〔ザット・クレイジー・サマー〕 第六話 只今早朝五時四十分を回ったところ。 「片あしとびとかけ足あしぶみ運動〜〜一、ニッ、三、四ッ、五ォ、六ッ、七、八ィ!」 …本作品が文字だけによるものであることが悔やまれる。コタツ猫と校長と錯乱坊となぜか関係のない竜之介の父がラジオ体操をしているのである。 校長「さあ、準備体操、準備体操。しないと怪我のもとですよ〜」 なぜ準備体操なんかを唐突にやり始めたか、知る由もない。 さて、昨日のごとくメガネや竜之介はラムのUFOで朝食をご厄介になり、校長が普通に号砲を鳴ら……す… はずもなく…… 校長「ばん!」 温泉「こおちょう!耳元で叫ぶのはやめてください!」 校長「ああ、これはどうも…」 温泉「あは、あはは、こ、こうちょはは…耳に息を吹きかけないでください!!あんた私に恨みでもあんですか!」 校長「いえ、別に…」 温泉「何が哀しゅうてそんなことするんです!!」 校長「いえ別に哀しいことは…」 あたる「校長もそろそろ…」 面堂「……ああ」 メガネ「どうしたんだ?あたるといい面堂といいジャリテンといいレイといい…」 パーマ「俺ゃ知らん」 「バン!!」 温泉「ちくしょう!あの校長のせいで遅れを…ウアッハッハ…背中を指で撫でやがってえ!!」 校長「花和先生!一度ならず二度も!!あのー…私にもユーモアというもんがあってですね…」 花和「校長先生…」 校長「何です?」 花和「このピストル…大声を出して作動するんじゃなくて、引き金を引いて作動するんですよ、ほら 『バン』 …ね、こうやって…『バン』」 カクガリ「とうとうみんなボケ始めたぞ」 面堂「…なのもそんなに驚くことでもあるまいに…」 あたる「いつものことだ、いつもの…」 サクラ「まったく…モニターで一部始終を聞いておったが…     この高校は本っ当に大丈夫なのじゃろうな…全く嘆かわしいのう…     ま、いつものことじゃが…」 メガネ「…教師陣の劣化をお嘆きのところ、失礼しますがチョイとやぼ用がありますンでしばらくお仕事を頼みますよ、さ、行くぞパーマ!」 パーマ「んあ?あ、おい、ちょっと、引きずるなよ、本人の意思もきちんと確認しろ!!」 サクラ「どこに行くのじゃ?」 メガネ「訊かないほうが…いいと思いますよ…」 サクラ「………………」 メガネ「…それじゃ往ってきます…サクラさん…」 サクラ「何じゃ…急にかしこまって…」 メガネ「これって…この大会って…この状況って…このレースって…普通なんですかねぇ………」 サクラ「………普通とな…」 メガネ「メガネ一匹、往って参ります」 パーマ「…せめて連れて行くなら俺を無視するな、メガネよ…」 しのぶ「さて、昨日のアクシデントの影響で全員同じ位置からのスタートとなりました。この幸運を味方につけたのか現在首位は藤波選手です!やっ」 サクラ「しのぶ、放送中じゃぞ」 しのぶ「あ、失礼いたしました…」 あたるの家のあたるの部屋。 メガネ「今のラヂオ放送、しかと聞いたな…」 テン「だから何や?アホが最下位、おめでたいだけやないか。お祝いでもするんかー?」 メガネ「『お祝い』どころか『お呪い』したいぐらいの気分だ!!あのあたるが最下位…」 テン「…べ、別に、ええや、やないかい!」 メガネ「とぼけるな!!そのヤケになるところ、どもったところ、怪しい!やっぱりませていてもジャリはジャリだな…」 テン「何や知らんけどワイを子ども扱いしたら痛い目あうど」 メガネ「おとぼけもいい加減にしろよ!いいか、お前もラムさんと…、…ラムさんと…この野郎!!!」 テン「お前、何がいいたいんや?」 メガネ「貴様はジャリの分際で…あんのラムすわんと一つ屋根の下その胸に抱かれ…この…」 パーマ「おまえ、本題を見失っとりゃせんか?」 メガネ「知れたことか!い、いつか貴様をとは思っていたが…今日が年貢の納め時となったようだな…重モビルスーツを携帯してきたかいがあったもんだ!」 テン「お前どっからそんなもん取り出しとるんや!」 メガネ「ジャリテンよ、口のきき方に気をつけろよ…」 テン「それはこっちのセリフや…ラムちゃーん!!」 メガネ「読んだって無駄だ、今頃ラムさんなら…」 パーマ(論点がずれまくっていると感じるのは俺だけだろうか?) さて、そのメガネの言う『ラムさんの今頃』といえば… ビビビビビビビビビビビビビビビビビビ!!! ラム「ダァーーアリン!!