§前回までのあらすじ§  カロンにラムを目覚めさせるチャンスをもらい、ラムの心の中に入ったあたるはそこで意外な人物、夢邪気に出会ったあたるはラムを目覚めさせる為の試練に挑んだのたが・・・       エピソード 8  あたるは今の状況を思い浮かべたが、ふとある事に気がついた あたる 「おい夢邪気、さっきここがちょっと前の現実社会って言ったよな?」あたるが夢邪気に問いかけると、夢邪気は 夢邪気 「それがどないしました?」と言った。するとあたるは あたる 「もし、ここで夢を見せた事で今回の事態を回避出来たらどうなるんだ?」と言った。しかし夢邪気は 夢邪気 「あんさん、さっきのわての話聞いて無かったんかいな。同じ道筋を辿る様にって言ったやろう。それに過去を変えるのは、そんな簡単やおまへんで。ちょっとした変化くらいじゃ修正されて結局同じ結果になってまうんや」と言い、更に 夢邪気 「しかも、試練はクリアにならんさかい、何もいい事あらへんで」と言った。あたるは あたる 「なるほど、やっぱり指示通りやるしか無いわけか」と言うと再び夢を創る事に集中しはじめた。あたるのイメージが膨らみ、夢が完成した直後あたるは再び自分の部屋に戻された。まわりを見回しあたるは あたる 「おい!夢邪気。部屋に戻ってしまったぞ!」と言った。すると夢邪気は 夢邪気 「あんさんは、わてと違うて普通の人間やさかい、わての様に夢に留まる事は出来んのですわ。でも、あんさんが戻ったっちゅう事は、一応夢は創れたっちゅう事でんな」と言うと、更に 夢邪気 「ほな、次は明日の夢ですな」と言うと、あたるは あたる 「明日?俺には時間がないんじゃ!明日なんて待てるか!」と言った。すると夢邪気は 夢邪気 「明日まで待つ必要は、あらへんで」と言った。あたるは あたる 「なに?」と怪訝そうな顔をすると夢邪気は 夢邪気 「あんさんは今、実体の無い精神体や。精神っちゅうものは、時間も空間も関係無いさかい明日の夜なんて一瞬で行けまっせ」と言うとあたるは あたる 「何だか良く分からんが、行けるならすぐに連れてけ」と言った。夢邪気は 夢邪気 「それが人にもの頼む態度かいな。まぁ、ええ。ほな行きまっせ〜」と言う夢邪気の声と同時に回りが眩い光に包まれ、気が付けばさっきと同じあたるの部屋に居た。 あたる 「なんだ?変わってないではないか」あたるがそう言うと夢邪気は 夢邪気 「そんな事ありまへんで、ちゃんと一日時間が経過してはりますがな」と言った。あたるは あたる 「そうなのか?」と言うと布団に寝ている自分を見下ろし、一呼吸置き夢邪気に あたる 「じゃ夢邪気、また頼む」と言うと夢邪気は 夢邪気 「ほな、行きまっせ〜」と言うと、また何も無い空間に飛ばされた。  あたるは、先程と同じ様にイメージを膨らませ始めた。やがて夢のイメージが完了すると同時に再び自分の部屋に戻って来た。先程とまるで一緒である。 あたる 「これでいいのか?」とあたるが夢邪気に聞くと夢邪気は 夢邪気 「とりあえずは、ええんちゃいますか?」と言い 夢邪気 「ほな、次のポイントに飛びまっせ」と言うと、あたるが あたる 「まだ有るのか?」と聞くと夢邪気は 夢邪気 「次が最後でっせ。ほな行きまっか」と言うと再び眩い光に包まれた。あたるがゆっくり目を開けると、そこはいつもの通学路だった。 あたる 「こんな所で何すればいいんだ?」あたるが夢邪気に聞くと、夢邪気は 夢邪気 「ここでは、あんさんはこれ使って何かするみたいやなぁ」と言うと、あたるに小さな虫の様な物と、ゲームのコントローラーの様な物、そして透明な水糸の様な糸を渡した。あたるは あたる 「なんじゃこりゃ?」と言って受けとるとマジマジと見た。それを見て夢邪気は 夢邪気 「そのコントローラーで、そっちの小さな虫を操るみたいやな」と言った。あたるは あたる 「虫のラジコンに水糸か・・・何のこっちゃ?」と言った。その時、商店街の方からあたる自身とラムが歩いて来た。あたるは あたる 「あ、ラム・・・まだ、元気だ・・・」と言った時、商店街の片隅の電柱に隠れる人影を見た。それを見たあたるは あたる 「あれは!ラウじゃないか!」と言った。あたるの言った通り、ラウは電柱に隠れてあたるとラムの様子を伺っていた。その時、ラウの手元で光る物がみえた。あたるは あたる 「あれはまさか!」と言うとラウの手元を良く見た。するとそれは銃の様にみえたが、普通の銃とは違っていた。 あたる 「あれが薬を打ち込んだ銃か・・・すると今はあの時か!」あたるは焦った、ラウの位置から撃てば確実にラムに命中してしまうからだ。その時あたるは思い出した、あたるが撃たれた時あたるは目の前を通りすぎた1000円札を取ろうと振り返りラムに抱きつく様なかたちになったのを、そして夢邪気に渡された小型の虫のラジコンと水糸を改めて確認し、 あたる 「まさか、俺がこれで1000円札を?しかし、1000円札は?」