うる星やつらーアナザーワールドー       エピソード 3     ………………2日前………………  しのぶは、昨日の事がどうしても気になり、朝早くから学校へ登校して保健室の前でサクラを待った。しのぶは、自分が体験した奇妙な出来事をサクラに相談しようとしていたのだ。しのぶが、かれこれ30分ほど待った時に、廊下をこちらに歩いて来るサクラの姿を見つけた。しのぶがサクラが来るのを待っていると、保健室の前のしのぶを見てサクラが  「ん?おぬし、こんな朝早くからどうした?」としのぶに問いかけると、保健室のドアの鍵を開け中に入り  「とりあえず、中に入れ」と言って、しのぶを保健室に促した。しのぶは  「……はい」と、言われるままに保健室に入ると椅子に腰かけた。そんなしのぶを見てサクラは  「……何か有ったな……」と言い、自分も椅子に腰かけると  「言うてみい」と言った。しのぶは、昨日の出来事を全て話した。それを聞いたサクラは、何処からともなく御払い棒を取り出すと、それをしのぶに向けた。御払い棒はピクリとも動かず沈黙を保ち、それを見てサクラは  「なるほどのぅ。霊や物の化のたぐいでは無さそうじゃ」と言い、続けて  「これは、何やら良からぬ事が起きておるやもしれん。ここは、叔父上にも協力して貰うか……」と、独り言の様に呟くと再びしのぶに向き直り  「ちと、その現場に連れて行ってはくれまいか?」と言うと、しのぶは  「え?学校が終わった後なら……」と言った。  しのぶはサクラと放課後待ち合わせを約束して教室に戻った。ちょうどその時、あたる・ラム・面堂・メガネ・パーマ・カクガリ・チビの7人が揃って教室に入って来た。その光景を見たしのぶは  「み、みんな揃って登校なんて……」と驚きを隠せずに口に出すと、ラムが  「うん、昨日は皆で終太郎の所に泊まったっちゃ」と言うとニコリと笑った。するとしのぶは  「皆で面堂さんの所に?」と怪訝な表情をすると、すかさず面堂が  「あ、しのぶさん誤解しないで下さい。実は、諸星がもう一人の諸星に出会わない様に僕がうちに泊めてあげたんです」と言ったが、しのぶは  「なるほど、それならあたる君とラムは分かるけど、他の4人は?」と至極当然の疑問を面堂に投げ掛けた。すると面堂は  「そこなんですよね……」と困った顔をすると、しのぶは全てを悟った様に  「あぁ、なるほどね。ラムが行ったから」と呆れた顔をして4人を見た。メガネ達4人はしのぶの視線など気にせず何やら話をしていた。そんなメガネ達をよそに、しのぶは面堂に小声で  『面堂さん、ちょっといい?』と言うと面堂は  『どうしたんですか?しのぶさん』と言い、教室の隅に移動した。しのぶは少し躊躇しながら昨日見たもう一人のあたると、もう一人の自分の話をした。すると面堂は 「えーーーー!」と、思わず大きな声を出してしまい慌てて口をつぐんだ。そして、改めてしのぶに  『それは本当ですか?』と聞き返した。しのぶが小さく頷くと面堂は  「やはり、この友引町でとんでも無い事が起きているのは確かだな」と言った。すると  「なるほど、しのぶもバイロケが現れたか」と面堂としのぶの背後から声がした。面堂としのぶが同時に振り返ると、そこにはあたるがしゃがんで腕を組んでいた。それを見た面堂は  「も、諸星!いつの間に!」と言い、しのぶは  「あ、あたる君!」と言った。あたるは  「しのぶぅ、水くさいじゃないか。何で俺に相談しないんだよ。俺とお前は二人ともバイロケが居る仲間じゃないかぁ」と言って、しのぶの肩に手を回そうとしたが、しのぶの肘鉄を喰らい屈み込んだ。その時、あたるがしのぶの所に居るのを見たラムは  「あ、ダーリン!またしのぶにちょっかい出してるっちゃ?」と言って、あたるの所に飛んで来た。そして、ラムに続きメガネ達も面堂としのぶの所に集まり、メガネが  「おい、お前ら何やっとるんだ?」と面堂に問いかけた。すると面堂はしのぶの方を向いて軽く頷くと  「仕方あるまい……いずれ分かる事だ」と言ったが、メガネは何の事だか解らず  「だから、何なのだ?」と更に追及すると面堂は  「実は、諸星に続きしのぶさんのバイロケまで現れた様なんだ……」と言った。それを聞いたメガネは  「な、何だと!あたるに続きしのぶまで…………下手するとこれは……全員のバイロケが出現するかもしれんな」と言って考え込んだ。そして更に  「所で、何でしのぶのバイロケが居るって分かったんだ?」と言うと面堂が  「しのぶさんが昨日見たらしい」と言った。