もう浮気なんかやめるっちゃ!!あんな出来事があったのに、もうっ…往生際が悪いっちゃ!」 あたる「何だ、ただお前の抜けた角をもっていたくらいで…」 ラム「そ、れ、が、うちへの愛情表現じゃないのけ?」 あたる「俺は世界中の美女という美女をみんな愛してやるのだ!それ以外の愛情表現など、な〜………」 ビビビビビビビビビビビビ!!!!! ラム「そうやってまた浮気を正当化して…でもまあ、やっぱり『しんぷるいずべすと』だっちゃね!人に任せるよりも自分でやったほうがよっぽどダーリンを妨害できるっちゃ!」 あたる(こいつ、ど〜もわかっとらんようだな…お前が―――――に――――訳…ないじゃないか…)     「自由のために今日も俺は闘い続ける!電撃をも恐れない!」 ラム「我慢がいつまで続くか見ものだっちゃ!超特大電撃だっちゃ…!!」 ビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビ!!!! あたる「愛こそはすべて!愛こそはすべて!愛は万里を超える!愛は鋼鉄の壁をも突き破る!愛こそは…」 さて、メガネたちに話を戻す。重モビルスーツ対火炎放射器第一回タイトルマッチについては、各自ご想像されたい。 テン「おまえ」 メガネ「なんだ?降伏の申し込みなら聞いてやるぞ。いや、それしか聞かん!」 テン「…ワイら何のために闘っとるんや?お前の本来の要件は何や?」 メガネ「あ、あ、あ…そか、そうだった… コホン!!本題に戻ろう!」 テン(こいつらみんなアホや…) メガネ「なんか言ったか?俺の聞き間違いであることを祈りたいところだが…」 テン「アハハハ、空耳やろ〜」(いかん、本音が出てしもた…) メガネ「…まあいい…、…なあジャリテン…お前もあの諸星あたると長きにわたって同じ釜の飯を食い寝食を共にしてきた…」 テン「ああ、苦難の日々や」 メガネ「…あの諸星あたるという人物を知っているだろう?」 テン「アホで、幼児を簡単に虐待して、食い物に意地汚くて、金にがめつくて、ね〜ちゃんとみれば見境もなく手ぇだして、豚に真珠・月にスッポンのラムちゃんから逃げる、あの極悪非道の締まりのない顔のやつのことか?」 メガネ「それだよ」 テン「は?」 メガネ「それだよ…それなんだよ…『金にがめつくて、ね〜ちゃんとみれば見境もなく手ぇだして、豚に真珠・月にスッポンのラムちゃんから逃げる』…なぜだ?なぜ最下位になる?     賞金五万円・サクラ先生やしのぶとのデート・透明な耐電スーツ。勝てばあいつの欲望はかなえられる。…素直に吐け、ジャリテン!」 テン「何や、ワイなにも悪いことしてへんで!」 メガネ「何で『吐け』といっただけで悪いことを連想したのか?え?」 テン「あわわわわわ…」 メガネ「なあ、ジャリテン君。君が若し協力してくれるというのなら、俺たちも悪いようにはせん…」 テン「悪いようにはせんも何もワイは…」 メガネ「ラムさん怒ったら怖いぞ〜…お前とはもう一生付き合ってくれないかもしれないぞ〜…」 テン「………………………………」 メガネ「返事は明日まで待つ…イエスかノーか、決めておくんだな!」 テン「………ぃゃゃ」 メガネ「ん?」 テン「い、や、や、ゆうとんねん!」 メガネ「ほう…度胸だけは認めてやろう、さあ、いいか?」 ラム「テンちゃん、ここにいたっちゃ!探したっちゃよ〜!」 テン「ラ、ラムちゃ〜〜ん!」 ラム「どうしたっちゃ?元気ないみたいだけど…あ、メガネさんにパーマさん、どうかしたっちゃ?」 メガネ「丁度よかった…ラムさん…これを…」 ラム「…?これは?」 テン「あ、あわわ・・・」 メガネが差し出したのは、テンと面堂が話し込んでいる写真であった〔※第二話参照〕 メガネ「いいですか、気を確かにもってお聞きください…なぜレイが出てきたか!なぜあたるは本気を出さないか!     その答えはただ一つ!ジャリテンを仲介人として面堂、レイ、そしてあたるは繋がっているのです!グルです!裏でジャリテンが尾を引いていたのです!」 ラム「え…?ダーリンとレイが・・・?テンちゃん、本当だっちゃ?