うる星やつらーアナザーワールドー       ラストエピソード  ランは、あたるに何かの機械を見せた。それを見たあたるは  「これは?」と聞くと、ランは  「実は、ラムちゃんと抱き合った時に、こっそり髪の毛に発信器を付けておいたの。ラムちゃんが消えてしまっても、何処に居るか分かる様に」と言って、ニコリと笑った。しかし、あたるは別の所に食いついた。あたるは、半ばパニック状態で  「え?え?ラムとランちゃんが抱き合った???」と言うとランは、あたるの背中を激しく叩き  「いやだぁー!ダーリンったら、私とラムちゃんはそんな仲じゃないわよ〜」と言った。あたるはランに背中を叩かれて、壁まで吹っ飛びかろうじて笑顔をつくり  「そ、そうだよね……ははは」と言って、崩れ落ちた。  ランはすぐに機械を起動すると、モニターの様な所に何やら座標の様なものが表示された。あたるは、それを見て  「これは、何なの?」と聞くと、ランは  「これは、ラムちゃんが今居る場所の座標。この様子だと、異次元に居るのは間違い無さそうね」と言った。それを聞いたあたるは  「異次元……どうやって助ければ」と言うと、ガックリと肩を落とした。しかしランは  「ダーリン、そんな落ち込んでる暇なんて無いわよ。まずは、ラムちゃんが異次元の何処に居るか突き止めないと助けられないから」と言って、ごそごそと何かを取り出した。それは、何やら黒魔術で使う様な品々で、あたるは  「ランちゃん、それは?何か黒魔術でも始めそうな感じだけど……」と言うと、ランは  「そう、黒魔術でラムちゃん見つけるの」と言うと、ニコリと笑い、更に  「それで、ダーリンには集めて来て欲しい材料があるのよね」と言った。あたるは  「一体何を集めてくれば?」と聞くと、ランは  「え〜と、まずは【神の使いの涙】、次に【呪われた猫の毛】、最後に【ラムちゃんの体の一部】。まぁ、ラムちゃんの髪の毛でも有れば大丈夫よ」と言ったが、あたるは  「ラムの髪の毛はともかく、他の物って一体何処に?」と言って、頭を抱え更に  「そもそも、神の使いの涙と呪われた猫の毛って何だ?」と言うと、あたるはハッと思いつき  「呪われた猫の毛って、まさか……こたつ猫か?」と言い、更に頭を抱えた。何故なら、こたつ猫の毛を取るなんて事は至難の業だからだ。更にあたるは  「すると、神の使いの涙ってまさか……サクラさんの?」と言い、またまた頭を抱えた。それもそのはず、サクラの涙をてに入れるなんて不可能に近いからだ。そんなあたるを見たランは  「ダーリン、悩んでる暇なんて無いわよ?」と言い、あたるの背中を押し入り口に連れて行き  「とにかく、急いでね。私は準備しておくから。それと、くれぐれも忘れないで、時間が経てば経つほどラムちゃんの救出は難しくなるから」と言って容器を3つ渡し、あたるを無理矢理に外に出すとドアを閉めた。  あたるは仕方なく、まずはサクラの涙を手に入れる事にした。あたるの作戦は  その@ 大量のワサビを盛った握り寿司により涙を流させる。  そのA 感動的な映画を見せて感動の末、涙を流させる。  そのB 事実を話し、頼み込む。 この3つ。取り合えずは、寿司から行こうと思ったがサクラが、あたるの持って行った寿司を何の疑いも無く食べるとは思えない。しかし、寿司屋に連れて行ったのでは破産してしまう。従って、作戦@は脚下された。次に作戦Aだが、そもそもサクラがあたると一緒に映画に行くはずも無いので、ここは婚約者のツバメに頼んで映画に行って貰うのが一番だが、関心のツバメの居所が分からない以上、作戦の実行は不可能なので、作戦Aも脚下。残るは、事実を話して涙を流して貰う訳だが、現時点では方法がそれしか思い浮かばない以上、やるしかなくあたるはサクラの家に向かった。  あたるは、サクラの家に着くと玄関を開け  「サクラさ〜ん」と叫ぶと、奥からサクラが出てきて  「なんじゃこんな時間に」と言うと、あたるを見て  「わたしは今、忙しいのじゃ。