そう言うとあたるはズボンのポケットに手を入れてみた。すると何か紙の様な物が手に触れた。あたるがそれを取り出してみると、なんとそれは1000円札だった。 あたる 「な、なんでポケットに1000円札が?」あたるはそう言うと、まじまじと1000円札を見た。その時夢邪気が 夢邪気 「ほぅ、あんさんもなかなかやりまんなぁ」と言った。あたるは あたる 「どう言う事だ?」と夢邪気に聞くと夢邪気は 夢邪気 「言うたやろ、あんさんは今精神体やと。精神体っちゅうのは、言うてしまえば人の心が具現化したものや。あんさんが着とるその服も具現化した物や、つまりそのお札も具現化した物っちゅう事やな。せやけど、体や服は無意識で出来るさかい誰でも出来るんやけど、あんさんが今持っとるお札は別や。かなり強い念を込めんと具現化できひん物やで、ラムさんを助けたいっちゅう気持ちが相当強いか、お金に対する執着が相当強いかのどっちかやな。まぁ、あんさんの場合後者やろうけど」と言った。するとあたるは あたる 「ほっとけ!それより、この1000円札はラムと一緒に居る俺にも見えるのか?」と言った。夢邪気は 夢邪気 「お金に異常な執着持っとるあんさんなら見えると思いまっせ。けど、ラムさんには見えへんやろなぁ」と言うと、あたるは あたる 「俺に見えれば、それで充分だ」と言い あたる 「おい、夢邪気。お前何か針の様な物持っとらんか?」と言った。すると夢邪気は 夢邪気 「なんか、あんさんえろう態度でかいなぁ。人に物頼む時には、それなりの態度っちゅうもんが有るやろ」と言った。するとあたるは あたる 「そんな事言っていいのか?」と言った。それを聞いた夢邪気は 夢邪気 「なんやっちゅうねん」と反論しかけたが、あたるは あたる 「俺が何も気づかないと思ったか!お前がここまで俺に協力するのは絶対に何かあるからだ!お前最初に言ってたよなぁ?ラッパがどうとか。つまり、あの時俺がラッパを吹いてしまった為にラッパが紛失した。その紛失先は、あの時の夢の中。つまりラムの心の中だろう、しかしラムが望まなければお前はラムの夢の中には入れない。しかも、ラッパの有る所は最初の部屋の黒い扉の向こうとみた」と言うと、夢邪気は 夢邪気 「あんさん、見かけによらずよう観察しとるわ」と言った。あたるは続けて あたる 「おおかた、お前は一人じゃあの扉の先には行けんのだろう?だから俺に試練をクリアさせて扉を開けさせ一緒に入るつもりなのたろーが!」と言った。すると夢邪気は 夢邪気 「ほんま、かなわんわぁ。ここは大人しくあんさんの言う事聞くしかあらへんなぁ」と言うと小さな針をあたるに渡した。あたるは、その針を受けとると1000円札に穴を開けながら あたる 「最初から、素直に渡せばいいのじゃ」と言うとお札に開けた穴に水糸を通し小さい虫のラジコンに縛り付けた。 あたる 「よし、これで」とあたるがコントローラーを持った時、ラウが銃を撃つ態勢をとった。あたるはそれを見て あたる 「しまった!」と言って慌てて虫のラジコンを飛ばそうとしたが、ラウは銃を撃ってしまった。あたるが愕然としていると、ラウの撃った薬はちょうど通りかかったコタツ猫に当たりコタツ猫は針の刺さったあたりをポリポリと掻くと、何事も無かった様に去って行った。 あたるはそれを見てホッとし、すぐにラジコンを飛ばす準備をした。するとまたラウがラムに向けて銃を構えた、あたるは慌てて虫のラジコンを操作するが、うまく飛ばせない。そうこうしてるうちに、ラウが2発目の薬を撃った。あたるは必死にラジコンを操作したが、到底間に合う筈もなく薬は発射された。しかし、なんとそこに「しのぶさ〜ん」と、しのぶを追いかけて総番が物凄い勢いで走ってきたのだ。ラウの撃った薬は無情にも走ってきた総番に命中した。もちろん総番は何事も無かった様に走り去って行った。  2度の幸運と言うか、アクシデントと言うか、とにかくあたるは再びチャンスを得たのだ。あたるは あたる 「助かった、よし今度こそは」とラジコンを、ラムと一緒に歩いて来るあたる自身に向けて飛ばした。案の定、あたるは1000円札を見つけ予想通りの動きをした。その頃ちょうどラウが3発目の薬を撃った。あたるは素早くラジコンを操作し、あたる自身がラムの盾になる様に1000円札で誘導した。するとあたるがラムに抱きつく様なかたちになり、次の瞬間薬はあたるの背中に命中した。背中に薬を注入されたあたるは、崩れる様に倒れ、それを見たラムが ラム 「ダーリン?」と声をかけ ラム 「ダーリン!!!どうしたっちゃ?ダーリン!」と叫びあたるを抱き起こした。ラムは、あたるの背中に刺さっているラウの撃った薬をみつけ辺りを見回して、電柱の所で行ったり来たりしているラウを見つけ、そちらに飛んで行こうとした時、あたるの方を振り返りあたるの側に駆け寄った。その光景を見てあたは あたる 「あぁ、あの時俺がラムを呼んだんだった」と、ボソッと言った。 