本当ならうち…」 テン(やばいでやばいで何とかここを切り抜けなワイに明日はないんやで…〜)    「…… …ラムちゃあ〜ん、何いうてんねん、ワイがそんなことするわけないやろ!大体証拠がないやんけ!」 ラム「でもメガネさんたちが・・・」 テン「ラムちゃん、これは陰謀やで!ラムちゃんとあたるの仲を引き裂く陰謀や!ワイは乗せられただけや!この写真なんか捏造写真や!」 ラム「…………………」 テン「ラムちゃあん、ワイを疑うゆ〜んか?ワイが一度でも嘘…ぐすっ……ついた………うえ〜〜〜ん!!」 ラム「テンちゃん…」 メガネ「ラムさん、惑わされてはいけませんよ!!ぐぬぬぬぬぬ!!!不逞の輩ジャリテンめ…やつの辞書の『母性本能』の項目にはきっと『こまつたときのおくのて』『めんどうになつたときのきゆうせいしゆ』     とかいうルビでも振ってあるんだろうな!!」 ラム「いくらメガネさん達でも、テンちゃんを泣かすのは許さないっちゃ!」 ビビビビビビビビビビビビビビビビ! パーマ「…メガネ、今日のところは一回出よう、証拠もないし、な、な…」 メガネ「…うむ…」 サクラ「やおら出てったと思いきや今度は半死半生で帰ってきおって…あれから私も考えておったのだが…     普通でないのはおぬしらではないのか?」 パーマ「俺は違いますからね、メガネがすべての悪の元凶スからね、サクラ先生!信じてくださいよ〜〜!」 メガネ「…………………………………………」     (あの面堂が口を割るわけもなし、レイは口を利かないから問題外…) 面堂「フフフ・・・すべては僕の思惑通り進んでいる…さて、ラジオでも聞くか…」 しのぶ「…レイ選手止まったまま動きません!レイ選手最下位に転落でーす!」 面堂「なに?!?!?!」 こうして陰謀の渦に巻き込まれつつ三日目は形の上はつつがなく終了した。形の上は… 例のごとくUFO。 面堂「ジャリテン」ひそひそ テン「なんや」ひそひそ 面堂「ど〜なっとる?レイが最下位なんて…聞いてこい!」ひそひそ テン「ワイがもう聞いてきとるわい!なんでも『もう禁欲生活はごめんだ、明日のタイ焼き5万個より今日の1個、食欲万歳』やと」ひそひそ 面堂「……………ご苦労」ひそひそ 面堂(…この手だけは使いたくなかったが…作戦の大幅な変更を……いや、そうしたら僕が悪者になってしまうではないか!…いや、もうここまで来た以上はハイリスクハイリターン…) テン(…レイが最下位…もうレースする気も喪失したようやし…約束、どうなるんかなあ…) ラム(………うちはどっちの言うことを信じたらいいのけ?それにこの感じ…うち、またダーリンとの間になんかありそうな気がするっちゃ…)   「ねえ、ダーリンっ」 あたる「何じゃ、ラム、いきなり」 ラム「………………なんでもないっちゃ!」 あたる「用がないなら呼ぶな」 ラム(………………大丈夫だっちゃね、いつものダーリンだっちゃ。…陰謀かどうとか、何でレイをわざわざ呼んだのかとか…うちなんかよくわからないけど…何か…いや、いつものだーりんだったっちゃ。    …気のせいだっちゃね、気のせいだっちゃね…)    「ダーリン!!」 あたる「わ、よせ、よせ!公衆の面前で抱きしめるな!それに頬なんか摺り寄せて!気持ち悪いったらありゃしない!」 メガネ(すべては明日にかかっている…のかも、しれん、な…) 温泉「…どうです?!!いよいよ君の番だ!校長になる気はないか?!」 花和「…どうって言われても…私まだ若いですし…」 温泉「そうはいっても…あの校長のバカたれ!!!」 花和「……校長先生の面前ですよ、よされたほうが…」 温泉「知るか〜〜!!もうおれはがっこうのきょーりらんかやめてやるろ!じょ〜ろ〜ら!」 ラムの父「…ちっと飲ませすぎらかのう…」 ラム「『ちっと』どころじゃないっちゃ」 校長「…温泉先生、本音では私の追放を…」 錯乱坊「定めじゃ」 校長「…私哀しいです…人間とは何でこう醜いものなのでしょう…」 サクラ「……最早何も言うまい…」 =次回予告= うちにはよくわからないけど、何かがおかしい…ダーリンもテンちゃんも終太郎もレイもメガネさんも・… ダーリン、ねえ、ダーリン!うちのそばにいてくれるっちゃよね…?不安で波乱の四日目は始まっていく…。 次回、第七話であうっちゃ!