うる星やつら チェンジ・ザ・ライフ 第2章 疑念 ラムがあたるを追って行くと、あたるは体育館裏で立ち止まった。ラムは 「ダーリン!」と叫ぶと、あたるの所に飛んで行った。あたるは振り返ると 「ラム……」と一言つぶやいた。ラムは 「ダーリン、一体どうしたっちゃ?」と聞くと、あたるの顔を覗き込んだ。そんなラムを見てあたるは (あれは、ただの夢じゃない……そんな気がしてならない)と思った。明らかに様子が変なあたるを見てラムは 「何か悩みが有るっちゃ?それなら、うちに相談して欲しいっちゃ」と言った。しかしあたるは (変な夢見て気になって仕方ない何て言えるか!)と思い 「いや、何でもない。面堂達がうるさいから、ちょっと外の空気を吸いに来ただけだ」と言った。それを聞いたラムは (ダーリン、何か隠してるっちゃ……うちには言えない事?)そう思うと 「そう……じゃ、教室に戻るっちゃ」と言って、ニコリと笑った。ラムの笑顔を見たあたるは (……そうだ、夢は夢だ。いつまでも気にしてた所で、どうなるもんでもない!)そう思うと 「そうだな、教室に戻るか」と言って、教室に戻る事にした。 その日は何事もなく過ぎ、深夜あたるは眠りについた。 次にあたるが目を覚ますと、そこは見知らぬバス停だった。あたるが起き上がるとグレーの髪をした女性が心配そうにあたるを見ていた。そう、彼女はラムである。ラムは 「ダーリン大丈夫だっちゃ?いきなり寝ちゃうから心配したっちゃ」と 言った。そんなラムに、あたるは 「あぁ、夕べ寝てないせいか急に睡魔が襲ってきてな」と言うと苦笑いを浮かべた。そして更に 「それより、懐かしい夢を見たよ」と言うと、ラムは 「どんな夢だっちゃ?」と興味津々である。あたるはそんなラムに 「高校時代の夢を見たんだ。学校では面堂やメガネが居てな」と言い懐かしそうに微笑んだ。そして、思い出した様に 「そう言えば、ジャリテンも居たなぁ」と言って笑った。あたるの話を聞いたラムは 「そう、懐かしいっちゃねぇ」と言って微笑んだ。あたるは久しぶりに見たラムの笑顔に吸い込まれそうになり、たまらず 「し、しかしリアルな夢だったなぁ。とても夢とは思えなかった」と言った時、フッとラムの腕のブレスレットが目に入った。それを見たあたるは (そうだ!こんな夢の話なんかしている場合じゃなかった!なんとかしてこのブレスレットを外さねば)と思いラムの手をとった。するとラムは、あたるがブレスレットを外そうとしてる事を悟って思わず手を引っ込めた。しかしあたるは、再びラムの手を掴むと自分の方に引き寄せ 「ラム、俺を信じてくれ」と言った。ラムはあたるを見つめた。あたるは何故か自信に満ちた表情をしている、ラムはそんなあたるの顔を見てると不思議と安心でき、全てをあたるに任せる事にした。そしてラムは 「分かったっちゃ」と言うと、腕の力を抜いた。あたるはラムの腕のブレスレットをマジマジ見たが、繋ぎ目など無かった。強引に外そうとしたがどうにもならず 「ダ、ダメだ…力任せにやっても外せない」と言うと、ラムに 「なぁ、研究所の様な所で外すって言ってたよな?」と聞くと、ラムは 「うん、何かカードキーの様な物をブレスレットにかざすと外れるみたいだっちゃ」と言った。それを聞いたあたるは 「なるほどな、と言う事はそのカードが無ければ外れない訳か。カード無しで外すには何か道具を使って切断するしかないな」と言った。しかしラムは 「でも、このブレスレットは多分地球上に無い金属で出来ていると思うっちゃ。だから地球上の道具じゃ切断するのは無理だと思うっちゃ」と言った。それを聞いたあたるは 「でも、お前のUFOになら何か道具が有るんじゃないのか?」とったが、その直後ハッとして 「そうか、お前超能力が使えないからUFOを呼ぶ事が出来ないのか…」と言った。するとラムは 「ごめんっちゃ…」と言って、うつ向いてしまった。そんなラムにあたるは 「いや、お前が悪いわけじゃない。だが、何か方法を考えなければ」と言った。するとラムは、ハッと何かを閃いた様な顔をして 「ランちゃん!ランちゃんが居るっちゃ」と嬉しそうに言った。