うる星やつらーアナザーワールドー       エピソード 11  温泉マークは、震える手で封筒の封を開けると、ゆっくりと中の手紙を取り出し、その手紙を広げ読み始めた。     ※※※拝啓、温泉殿※※※  夏の暑さも落ち着き、紅葉が色づき始めた今日この頃。この度、わたしがそなたに手紙をしたためたのには訳がある。  実は、今のわたしにはそなたがどうしても必要なのだ。そこで恥を忍んで言うが、どうかわたしと会ってはくれまいか……本当なら今すぐにでも会いたいのだが、わたしも神に仕える身、すぐには時間が取れぬ。  そこで、そなたが都合がつくのなら明日の夕方4時に、喫茶店ピグモンの前にて待ち合わせをしたい。これは、わたしにとっても、そなたにとっても、人生を左右する重大な事なのじゃ。もし、そなたが現れなかったら、わたしは2度とそなたの前に姿を現す事も無いであろう。  そなたが現れるのを祈って、わたしは明日の夕方4時に喫茶店ピグモンの前で待つ。           ※※サクラ※※  温泉マークは、手紙を読み終えると  (こ、これはラブレターなのか?……俺とどうしても会いたいと言っているのだから、ラブレターに違いない!)そう思い、温泉マークの顔はだらしないくらいにニヤケていた。それを見てラムは  「なんて書いてあったっちゃ?ラブレターだったっちゃ?」と聞くと、温泉マークは  「な、何を言っとるか!手紙の内容を言える訳なかろう!」と言ったが、顔は相変わらずニヤケている。ラムは  「ふ〜ん、言えないって事はラブレターだったんだっちゃね」と言って、ニヤニヤと笑った。そんなラムに温泉マークは、ムキになり  「いいから、早く教室に戻りなさい!もうすぐ授業開始の鐘がなるぞ!」と言うと、ラムも  「はーい」と言って教室に戻ろうとした時、温泉マークがラムに  「ラ、ラム君、この事は、その……ナイショにしておいて貰えないか?」と言うと、ラムは  「大丈夫だっちゃよ、分かってるっちゃ」と言って、廊下を飛んで行った。  ラムは、午後の授業には出ずに自分のUFOに戻り、向こうの世界のあたる達に向けたビデオレターを作っていた。そして、それが完成すると休む間もなくサクラの家に向かった。ラムはサクラの家に着くと、玄関を開け  「サクラ居るっちゃー?」と声をかけると、奥からサクラと錯乱坊が出てきたので  「あ、サクラにチェリー、居て良かったっちゃ」と言うと、何かの機械を錯乱坊に渡し  「これが、向こうのみんなに送るメッセージだっちゃ。チェリーは、すぐに向こうに行ってこれを渡して欲しいっちゃ。ダーリン達は今頃学校だから、向こうのサクラに渡せばいいっちゃよ」と言った。すると錯乱坊は  「わしは、まだ昼飯を食べとらんのじゃが……」と言ったが、ラムは  「そんなの向こうのサクラの家で食べればいいっちゃ!とにかく、今は一刻を争うっちゃ!」と言って、錯乱坊を無理矢理玄関から押し出した。しかし錯乱坊が  「しかし、わしは腹が減って……」と言いかけた所で、ラムは  「つべこべ言ってると、チェリーでも電撃だっちゃ!」と言った。すると錯乱坊はトボトボと歩きだし  「最近の若いもんは年寄りを敬う心が欠けとる」と言った。それを聞いたラムは  「何か言ったっちゃ?」と言うと、パチパチと放電し始めた。それを見た錯乱坊は慌てて走り出した。そんなラムを見てサクラは  「おぬし、電気を発するのか?」と聞くと、ラムは  「あぁ、こっちのサクラは知らないんだっちゃよね」と言うと、苦笑いをした。    やがて、錯乱坊はパラレルワールドに移動し、サクラの家に行った。錯乱坊は玄関を開けると  「これ!