その言葉にメガネは  「そうかぁ、って事は本人とバイロケが対峙しても死なないって事だな」と言ったが、面堂は  「いや、そうとも言えない。しのぶさんは、バイロケに気付かれない様に隠れて見ていたそうだからな。双方が、お互いを確認した場合は分からない」と言った。するとラムが  「しのぶは何処でみたっちゃ?」と聞くと、しのぶは  「友引商店街よ」と言った。それを聞いたパーマは  「やっぱり友引商店街かぁ」と言い、カクガリも  「昨日ラムちゃんが、もう一人のあたるを見たのも友引商店街だったよな?」と言った。するとラムが  「だったら、友引商店街を調べてみるっちゃ」と言った。ラムの言葉にあたるが  「調べるったって、一体どうやって……」と言ったがラムは  「異変が起きている処には、必ず何か痕跡が残っているはずだっちゃ」と言うと、すかさず面堂が  「それが、昨日商店街を念入りに調べたんですが、それらしき痕跡は発見できなかったんです」と言い、肩を落とした。しかしラムは  「目に見える物ばかりが痕跡とは限らないっちゃ」と言うとラムは制服の胸のあたりに手を入れ、何かを取り出した。それを見たあたるは  「お前、いつもそんな物をブラの中に入れとるのか?と言うより、何じゃそれは」と言って、ラムの持っている物を覗き込んだ。ラムは、手に持った物を器用に操作して何やらメガネの様な物に変型させ  「これは、ポータブル時空検知器。通称S.T.Dだっちゃ」と言った。それを聞いてあたるは  「S.T.D?」と言い、メガネが  「時空検知器と言う事は、時空の何かを検知する機械なんでしょうけど、一体時空の何を検知するんですか?」とラムに聞くとラムは  「これで、時空の歪みを検知するっちゃ。きっと異変が起きた場所では、時空に歪みが出来てるはずだっちゃ」と言った。ラムの説明を聞いた面堂は  「なるほど!その歪みを見つけ出し、歪みを無くせば問題は解決する訳ですね」と言った。するとラムはニコリと笑いながら  「だっちゃ」と言い、続けて  「じゃぁ、早速友引商店街に行くっちゃ」と言ったが、しのぶが  「あ、実は私……」と口を挟んだ。そんなしのぶに面堂が  「しのぶさん、何か問題でも?」と聞くと、しのぶは  「実は私、今朝サクラ先生に相談して放課後一緒に行く事になってるの」と申し訳無さそうに言った。するとそれを聞いたあたるは  「そうかぁ、しのぶはサクラさんに相談したのか。じゃぁ、俺達も放課後にサクラさんと一緒に行けばいいんじゃないか?」と言い、メガネも  「そうだな、こんな訳の分からん状況なら、霊力の有るサクラ先生と一緒の方がいいかもな」と言った。納得の行く説明をよそに、あたる・面堂・メガネ・パーマ・カクガリ・チビの顔はニヤけている。それを見てラムは  「ダーリン、どうせサクラの巫女姿が見たいだけに決まってるっちゃ」と言ってあたるを睨みつけた。しかしあたるは  「何を言ってるんだ、俺達はこの友引町に起きた異変を解決する為、サクラさんの霊力を借りようと言っているんだ!決してやましい気持ちなど無い!」と言った。あたるの言葉に、しのぶは半分呆れながら  「どうだか?」と言った。  放課後、しのぶはあたる達をゾロゾロと引き連れてサクラの待つ保健室へ行くと、サクラは頭をかかえ  「やはりな……こうなる事は予想しておったわ」と言い、スッと立ち上がると  「では行くとするか」と言い、揃って学校を後にした。商店街へ向かう途中でサクラが  「今回の件だが、叔父上にも協力してもらおうと思ってな……」と言った時、あたるが  「え?チェリーに?」と言うと、サクラは  「あぁ、だが肝心な時におらんのだ。普段は呼びもしないのに沸いて出るくせに」と言った。サクラの言葉を聞いてみんな胸を撫で下ろした。  友引商店街に入るとサクラがしのぶに  「で、どの辺で消えたのだ?」と聞くとしのぶは  「え?何処で見たかじゃなくて?」と聞き返した。するとサクラは  「うむ。本来なら現れた場所がいいのだが、それは分からんだろう?」と言うと、しのぶは  「うん、気づいたら居たから……」と言った。それを聞いてサクラは  「なら、消えた所を調べるほか有るまい。何か分かるやもしれん」と言った。ラムは、サクラの説明を聞き  「サクラ、さすがだっちゃ。伊達に歳とって無いっちゃね」と言うと、サクラは  「余計なお世話じゃ!!」と言った。少し歩くとしのぶが  「この辺で、もう一人の私が消えたの……」と言った。