しかしあたるは首を振りながら 「ランちゃんなら、お前が居なくなって少しした頃、星に帰ったよ。お前が居なければ、地球に居ても意味ないって……」と言った。それを聞いたラムは、落胆の表情を見せ 「そうなんだっちゃ……」と言った。するとあたるは 「そんなに気を落とすな、きっと何か方法は有る!」と言った。ラムはそんな根拠の無いあたるの言葉を聞き (きっとダーリンなら、ダーリンなら何とかしてくれるっちゃ)と思い、そっとあたるに抱きついた。あたるもそんなラムをそっと抱きしめ……ずに、引き離した! あたるは (おいおい!やっぱりこれは夢だ!俺がこんなに簡単にラムを抱きしめる訳が無い!)と思った。一方突然引き離されたラムは訳が分からず呆然とあたるの顔を見つめ 「ダーリン、どうしたっちゃ?急に」と言った。するとあたるは 「アホ!こんな公衆の面前で抱き合える訳無かろう!恥ずかしい」と言うとプイッと顔を背けた。あたるの急変に戸惑うラムは 「ダーリン……まるで高校時代のダーリンみたいだっちゃ」と言った。それを聞いたあたるは (まぁ、高校生の俺の夢だからな)と思った。すると、また激しい睡魔が襲って来た。あたるは (またこの睡魔……だが、まだ眠る訳にはいかん!ここが何処だか分かるまでは)と思ったが睡魔はどんどん強くなって行く。あたるの様子が変な事に気付いたラムは 「ダーリン?どうしたっちゃ?」と言うとあたるの顔を覗き込んだ。あたるは睡魔と必死に戦いながら (何か、何か目印の様な物は無いのか?)と思いながら、周りを見渡した。しかし、目印らしき物と言えばバス停の横に有る大きな木ぐらいしか無く、駅名もこの位置からだと見えなかった。しかその時あたるは有る事に気付いた。自分が居るのはバス停なのだ、バス停ならバスの時刻表があるはずだ。あたるは朦朧とする意識の中で、時刻表を探した。すると、それらしき物を見つけた。そして、そこまで行こうとするが体が思う様に動かず、倒れてしまった。するとラムがあたるを抱え起こし 「ダーリン、大丈夫だっちゃ?」と言った。あたるがラムを見ると、今にも泣き出しそうな顔であたるを見ている。あたるはそんなラムの顔は見た事が無かった。まるで不安と恐怖を同時に感じている様な表情。あたるの知らないラムの顔。あたるは (ラムのあんな顔見た事無い…本当にこれは夢なのか?)と思いながらも力を振り絞り時刻表の方へラムに支えてもらいながら歩いて行った。ラムは、あたるの体を支えながら一緒に歩いて行く。あたるはやっと時刻表に辿り着くと、時刻表に記載されているこのバス停の名前を見た。そこには 【雀の宮】 と書かれていた。それを見たあたるは 「す、雀の宮……何処だ?」と言ったが、ついに我慢出来ずに 「ラ、ラム…悪い、少し寝る……」とラムに告げると深い眠りにに落ち、意識が遠くなった。ラムは、眠りに落ちたあたるをベンチに寝かせると 「ダーリン……一体どうしたっちゃ?」と小声で呟き心配そうに見つめた。 あたるが目を覚ますと、そこは……自分の部屋だった。何も変わらぬいつもの光景。壁に掛けられたカレンダー、使い込まれた勉強机、壁に貼られたポスター、どれも見覚えの有るものばかり。それを見たあたるは (夢か……また、あの夢…)そう思うと時計を見た。時刻は朝の6:30早い時間たが、もう一度寝るのには時間が無い。あたるは仕方なく、もう起きる事にした。布団を畳みながら先ほど見た夢のことを思い出すと、頭の中に最後に見たバス停の名前が浮かんだ 【雀の宮】 あたるは、机の上に置いてあったノートとペンを取ると、そこにバス停の名前を書き 「よし、これで忘れないな」と言った。やはり、あたるは先ほどの夢がただの夢じゃない気がしてならなかった。あたるはラムの寝ている押し入れを見ると (あの夢は、絶対に何かの暗示か何かだ。俺が何としても調べてやる!)と思った。その時、押し入れの襖がスーっと開き、眠そうな顔をしたラムが顔を出し 「あ、ダーリン、おはようだっちゃ。今日も早いっちゃね」と言うと、ニコリと笑った。あたるはラムの顔を見ると 「あぁ、おはよう」と素っ気ない態度をとったが、心の中では (昨日から、ラムがやたら俺の事を気にしているから気づかれん様にせんとな)と思った。