。あの守銭奴は男には奢らんのだったな。筋金入りの女ったらしだよな。まったく!」  小さな声で言ったつもりだったのだが、あいつには聞こえていたらしくて、すごく遠くの方で、面堂の叫び声が聞こえた。 「なんだとぉおぉぉぉっっ!!!」  曲がっていった角から、面堂の車がすごい勢いでバックしてきて目の前で急停車した。すると車が止まるより早く面堂が飛び出してき たのだ。 面堂「もぉろぉぼぉしぃ〜〜っっ!!」  目をつりあがらせて再び登場した面堂。鞘から刀を抜き、鞘を投げ捨てた。 あたる「よ、よおっ、面堂。どうかしたのか? やけに興奮してるじゃないか? 男前が台無しだよ?」  一歩二歩と後ずさって間合いを計りつつ、猛獣をなだめる様に語りかけるのだが、今の面堂には全く聞こえていないみたいだ。 面堂「この僕を愚弄するとはいい度胸だな・・。そこになおれぇーっっ!! 刀の錆びにしてくれるわぁっっ!!」 あたる「お、落ち着けって面堂。」  ズバッと俺の目の前数センチを刃が通り抜けると、前髪が数本パラパラと落ちていった。  いかん、完全に我を忘れとる。 面堂「次はその首だぁ〜〜。」  目が完全にイッちまってる。今日は面堂のヤツ、挑発にのってこないからと調子に乗って馬鹿にしてたけど、ここにきてストレスが爆 発したらしい。 あたる「待て面堂っ。話を聞けっ!」 面堂「聞く耳持たんわっ! 死ねぇーーっっ!!」  刀を頭上高く突き上げた。瞬間。  ドガシャーーーーンンッ!!! 面堂「のわあぁぁーーっっ!!!」  けたたましい音と共に、落雷が刀に命中したのだ。  真っ黒になった面堂が、ばったりと倒れこんだ。 ラム「終太郎! ダーリンに手を出したら、ウチが許さないっちゃよ!」 面堂「ら・・ラム・・ひゃん・・。」  ガクっと気絶してしまった。  するとまたしても黒メガネが車から颯爽と降りてきて、面堂を抱きかかえると、ぽいっと後部座席に放り込んだ。  黒メガネが運転席に戻るなり、今度はすごい勢いで車が走り出して、あっという間に視界から消えた。 あたる「ほんっっとに気の毒だよな〜、またな面堂。にひひひひ・・。」 ラム「これで邪魔者はいなくなったっちゃね♪ ウチはやっぱり二人きりのデートがいいっちゃっ♪」  満面の笑みでラム。しかし、俺にはどうもその笑顔が苦手だ。嫌いとかじゃなくて、なんかこう・・恥ずかしいのが大半で・・。まと もにラムの顔が見られなくなってしまうのだ。困ってしまう。 あたる「で、デートじゃない、ただお茶するだけだ!」 ラム「どう違うっちゃ?」 あたる「ぜんぜん違わいっ!」 ラム「若い男女がお茶するのって、デートじゃないのけ?」 あたる「う、うるさいうるさい!」  そんなこんなで、俺たちは気ままに喫茶店に足を向けた。まさか翌日、あんな騒ぎになるとは考えてもいなかったのだ。                               *  学校帰りに喫茶店に立ち寄った、その翌日のことだった。  俺は学校の校門をくぐるなり、ラム親衛隊の手によって拉致され、時計塔の屋根裏部屋に連れ込まれた。 屋根裏部屋。  部屋の中は薄暗くて、湿気も多く、ちょっとかび臭い。  この部屋は、俺がラムとモメると、すぐ、ラム親衛隊によって投獄される場所だ。 あたる「パーマか・・。さてはチクリやがったな。」  辺りを見渡すけど、明るい所からいきなり暗い部屋に放り込まれたので、目が慣れていないせいかよく見えない。  じっと目を凝らして、人の気配がする方を凝視していると、聞きなれた声が部屋に広がった。 