サクラはしのぶの横に行くと、お祓い棒を出しもう一人のしのぶが消えた辺りにかざしたが、お払い棒はピクリとも反応しなかった。それを見たサクラは  「やはりな……もう何も残っておらんか」と言った。その時ラムが  「ちょっとこれで見てみるっちゃ」と言ってS.T.Dを覗き込み、周辺を見渡すと  「ここには何の反応も無いっちゃ」と言った。それを聞いたしのぶは  「そんなぁ……」と言い落胆の表情を見せた。その時ラムが  「!!ちょっと待つっちゃ。あっちに、僅かに反応が有るっちゃ」と言いS.T.Dを覗いたまま、反応を示す方向に飛んで行った。一同は慌ててラムの後について行くと、ラムはある路地の所で止まり  「ここだっちゃ……」と言った。そこは、何のへんてつも無い路地だった。あたるはラムの言った場所を見ると  「何も無いではないか」と言ったが、ラムは  「目には見えなくても、そこには空間の歪みが有るっちゃ。とても不安定だから、もしかするとここ1ヶ所だけじゃないかもしれないっちゃ」と言って、また周りを調べ始めた。それを聞いた面堂は  「ラムさん、それはどう言う事ですか?」とラムに聞くと、ラムは  「ここの歪みは、不安定で小さいっちゃ。だから、多分もっと大きくて安定してる歪みが有るはずだっちゃ」と言いながら周囲を調べていると  「みつけたっちゃ!」と言い、再びそちらに向かった。みんなラムに遅れまいと後をついて行くとそこは、喫茶店ピグモンの前だった。それを見てメガネが  「喫茶ピグモン……ここは何かと縁が多いなぁ」と呟くと、あたるは  「そりゃぁ、お前らはな。何たって、ラム親衛隊の拠点だもんな」と半分バカにした口調で言った。しかしメガネは、あたるの言葉には全く動じず  「フン、お前なんかに俺達のラムさんに対する崇高な気持ちは理解出来まい。何故ここを拠点にしているのか、それはこの店がラムさんの行動を見守るのに最適だからだ。我々は常にラムさんの行動を把握し、ラムさんに何か有れば即対応出来る様にしておるのだ!どうだ、分かったか!」と言った。それを聞いたあたるは  「それは、ただのストーカーではないのか?」と言った時、サクラが  「お主ら、いい加減にせんか!!」と叫んだ。ラムもあたるとメガネの方を向き  「もう、サクラの言う通りだっちゃ。今は、そんな事言い合ってる場合じゃないっちゃよ」と言うと、ピグモンの窓のあたりを指差して  「そこに、空間の歪みが有るっちゃ。このまま放っておくと、どんどん拡がるだけだっちゃ」と言った。すると面堂が  「するとラムさん、その空間の歪みからもう一人の諸星やしのぶさんが現れたって事ですか?」と言うとラムは  「間違いないっちゃ。多分、もう一人のダーリンやしのぶはパラレルワールドの住人だっちゃ」と言った。それを聞いたパーマが  「パラレルワールドかぁ……でもよ、そんな空間の歪みを通ってまでこちらに来る理由って何なんだろうなぁ」と言うとラムが  「多分、空間の歪みを通っている実感は本人には無いんだっちゃよ、きっと」と言うと面堂が  「そうか!だから昨日見に来た時、商店街に違和感を感じたんだ」と言った。それを聞いてメガネは  「もさかすると、向こうから来るだけでは無く、こつらからも行ってるのかもな」そう言ったが続けて  「しかし、そうなるとここで人が消えたり現れたりする事になるよな?それに誰も気づかないのは、おかしくないか?」と言った。それを聞いたサクラも  「確かにそうじゃな。そんな事が起きれば何かしら騒ぎにはなるはずじゃ」と言った。ラムは少し考えている様だったが、やがて  「多分、この空間の歪みを通るには何か条件が有って、その条件が揃わないと通れないんだと思うっちゃ」と言った。するとあたるが  「条件?」と聞くとラムは  「うん、さっきメガネさんが言った様に突然、人が消えたり現れたりしたら絶対に騒ぎになるはずだっちゃ。でも、そんな騒ぎが無かったって事は、この歪みを通って別の世界に行ってもその人が消えなかったって事だっちゃ」と言った。それを聞いたあたるは、訳が分からず  「お前何言ってるんだ、別の世界に行っても消えないって……それって別の世界に行ってないんじゃないか?」と言うと、サクラも  「うむ……ラム、もう少し分かりやすく説明してくれぬか」と言った。ラムは、頭の中を整理しながら  「つまり、その条件が凄く確率的に低い事だけど、こちらの世界の人と向こうの世界の人がこの歪みの近辺で接触した場合に歪みを通り抜けると考えると、説明がつくっちゃ」と言った。