うる星やつらーアナザーワールドー       エピソード 9  ラムが宇宙人だと言う事を聞いたしのぶは  「ずっと気になってたんだけど……その頭の角みたいのも、その、宇宙人だから?」と遠慮がちに聞くと、ラムは  「あ、これ?」と角を触ると  「これは、角だっちゃ。ウチは鬼族だから、角が有るっちゃ」と言った。それを聞いた面堂は  「お、鬼族……ですか?」と戸惑いながら言うと、ラムは  「そうだっちゃ」と言って、ニコリと笑った。その笑顔にメロメロの面堂とメガネ達4人組をみて、しのぶは  「何よ!ちょっと美人でグラマーなだけじゃない!私の回りに居る男共は、どうしてこんなのばかりなのかしら」と愚痴を言ってると、さっき殴り飛ばしたはずのあたるが、しのぶの肩に手を回し  「何言ってるんだ、俺が居るじゃないか」と言うと、しのぶは  「あんたが、一番の問題なのよ!」と言って、あたるの脇腹に肘鉄を喰らわせた。そんなあたるを見て、ラムは  「どっちのダーリンも一緒だっちゃね」と言って頭を抱えた。  その後、みんなそれぞれ普通に振る舞う約束をして帰宅する事になった。  その帰り道、ラムはあたるに  「いいっちゃ?ダーリン。くれぐれも普通にしてて欲しいっちゃ。ウチとテンちゃんはダーリンの家で一緒に住んでるっちゃ。テンちゃんは分かるっちゃよね?今朝、喧嘩したみたいだし」と言うと、あたるは  「ん?あぁ、あのクソ生意気なガキか」と言った。ラムは苦笑いをしながら  「ダーリンが向こうの世界から来てる事は、テンちゃんにも言っちゃダメだっちゃよ、テンちゃん口が軽いから……」と言うと溜め息をついた。そんなラムを見ていたあたるが  「ところで、何て呼べばいいんだ?」と言うと、ラムは  「あ、ウチの事はラムでいいっちゃ。テンちゃんの事は、ダーリンはいつもジャリテンって言ってるっちゃよ」と言った。それを聞いて、あたるは  (確かさっきラムは、俺とラムは夫婦って言ってたな。と言う事は、もしかして……)と思い、いかがわしい想像をしてニヤニヤと笑いながら  「じゃぁラム、ちょっと聞きたいんだが、お前は俺と一緒に住んでるのか?」とラムに聞くと、ラムは  「そうだっちゃよ」と言うと、ニコリと笑った。あたるは、その笑顔を見てさっきまで抱いていた、いかがわしい想像が消えて無くなった。あたるは  (こんな可愛い子と一緒に住んでるなんて、こっちの俺はなんて羨ましいんだ!)と思った。  その頃メガネも自宅に着き、自分の部屋に入り驚いた。壁一面に貼られたラムのポスター。ラムの姿がプリントされた抱き枕。机の中にはラムの生写真。部屋が、ラムで埋め尽くされていたのだ。それを見たメガネは  「な、な、なんて素晴らしい!!こっちの俺もラムさんの虜なのか!あぁ、ラムさん!なんて可愛いいんだ。出来る事なら、この腕で力一杯抱きしめたい!だが、貴方は事もあろうか、あのアホのあたると夫婦だと言う。何故あたるなんだ!あのあたるが貴方を幸せに出来るとは思えない!しかし貴方はあたるを選んだ。だが、いつか間違いに気づいてくれると信じます!その時まで、このメガネ!貴方をアホの魔手から守ってみせます!」と言うと、ラムがプリントされてる抱き枕を抱きしめた。  ーーーーパラレルワールドーーーー  パラレルワールドのメガネも、ちょうど同じ時間に自宅に戻った。メガネは自分の部屋に入り、壁に貼られたアイドルのポスターを見て愕然として  「な、な、なんじゃこりゃー!」と叫び、更に  「いくらラムさんが居ないとは言え、こっちの俺はこんな物を貼っているのか!」と言うと、壁のポスターを全て破り捨て  「俺の部屋にラムさん以外のポスターを貼るなど、言語道断!」と言った。そして財布を取りだし、その中に入っていた写真を取りだした。それはラムの写真で、メガネは写真を見つめ  「ラムさん、このメガネ必ずラムさんの元に帰ってみせます!」と言った。    ーーーー元の世界ーーーー  その頃、元の世界の面堂も自宅に到着したところだった。面堂が屋敷に入ると黒服が面堂の所に台車を転がして来て  「若、お食事の時間です」と言った。台車の上には大きな容器が乗っており、中には大量のアサリが入っていた。