「あたるぅ〜〜。なぜここに連れて来られたか・・・分かってるな?」  メガネだ。知っての通り、ラム親衛隊の最高権力者である。 あたる「どうせパーマがチクったんだろ? 勘違いするなメガネ。彼女は俺の親父の親友の娘さんで・・。」  俺は誤解を懐かれないよう説明しようとしたが、途中でメガネが口を差し挟んだ。 メガネ「ああ、知ってる。何もかもパーマが白状してくれたよ。」  変だ・・。俺はふと気付いた。やっと目が慣れて、ぼんやりとメガネの姿が見えてきた。他の二人の姿も確認できた。しかし、パーマ の姿だけが見えないのだ。こいつらは四人で『ラム親衛隊』のはずだ。半端に行動するのは珍しい。 あたる「パーマはどうしたのだ?」 メガネ「パーマなら・・、お前の後ろにいるじゃないか。」  クイっとあごをしゃくって指し示した。 あたる「な・・なに?」  振り返るとそこには、手錠でつながれたパーマが居た。グッタリしてて完全にKOさせられている様子だ。  隣にはアノ、サドヤマが居た。 メガネ「パーマは我等ラム親衛隊の法を犯したのだ! 許される事ではない! 万死に値する!!」 あたる「ぱ・・パーマ・・。」  俺はパーマの元に駆け寄った。 パーマ「あ・・あたる・・。来てくれたのか・・。」 あたる「お前・・。」  パカンっ☆○(-。- )o  パーマの頭をグーで小突いた。 パーマ「ってーな!! 何すんだよ!!」  パーマの胸ぐらを引っ掴んで、顔を突き合わした。 あたる「お前・・、よくもメガネ達にチクってくれたな!」 パーマ「ご、誤解するなあたる。俺は告げ口なんて・・・・するつもりは無かったんだけどね・・。」 あたる「話しちまったんじゃないか!」 パーマ「だから俺は・・!」  今更どうでもいい話でイラついたのか、メガネが声を荒げた。 メガネ「おだまりぃぃっっ!!!」  メガネの一喝で俺とパーマは黙り込んだ。  辺りに一瞬静けさが広がった。  メガネは眼鏡を外すと、息を吹きかけてからハンカチでレンズを拭いた。 メガネ「あたる、前にも同じような事があったな・・。どこぞの姫との結婚騒動の時だ、ちょうど一年前ぐらいか・・。あの時もお前を     ここに連れて来たな・・。」  メガネは眼鏡をかけ直し、人差し指でクイッとあげた。 メガネ「お前はいつまでたっても、俺たちの気持を理解できんようだ。一年経っても進歩しとらんなぁ・・・。俺たちラム親衛隊は、     お前をどれほど憎んでいるか・・分かるか?」 あたる「・・・・。」  俺はメガネの悲痛な魂のこもった言葉に、返事ができなかった。 メガネ「しかし、俺たちはお前への憎しみを堪えてきた・・・ずっっっとだ! ラムさんの為に! ラムさんの幸せの為にな! あの結婚騒     動の時も、俺たちは最後の最後まで踏みにじられた気分だった、が、あの時はラムさんのあたるへの深い愛に殉じて、お前を許     した・・。しかし、またしても貴様は・・っ!!」 あたる「誤解しているぞメガネ! パーマから聞いたんだろ?」 メガネ「黙れっ! お前というヤツは・・っ!!」  メガネが声に詰まらせた時、黙っていた二人がセキを切ったように喋りだした。 チビ「あたるぅ! また俺たちをコケにすんのか?! もぉやめてくれよ!」 カクガリ「俺たちはな、ラムさんが幸せに笑っていてくれればいいのだ! これ以上ラムさんから微笑みを絶やさないでくれ!!」 あたる「お前ら俺の話を聞かんか!」 メガネ「貴様に発言権は無ぁぁい!!」  またしてもメガネに俺の発言は一蹴された。  