相談事なら、明日学校で聞いてやる」と、言ったがあたるが  「サクラさん!明日じゃダメなんだ!」と言うと、あたるの真剣な顔をみてサクラは  「……よかろう。聞いてやるから入るがよい」と言って、あたるを奥の部屋に通した。サクラは部屋の中央に座ると  「お主らしからぬ顔つきだが、何か有ったか?」と、あたるに聞いた。あたるはラムの事を包み隠さずサクラに話した。話を聞いたサクラは  「そう言う事ならば、断る理由も有るまい。しかし、そう簡単に涙など出るかのう?」と言った。それを聞いたあたるは  「ワサビたっぷりの寿司は?」と言ったが、サクラは  「わたしは、ワサビが好きでのう。時にはワサビだけを食べるくらいじゃ」と言った。それを聞いたあたるは  (作戦@を実行しなくて良かった)と思い、胸を撫で下ろした。その時  「なんじゃ?寿司が食えるのか?」と言う声と共に錯乱坊が現れた。あたるは、コケそうになるのを何とか堪え  「いきなり出るなと何度言えば解るんじゃい!!」と言ってテーブルで錯乱坊を殴った。そんな錯乱坊にサクラが  「毎度毎度、何故そんな現れ方しか出来んのだ……」と呆れた様に言うと、続けてあたるが  「そうだ、今はお前に構ってる暇なんてないんじゃ」と言って、更に  「サクラさん、早く涙を」と言うと、それを聞いた錯乱坊が  「なんじゃ?サクラを泣かせたいのか?」と言うと、あたるは  「お前は黙っとれ!」と、錯乱坊を一喝した。すると錯乱坊は  「なんじゃ、せっかく涙の出し方を教えてやろうかと思ったんじゃがのう」と言うと、部屋を出ようとした。それを聞いたあたるは  「ちょっと待て!」と言って、錯乱坊の後ろ襟を掴み、更に  「せっかく来たんだ、涙の出し方を教えろ」と言った。すると錯乱坊は  「そんなの簡単じゃよ、ただ瞬きをせずに目を開き続ければいいだけじゃよ」と言った。それを聞いてサクラは  「確かに瞬きをしないで居れば涙は出るな」と言って、ひたすら瞬きを我慢して涙を絞り出した。あたるは、すかさずサクラの涙を容器に入れると  「サクラさん、ありがとう!お礼に後でデートしてあげるから」と言うと、玄関を飛び出して行った。その後ろ姿にサクラは  「誰が貴様とデートなどするものか!」と言った。  次にあたるは自宅に戻り、ラムの髪の毛を探す事にした。家に着いたあたるは、玄関を開けると階段を駆け上がった。玄関を入ってすぐに母の声が聞こえたが、今はそんな事に構ってるる時間は無い、とにかく1分1秒でも早くランの所に行かなくはならないのだ。あたるは自分の部屋に入るとすぐにラムの髪の毛を探し始めた。部屋の中をくまなく探したが、髪の毛1本落ちていない。どうやら、昼間のうちにあたるの母が掃除をしたしい。あたるは押し入れの襖を開けて中を見てみると、1本の長い緑色の髪の毛を見つけた。長さから見てもラムの物に間違いなさそうだった。  帰ってくるなり、いきなり部屋中をあさりだしたあたるを見てテンは  「おい、お前なんや!帰って来るなり、わいを無視しくさって!ラムちゃんはどないしたんや!」と言うと、あたるは急にテンを鷲掴みにして  「おい、こたつ猫は何処におる」と聞いた。するとテンは  「なんじゃお前は!急に話始めた思うたら!それが人に物聞く態度かいな!」と怒鳴った。しかしあたるは、そんなテンの怒りなど無視し  「やかましぃ!いいか、これはラムの命に関わる問題なんじゃ!分かったらさっさと答えろ!こたつ猫はどこだ!」と言った。テンは、あたるの迫力に圧倒され  (な、なんやこいつの迫力は……こいつが、こない必死になるっちゅう事は……まさか)と思い  「た、多分空き地におると思うで」と言った。するとあたるはテンを放り投げ、階段を駆け降りて猛スピードで玄関から出て行った。  