それを見た面堂は  (な、なんだこの大量のアサリは……まさか、こっちの僕はこんな大量の、しかも生きたアサリを食べていると言うのか……いや、いくら違う世界の僕でも、僕は僕だ!そんなハズはない!)と思い、黒服に  「どう言うつもりだ、僕にこんな物を食べさせるつもりか」と言うと、黒服は  「は?これは、タコ達のお食事ですが……」と答えた。それを聞いた面堂は  (な、何だと!タコの……)と思い  「……ははは、冗談に決まっているだろう」と言うと、黒服も  「そ、そうですよね!あはははは」と笑った。それを見て面堂は  (危ない、もっと慎重にしなくては)と思って、タコの居る部屋に向かった。  面堂がタコ達の居る部屋に入ると、タコ達が顔を出した。1匹、2匹、3匹、4匹……10匹……20匹……そのタコの数に面堂は  「な、な、何だ!この数は!!」と思わず声をあげた。するとそれを聞いた黒服は  「え?足りませんか?」と言った。面堂は、黒服の言葉を聞いて耳を疑い  (なに?足りないだと?……こっちの世界では、この数は普通なのか)と思い、咄嗟に  「い、いや、大丈夫だ。僕の数え間違いだったみたいだ」と言うと、無造作に池の中に大量のアサリを流し入れた。それを見て黒服は  「……そんな食事のあげかた……若らしくもない」と言い、面堂の顔を覗きこんだ。すると面堂は  「き、今日はこんな気分なのだ」と言い、さっさとタコ達の部屋を後にした。  ーーーーパラレルワールドーーーー  その頃、パラレルワールドの面堂も屋敷に到着し、中に入ると黒服が近付いてきて  「若、お帰りなさいませ」と言った。面堂は  「うむ、ではすぐにタコ達に食事を与えるぞ」と言ったが、黒服は  「え?タコに?」と戸惑いを隠しきれない様子だった。それを見た面堂は  「ん?どうした?それより、タコ達の食事はどうした」と言うと、黒服は  「若、急にその様な事言われましても……」と言った。それを聞いた面堂は  (なんだ?僕が帰ったらタコ達に食事を与えるのは、毎日の日課なのに……)と思ったところで、更に  (ハッ!まさか、こちらの世界の僕はタコ達に食事を与えないのか?)と思った。面堂は  「き、今日は、タコ達に食事を与えたい気分なのだ、早急にタコ達の食事を用意してくれ。僕は、先にタコ達の部屋に行っている」と言うと、さっさと歩き出した。  面堂はタコ達の部屋に着くと、思わず  「な、な、何だ!この部屋は!」と声をあげた。なんと、タコ達の部屋にはあの大きな池は無く、いくつかの水槽が置いてあり、数匹のタコが居るだけだったのだ。そんな光景を見て面堂は  「な、なんと言う事だ…………我が面堂家にとって、家紋のヒョットコに酷似したタコは、神聖極まりないもの。それを、この様な扱いをするとは!」と言うと、更に  「おい!誰か居らぬか!」と叫んだ。すると、すぐに黒服がやって来て  「若!どうなされました!」と言ったが、面堂は   「どうしたも、こうしたも有るか!タコ達をあの様な水槽に入れておくなど、愚の骨頂!今すぐ、タコ達専用の池を造り快適な環境にしろ!」と言った。黒服は戸惑いながらも  「わ、わかりました!」と言うと、急いで部屋を出て行った。面堂は、すぐにタコの入った水槽に近づき  「この様な所に閉じ込めて、すまなかったな」と言ったが、妙な違和感を感じた。それは、タコと意志の疎通が出来てない気がしたからだ。面堂は、再びタコに  「ん?どうした?こんな所にずっと居たから、怒ってるのか?」と言ったが、面堂はタコから何も感じとれず  「どうしたと言うんだ……僕にはお前達の気持ちが分からなくなってしまった……」と言った。それを部屋の入り口で見ていた黒服は慌てて  「た、た、大変だー!若が、若がおかしくなってしまわれたー!」と言いながら、走って行った。    ーーーー元の世界ーーーー  元の世界では、あたるとラムがちょうど家に着いたところだった。あたるは玄関を開けると、いつも通りに  「ただいまー」と言い、ラムも  「ただいまー」と言った。すると、すぐにあたるの母が出てきて  「あぁ、お帰り。全く、いつまでほっつき歩いてるのよ。すぐご飯にするから着替えてらっしゃい」て言うと、再び台所に戻った。あたるとラムは階段を上がると、あたるの部屋に入った。