誰か居らぬか」と叫ぶと、中からサクラが出て来て  「なんじゃ、叔父上ではないか」と言った。錯乱坊は、玄関に倒れ込む様に  「め、飯を食わせてくれ」と言った。するとサクラは  「人の家で行き倒れるな」と言いながらも、錯乱坊を居間に連れて行き食事を与えた。すると錯乱坊はガツガツと、まるで飢えた獣の様に食事をしながら、ラムから渡された機械をサクラに渡すと  「ふぉれはほぅ、らふふぁらほはへひわらひふぇほふぃいほ」と言ったが、機械を受け取ったサクラは  「ええい!何を言っとるか分からん!食うか、喋るか、どっちかにせい!!」と怒鳴り、錯乱坊は一気に食事をたいらげ  「それはのぅ、ラムからお前に渡して欲しいと頼まれての」と言った。それを聞いたサクラは  「何?ラムから?ラムはこちらの世界には居らぬはずだが」と言うと、錯乱坊は  「だから、向こうの世界のラムより預かったのじゃ」と言った。するとサクラは錯乱坊の襟を掴むと  「なんじゃと!叔父上は2人とも、わたし達とこちらの世界に飛ばされたはずじゃろう!」と言った。錯乱坊はサクラに掴まれたまま  「うむ、どうやらわしは向こうとこっちを自由に行き来出来る様での」と言うと、掴んだサクラの手をほどき、襟を直した。  サクラは、あまりの衝撃の事実に一瞬固まったが、すぐにラムから渡された機械を見て  「これは何なのだ?」と言うと、錯乱坊は  「ラムの話じゃと、メッセージらしいが」と言った。その機械は、一見薄型のモニターの様に見えたが、何も表示されておらず、横にいくつかのボタンが有るだけだった。サクラは、そのボタンの中の一番大きなボタンを押してみた。すると、機械にラムの顔が写し出され、メッセージを伝え始めた。  夕方になり、友引高校も放課後を向かえ、あたる達が校舎から出てくると、校門の前にサクラが腕を組んで待っていた。それを見てあたるは一瞬でサクラの横に行き  「サクラさん、いくら待ち遠しいからって学校まで迎えにくるなんて」と言って、腕を肩に回そうとした瞬間   みしっ サクラの肘鉄が顔面にめり込んだ。それを見てメガネが  「ああなると分かっていても、敢えて果敢に挑むあたるの姿勢には、いつも感服させられる」と言い、パーマも  「あたるには、学習するって概念はないらしいな」と言った。そんなメガネ達をよそに、面堂はサクラの所に行くと  「サクラさん、わざわざ学校に来たって事は何か進展が?」と聞いた。するとサクラは  「うむ、実はラムからメッセージが届いてな」と言った瞬間、全員が驚きあたるは一瞬で立ち上がり  「ラムから?」と言い、面堂は  「しかしラムさんは、向こうの世界に居るはずでは?」と言ったが、サクラは  「とにかく、全員うちに来て欲しい。詳しい話は、向こうでしよう」と言うと、しのぶに  「しのぶ、すまぬが温泉先生を呼んで来てくれぬか」と言い、しのぶは  「わかったわ」と言うと、校舎内に戻って行った。サクラ達は先に家に戻り、ほどなくしてしのぶと温泉マークも、サクラの家に到着した。  全員集まるとサクラは錯乱坊がラムから預かってきた機械をテーブルの上に置き  「これで、ラムからのメッセージが見られる。とりあえず、みんな見て欲しい」と言うと、モニター横に有るボタンを押した。  《みんな元気だっちゃ?みんながこのビデオレターを見ているって事は、チェリーが無事にそっちに行けたって事だっちゃね》    映像がそこまで流れた時、あたるが  「チェリーって、どう言う事だ?」と言ったが、サクラが  「まぁ、とにかく最後まで見んか」と言ったので、あたるも大人しく続きを見た。  《みんなをこっちに戻す方法が分かったっちゃ》  映像がここまで流れると、今度はサクラと錯乱坊を除くみんなが一斉に歓喜の声をあげた。