空き地に着くと、こたつ猫は土管の上に腰掛け月を見つめていた。あたるは、音を立てない様に近づくと、ゆっくりとこたつ猫の尻尾に手を近づけた。後数センチと言う所で、突然こたつ猫が振り返りあたると目と目が合った。あたるは、思いきって手を伸ばし尻尾の毛を引き抜こうとしたが、あと一歩の所でこたつ猫の張り手を喰らい吹き飛んだ。しかしあたるは諦めずに何度もこたつ猫の毛を抜こうと近づくが、こたつ猫の張り手に阻まれて、どうしても毛を抜く事が出来ない。しだいにあたるの口からは、想いが言葉になって漏れはじめた。  「俺がラムを救ってやる……」  あたるは、立ち上がると  「俺がラムを救ってやるんじゃーー!!」と叫びながら突進した。  だがやはり、こたつ猫の手に阻まれて毛を抜く事は出来なかった。しかし、今までと違っていたのは、こたつ猫は張り手ではなく、あたるを手で受け止めて居たのだ。  こたつ猫は、あたるの様子から何かを察したらしく、あたるの頭から手を離した。それを見たあたるが  「……お前、いいのか?」と言うと、こたつ猫は笑顔(?)で頷いた。あたるは  「ありがとう……」と言うと、こたつ猫の毛を抜いた。   ブチッ こたつ猫は、毛を抜かれた瞬間よほど痛かったのか、あたるを力一杯張り手で突き飛ばした。あたるは  「あ〜れ〜〜〜」と叫びながら飛んで行った。そしてあたるが着地した場所は、なんとランの宇宙船の前だった。あたるは、急いでランの宇宙船のドアの横のボタンを押すと、すぐにランが顔を出しあたるを中へ引き入れた。そしてランが  「ダーリン、集まった?」と聞くと、あたるは  「はい、これ!」と言って、3つの容器を渡した。ランは  「じゃぁ、すぐに調べるね」と言うと、サクラの涙とこたつ猫の毛を別の容器に移し、黒魔術を始めた。ランは、何やら呪文の様なものを唱えると火の中にこたつ猫の毛とサクラの涙を入れた。すると、もうもうと煙が上がり、水晶玉の中に何か浮かび上がって来た。それは次第にハッキリとして来て、ラムの姿が写し出された。ラムは、気絶しているのか倒れており、まわりには玉の様な物が無数に有り、その玉には様々な映像らしき物が写し出されていた。それを見たランは  「な、なんて事……ラムちゃんが居るのは、時の狭間よ……」と言って、愕然とした。あたるは、訳が分からず  「時の狭間って?」とランに聞くと、ランは  「時の狭間は、時間の流れの無い空間なの。だから、全ての時間と繋がっているの、もちろんこことも」と言うと、あたるは  「なんだぁ、じゃぁ連れ戻すの簡単そうだね」と言ったが、ランは  「とーんでもない、逆よ!」と言うと、更に  「同じ時間軸に居るなら簡単だけど、ラムちゃんが居る時の狭間は、時間の流れが無いから、そんな中からラムちゃんを探し出すなんてワープしてる宇宙船から止まってる人の手を握る様な物よ」と言った。あたるは益々分からなくなったが、ラムを連れ戻すのが困難だと言う事は分かった。そしてあたるは  「じ、じゃぁ……」と言うと、ランは悲しそうに首を振った。  ラムは、目を覚ますと回りを見渡した。回りには無数の球体が有り、その球体には様々な映像が写し出されている。球体の数は、とても数えられる様なレベルでは無く無限に有ると言っても過言ではなかった。  ラムは、その球体の1つに触れてみたが手はすり抜けてしまい、触る事は出来ないらしい。ラムは他の球体も試したが、やはり同じだった。その時ラムは気付いた、球体に写し出されているのが様々な時代だと言う事に、それを見てラムは  「ここって、まさか……時の狭間……」と言った。ラムの顔には絶望が浮かび上がった。  あたるは、ランの言葉にガックリと膝を落とし  「じ、じゃぁ、ラムは……ラムは……」と言うと、床を叩いた。あたるの目からは涙がこぼれ落ちる。すると、その瞬間ランは素早くあたるの涙を容器で受け止めた。そんなランの行動にあたるは訳が分からず  「え?