全く俺に耳を傾けようとしない連中に、少々馬鹿馬鹿しささえ感じてきた所だが・・。 メガネ「本題に移ろうか、あの娘・・そうミキちゃんと言ったな・・。お前の新しい彼女だ。」 あたる「へ?」  なに? 今メガネが言ったのって・・。  ワケが分からなくなってきた。メガネが言った『ミキちゃん』はパーマの彼女の事だろ? あたる「ちょっと待てよ! それってパーマのか・・。」 パーマ「わあぁぁーーーーわあわあーーーうわあああわああーーーーーっっっ!!!」  パーマの彼女だと言いたかったのだが、後ろからパーマが発狂した様に大声を出して、俺の声を掻き消した。  そして、小さな声で俺を呼ぶのだ。  パーマの隣に座って、ひそひそと声をひそめて話す。 あたる「どーいう事なんだ?」 パーマ「実はよ、昨日あれから二人で公園に行ったんだよ。そしたらメガネとはちあわせになっちまって、まさか俺の彼女だなんて言えな     くて、つい『あたるの新しい彼女だ!』って言っちゃったんだよ。あたるに『掃除当番が終わるまで彼女の話し相手になってくれ     と頼まれた。』ってさ。」  ドゴンッ!  俺は間髪入れず木槌をパーマの頭に振り下ろした。  パーマはぐでっと気絶してしまったようだ、身体がピクピク動いている。 あたる「これで昨日のラーメン一杯はチャラだな。ラーメンじゃ安すぎるくらいだぜ!」 メガネ「パーマはお前をかばったんだぞ。浮気を知りながら我等に報告しなかった。パーマの気持ちも分からないでは無いのだが・・。     罪を犯した者をかばうというのは、ラム親衛隊あるまじき行為だ。許されん! それも貴様なんかをかばうとは・・・なおもっ て許しがたい!」  メガネが興奮している理由が、今ハッキリと理解できた。俺はてっきり唯の事でだと思っていた。でもそうじゃなかった、パーマの彼女 を俺の彼女だと思い込んでいるのだ。  パーマの野郎、俺を替え玉のダシに使って犠牲にしやがったのか、チクるんなら正直にチクってくれよな、その方がなんぼかマシだ。 メガネ「俺たちの質問はこうだ、あたるにとって真に大切なのは、そのミキちゃんなのか、それともラムさんなのか・・だ。言っておく     が、二人とも大切だなんて答えは通用しないからな。」 あたる「ぐ・・。」  これはこれでヘビーな質問だ。俺にはミキという娘は全く関係ない、しかし、『ミキちゃんだ。』と答えたとしたら、メガネからラムに 話が伝わるだろう。そうなったら考えてだけでも恐ろしい大惨事になる事は必至だ。逆に『ラムだ。』と答えたら・・・、いや、それはそ れで俺には抵抗がある。絶対言えない。  沈黙は続いた。  考え込む俺を静かに見つめていたメガネがニヤリと笑った。 メガネ「辛いか? 一人では答えを出せないだろう? では、素直に答えられるようにしてやろう。」  メガネは振り向くと、チビとカクガリに向かって頷いた。 チビ・カクガリ「おうっ!」  二人が俺めがけて突進してきたのだ。  カクガリが背後に回って羽交い絞めすると、チビは足にロープをくくり、あっという間に身動き出来なくなった。 あたる「何すんだ! 放せよ!」  ジタバタしてみるが全く動けない。 メガネ「同志よ! 後は頼んだ。」 サドヤマ「オスっ! ふっふっふっふ・・。」  山の様な大男が不適な笑みを浮かべて近づいて来たが、恐怖は感じなかった。こいつ、サドヤマは拷問研究会代表だが、身体に見合わず 気が小さいのだ。サドヤマの拷問は馬鹿の一つ覚え、『くすぐり』だからだ。 あたる「なんだよ、またコレかよ。