〔夜……〕 「覚悟しろ、ジャリテン!今日の朝飯のうらみはらさでおくべきか〜〜〜〜」 「それはこっちのセリフや!」 「ふん!」 ボコッ! 「い、痛いやないけ!かよわい幼児になんちゅう仕打ちを…」 ガコン! 「口笛なんか拭いて澄ました顔しくさったってごまかされへんで!大体幼児に…」 「半分ませたガキじゃないか」 「…それどういう意味や?意味によってはただじゃ〜ぁすまさへんど」 「……いいか、お前みたいに幼児らしくない幼児に自分は幼児だといわれてもいまいち説得力に欠けるんじゃ!」 「だったらなんや?」 「そ〜じゃな、そこら辺の赤ん坊みたいに泣いてわめいてでもおれば認めてやらんことは(スゥーゥ・・・)…あ、待て!待て!」 「おんどれ、わいをなんやとおもっとるんや!天誅じゃぁ〜〜〜い!!」(すぅーーっ・・・・・) 「待てって言っとるのがわからんのか!そっちは…」 「ダーリンがテンちゃんをいじめるからだっちゃ。よしよしテンちゃん、こっちくるっちゃ。」 「うあぁぁぁん…あたるのアホぉ!」 「アホアホ言うなっ。今俺は機嫌が悪いんだぞ!そもそも、今日の朝飯の卵焼きを横領したおまーが悪いんじゃ、俺に怒るのは筋違いだ!とにかく俺に非はないぞ」 「よーのうのうとそないなことゆえるな〜、昨日の夜わいに片っ端から白滝を押し付けた奴はどこのどいつやったやろかなぁ・・・」 「うるさい!大体おとといコロッケを独り占めしたガキの言うセリフか!」 「そんな昔を持ち出すんならワイにも考えが・・・」 「テンちゃん?(訳=これ以上火を噴いたらどうなっても知らないっちゃよ)」(目力がすごい) 「黙らんかい!…あ、ラムちゃんやったか、あ、あ、すんまへん、あははははは・・・」 「へへ、ラムには頭の上がらんいくじなし〜べろべろベーっだ」 (お、おんどりゃ〜…あたるはあとでステーキやな…) 「もうっ!二人とも口げんかするんじゃないっちゃ。さぁ、テンちゃんもダーリンもさっさと寝るっちゃよ〜…といっても、物置がくろこげじゃ・・・ね?ダーリン・・・(ハート)」 ラムがこちらを見る。だからこっちは不機嫌だ。 さっきから怒っているようでまったく怒っていない。言葉の端々に嬉しさがにじみ出ているのがよ〜くわかる。 どうせ「またダーリンと一緒に寝れるっちゃ!」とかなんとか思っているに違いない。あのガキに対してもっとガツンと言ってやらねばならんのに、 自分の都合だけでいとも簡単に本来憂うべき事項をこれ幸いと喜ぶ、その根性が気に食わんのじゃああぁ〜! …オホン、話を戻そう。 私が今何を恐れているか、それはラムと一緒に寝ることだ。どうせあの耐電スーツを着せられるのがオチだし、第一内心テンが物置を燃やしてラッキーと思っている今日のラムは全くいけすかない。 かといって、親にヘルプを求めたところで… ========================================================================================================================================== 「よそ様の娘さんをこんな煩悩の塊と一緒に寝させるなんて!あたる、寝袋を貸してあげるから野宿しなさい」 「母さん、やりすぎだ。外はいくら何でも、体裁ってもんがあるし……。そうだあたる、台所で布団かぶってなさい」 「台所だと食べ物食べつくしちゃうから…お風呂場で寝なさいよ」 ========================================================================================================================================== …我ながらこの二人の息子であったかどうか疑わしく感じてきたが…とにかく、野宿や台所だけはずえったいに避けねばならない。 ラムはテンを下で寝させたがっていたが、俺が止めさせた。そんな不自然なことやってみろ!母さんたちに問い詰められて結局上のような会話まっしぐらだ!… ……………ふぅ… 「ダーリン寝ないのけ?」 俺が悶々としているのも知らないで、このアホ。 いろいろとあーでもないこーでもないと頬杖ついてボーっとしていた。ふっと時計に目をやると、あっという間に日付が変わっていた。もうテンはとっくに寝ている。 布団がはだけきっとる。風邪になってしまえ! …う〜〜〜ん、いよいよ困った。これ以上起きていると学校はともかく母さんたちがうるさい。ばれるのだけは避けたい!こうなったら添い寝もやむなしか… にこにこ「うふふっ。添い寝だっちゃ添い寝だっちゃっ。」 …声に思いっきりでとるぞ。…ったくしょうがないな… 「おいラム、耐電スーツをもて」 「あ、ダーリン添い寝してくれるのけ?うれしいっちゃ!やっぱりうちらは夫婦だっちゃね!」 「………」 夫婦なんて誰が決めた、アホ。 「じゃ、電気消すっちゃ。うふふふっ」 「………」 期待しても何もないのに、やたら艶めかしい目をしてこっちを見ている…。これじゃそわそわしたくなくてもそわそわするじゃないかっ。 大体耐電スーツを着て何ができるっちゅ〜んじゃ。 「うふふ・・・それじゃおやすみだっちゃ〜」 「待て」 「え、何だっちゃ?」 「ラム…」 「………」 「言いたいことがある……………」 「え、な、な、な…ちょっと、こんなところでいうのけ?」 「言うんだよ、ほら、耳を貸せ」 「もう、デリカシーがないっちゃ………しょうがないダーリンっ……」 「……………」 「……………」 「このどアホ」 「うん、うちもダーリンのことそう思ってたっちゃ……」 「……?まだ何を言ってるのかわからんのか?このアホ」 「そんなことないっちゃ!