なに?」と言ってランを見ると、ランはあたるの涙とラムの髪の毛を両手に持ち  「ごめんね、ダーリン。実は、ダーリンの涙が必要だったの。だって、ダーリンにラムちゃんの為に涙流してって言っても無理でしょ?」と言うとニコリと笑った、呆気にとられているあたるに  「ラムちゃんを時の狭間から助ける為には、この空間を時の狭間に固定する必要が有ったの。でも、ただ固定するだけじゃラムちゃんがこの空間を見つけられないから、目印が必要だったのよ。ラムちゃんの髪の毛で空間を固定して、ダーリンの涙で道しるべを作るの。時の狭間から出る為には、ラムちゃんにこの空間を見つけてもらって、ラムちゃん自信がこの空間に接触しないとダメなのよ」と言うと、ラムの髪の毛とあたるの涙を機械にセットして、機械を起動した。すると、ちょうど目の高さ位の場所に球体の様な物が現れた。あたるがその球体を見ると、どうやら、球体の中は時の狭間に通じているらしい。あたるは、振り返りランの方を見て  「こ、これでラムは……」と言うと、ランは  「うん……無事に辿り着ければ……」と言った。それを聞いたあたるは  「え?それってどう言う事?」とランに聞くと、ランは  「時の狭間は時間の流れが無いから、その中に人が入るとやがて、その人の時間も止まってしまうの。だから、後はラムちゃん次第……」と言った。あたるは再び水晶玉に目をやると  (ラム!戻って来い!)と思った。  時の狭間ではラムが出口を探していたが、いっこうに見つかる気配は無かった。ラムが回りを注意深く見てみると、遠くに光を見つけた。ラムは、その光を目指して歩きだしたが体が思うように動かない。ラムは  「おかしいっちゃ、何だか体が重いっちゃ」と言いながらも光の方に向かって行った。そんな様子を水晶玉で見ていたあたるは  「ランちゃん!ラムの様子が!」と声を上げた。機械の調整をしていたランも、あたるの声を聞き、水晶玉を見ると  「まずいわ……早くここに辿り着かないと、ラムちゃんの時間が止まっちゃう……」と言った。あたるは、水晶玉を見つめると  (ラム!頑張ってくれ!)と思った。  ラムは、重い体で必死に光に向かって歩いていた。やがて光はだんだん近くなり、近づくにつれて、その光がとても暖かい光に感じた。その光を見てラムは  「あの光、間違いないっちゃ!あの光の向こうにダーリンが居る!」と言うと、力を振り絞って光に向かった。しかし、ラムの体は既に限界に近く一歩一歩足を出すだけでも心臓が張り裂けそうになる。それでもラムは、あたるに会いたい一心で歩き続けた。  光は、もうすぐそこまで迫っていた。ラムは命を削りながら、一歩また一歩と前に進み光まで後2メートル位の所まで来た時、ついに力尽きガックリと膝をついてしまった。その様子を水晶玉で見ていたあたるは思わず  「ラム!しっかりしろ!もうちょっとだ!」と声を上げた。いくら叫んでも、時の狭間に声が届く事は無いが、あたるは叫ばずには居られず、更に  「俺は……俺は、お前と一緒に居たいんだーーー!」と叫んだ。その時、ラムはあたるの声を聞いた気がした。そして顔を上げると  「今……ダーリンの声が……聞こえた……」そう言うと、最後の力を振り絞り立ち上がると  「……ダーリン…………」と今にも消えてしまいそうな声で呟き、一歩足を出した。そして、震える足をもう一歩出した所でついに力尽き、崩れる様に倒れた。それを見たあたるは  「ラム!!」と叫んだ。その時、ランが  「ダーリン!あれ!」と言った。すると機械で発生した球体から手袋をした腕が出ている。それは、最後にデートした時にラムがしていた指4本と親指とに分かれていて小さなボンボンの着いた手袋だった。あたるはすぐに球体の所に行くと、その腕を掴み力一杯引っ張った。しかし、全く引き出す事が出来ず  「ダ、ダメだ!全然動かない!」と言うと、ランが  「きっとラムちゃんの意識が無いからだわ!