ラウは、ラムに気付かれたのを悟り姿を消しラムが再び見た時には、もうその場に居なかった。ラムは、倒れたあたるを抱き起こし ラム 「ダーリン!死んじゃ嫌だっちゃー!」と叫ぶとポロポロと涙を流しながらあたるを抱き抱えると、フラフラと飛んで行った。あたるは あたる 「あそこから家までラムが俺を・・・」と言ってその後の言葉を飲み込んだ。ラムは決して腕力は強くない、短い時間ならあたるを吊り下げ飛行も出来るが、あたるの倒れた所から家までは結構距離があり、あたるを吊り下げ飛行して行くのは並大抵ではなかった筈だ。あたるは、そんなラムの姿を見ていつの間にか涙を流していた。あたるは、自分が涙を流している事に気付くと慌てて涙を拭い、夢邪気に聞いた。 あたる 「この試練は、これで終わりか?」 夢邪気 「でんなぁ」夢邪気は短く答えた。すると、また眩い光に包まれ再び回りを見ると、そこは最初の部屋だった。しかし、最初とはどこか違う。よくよく見てみるとさっき入った赤の通路が無くなっている。あたるは振り返り、黒いドアを見た、すると黒かった扉は色が替わり青い扉になっている。あたるは あたる 「おい、夢邪気。扉の色が変わったって事は、試練はクリア出来たって事か?」と夢邪気に聞いた。すると夢邪気は 夢邪気 「みたいやなぁ」と言い、更に 夢邪気 「あと、試練をクリアしても失敗しても通路は無くなりまっせ。試練には一度しか参加でけへんのや」と言った。それを聞いてあたるは  あたる 「なるほど、やり直しは出来ないって事だな・・所で、俺が俺に見せた夢はお前分かるのか?」と言うと、夢邪気は 夢邪気 「当たり前でっしゃろ!わてが何年夢創って来たと思ってんねん」と言った。しかしあたるは首をかしげながら あたる 「おかしいなぁ、俺のイメージした夢を見た記憶は無いが」と言うと、夢邪気は 夢邪気 「あんさんみたいな普通の人間じゃ、イメージ通りに夢が出来る事なんてまず無いで。だいたい、主要な事だけを誇張した夢になってまうんや」と言った。あたるは あたる 「なに?もしかして、あの時見たラムが消える夢が俺の創った夢だったのか?」と言うと、頭を抱え あたる 「なんと!俺は自分の創った夢を見て不安になっていたのか?」と言った。それを見た夢邪気は 夢邪気 「まぁ、あんさんにしては上出来やったんとちゃいまっか?ハーレムみたいな夢やったら大変やったで」と言った。するとあたるは あたる 「は!しまった!なんでせっかく自分で夢創るチャンスが有ったのにそこに気づかなかったのか」と言って、膝をつき本気で落ち込んだ。夢邪気は 夢邪気 「あんさんの様なお人には、絶対夢創らせたらあかんな」と呆れて言った。あたるは あたる 「そう言えば、時間はどのくらい経ったんだ?」と夢邪気に聞いた。すると夢邪気は 夢邪気 「現実世界で、一時間ってとこやおまへんか」と言った。それを聞いたあたるは あたる 「だった一時間!?じゃあ、時間は気にする事はないな」と言ったが、夢邪気が 夢邪気 「さっきは、わてが居たからその程度ですんだんでっせ。他の二つの試練は、どうか分かりまへんで」と言った。あたるは あたる 「なに?他の二つもお前が一緒じゃないのか?」と夢邪気に聞くと、夢邪気は 夢邪気 「試練には、それぞれ担当がおるんや。他の二つの担当は、わてもしらんで」と言った。あたるは あたる 「そうか、ならここに居ても時間の無駄だから俺は次行くぞ」と言い、二つの通路の前に立った。残る通路は、黄色と青だ。あたるは、迷う事なく黄色の通路に入って行った。黄色の通路を進んで行くと、黄色の扉が現れた。あたるはゆっくりとその扉を開いた。するとそこは・・・ロッカールームだった。その部屋を見渡してあたるは あたる 「ロッカールーム?どこかで見た事有る様な・・・」と言いつつ、1つのロッカーを開けるとそこには、、、ウサギの着ぐるみ。あたるは あたる 「こ、これは・・・」と言い、その着ぐるみをロッカーから出した。その時、後ろから声がした「あ、あたるさん?」あたるが振り向くと、そこにはウサギの着ぐるみを着た見覚えの有る姿。あたるは あたる 「やっぱり、お前か。因幡」と言った。 因幡 「やっぱり、あたるさんだぁ」と言い、更に 因幡 「でも、何であたるさんがここに?」と言うと、あたるが あたる 「それは、こっちが聞きたいわい!」言い、因幡は 因幡 「あ、もしかして時の試練を受けるのって、あたるさんだったんですか?」と言った。するとあたるは あたる 「時の試練?」と、因幡に聞くと因幡は 因幡 「ええ、時の試練です。今日時の試練を受ける人が居るって聞いてましたが、まさかあたるさんだったとは」と言った。それに対してあたるは あたる 「それより、時の試練とは何をすればいいのだ?」と因幡に聞くと、因幡は 因幡 「あぁ、今回の時の試練はあたるさんの大切な人の近い未来に起こる不幸を回避するのが目的です。あたるさんの大切な人なら、多分ラムさんだと思いますが」と言った。