するとサクラは、再び  「いいから、続き見んか!」と言い、みんなまた映像を見始めた。  《方法は簡単だっちゃ、こっちとそっちで同じ時間に、入れ替わったみんながピグモンの前に居ればいいだけだっちゃ。そうすれば自然に入れ替わりが起きて、元に戻るはずだっちゃ。それで集合の時間だけど、明日の午後4時にしたいのでその時間にはピグモンの前に集まって欲しいっちゃ。それじゃぁ、よろしく頼むっちゃね》  そこで映像は終わった。ラムのメッセージを聞いた面堂が  「向こうに戻る方法って、そんな単純な事だったとは……」と言うと、しのぶが  「方法は簡単でも、実現が難しかったのね……それにしても、チェリーがこのラムからのメッセージを持って来たって、どう言う事?」と錯乱坊に聞くと、横に居るサクラが  「どうやら叔父上は、自由に向こうとこっちを行き来できるらしいのじゃ」と言うと、それを聞いたあたるは  「なに!おのれは、今までそれを黙っとったのか!」と言い、錯乱坊の襟首を掴んだ。するとサクラが、あたるの手をほどき  「まぁ、良いではないか。無事に戻れるのだから」と言った。あたるは、渋々錯乱坊から手を離した。するとパーマが  「所で、もう一人のチェリーは何処に?」とサクラに聞くと、サクラは  「さぁのぅ、空き地にでも居るのではないか?」と言った時、面堂がラムのビデオレターの機械のモニターを見て  「これは何だろう?」と言い指を指すと、みんな面堂の指の先を見た。すると、そこには何か矢印の様なマークが付いていた。それを見たメガネが  「これって、ページをめくるマークじゃないのか?」と言うと、あたるが  「分からなければ、押してみればいいんじゃないか?」と言うと同時に、そのマークに触れると一瞬モニターが真っ暗になり、再びラムが写し出されメッセージを伝え始めた。  《もう1つ大事な事が有るっちゃ。入れ替わりが済んだら、すぐに空間を閉じなければならないんだけど、それにはサクラとチェリーの力が必要だっちゃ。両方の世界から同時にそれぞれの世界のサクラとチェリーが、霊力を空間の歪みに放出すれば空間が徐々に閉じて行くはずだっちゃ。よろしく頼むっちゃ》  ラムのメッセージが終わると、カクガリが  「おい、チェリーを見つけないとマズいんじゃないか?」と言い、メガネも  「そうだな……」と言い、錯乱坊の方を向くと  「なぁチェリー、お前、自分の事だから何処に居るか見当つくんじゃないのか?」と言うと、錯乱坊は  「まったく、仕方ないのう。明日の夕方4時までには、待ち合わせ場所まで連れて行くから、心配するでない」と言った。そして、明日の夕方4時に喫茶店ピグモンの前に集まる約束をして、それぞれサクラの家を出た。  その頃、元の世界のラムは学校も終わりランの宇宙船に向かっていた。ラムは、ランの宇宙船に着くと、いつもの様にドア横のチャイムをならした。すると、ランがドアを開け顔を出し  「あら、ラムちゃん。どうぞ入って」と言って、ラムを中に招き入れた。  ラムは、中に入ると  「ランちゃん、とうとう明日の夕方4時に向こうのみんなと、こっちのみんなの入れ替えをする事になったっちゃ!これも、ランちゃんが力を貸してくれたお陰だっちゃよ!」と言って、両手でランの両手に握手をした。するとランは  「ううん、いいのよ。私たち、友達じゃなぁい」と言ってニコリと笑った。それを見てラムは  「ありがとうランちゃん。やっぱり持つべきものは友達だっちゃね」と言って、ラムもニコリと笑った。しかしランは心の中で  (あれだけは、ぜ〜ったいラムにばれん様にせな、わし殺されるで……)と思った。