でも、早くしないと本当にラムちゃん死んじゃう!」と言った。それを聞いたあたるは  「くっそー!俺は絶対に諦めない!」と言うと、デートの最後にラムがあたるに聞いた言葉が頭をよぎった。  《ダーリンは、ウチと居て幸せだったっちゃ?》  そして、あたるは  (バカ野郎!お前との時間を過去形で考えられる訳無いだろう!だから、お前は俺が助け出す!)と思うと  「うぉぉぉぉぉぉ!ラムーーー!」と叫びながら、渾身の力で引っ張った。すると徐々にラムの腕が出てきて、やがてラムの顔が見えてきた。そのラムの顔は、血の気が引いてまるで死人の様だった。それを見たあたるは  「ラ、ラム!」と言うと、更に引っ張った。ラムは少しづつ姿を現し、やがて腰の辺りまで出ると一気に全身が抜け出した。あたるは勢い余って尻もちをつき、引き出されたラムは、あたるの上に覆い被さる様になった。  あたるは急いでラムを抱き起こすと  「おい!ラム!しっかりしろ!」と言うと、体を揺さぶった。しかしラムは全く反応をみせず、あたるがラムの心臓に耳を当てるとその瞬間、あたるの顔はみるみる青ざめ  「心臓が……止まってる……」と呟いた。それを聞いてランは  「え?…………嘘……ラムちゃん」と言うと、涙を浮かべた。しかしあたるは  「俺は、諦めない!」と言うと、人口呼吸を始めた。あたるは  「ラム!帰って来い!」と言うと、大きく息を吸いラムの口に息を吹きかける。一度、二度、三度、と続けた時  「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」と咳き込みながらラムが息を吹き返した。あたるはそんなラムを見て、思わず抱きしめ、すぐに両肩をポンポンと叩くと?  「良かった!良かったなぁ、ラム」と言った。ランは、そんなあたるとラムを見ていて涙を流していた。ラムは  「ダ、ダーリン……ここは」と言うと、回りを見渡して  「ランちゃんの宇宙船?……ウチ、戻って来れたっちゃ?」と言うと、ランが  「そうよ、ラムちゃん。帰って来れたのよ!」と言った。ラムはあたるの方を向き  「やっぱりダーリンが助けてくれたんだっちゃね!向こうでダーリンの声が聞こえた気がしたっちゃ」と言うと、再びあたるに抱きついた。あたるは、ラムを引き剥がすと  「や、やめんかい!人前で!」と言って後ろを向いた。それを見てランが笑いながら  「フフッ、ダーリンったら。ラムちゃん助けようと必死だったのよ。さっきだって、ラムちゃんに……」と、そこまで言った時に  「わぁぁぁぁぁ!ランちゃん!」と大声を出し、ランの言葉を遮った。するとランは、クスっと笑いラムは訳が分からずキョトンとしていた。  ランが時計を見ると、既に深夜1時を回っていた。それを見たランは  「あぁ!もうこんな時間!夜更かしは、お肌の大敵なのよ、今日は2人とも帰って」と言って、あたるとラムの背中を押してドアの所まで連れていった。あたるは振り返り、そんなランに  「ランちゃん、今日は本当にありがとう」と笑顔で言った。するとランは  「ランちゃん、お礼言われる様な事してないわよ。ぜ〜んぶ、ダーリンがしたの」と言って微笑んだ。  あたるとラムは、ランの宇宙船を出ると家に向かった。歩きながらラムが  「ねぇダーリン」と言った。するとあたるは  「なんだ?」と素っ気なく答えると、ラムはあたるの腕にしがみつき  「ウチ、ダーリンと一緒になって本当に良かったっちゃ」と言った。あたるはそんなラムを見て  (俺も、ラムが帰ってきて本当に良かったよ)と思ったが、心とは裏腹に  「今更何言ってんだ、寒いからさっさと帰ろうぜ」と言って、足を早めた。そんなあたるの態度が照れ隠しだと知ってるラムは、クスっと笑うと再びあたるにしがみついた。あたるは  「おい!そんなにしがみついたら歩きづらいだろが!」と言って腕を振り回した。  