するとあたるは あたる 「近い未来に、ラムに不幸な事が?」と言うと、因幡は 因幡 「あくまで、数有る未来の一つですけど、最悪の結末を迎える未来でもあります」と言った。あたるは あたる 「お前は、どんな未来か知っているのか?」と因幡に聞くと、因幡は 因幡 「僕は、知りません。監理局の人は、人の未来を覗いてはいけない規則なので」と言った。するとあたるは あたる 「なら、なんでラムの最悪の結末を迎える未来だって分かるんだ?」と言った。因幡は 因幡 「時の試練の未来は、決まっているんです。そう言う物だって」と言い、一つのロッカーを開け、あたるに 因幡 「あたるさんには、これを着て頂きます」と言うと、ロッカーから服を取り出した。その服は、黒の野球帽に黒のサングラス、大きなマスクに茶色のトレンチコートだった。それを見てあたるは あたる 「これでは、まるで不審者ではないか・・・ウサギの着ぐるみではないのか?まぁ、あれもあれで普通ではないが」と言った。すると因幡は 因幡 「このウサギの服は、監理局の制服なんです。監理局員は、人の未来には一切関わってはいけない規則なので、この服を着せる訳にはいかないんですよ」と、困った顔をした。それを聞いたあたるは あたる 「お前、おもいっきり人の未来に関わってるとおもうが」と言った。すると因幡は 因幡 「それは、言わないで下さいよー」と、更に困った顔をした。あたるは あたる 「ところで、その未来だがドアノブを取ってしまえばいいんじゃないのか?」と言うと、因幡は 因幡 「ドアノブを取っても無駄です」と言った。するとあたるは あたる 「前に来た時に、自分の夢をドアノブに吹き込んだよなぁ?て事は、ドアノブに未来の情報が入ってるんだろ?なら、ドアノブを取って処分してしまえばその未来は無かった事にならないか?」と言った。しかし因幡は 因幡 「確かに、あたるさんの言う通りドアノブに未来の情報が入っているのですが、そのドアノブを処分してもその未来のデータは残っているので、再びドアノブが作成されてしまうんです」と言った。あたるは あたる 「作成されてしまうって、お前らが作ってるんじゃないのか?」と因幡に聞くと、因幡は 因幡 「ドアノブは、専用の機械で作られます。だから、その機械にデータが残っていれば処分しても無駄なんです」と答えた。あたるが あたる 「機械が?お前らが一個一個、俺達がやったみたいに作ってるのかと思った」と言うと、因幡は  因幡 「あれだけの数のドアノブを一個一個作ってたら、一生かけても作りきらないですよ」と言った。するとあたるは あたる 「それもそうか。じゃあ、俺はこの不審者丸出しの服着てどのドアに入ればいいのだ?」と言った。因幡は 因幡 「あ、じゃあ、付いてきて下さい」と言うと壁に向かって飛び込んだ。因幡の体は、壁に吸い込まれる様にして消えた。あたるも因幡に続いて、壁に向かって飛び込んだ。壁を抜けると、そこは以前に来たドアだらけの空間だった。あたるは、以前の様に下に落下する事も無く、空間に浮いていた。どうやら、あの不審者丸出しの服もウサギの着ぐるみ同様の効果が有るらしく、空間を自由に移動できた。少し先を行く因幡が一つのドアの前で止まり 因幡 「あたるさん、このドアです」と言った。あたるは、すぐにそのドアの所へ行き あたる 「俺は、このドアの中で何をすればいいんだ?」と因幡に聞いたが、因幡は 因幡 「それは、僕にも分かりません。ただ言えるのは、このドアの中にあたるさんの大切な人の最悪の未来が有るって事です」と言った。するとあたるは あたる 「もし、失敗したら?」と因幡に聞いた。因幡は 因幡 「失敗したら、それで終わりです。最悪の未来は、可能性として残ります」と言った。するとあたるは あたる 「もう一度入ってやり直す事は?」と因幡にきいたが、因幡は 因幡 「試練で入ったドアは、二度と入る事は出来ません」と言った。あたるは あたる 「なるほどな、まぁ、何にしても入らなきゃ始まらないわけだな」と言いドアを開けようとしたが重要な事を因幡に聞きそびれていた事に気付き あたる 「そう言えば、ドアの向こうでの時間の流は現実世界と一緒か?」と因幡に聞いた。すると因幡は 因幡 「あ、安心して下さい。ドアの向こうの時間の流れは現実世界より、遥かに早いので。現実世界の一時間が、ドアの向こうでは1年くらいなので何日かかっても大丈夫です」と言い、ドアの中での注意事項を幾つか説明すると 因幡 「あたるさん!頑張って下さい!応援してます」と言った。あたるは、因幡に小さく頷くとゆっくりとドアを開いた。するとそこは、見覚えのある街並みだった。友引町・・・どこも変わった所は見られず、とても未来とは思えなかった。不審者あたるは、とりあえず自分の家に向かった、家に行けば少しは現状が解るかもしれないと思ったのだ。日も少し陰ってきて辺りもだんだん暗くなって来た。