ダーリンがうちのことどアホって…………へ?」 「さ〜て、寝るか」 電気のスイッチをパチン。 「ん〜〜〜〜〜〜〜〜!!ダーリンのバカ〜〜〜〜〜〜!!」 いい気味じゃ。俺を散々悶々と苦しめた仕返しじゃ。 耐電スーツのおかげでこっちにはな〜んのダメージもない。 おや、光が消えた。ようやく効果のないことを悟ったのか、電撃をやめたらしい。 気づくのが遅いんじゃ、このアホ………… …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………… …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………… …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………… …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………… …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………… …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………… ! ダメだ。まったく眠れん。我ながらあんなアホに安眠を妨害されるなんて、一生の不覚じゃ。 猛烈にラムの顔を見たい衝動に駆られている。…ちょっとだけなら… 「ぁ」 思わず叫びそうになったのであわてて手を塞いだ。不気味な顔だ。まるで骸骨に見える! もっと近くで見ねば… くっ、耐電スーツが重い!もそもそモソモソとしか動けんではないか! よ〜し、コツをつかんできたぞ、この調子ならもうすぐ顔が・・・ けっ、驚いて損した。いつものラムだ。俺の苦労も知らんとすやすやすやすやと寝てやがる。 光の当たり具合で陰になってるだけじゃないか。寝ぼけてたことに腹が立つ。寝よ寝よ。 ………またこんなことで一人驚いてはかなわんな。叫び声を上げたら一巻の終わりじゃ。 ラムの方を向いて寝るか。顔がよく見えるよう近づけば驚くこともあるまい。 もそもそモソモソ・・・ふぅ。ここまでくればよく見える。さあ、不安要素はすべて解決した。寝るったら寝るぞ! 「ふぁーっ。あ、ダーリンおはよーっ!よく眠れたっちゃ〜。 ふふふふっ」 結局一睡もできんかったではないかっ。ラムから離れても近づいても眠れないなんていったい俺はど〜すればよかったっちゅ〜んじゃ! つくづくラムの掌の上で踊らされてる自分が情けなく思えてきた。 「昨日の夜のことは忘れないっちゃ〜。うふふふふっ。ダーリンも意外とウブだっちゃね〜。うふふふっ」 何がウブだと!だから耐電スーツを着て何ができるっちゅ〜んじゃっっ!!!ふっふっふ、今に見てろよ!俺がこんなもんで済むと思ってもらったら大間違い・・・ 「あさごはんできたわよーっ。はやくおきておりてらっしゃーい」 「はーい、お・か・あ・さ・ま」 何だあいつ。俺にウインクしたぞ? 何事もなかったかのように一日がまた始まった。 朝食を済ませ、テンとの軽い朝のウォーミングアップも終え、学校に着いた。 ………ダメだ。いつも以上に授業に身が入らん。 寝不足とみょ〜な緊張が取れないのに加えて、昨日(正確に言えば今日か)見たラムの寝顔が・・・脳裏にちらつく。 すうすう寝ていた寝顔は…………まあ、及第点だな。………でもたまにはこんなのも、まあ悪くない・・・・・・と思っていたのだが! 「ダーリンどうしたっちゃ?頭に小槌がめり込んでるっちゃよ?……さては終太郎とケンカしたっちゃね?」 あのアホ、しっかり起きてやがった。 あろうことかこの俺がラムにキスしようとしたと会う人会う人にに言いふらしたらしい。勘違いにもほどがあるっちゅ〜んじゃ! 「ダーリン、うちの質問に返事ぐらいするっちゃよ?いくらうちとキスできなかったからって、そんなにふてるんじゃないっちゃ。」 前言撤回。あんなこと思った自分に腹が立ってきた。 こ〜もなめられたからには、しばらくだんまりを決め込んでやる。 「まっっってえええええええええええもろぼしぃぃ!きょうこそはさんずのかわへおくってやるうううう!!!!!」 ちぇ、来やがった。 とにかくもう金輪際、あんなアホと添い寝なんぞせん!! =おまけ= 夕方、例の時計台裏の機関室にて。 「………これより、ラム親衛隊最高幹部会最高法規に則り親衛隊人民裁判を開始する。ジークラムさん」 「「「ジークラムちゃん」」」 「では罪状を読み上げる、被告人諸星あたる、貴様はラムさんにあろうことか、チ、チッスを迫ろうという暴挙を働いた。被告人、罪を認めるか?」 「おれは無実だ!」 「やかましい!ラムさん自らこれを全校生徒に言いふらしているのだ!これは明らかに我々に助けを求めるシグナルであり…」 「俺の話を聞け〜〜〜!!!」 「…あのなぁ。お前は本来なら公然ワイセツ罪で警察にしょっぴかれているところだったんだぞ。それが人民裁判で刑もリンチですむ。なああたる、幸せなことなんだぞ。さあ罪を認めて更生しようじゃないか、なあ。」 「警察の方がよっぽどましじゃ!俺はただ一緒に寝ただけでそれ以上は何にもしてないっ!」 「」 「「「」」」 「んあ?なんかおかしいことを言ったか?」 「「「あたる…おまー添い寝…してたのか」」」 「くっ、くうぅっ…一度ならず二度も・・・・・・・・・・!もう許さん!許さん!ラム親衛隊最高幹部会最高法規補則適用だ、あたるを再起不能にしろおおおお!」 「「「おおっ!」」」 「うぎゃああああああっ!!」(言うんじゃなかったああああああああ…………) 「はたして、諸星あたるが無事だったかは定かではない。しかし彼はその後しばらく…いや、それは皆様の想像にお任せするとしようかのう。 運命じゃ。南無阿弥陀仏」