時は夢のように・・・。  『エピローグ』    数年後・・・。  「髪飾りのティアラは・・・こんな感じでいいわね。」  「うん。いい感じ。」  「プリンセスラインのドレスにぴったりね。」  「やっぱりラムさん、スタイルいい。」  「そ、そんなことないっちゃよ。」  いつかのブライダルフェアで訪れたチャペルに来ていた。  でも今日はブライダルフェアなんかじゃない。  あまり着たことのないタキシードなんで、動きづらくてしかたない。ちなみに色は白だ。  チャペルの控え室で、俺は隅の椅子に腰かけて、女の子たちのさざめきを眺めていた。  「オッケー。じゃあラムちゃん、立って。ブーケ持ってみて。」  ラムは座っていた椅子からスッと立ち上がると、ブーケを受け取った。  ドレスは、純白。腰からボリュームアップされたプリンセスラインだ。レースと細かな刺繍で可愛らしくまとまっている。ふんわりと広 がったレースを格子状にパッフィングしたスカートが、歩くたびにふわふわと揺れた。  髪の毛はアップして、可愛らしい花の形をしたヘアピンでとめてある。ダイヤをあしらったティアラと、肩下まで流れているベール、ツ ノには小さなフラワーリングが飾られていた。  「うんうんっ。すごく綺麗だよ、ラムさん。」 ラム「ありがとだっちゃ、唯。沙織も。」  とうとう、俺とラムは結婚するのだ。  唯はこの日のために、フロリダから帰国してくれて、いろいろ結婚式のアドバイスをしてくれた。 ラム「二人がいなかったら、この結婚式はなかったかもしれないっちゃ・・。ダーリンに『好きだ』って言ってもらえたのは、唯のおかげ    だっちゃ。ダーリンの傍にいられるのも・・・ぜんぶ唯のおかげだっちゃよ。唯は最高のウエディングプランナーだっちゃね。」 唯「そ、そんな・・、私は別に・・・二人が幸せになったらいいなと・・・思って・・・その・・。」  だんだん声が小さくなって、最後はゴニョゴニョで聞き取れない。 沙織「まったく、だいたい私に家の留守番させておきながら、京都まで行っちゃうなんてどういうこと? わたしは忘れてないわよ。パフェ    奢ってくれるって言ってたよね。」 唯「あうっ、よく覚えてる〜。」  沙織は、冷やかな目で唯に目配せする。  ちょっとひきつった表情で微笑んで、唯。 ラム「ほんっっっとに、ありがとだっちゃ。」  にっこり笑って、ラム。  カラ〜〜ン・・コロ〜〜ン・・カラ〜〜ン・・コロ〜〜ン・・・。  礼拝堂の鐘が、頭上の方から鳴り響いた。  沙織が、部屋のドアを開ける。 沙織「さぁ、フラワーシャワーだよ。」 唯「みんな待ってるよ、急いでっ。」 ラム「うんっ、ダーリン行くっちゃ。」  ラムに手を引かれて控え室を出た俺は、バージンロード正面扉の前に立ってスタンバった。  ラムは俺の左腕に、寄り添って腕を組んでいる。  扉が開かれると、外から光がサーッと差し込んで、ラムのウエディングドレスにキラキラと降り注いだ。  その逆光の中から、一斉に歓声がわきあがった。   目の前には赤絨毯が敷かれていて、その両側にはたくさんの友達が立っていた。  俺とラムは、歓声とフラワーシャワーの中を、ゆっくり歩いていった。 あたる「アホ、べたべたくっつくな。」 ラム「なに恥ずかしがってるっちゃ、ダーリン!」  ラムは嬉しそうに、満面の笑顔で泣いていた。  俺とラムの時間は動き出したばかりだ。  でも、『今』という時間は、二度と戻らないんだ。  だから、最初から大切にしていきたい。  時は、夢のように過ぎてしまうから。  ラストエンディングテーマ:Remember My Love                                               『時は夢のように・・・。』Fin