進歩しないのはお互い様じゃな。」 メガネ「おだまりっっ!! じゃ、私は教室に戻る。放課後までに答えを聞き出すのだ!」  くそっ、メガネのヤツ、もしかして俺が答えられないの知っててこんな事やってるんじゃあるまいな・・?  メガネがきびす返すとドアの方に歩いて行った。そして、ドアノブに手を伸ばした時だ。  ドガアーーンッッ!!  轟音と共にドアが吹き飛んだ。メガネも一緒にぶっ飛ばされたみたいだ。  眩しいくらい光が入ってきて、クラクラしてしまう。 ラム「ダーリン見つけたっ!」 あたる「ラム!?」 チビ・カクガリ「ラムちゃんっ♪」 メガネ「ら・・ラム・・さん?」  俺の今の姿を見たラムがちょっとばかりキレたのは言うまでもない。  しかし、それほど大事にならずに済んだ。電撃で時計台が半壊したくらいだ。  メガネ達は瓦礫に埋もれてしまった。 ラム「ダーリン大丈夫だった?」 あたる「助かったぞラム。よくここに居るってことが分かったな?」  ラムはちょっとうつむいて恥ずかしそうに言った。 ラム「ダーリンの事は何だって分かるんだっちゃよ・・。」 あたる「えっ?」  ラムがどういう意味で言ったのか分からないけど、そういう台詞言われるのって、すごく照れくさい。  不意にそんな事言われたもんだから、焦って次に言う言葉が見つからなくて、ちょっとそっけなくなってしまったけど、 あたる「何言ってんだ、馬鹿。」  精一杯の発言だ。 ラム「えへへ・・。」  なんか、イキナリ妙な雰囲気になっちまったな・・。どうもこういう状況は苦手で、正直困る。  照れくさくって気まずくって困ってた所だが、ちょうどいい具合に時計塔の瓦礫に埋もれていたメガネが、這いずって出てきた。 メガネ「ら・・ラムさん。何故です?! 何故あたるなんかを助けるんです?!」 ラム「何言ってるっちゃ! ウチらは夫婦だっちゃ! 夫を助けるのは当然だっちゃ!」 メガネ「しかし! あたるは昨日の放課後、ラムさんのそんな気持ちを裏切って、新しい彼女とデートを・・!!」 ラム「ウソだっちゃ! 昨日の放課後から、ダーリンはずうぅぅっっとウチと一緒だったっちゃ!」 メガネ「!!!」  メガネはラムの言った言葉に、大きなショックを受けた様だった。 メガネ「ずううぅっと? ずぅぅぅーーっと?! ずうぅっと一緒に、な・・な・・なな何してたんです?!」  メガネってショックを受けるとフリーズする癖を持っている。多分、もうすぐ固まっちまうだろう。 ラム「夫婦の私生活に立ち入りは無用だっちゃ! べぇ〜〜〜っだ!」 メガネ「一緒に・・何したってぇぇのよぉぉおおぉぉぉ〜〜〜っっ???」  断末魔の叫びに似た声を上げて、立ったままフリーズしてしまった。 ラム「行こっ、ダーリン。」 あたる「あ、ああ。」  完全にフリーズしているメガネに向かって、聞こえてるかどうかは分からんけど、声をかけてみた。さっきの質問に答えとかないと、 また拉致されてもたまらんからな。  心底、何で俺がこんな事に答えなきゃなんねーんだよと思いながらも、 あたる「聞こえとるかメガネ、俺の答えは『ミキちゃんを選ぶ気は無い』とでも言っておく。じゃあな。」  嘘はついてないもんねー。ミキちゃんはパーマの彼女だし、俺には関係無い。しかし、ラムを選ぶとも言ってない。  これでメガネが納得するとも思えないけど・・・。ま、いっか!  小休止テーマ:星空のサイクリング                                 第三話『噂は色々ありますが。』(其の壱)・・・其の弐につづく。