不審者あたるは、庭の木に登り太い枝の上で自分の部屋を覗いてみた。部屋は真っ暗で人の気配はない、あたる自身もラムも居ない様だ。しばらくすると誰かがあたるの部屋の窓の所に飛んできた。もちろんラムである。不審者あたるは 不審者あたる 《ラム・・・》と小さい声で言った。不審者あたるはラムの姿を見てそこが未来だと確信した。ラムは、幼さも消え大人っぽく見えた。歳は22~23くらいだろうか、その姿を見た不審者あたるは一瞬ラムの成長した姿に目を奪われた。しかし、ラムの表情を見てすぐに我に返った。その表情はどこか陰りが有り、あたるの知っている天真爛漫なラムの顔ではなかったからだ。 不審者あたる 《ラムのあんな顔、今まで見た事ない》不審者あたるは、ボソッと言い更にラムを観察した。ラムは、部屋に入ると部屋の中央にちょこんと座った。様子からすると、テンはもう一緒に暮らしていないらしく、この部屋にはあたるとラムだけみたいだ。  外は、すっかり暗くなった頃慌ただしく玄関のドアを開け「ただいまー」と家に入る者がいた。もちろんあたるである。あたるの声を聞いた瞬間、ラムの顔に輝きが戻った。ラムは、ヒョイと立ち上がると部屋のドアの前に行った、するとドアが開きあたるが入ってきた。ラムは ラム 「ダーリンおかえりー♪今日も、お疲れ様だっちゃ」と満面の笑みであたるを迎えた。あたるは あたる 「あぁ、ただいま」と、少し素っ気ない態度でスーツを脱ぐと、ラフな格好に着替え始めた。それを見てラムは ラム 「ダーリンお出かけ?もうすぐ夕飯だっちゃよ?」と、言った。するとあたるは あたる 「あぁ、俺はこれから会社の人と飲み会だから夕飯はいらないって母さんに言っといて」と言うと、「行ってきまーす」と勢い良く飛び出して行った。 残されたラムは、うつむいたまま暫く動かなかったが、やがてゆっくりと夜の空に飛んで行った。ラムが飛び去る時、不審者あたるはラムの目に光るものをみた。 不審者あたる 「ラム・・・俺は、何をやってるんだ!」不審者あたるはそう言うと出て行ったあたるの後を追いかけようとしたが、さすがあたる本人だけあって見失ってしまった。不審者あたるは 不審者あたる 「さすが俺、未来でも自慢の脚は健在か」と言うと諦めて家に戻った。ラムはUFOに行ったらしく、あたるの部屋には誰も居なかった。不審者あたるは自分が帰って来るのを待ってるうちに眠ってしまったらしく、目を覚ました時には飲み会に行ったあたるも帰宅していて、高いびきで寝ていた。そんな未来の自分に無性に腹が立った不審者あたるは、部屋に入り蹴り飛ばしたい衝動にかられた。不審者あたるが自分の部屋に忍び込もうと木の枝から飛び移ろうとした時、ラムが戻って来たので慌ててもと居た場所に戻ると、ラムは気付かなかったらしく部屋の窓を開け中に入った。ラムは、あたるの布団の横に座りあたるが剥いだ毛布をそっと直した。そしてラムは ラム 「ダーリン・・ダーリンはもう、ウチの事好きじゃないっちゃ?」と言うと淋しそうな顔をした。あたるは、酔っているせいか相変わらず高いびきだ。ラムはそんなあたるに話かけた ラム 「ダーリン、実は最近ずっと父ちゃんから星に帰って来いって言われてるっちゃ」と言った。枝の上で様子を見ている不審者あたるは 不審者あたる (なに!)と思った。ラムは寝ているあたるに話し続けた ラム 「でも、ウチはダーリンが好きだっちゃ・・・」突然ラムの言葉が止まった。ラムの目からは涙が溢れている。枝の上のあたるは 不審者あたる (ラム・・ラムのあの様子だと、うまく行ってないのか?俺達)と思い、更に観察を続けた。再びラムが口を開いた ラム 「ダーリン、ウチもう分からなくなったっちゃ。どうすればダーリンと幸せになれるのか・・ダーリン?ウチが居たら邪魔だっちゃ?」ラムは、寝ているあたるにそう問いかけた。それを聞いた不審者あたるは 不審者あたる (邪魔なわけなかろーが!)と思った。しかし、あたるは一向に目を覚ます気配はない。ラムは ラム 「ダーリン、もっとウチの事を見て欲しいっちゃ・・・」と言うと、あたるの頬に軽くキスをして ラム 「おやすみ・・・」と言い再び夜の空に姿を消した。不審者あたるは、言い知れぬ怒りと悲しみ、そして自分自身に対する情けなさでいっぱいだった。  不審者あたるは、いつの間にか寝ていたらしく目が覚めた時は既に朝だった。あたるはもう出勤したらしく、部屋には誰も居なかった。不審者あたるは、あたるとラムの事を知る為に聞き込みをする事にした。まず最初に見かけたのは錯乱坊であった。まだ公園でテント生活をしてる様だったが、関わるとろくな事が無いと思い通り過ぎると、突然後ろから「待たれよ」と呼び止められた。呼び止めたのは、当然錯乱坊である。 錯乱坊 「はて?お主どこかで会ったような」と言った。不審者あたるは 不審者あたる 「き、気のせいでは?」と言った。その時、因幡から聞いた注意事項を思い出した。 