一方ラムは (やっぱりダーリン昨日から、何か変だっちゃ)と思った。 バレバレである。 あたるの異変に気付いたのはラムだけではなかった。テンもまた、あたるの様子がおかしい事に気付いたのだ。いつもなら、朝食の時におかずの取り合いをするはずのあたるが、普通に朝食を食べていたのである。テンは、ラムの所へ行くと 〈なぁラムちゃん、あたるのやつ何かいつもと違うと思わへんか?〉と小声できいた。するとラムも 〈そうなんだっちゃ、昨日から様子が変なんだっちゃよね〉と小声で答えると首をかしげた。そして続けて独り言の様に 〈ダーリン、まさか病気とかじゃないっちゃよね?〉と呟いた。それを聞いたテンは (なんやて!アホのあたるが病気やて?えらい事聞いてしもうた)と思い、朝食もそこそこに慌てて出て行った。 朝食を済ませたあたるとラムが、いつも通りに学校へ行くと何やら物々しい雰囲気に包まれていた。あたるは気づいていない様子だが、ラムはすぐに生徒達のあたるに向けられる異様な視線に気づき、すかさずあたるに 〈ダーリン、何だか様子がおかしいっちゃ〉と耳打ちをしち。しかしあたるは 「は?お前何言ってんだ?」と言って、まるで聞く気がない。ラムは、そんなあたるから離れない様に着いていき、やがて2年4組に到着した。あたるは教室に入ると 「おはよー!」と元気良く挨拶をした。すると、メガネ達4人が慌てて飛んで来ると、あたるを取り囲んだ。そしてメガネがあたるの肩をつかみ 「おい!あたる!!水くさいぞ、何で俺達に一言言ってくれなかったんだ」と言い寄ったがあたるは、訳が分からず 「な、何言ってんだ?一体何の事だよ!」と言った。そこへしのぶもやって来て 「あたる君!何で言ってくれなかったの?知ってたらもう少し優しくしてあげたのに」と言うと、涙ぐんだ。あたるは益々混乱して 「だから、一体何だと言うのだ!」と言ったが、そこに面堂が来て 「諸星、後の事は全て僕が引き受けるから、心配するな」と言って、あたるの肩を叩いた。するとすかさずメガネが 「おい!面堂ふざけるな!」と言い、パーマ、カクガリ、チビも面堂に詰め寄った。そして、クラスの男子全員があたるに 「俺に任せろ!」 「いや、俺だ!」 と言って押し寄せた。あたるは圧倒されながらも怯まず 「だから!何の話なんだ!!」と声を張り上げた。するとパーマが 「いや、お前がもう長くないって聞いたんだよ。それで悩んでたんだろ?」と言った。それを聞いたあたるは 「は?長くないって何が?」と聞くと、メガネが 「そりゃぁ、命に決まってるだろう」と言った。するとそれを聞いたラムは 「え?ダーリン…本当だっちゃ?」と言うと、ポロポロと涙を流しながら 「それで悩んでたんだっちゃね…何でうちに言ってくれなかったっちゃ」と言った。そんなラムに面堂が 「ラムさん、諸星が言わなかったのは諸星なりにラムさんに気を使ったからだと」と言った。すると突然あたるが 「ふざけるな!何で俺が死ななきゃならんのだ!」と怒鳴った。それを聞いたパーマが 「学校中その噂で持ちきりだぞ」と言うと、あたるは 「誰だ!そんなデマを流したヤツは!」と言ってパーマの胸ぐらをを掴んだ。あたるに言い寄られたパーマは、あたるの後ろを指差した。その指の先ではテンが廊下の女子に 〈なぁ、なぁ、これ内緒の話なんやけど、実はな、あたるがな、病気で死んでまう…〉と耳打ちしていた。あたるは堪らずコケたが何とか立ち上がると、パーマが 「あれが発信源だ」と言った。あたるは猛スピードでテンの所へ行くと、後ろから思いきりゲンコツを喰らわせた。テンはあたるのゲンコツで床に叩きつけられたが、振り返りざまに 「なにすんねん」と言った。するとあたるはテンを掴み上げ 「誰がもうすぐ死ぬんじゃ!いい加減な噂流しおって!」と言うとテンは 「ラムちゃんが、お前が病気言うてたからや!」と言った。それを聞いたあたるは 「誰が病気じゃ!ピンピンしとるわ!」と言うと、ラムの方を向き 「ラム!お前…」とラムに文句を言おうとしたが、ラムはあたるに飛びついて 「良かったっちゃ!