翌朝、学校にはあたるとラムの姿が有った。あたるは、ずっと思っていた疑問をラムにぶつけた。  「なぁラム、ところで何であそこに空間の歪みが出来たんだ?」あたるの質問にラムは  「う〜ん、それなんだけど……実はウチにも分からないっちゃ。普通は、歪みが出来てもすぐに閉じる物なんだけど」と言って首をかしげた。その時  ババババババ と、爆音と共にスクーターに股がったテンが教室に乱入してきた。そして、一直線にあたるの所に行くと  「おい、アホ!今日こそ覚悟せいや」と言った。するとあたるは  「なんだ?ジャリテン。またフライパンで叩かれたいのか?」と言ってニヤリと笑った。しかしテンは  「今日はワイが笑う番や」と言うと、何やら銃の様な物を取り出した。それを見たあたるは  「そんなオモチャの銃にビビるとでも思ってるのか?」と言ったが、テンは  「笑って居られるのも、今のうちや」と言うと銃をかまえた。それを見たラムは  (あ!あれは!)と思ったが時既に遅し、テンは既に引き金を引いていた。銃からは煙が噴射され、その煙はあたるを包み込んだ。それを見たラムは  「な、なんて事を……」と言った。やがて煙が晴れると、そこに居たのは……  ピンクのカバ それを見た皆は絶句して言葉も無かった。ピンクのカバは、勿論あたるである。あたるは、みんなが驚いてあたるを見ているので  「ん?どうした?」と言ったが、メガネがあたるの顔をいじくり回して  「本皮だ」と言うと、クラス全員が  「おぉぉ!」と言った。それを見ていたテンは  「ざまぁ見さらせ!お前は今日1日その姿で過ごすんや!ほな、さいなら」と言うと、スクーターで去って行った。  面堂は、去って行ったテンを見ながら  「あの銃は何なんですか?」とラムに聞くと、ラムは  「あれは、《みんなで変身、愉快な動物園銃》だっちゃ」と言い、更に  「動物に変身出来るオモチャの銃だっちゃ」と言った。それを聞いた面堂は  「あ、あれがオモチャの銃……」と言って、茫然とした。一方あたるに現状を説明しようとメガネはあたるに深呼吸をさせ  「いいかあたる。気をしっかり持つんだぞ」と言うと、あたるを鏡の前に連れていった。あたるは鏡に映ったピンクのカバが自分だと分かると  「カ、カ、カバやーーー!」と言って、青ざめて気絶した。それを見たメガネは  「ピンクが青ざめて、赤紫色。一応利にかなってる」と言った。  放課後、ランはレイに会う準備をしていた。出掛ける寸前に、何かを思い出し  「いけない、いけない、あれ忘れてた」と言うと何かの機械を手に取り  「これ忘れたら大変!前にうっかり忘れて、ピグモンの前の空間閉じ忘れた時は大変な事になっちゃったから。これは、絶対にラムちゃんに知られない様にしなくちゃ!」と言って、ルンルン気分で出掛けて行った。          ※          ※          ※          ※          ※      ※パラレルワールド※  あたるは一人、学校から自宅に向かって歩いていた。元の世界に戻ってもラムの事が頭から離れず、ラムがどうなってしまったのか気になって仕方なかった。あたるは  (ラムは、無事なんだろうか?)そう思っていると、後ろから  「あたるはん」と声が聞こえ振り向くと、そこには  赤のシルクハット  赤の燕尾服  黒い丸サングラス  赤の蝶ネクタイ  腹巻き と言った、異様な出で立ちの錯乱坊ほどの身長の男が居た。それを見たあたるは  「あんた誰?何で俺の名前知ってるの?」と言うと、その男は  「わての名は、夢邪鬼言うねん。名前知ってるとか細かい事は気にせんといてな」と言うと、軽く帽子を下げた。あたるは夢邪鬼と名乗る男に  「その夢邪鬼が俺に何の用だ?」と言うと、夢邪鬼は  「あんさん、会いたいお人おるんとちゃうか?」と言ってニヤリと笑った。                  fin