因幡 『あたるさんいいですか、絶対に正体を知られない様に気を付けて下さい。正体がバレたら、その時点で試練は失敗になりますから』あたるは因幡の言葉を思い出し、急いでその場を去ろうとすると 錯乱坊 「これ、待てと言っておる。お主を呼び止めたのは理由があるからじゃ」と錯乱坊が言った。不審者あたるは、無視したところで余計に怪しまれると思い話を聞く事にした。 不審者あたる 「なんだっちゅうんじゃ?」あたるが錯乱坊に聞くと、錯乱坊は 錯乱坊 「そんな風に顔を隠しても、わしにはわかるぞい」と言った。不審者あたるは 不審者あたる (ま、まさかバレたのか?)と思い、冷や汗が背中を流れるのを感じた。錯乱坊は、続けて言った 錯乱坊 「お主の顔、救いようの無いほど悪い!!!」   ドガッバキバキッグシャ!  不審者あたるは、近くに転がっていた鍋で錯乱坊をボコボコにした。すると錯乱坊は 錯乱坊 「わ、わしが言いたかったのは、救いようの無いほど悪い相が出ていると・・・」と言った。不審者あたるは 不審者あたる 「毎度毎度、紛らわしい言い方しおって!」と言って鍋をほうり投げた。しかし錯乱坊は 錯乱坊 「お主の様な凶相の持ち主は、あの諸星あたる以外に見た事はないのじゃが、お主、諸星あたる・・・」錯乱坊がそこまで言った時に、不審者あたるは逃げる様にその場を後にした。錯乱坊は 錯乱坊 「最近の若いもんはせっかちじゃのう。人の話を聞こうともせん、せっかく諸星あたるには関わるなと忠告してやろうと思ったのに。と言いつつ合掌」と言って合掌した。  不審者あたるは、公園を後にして 不審者あたる 「人に聞くのはリスクが高すぎる。まして、この格好じゃ怪しまれて警察を呼ばれかねん」と言って再び家に戻った。そして不審者あたるは 不審者あたる 「しかし、よわったぞ。状況がまったく理解できん、かと言って俺自身やラムに聞く訳にもいかんし、どうすれば」と考えてるうちにまたしても眠ってしまった。再び目を覚ました時には、日はすっかり暮れていた。あたるの部屋には、既にラムが居て何か袋を持って飛んだり跳ねたりしている。何やら嬉しそうだ、不審者あたるは 不審者あたる 「ラムのやつ何だかはしゃいでるみたいだが、あの袋はなんだ?」と言って、様子を伺った。あたるはまだ帰って来ない、その時ラムが ラム 「ダーリン、おそいっちゃねぇ」と言って、袋の中を見た。その時あたるの母の声がした あたる母 「ラムちゃん、今日はあたる帰りが遅くなるって電話が有ったから、ご飯にしましょう」ラムはそれを聞いて、さっきまでとは売って代わり残念そうに袋を部屋に置き、下に降りて行った。不審者あたるは 不審者あたる 「まさか、俺は毎日こんな感じなのか?だとしたら、ラムは・・・」そう言うと、木を降りて茶の間の様子を伺う事にした。茶の間では、あたるの母、父、それにラムの3人で食卓を囲んでいた。ふと、あたるの母が言った あたる母 「あたるは、毎日何処に出掛けてるのかしら」と言って、更に あたる母 「ラムちゃん知らない?」とラムに聞いた。ラムは、箸を止め ラム 「ごめんなさい、ウチ知らないっちゃ・・・」と言った。するとあたるの母は あたる母 「あ、ラムちゃん責めてるんじゃないのよ、ラムちゃんなら知っているかと思ってね」と言った。ラムは、うつむいたまま ラム 「ごちそうさまでした」と言って、自分の茶碗を片付けて2階に上がった。それを見ていた不審者あたるは 不審者あたる (自分の親ながら、なんて無神経なんだ!)と思い、再び木に登りあたるの部屋を見る事にした。部屋にはラムがさっきの袋を胸に抱いて座っていた。ふいにラムが ラム 「ダーリン喜んでくれるかなぁ」と言って袋の中を見た。不審者あたるは、袋の中身が気になって仕方なかったが今出て行く訳にはいかないので、グッとこらえた。あたるの部屋の時計は、既に9時を廻っている。 不審者あたる 「ったく、俺は何処で何してるんだ!」不審者あたるがそう言った時、突然ラムが窓から顔を出しキョロキョロと辺りを見回して ラム 「誰か居るっちゃ?」と言った。不審者あたるは、咄嗟に 不審者あたる 「ニャーゴ」と猫の鳴き真似をしたが、急に声を出した為に声がかすれて、違う生き物の鳴き声の様になってしまった。それを聞いたラムは ラム 「な〜んだ、タヌキだっちゃね」と言って、再び部屋の中に戻った。不審者あたるは 不審者あたる 《タ、タヌキはないだろ、確かに下手では有ったがタヌキでは無かった》と、悔しそうに呟いた。ラムは、まだ部屋であたるを待っている様だ。時おり袋の中を見て、ニコニコしている。時間は、既に10時を回った ラム 「ダーリン早く帰って来ないかなぁ♪」ラムはそう言いながら、あたるの帰りを待ちわびている様だ。その時、不審者あたるは玄関の辺りに人の気配を感じて、ふと見てみるとあたるが帰宅した所だった。あたるは、玄関のドアを開けると あたる 「ただいまー」と言った。