そんなランの顔をラムは覗き込み  「ランちゃん、どうしたっちゃ?難しい顔して?」と言うと、ランは慌てて  「え?な、何でもないのよラムちゃん。そ、それよりラムちゃんもルクシオンの数値調べておいた方がいいかもね。実際ダーリン達が消えた時も、その場に居た訳だしぃ」と言って、計測する機械をラムに向けた。ランは、機械の数値を見て  「あ、あれ?この機械壊れちゃってるのかなぁ」と言うと、機械をラムに渡し  「ラムちゃん、ちょっと私を計ってみて」と言った。ラムは、言われた通りに機械で計測し、機械をランに渡すとランは、青くなり再びラムを計測した。そして、その数値を見て  「う、うそ…………」と言って言葉を失った。そんなランの反応にラムは  「ランちゃん、どうかしたっちゃ?」と聞くと、ランは  「いい?ラムちゃん良く聞いてね」と真剣な表情をすると  「ラムちゃんのルクシオンの数値……通常の1000倍くらい有るの……」と言った。それを聞いたラムは  「え?それってどう言う事だっちゃ?」と戸惑いながら聞くと、ランは  「ルクシオン自体は、人体に影響は無いって言ったわよね、でも、ここまで蓄積されるはずは無いの。ここまで蓄積される前に放出されるはずだから……でも、ラムちゃんの場合は向こうの世界にラムちゃんが存在しない為に、相互関係が成り立たないから放出されずに蓄積され続けてしまったみたい。向こうの世界と、こっちの世界は、分かりやすく言うと表と裏。こちらが表なら、向こうは裏。つまりアナザーワールドって事ね。そして、ルクシオンと言う粒子を通じて表と裏が入れ替わるんだけどラムちゃんには、裏が無い状態……」と言い、それを聞いたラムは  「え?じゃぁ、ウチどうなるっちゃ?」とランに問いかけると、ランは  「もともと、その粒子は向こうの世界の物だから、空間を閉じると恐らく消滅するはず」と言い、ラムは安心した様に  「なぁんだ、なら大丈夫だっちゃね」と笑った。しかしランは  「なぁに、呑気な事ぬかしとんのや!ええか、相互関係が成り立っとる場合は向こうの世界に飛ばされるけんどなぁ、ラムの場合は相互関係が成り立っておらんせいで、飛ばされる所がないんじゃ!」と激しい口調で言った。するとラムは  「じゃぁ、ウチは……」と言い、ランは  「恐らく、この世界からは消えてまう……多分、どこかの亜空間に飛ばされると思うで」と言った。ランの発言の後、しばらく沈黙の時間が過ぎ、ラムが口を開いた  「でも……でも、空間を閉じないと両方の世界が無くなってしまうんだっちゃよね?」ラムが、そう言うとランは  「…………そうや」と答えた。するとラムは  「だったら、悩む事なんて無いっちゃ。ウチが居なくなっても、ダーリンは助かるっちゃ」と笑顔で言った。そんなラムの笑顔を見てランは  「ラムちゃん……」と言うと、涙を浮かべ静かにラムと抱き合った。    ラムがランの宇宙船を出て、家に着くと既にあたるは帰宅していた。ラムは、あたるに怪しまれない様に、精一杯に普通を装った。ラムは  「ただいまぁ」と言ってあたるの部屋の窓から中に入ると、あたるは寝転んでマンガを読んでいて、テンはオモチャをいじっていた。テンはラムが帰って来たのを見て  「あ、ラムちゃん、おかえり〜」と言うとラムに向かって飛んで行った。あたるは  「あぁ、おかえり」と言うと、起き上がり  「ラム、後でちょっと話が有るんだが……」と言った。ラムは  「何だか分からないけど、分かったっちゃ」と言った。すると1階から  「あたるー、ラムちゃーん、てんちゃーん、ご飯よー」と、あたるの母の声がした。  夕飯も食べ終わり、入浴も済ませたラムは、テンを寝かしつけていた。