本当に良かったっちゃ。ダーリンが死んじゃったらどうしようって思ったっちゃ!」と言って抱きついたまま安堵の涙を流していた。あたるは文句を言うタイミングを失い (まぁいいか)と思った時、何やら殺気を感じた。そして回りを見てみると、クラスの男子が今にも襲って来そうな気配だったので、ラムを無理やり引き離すと 「いい加減離れんか!恥ずかしい」と言った。そんなあたるにメガネが 「やはりデマだったか。お前が死ぬなんておかしいと思ったのだ。お前のゴキブリ並の生命力ならどんなウイルスも寄せ付けんだろうしな」と言うと、あたるは 「俺の事を何だと思ってるんた!」と言ったが、メガネはあたるの言葉は無視して 「じゃあ、一体何を悩んでいたんだ?」と言った。するとあたるは 「はぁー」と1つため息をつき 「別に悩んでいた訳ではないのだが…」と言った。そんなあたるにパーマが 「あきらかに悩んでたろう」と言うと、あたるは 「いや、実は…」と、夢で見た事を話しそれが予知夢ではないかと言った。するとみんなが一斉に 「予知夢??」と声を上げた。そんな中メガネがあたるの肩に手を回して 「いいかあたる、予知夢なんてものは存在せん!仮に有ったとしても今の俺達にどうこう出来る問題じゃなかろう。まして、未知の感染症なんて尚更だ!そもそも、ラムさをんがそんな訳の分からない感染症なんかに感染する訳がない!」と言って鼻息を荒くした。しかしあたるは 「いや、しかし本当に夢とは思えん物だったんだ」と言った。しかし面堂は 「諸星、悪いが貴様の夢について語り合うほど僕も暇じゃないんでな」と言ってその場を去ろうとした。そんなあたる達のやり取りを聞いていたラムは (ダーリンは夢とは言え、うちの事で悩んでくれていたんだっちゃ)と思い、急に嬉しくなって再びあたるに抱き 「うちはダーリンの事信じるっちゃよ」と言うとニコリと笑った。そのラムの笑顔を見た面堂は、あたるに嫉妬の炎を燃やしながらも、冷静を装い 「よし、諸星。貴様がそこまで言うからには、何か根拠が有るのだろうなぁ」と言うと再び戻って来て、近くの机の上に座り、足を組んだ。あたるは、そんな面堂のふてぶてしい態度を気にもしないで 「夢の中の町は、俺が全く知らない所だった」と言った。するとメガネが 「それのどこが根拠なんだ?」と言ったが、あたるは 「まぁ、最後まで聞けよ」と言うと話を続けた。あたるは 「その町に見覚えは無かったが、その町の駅の所のバス停の名前を見た」と言って、朝メモした紙を出しみんなに見せた。するとメガネがそのメモをあたるの手から取ると 「雀の宮?」と言い、更に 「これって一体どこだ?」と言った。それを聞いた面堂は 「よし、僕が調べてあげよう。我が面堂家の情報網を使えば容易い事だ。だがこれは諸星、お前の為ではない。ラムさんの為だ。それを忘れるな」と言った。あたるは 「あぁ、分かった」と言った。 放課後、あたる達は揃って面堂の所へ行き、あたるの言った 【雀の宮】 と言う町、或いは駅がどこに有るのかを調べる事にした。面堂は、あたる達をまるでNASAの管制室の様な所に連れて行くと、そこで働いている黒服達に 「いいかお前ら!今すぐ【雀の宮】と言う町、或いは駅を探せ!」と言った。すると黒服達は一斉に調べ始めた。そして間もなく、1人の黒服が 「若!見つかりました!」と言った。それを聞いた面堂は 「良くやった!それで、場所はどこだ」と言うと黒服は 「今、モニターに出します」と言うと何かを操作し、モニターにどこかの駅を上空から写した様な映像が流れた。そして黒服は 「ここは、栃木県宇都宮市雀の宮と言う場所で、この駅が雀の宮駅です」と言った。それを見た面堂は 「どうだ?諸星、この駅か?」と聞いたが、あたるは 「うーん、上から見た映像では何とも言えんなぁ」と言った。すると面堂は 「えーい!ならば行ってみれば良かろう!」と言い、黒服に 「おい!ここまでヘリでどのくらいかかる」と聞くと、黒服は 「だいたい40分位かと」と答えた。面堂は 「よし!すぐに準備しろ!」と言うと、あたる達をヘリポートに連れて行った。 第3章 確信に続く