その声はラムにも届いたらしく、ラムは立ち上がると袋を自分の後に隠し、あたるを待った。程なく階段を上がる音がして、部屋のドアが開きあたるが顔を出した。ラムは ラム 「ダーリン、お帰り〜♪お疲れ様だっちゃ」と言った。するとあたるは あたる 「あぁ、ただいま」と昨日とまるで同じ対応だったが、ラムは気にせず ラム 「はい!」と言って後ろ手に持っていた袋をあたるに渡した。そして ラム 「ダーリン、誕生日おめでとうだっちゃ♪」と、満面の笑みを浮かべた。それを見てあたるは あたる 「あ、今日俺の誕生日か」と言って、ラムのプレゼントを受け取ると あたる 「ありがとうな、ラム」と言って、袋から中身を出した。それを見ていた不審者あたるは 不審者あたる 「この世界では、今日は4月13日、俺の誕生日だったのか」と言った。一方あたるが袋の中から取り出したのは、オシャレなサマーセーターだった。見た感じだと、どうも手編みみたいだ。ラムが、あたるの為に編んだのだろうか?しかし、不審者あたるの知っているラムの手編みのデザインでは無かった。サマーセーターを広げてマジマジと見つめるあたる。セーターであたるの顔が見えないラムは、覗き込む様にあたるを見て ラム 「どうだっちゃ?ウチ、ダーリンの好みに合う様に頑張って編んだっちゃ」と言った。それに対してあたるは あたる 「うん、お前にしてはいい出来だな」と言った。するとラムは ラム 「本当だっちゃ?やったー!」と言ってピョンピョンとジャンプした。それを見てあたるは、そのセーターをハンガーに掛けて あたる 「じゃぁ、俺はちょっと出掛けてくるから、お前は寝てていいぞ」と言った。ラムは ラム 「え?出掛けるって、今からだっちゃ?」と言った。するとあたるは あたる 「あぁ、ちょっとな」と言って部屋を出た。ラムは部屋を出るあたるに あたる 「ダーリン、何処行くっちゃ?最近全然ウチと一緒に居てくれないっちゃ。どうしてだっちゃ?」と言ったが、あたるは聞こえなかったのか玄関のドアを開けて出て行ってしまった。不審者あたるは、すぐにあたるの後を追った。不審者あたるは、あたるがラムから貰ったセーターを広げた時に、あたるの目に光るものを見逃さなかった。 不審者あたる 「あれは、絶対涙だ。ラムから貰ったセーターは涙が出るほど嬉しかったのに、それを見せないのは自分の事だから理解出来る。しかし、その後に出掛けるのは何か理由が有るとしか思えん」そう言いながら見失わない様に、慎重に後をつけた。するとあたるは、あるビルに入って行った。テナントがいくつも入っているビルで、あたるが何処のテナントに入ったかは、見当が付かない。不審者あたるは、仕方なくあたるが出てくるのを待つ事にした。あたるは思いのほか早く出て来た、右手には何か段ボール箱を持っている。不審者あたるは 不審者あたる 「なんだ?あの箱は?駅の方に向かってるな」と言いあたるから少し離れて歩く。しばらく歩くと、駅前広場に出た。そこであたるは段ボール箱を置き、おもむろに箱を開けると何かを掴み出した。それは、広告入りの無料配布のティッシュだった。あたるは、毎晩出掛けてはティッシュ配りをしていたのだ。不審者あたるは 不審者あたる 「ティッシュ配り?なんでそんな事を?」と言った。不審者あたるには、全く理解出来なかった。  自分は、自分で言うのも何だが進んで仕事などする様な人間ではないと言う事を知っているあたるにとって、今の状況はどうしても考えられないのだ。不審者あたるがそんな事を考えながら観察していると、一つ分かった事が有った。あたるは、男には一切ティッシュを配ってないのだ。配っているのは若い女性ばかり、それを見て不審者あたるは謎が解けた。 不審者あたる 「なるほど!バイトをしながらにして、綺麗なお姉さんに声をかける事が出来る!しかも、ティッシュ配りと言う大義名分が有るから、自然と声をかけられる訳か!」と言うとウンウンと頷きながら 不審者あたる 「さすが俺!」と言った。だが、ラムの事を思い出し 不審者あたる 「て、感心してる場合か!アイデアはいいがラムにあんな思いさせてまでやる事じゃない!」と言った。しかし、とは言え今の不審者あたるにはどうする事も出来ない。その時不審者あたるは、ふと思った 不審者あたる 「待てよ?考えてみれば変だぞ?なぜ、仕事が終わってからやる必要がある。綺麗なお姉さんに声をかけるなら、平日のこんな時間より休みの時の方がいいはずだ。それをこんな時間に恐らく毎日・・・」不審者あたるはラムの事が心配になって一旦家に帰る事にした。家に着くと、あたるの部屋の電気は消えていた。不審者あたるは、ラムはUFOに帰ったものだと思ったがラムは、あたるの部屋で眠っていた。不審者あたるは、物音を立てずに慎重に部屋に入るとラムの顔を覗き込んだ。ラムは泣きながら寝たのか頬には涙の後が残っていた。不審者あたるは、押し入れから毛布を出すとそっとラムにその毛布を掛けた。