すると、あたるの部屋ではテンがオモチャを拡げて遊んでいたが、ラムがそれを見て  「ほらテンちゃん、もうすぐご飯になるから片付けるっちゃよ」と言うと、テンは  「なんや、せっかくええ所やったのに」と言った。すると、そんなテンにあたるが  「人の部屋で勝手に遊んでる奴の言葉とは思えんな」と、制服を脱ぎながら言い、テンも、あたるに  「今片付けとるやんか、文句言いくさんな」と言った。あたるが、着替え終えて  「本当に、可愛くないガキだなぁ」と言うと、テンも  「別にお前に可愛がられよう思てないわい」と返す。そんないつもの光景が、そこには有った。そんな2人を見てラムは  (やっぱりダーリンは、どっちの世界でも同じだっちゃね)と思い、笑った。それを見たあたるは  「何笑っとるんだ?」とラムに聞くと、ラムは  「あ、何でもないっちゃ」と言った。あたるは  「ふ〜ん、なら下行って飯にしよう」と言って、部屋を出て階段を降りた。ラムとテンもあたるに続いて下に降りると、茶の間に向かった。茶の間では、あたるの父がテーブルの前であぐらをかき新聞を読んでいる。あたる、ラム、テンが席に着くと、ちょうどあたるの母が夕食を運んで来た。  あたるの母が席につくなりあたるは  「頂きまーす」と言うと、ガツガツと食事を始めた。あたるは、ラムを見て  (本当に、俺とラムは一緒に住んでるんだな)と思った。  食事を終え、あたるとラム、テンはあたるの部屋でくつろいでいたが、ラムが時計を見て  「あ、もうこんな時間だっちゃ。テンちゃん、お風呂入るっちゃ」と言ったがテンは、風呂に入りたくないらしく  「あ、わ、わいは今日はええみたいや」と言って、ラムから目を逸らした。しかし、ラムは  「何言ってるっちゃ!お風呂は、ちゃんと入らないとダメだっちゃよ!」と言うと、テンのオムツを掴み  「じゃぁダーリン、ウチ達お風呂入ってくるっちゃね」と言った。あたるは  「あ、あぁ……」と言って、平静を装ったが内心では  (ふ、風呂だと?ま、まぁ一緒に住んどるんだから当然と言えば当然なんだが……)と思い、更に  (まてよ、一緒に住んでるって事は、ここで寝てるんだよな?……一体どこで寝てるんだ?)と思って、妙に緊張してきた。  しばらくして、ラムとテンが部屋に入って来て  「ダーリンも入っちゃえば?いいお湯だったっちゃよ」と言った。あたるは何故か抵抗出来ず  「あ、あぁ、じゃぁ俺も入ってくるか」と言って、部屋を出て風呂に入りに行った。ラムは、そんなあたるを見て  (ダーリン、ずいぶん素直だっちゃね?……もしかして、向こうのダーリンって素直だっちゃ?)と思ったが、すぐに  (そんな訳ないっちゃよね)と思って、笑った。  あたるは風呂から上がると、自分の部屋に戻った。すると、テンはラムに寝付かされたのか既に寝ていた。あたるが部屋に入ると、ラムが  「あ、ダーリン。お風呂気持ちよかったっちゃ?」と言ったので、あたるは  「あぁ、まあな」と言って、机の上に有った雑誌を手に取り、ラムに  「な、なぁラム」と声をかけるとラムは  「何だっちゃ?ダーリン」と言い、あたるは  「い、いやぁ……俺とお前は、一緒に住んでるだよな?」と聞くと、ラムは  「だっちゃ。それがどうかしたっちゃ?」と言ってあたるの顔を覗きこんだ。あたるは、そんなラムを見て思わず目を逸らし  「い、いやぁ、お前は何処に寝てるのかなぁ?って思ってさぁ」と言うとラムは  (あ、ダーリンもしかしてウチとダーリンが一緒に寝てるのか気になってるっちゃね)と思った。そしてラムは、そんなあたるに悪戯をしてみたくなり  「ウチは、ダーリンの部屋で寝てるっちゃよ」と言うと、ニコリと笑った。あたるはラムの言葉で完全に勘違いをして  (こ、この部屋でって事は……やっぱり一緒に……)と思い、急にラムを意識してしまった。そんなあたるを見てラムは  (ダーリン、赤くなってるっちゃ)と思い、そんなあたるを可愛いと思った。しかし、すぐに  (ダメだっちゃ。このダーリンは、向こうの世界のダーリンだっちゃ。あまり深く関わると大変だっちゃ)と思い直し  「ダーリン、この部屋って言ってもウチが寝てるのは、ここだっちゃ」と笑いながら押し入れの襖を開けた。