その間に、あたるも入浴を終え部屋に戻ると、既にテンは寝ていてラムは正座してあたるを待っていた。そしてあたるが部屋に入って来ると  「それで、ダーリン。話ってなんだっちゃ?」と聞いた。あたるはラムの前に座り  「向こうの世界とは連絡とったのか?」と聞くと、ラムは  「うん、メッセージを送ったから大丈夫だと思うっちゃ」と言った。するとあたるは  「そうか……それで、いつなんだ?俺達が入れ替わるのは」と更に聞くと、ラムは  「明日の夕方4時だっちゃ」と言った。それを聞いたあたるは、驚き  「何!明日?……随分急だな?」と言うと、ラムは  「うん……でも、早い方がいいっちゃ。みんなには明日学校で話すっちゃ」と言って微笑んだ。あたるは、うつ向き腕を組んで黙っていたが、やがて  「なぁラム、俺考えたんだが……」とポツリと呟いた。そんなあたるにラムは  「ん?何だっちゃ?」と聞いた。するとあたるは  「そのぉ、無理に入れ替わらなくても、このままでいいんじゃないか?……そうすれば一番簡単だと思うんだが」と言って、ラムを見た。するとラムは  「…………ごめんね、ダーリン……今のダーリンは、ウチが本当に好きなダーリンじゃ無いっちゃ。ウチの本当に好きなダーリンは、向こうの世界に居るっちゃ」と言って、うつ向いた。しかし、あたるは  「でも、俺も、向こうの俺も、同じだろ?」と言って、食い下がるとラムは  「ううん、同じじゃないっちゃ……一緒に笑ったり、泣いたり、怒ったり……いつもウチの側に居てくれて……危険を承知でウチを助けてくれたのは、向こうの世界に居るダーリンだっちゃ」と言った。そんなラムの言葉を聞いてもあたるは  「だったら、これからは俺がお前を守ってやるよ!これから一緒に、笑ったり、泣いたり、怒ったりすればいいじゃないか!」と言ってラムの肩に手をかけると、あたるは思わずサッと、手を引いた。ラムは、肩を震わせていたのだ。あたるがうつ向くラムを見ると、ラムはその大きな蒼い瞳からポタポタと涙落としていた。それを見たあたるは  「ラ、ラム…………」と言って言葉を失った。ラムは  「本当にごめんね、ダーリン……ウチには時間が無いっちゃ。だから、最後はウチが本当に好きなダーリンと一緒に居たいんだっちゃ」と言った。そんなラムに、あたるが  「時間が無いって……どう言う事だよ……」と聞くと、ラムはルクシオンと言う粒子が空間移動の鍵で、その粒子がラムの体内に蓄積している事、そして空間を閉じるとそのルクシオンが消滅し、向こうの世界に自分が存在しないラムは、この世界から消えてしまう事を話した。ラムの話を聞いたあたるは  「じ、じゃぁ、尚更入れ替えなんてしないで空間も閉じなければいいじゃないか!」と言った。しかしラムは  「そう言う訳には行かないっちゃ。空間の歪みが大きくなりすぎて、もう自然に閉じる事は無いっちゃ。それどころか、更に拡がり続けて最後には、2つの世界は崩壊してしまうっちゃ」と言った。するとあたるは  「そ、そんな……て事は、何が何でも空間を閉じないと……」とラムに聞いた。ラムは  「うん……だから、お願いだっちゃ」と言った。ラムの目には、まだ涙が浮かんでいる。あたるは、ラムが嘘を言ってるとは思えなかった。あたるは  (ラムが、今本当に必要としているのは、俺じゃない……だったら、せめてラムの思う様にさせてやらなきゃな)と思った。あたるは、そっとラムを抱き寄せると  「分かったよ、ラム」と言った。ラムはそんなあたるの腕の中で静かに涙を流した。  ついに閉じられる空間の歪み。それと同時に起こるラムの体の異変。あたるとラムに試練が待ち受ける。             to be continue