それを聞いた面堂が  「そうか!入れ替わりって事ですね!」と言うとラムが  「そうだっちゃ。こちらの人が歪みを通って向こうに行くと同時に向こうからこちらに来れば、まわりからはその人は普通に歩いてるだけに見えるっちゃ」と言うとサクラは  「なるほど、それなら騒ぎが起きなかったのも納得行くのう」と言ったが、しのぶが  「ちょっと待ってよ!確かに昨日私もここ通ったけど、ラムの説明だと私は向こうに居るはずでしょう?そもそも、それならもう一人の自分が現れる事は無いはずじゃない」と言った。ラムはしのぶの言葉を聞き  「それなんだっちゃよね、多分他にもこの歪みを通る条件が有るんだっちゃよ」と言った。するとあたるが  「じゃぁ、その条件が分からない限りどうしょうも無いって事か?」と言ったが、ラムは  「そんな事も無いっちゃ。今の状態の歪みを修正するのは難しいけど、歪みが出来た頃なら修正出来るっちゃ歪みが無くなれば、もう一人の自分が現れる事も無いっちゃ」と言った。しかしあたるは  「そんな事言ったって、今更どうしょうも無いだろう」と言ったがラムは  「ダーリン覚えて無いっちゃ?ウチと過去に行った時の事。ダーリンがまだ可愛かった頃に、って言ってもダーリンは後から来たんだけど」と言った。それを聞いてあたるは  「あ、確かコーヒーカップに飛び込んで……」と思い出した。ラムとあたるの会話を聞いていたメガネは  「ラ、ラムさん!それは、ま、ま、まさかタイムマシン?」と興奮しながら聞いた。するとラムは  「簡易タイムマシンだっちゃ」と言ってニコリと笑った。するとメガネは  「な、なんとタイムマシンが実際に存在するなんて……理論上では可能と言われても実現は不可能と言われたタイムマシンが」と言った時、パーマが  「なぁ、メガネ。今更タイムマシンぐらいで驚く事かよ、俺達今までどれだけ驚く様な体験してきてると思ってるんだ?」と言うと、メガネは冷静になり  「そ、そうだった。タイムマシンと聞いて、つい舞い上がってしまった」と言った。そんなメガネとパーマをよそにラムは  「過去に戻って、この歪みが小さいうちに空間を安定させる機械で空間を閉じるっちゃ」と言った。それを聞いたサクラは  「そんな事が出来るのか?」と聞いたが、ラムは  「可能だっちゃ。ただ、パラドックスを起こさない様に気を付けないといけないっちゃ」と言った。するとチビがメガネに  「なぁメガネ、パラドックスって何だ?」と聞くとメガネは  「そんな事も知らんのか、パラドックスとは言わば矛盾の事だ。いいかチビ、お前はラムさんがこの空間の歪みを機械で塞ごうと過去に行く事を知っていたか?」とチビに聞くとチビは  「そんなの知ってる訳ないよ。だって、さっきラムちゃんに聞いたんだから」と言った。それを聞いたメガネは  「そう、知らないから今ここに居るんだ。もし、前もって知っていればここには居ないだろう。何故ならラムさんが機械で空間を塞ぐのを知っているからだ」と言って、更に  「つまり、知るはずの無い俺達が知ってしまったら、その時点で矛盾が生じ未来が変わってしまい別の時間軸が発生する。そうなったら、ラムさんが戻るのはこの未来では無く変わってしまった未来なんだ。そうなれば、この世界にはラムさんは永遠に戻れなくなってしまうのだ。だから、ラムさんはパラドックスに注意すると言ってるんだ。分かったか?」と言った。チビは、分かったのか分からなかったのか、小さく頷いた。メガネの話を聞いていたあたるは  (なんだと!)と思い、ラムの所へ行くと小声で  『おい、ラム。お前は大丈夫なのか?』と言うとラムは  『大丈夫だっちゃ。人に見られない様に夜中に行くっちゃよ。もしかして、ダーリン心配してくれるっちゃ?』と言って目を輝かせた。そんなラムを見てあたるは  『アホ、お前が失敗せんかと心配しとるのじゃ』と言った。しかし、これはもちろんあたるの照れ隠しで心の中では  (ラム……ちゃんと、帰って来いよ)と思っていた。ラムはS.T.Dをしまうと  「じゃぁ、早速ウチは機械を持って過去に行ってくるっちゃ」と言うと、UFOに向かって飛んで行った。そんなラムを見て、あたるは  「あいつ大丈夫か?あいつがあの手の事をしようとする時、大抵ろくな事にならないんだよな」と言ってラムが飛び去った空を見上げた。  過去に戻って空間の歪みを修正しようとするラム。しかし、この行動が事態を更に悪い方向へ向かわせてしまうのであった。          to be continue