あたるはラムの言葉で、一緒に寝ては居ない事を知り少しホッとしたが、ラムの言った押し入れを見て  「こんな所で寝てるのか?」と言うと、ラムは  「うん」と笑顔で言った。そのラムの笑顔を見てあたるは  (何でこんな押し入れなんかで寝かせてるんだ!)と思い  「ラム!俺がこっちに居る間は押し入れなんかで寝ないで、部屋に布団を敷いて寝ろよ」と言った。ラムはあたるが思いもしない事を言ったので、戸惑いながらも嬉しくて  「うん!」と満面の笑みで答えた。   ーーーーパラレルワールドーーーー         3時間前  パラレルワールドのあたるが自宅に帰り玄関を開けると、あたるの母が台所から  「あたるー、帰ったの?」と声をかけてきた。あたるは  「あぁ」と答えると、あたるの母がエプロンで手を拭きながら  「遅かったのね?すぐご飯になるから着替えてらっしゃい」と言うと、再び台所に戻った。あたるは何も言わずに階段を上がると、自分の部屋に入った。あたるは制服を脱ぎながら、自分の部屋を見渡した。その部屋は、あたるの知ってる自分の部屋とはまるで違うものだった。着替えが終わった頃、下の階から  「あたるー、ご飯出来たわよー」と、あたるの母の声がした。あたるは部屋を出ると階段を降りて茶の間に行くと、そこにはテーブルの前に座る母と父の姿が有った。あたるは席につくと  「頂きます」と言い、夕食を食べ始めた。親子3人の食事は、とても静かだった。あたるは、いつもラムが座ってる方をみたが、勿論ラムは居ない。あたるは親子3人の食事が、これ程までに淋しい物だと言う事を改めて知った。そんなあたるの様子に気付いた母が  「あたる、何か元気ないみたいだけど何か有ったの?」と聞くと、あたるは  「別に」と言うと箸を置き  「ご馳走さま」と言って、茶の間を出て2階の自分の部屋に行った。あたるは部屋の電気も点けずに部屋の片隅に座りこみ、部屋を見渡すと、思っていたより閑散としていて、何も無い事に気付いた。あたるはそんな部屋に1人だと言う事を改めて実感し  「この部屋って、こんなに広かったっけ……」と言うと、押し入れの前に行き押し入れの襖を開けた。押し入れの中には、布団が入っているだけだった。あたるは再び押し入れの襖を閉めると、部屋の真ん中に仰向けになった。あたるは天井を見つめながら  (ラム、俺、戻れるよな?俺達、また会えるよな?)と思ったが、急に不安になった。それは、もう一人のあたるの存在だった。あたるは  (まさか、ラムに限って俺を裏切る事は無いよな?いくら向こうに居る俺が俺と同じ様でも、俺じゃない。ずっとラムと一緒に居たのは俺だ、ラムはそれを分かってるはずだ!)と思ったが、どうしても不安が消えずラムに会いたい気持ちが膨らんでいった。    ーーーー元の世界ーーーー  その頃、元の世界のあたるはラムを意識して態度がぎこちなくなっていた。そんなあたるにラムが  「ダーリン、どうしたっちゃ?」と声をかけると、あたるはあたふたしながら  「お、俺は別に何とも思ってないからな」と言って  (し、しまったテンパって訳の分からん事を口走ってしまった)と思った時  ピンポーン、ピンポーン 玄関のチャイムが鳴った。あたるは、先程の発言を誤魔化す様に  「誰だ?こんな時間に」と言うと、部屋を出た。それを見てラムは  「あ、ダーリン待って」と言いながらあたるの後を追って玄関に向かった。玄関では、あたるの母が来客を迎えていた。尋ねて来たのはサクラと錯乱坊だった。その2人を見たあたるは  「あ、サクラさん!それに……チェリー……何でお前まで」と言うと、あたるの後ろからラムが  「あ、チェリー!何でこっちに?向こうに居るはずじゃぁ……」と言うと、サクラが  「実はな、それについてお主に知らせておかねばならん事が有って、この様な時間で申し訳ないが馳せ参じた訳じゃ」と言った。それを聞いてラムは  「え?ウチに話?」と言うと、サクラは  「うむ、実は向こうの世界との連絡方法なのだが…………」と言った。  全く違う環境での生活を余儀なくされたあたる達。そこに現れたサクラの一言で、事態は急変する。           to be continue