『第0話』僕は諸星あたる 「ダーリン!うちがいなくなっても泣いちゃだめだっちゃよ!!」 そう言いつつも涙を流しているのはラムの方だった。 その姿を見送る少年。その少年の右手にはキレイな銀色のブレスレットがあり、まるで涙を我慢する少年の変わりに涙を流すかのように爛々と輝きを放っていた。 そう、この日から僕は泣かないって決めたんだ……。 ザァァァァ ザァァァァ ラムがどこか遠い国に行ってから数日後の激しい雨の日のことだった。 「あたるちゃん、お母さんが死んで寂しいだろうに……泣かないなんて偉いのね。」 僕は諸星あたる、9才。ラムがいなくなってすぐに母さんが死んじゃったんだ……。 涙は出さない。自分でも酷いヤツだと思うよ。だけど、泣かないってラムと約束したんだ。 …………けど母さん、どうしていなくなっちゃったの?逝かないでよ。 逝かないで逝かないで逝かないで逝かないで逝かないで逝かないで逝かないで逝かないで逝かないで……………プツン あたるは手で顔を覆っていたかと思うと、今度は手を戻し顔を見せる。が、その表情は感情が感じられなかった。 次の日、ずっと黙っていた父さんがやっと僕に話かけてくれた。 「あたる、お前にはこれから叔父さんのところに行ってもらう。そして強くなれ。誰にも頼らず、1人で生き抜けれるようになれ。」 そう言い残して、父さんはどこかへ行ってしまった………。 大丈夫だよ、父さん。僕には母さんの香りがのこっている、このブレスレットがあるんだから。 それからは毎日、叔父さんは僕に武術を教えてくれた。 嫌なこともあったけど、強くなればなる程嫌なことを次へのステップとして楽しむことができた。 8年後 ここは山奥の小さな一軒家、周りは木で埋め尽くされており、屋根では小鳥がキレイな歌を歌っている。 ジュー あたるは制服の上にエプロンを着け、朝御飯を作っている。その背後の食卓には既に美味しそうな目玉焼きがおいてある。と、そこに1人の男性が現れた。その右手には手紙らしきものを持っている。 「あたる、お前の親父から手紙が来ておるぞ。」 「あぁ?」 こんなことは今までなかったのに、何を今更………。 そこには一言「来い」の文字があった。 「ぬぅあに考えとるんじゃ、こいつは!?」 「場所は友引町だ。どうする?」 「ふん、そこに行けば父さんに会えるかもしれんが………叔父さんを一人にするのは気が進まん。」 「ふっ、お前に心配されとーないな。言わせてもらうなら『舐めるなよ』だ。」 「………」 「行け。行って、お前の親父が何故お前をここにやったのか確かめてこい。お前だって気になっていただろう?親父が何を企んでいるのか。何もないのに俺にお前を強くするよう頼むはずがあるまい。」 「叔父さん、オレ………」 そして2015年 友引駅 「ぬぅあんでこの町には誰もおらんのじゃあぁ