その時ラムが ラム 「ダーリン・・・」と言った。不審者あたるは、一瞬驚いたがラムの寝言だと分かってホッと胸を撫で下ろした。不審者あたるは、そのまま外に出ようとしたが再びラムの顔を見てこの世界のラムが可哀想で仕方なくなり、つい寝ているラムの耳元で 不審者あたる 《俺がいつも側に居るから心配するな》と囁いた。するとラムは、ニコッと笑い ラム 「・・うん」と言った。不審者あたるは驚き慌てて窓から木に飛び移り、姿を隠した。するとラムは、目を覚まし ラム 「う〜ん、ダーリン?帰って来たっちゃ?」と部屋の中を見渡した。しかし、あたるの姿が無い事に気付くと再び寝ようとしたが、自分に掛かっている毛布を見て首をかしげた。やがて、それが自分で掛けた物では無い事に気付くと、部屋を飛び出し廊下に出て ラム 《ダーリン?帰ったっちゃ?》と小声であたるを呼んだ。不審者あたるは 不審者あたる (マズイ事になった。まさかラムが目を覚ますとは)と思い、自分の軽はずみな行動を後悔したが、すぐに 不審者あたる (何もかも、あの俺がわるいんじゃ!)と思い、責任を未来のあたるになすりつけた。と、そこにタイミング良くあたるが帰ってきて、玄関を開け中に入ると階段を昇り終えた所をラムがあたるを見つけ ラム 「ダーリン!やっぱりダーリンだったっちゃ」と言うと、あたるに抱きついた。あたるは訳が判らず あたる 「何だ?」とラムを受け止めると あたる 「何だが良く分からんが、ただいま」と言った。するとラムはあたるに抱きついたまま ラム 「お帰りだっちゃ。ウチ寂しかったっちゃ」と言った。あたるは あたる 「悪いな、俺もここの所色々忙しくてな」と言った。それを聞いてラムは ラム 「ううん、ダーリンがウチの所に帰って来てくれるだけでウチ嬉しいっちゃ」と言った。あたるが あたる 「俺、風呂入りたいんだが、いいか?」と言うとラムは、慌ててあたるから離れ ラム 「あ、ごめんっちゃ。分かったったっちゃ」と、ニッコリと笑った。不審者あたるは、今になってラムの健気さを痛感した、どんな事が有ってもあたるだけを見続けてきたのが良く分かった。そんなラムに起こる最悪の未来とは何なのか気になったが、それよりもラムにそんな未来を歩ませたく無いと言う気持ちの方が強かった。しかし、実際最悪の未来が何なのか解らないと言う事は、何をすればいいのか解らないと言う事でもあった。不審者あたるは 不審者あたる 「ここは、俺の直感に従って行動するしかないな」と言うとラムの様子を伺った。あたるが帰って来た事で、ラムの顔にも輝きが戻っている。今日は、多分問題が起きる事も無さそうなので不審者あたるも明日に備えて眠る事にした。  翌朝目を覚ました不審者あたるは、早速あたるとラムの観察を始めた。あたるは仕事に行く為にスーツに着替えている所だった。あたるが、ふいにラムに話しかけた あたる 「ラム」あたるに声をかけられラムは ラム 「ん?何だっちゃ?ダーリン」とあたるに聞き返すと、あたるは あたる 「明日は、お前の仕事どうなんだ?」と聞いた。するとラムは ラム 「どうって?」と更に聞き返すと、あたるは あたる 「だから、明日は土曜日だが休みかどうかって事だ。そこまで言わにゃぁ判らんのか」と言った。それを聞いた不審者あたるは 不審者あたる (判るわけあるか!!)と思った。あたるの質問に対してラムは ラム 「あぁ、明日はウチもお休みだっちゃよ」と言うとニコッと笑った。するとあたるは あたる 「そうか、休みか」と言った。ラムは、あたるの言おうとしてる事が分からず ラム 「それがどうかしたっちゃ?」と言った。あたるは あたる 「いやぁ、明日は俺も休みだし、久々にお前と食事にでも行こうかなぁっと思ったんだが」と言った。それを聞いてラムは、目を輝かせて ラム 「え?本当だっちゃ?」と言った。するとあたるは あたる 「あぁ、昨日お前にセーター貰ったしな。たまには、二人で出掛けてもいいかなぁって」と照れ臭そうに言った。それを聞いたラムは ラム 「やったー!明日ダーリンとデートだっちゃ!」と跳び跳ねた。そして更に ラム 「ダーリンとデートなんて久し振りだっちゃ♪」とあたるに抱きついた。するとあたるは あたる 「お、おい!やめんか!」と言ってラムを振りほどこうと腕を振った。しかし、ラムはあたるの腕にしがみついて離れない。あたるは あたる 「仕事に遅れるから、やめろって!」と言いながらラムにしがみつかれたまま階段を降りて行った。その様子を見ていた不審者あたるは 不審者あたる 「なんか、いい感じだがこれが最悪の未来なのか?」と言って頭をかしげた。              つづく  未来の自分とラムの観察を続けるあたるだが、順調そうに見えた未来の二人の関係に危機が、あたるは二人の危機を回避する事はできるのか?そして、未来のあたるのアルバイトの目的は?  次回、エピソード9にご期待下さい。          エピソード8 END