うる星やつら チェンジ・ザ・ライフ 第3章 確信 面堂、あたる、ラム、しのぶ、メガネ、パーマ、カクガリ、チビの8人を乗せたヘリは 「では、行ってくれ!」と言う面堂の号令と共に栃木県宇都宮市雀の宮に飛び立った。 約40分後、ヘリは宇都宮市雀の宮の近郊に近付いたが、おもむろにヘリを操縦士している黒服が 「若、この辺に着陸出来る場所が有りません」と言った。すると面堂は 「近くに学校か何か有るだろう!」と言うと黒服は 「学校の校庭に着陸するには許可を取らないと…」と言い、それを聞いた面堂は 「だったら許可を取れば良いではないか!」と言葉を荒らげた。面堂の言葉に黒服は慌てて 「は!ではすぐに許可を取る様指示を出します!」と言うと、無線でその旨を話し出した。するとすぐに無線が入り、それを聞いた黒服が 「駅の周辺に中学校が有るみたいなので、そこに着陸します」と言い、中学校に向けてヘリを飛ばした。ヘリは、すぐに中学校上空に着き着陸体制に入る。校庭では生徒が部活をしていたが、降りてくるヘリを見ると慌てて避難を始めた。それをヘリの中から見ていたメガネは 「おい、おい、おい、まだ生徒が居るぞ!無茶苦茶だなぁ」と言ったが、 面堂は 「ふん、僕はお前らの様に暇じゃないんでな。のんびり人が居なくなるのを待ってなど居れん」と言って、着陸したヘリからさっさと降りた。それを見たパーマは 「メガネよぅ、金持ちに俺達みたいな庶民の常識は通用しないらしいな」と言って、面堂に続いてヘリを降りた。そして、全員がヘリから降りると校庭の中に土煙を上げながら車が侵入して来た。もちろん面堂家の車である。それを見てあたるは 「面堂、お前の所の黒服はどこにでも居るな」と嫌みを言ったつもりだったが、面堂は 「我が面堂財閥は、世界中どこであろうと、いかなる事態にも対処出来る体制が整っているからな」と、自慢で返され、あたるは相手をするのがアホらしくなって話を終わらせた。 やって来た車は10人乗りのワンボックスカーで、全員乗り込むと早速駅に向かった。 間もなく駅に着くと、車はロータリーの一角に停車し、全員車から降りた。そして回りを見回しているあたるを見て面堂が 「どうだ?夢の中で見た景色と同じか?」と聞いた。するとあたるはバス停の方へ歩いて行き、バス停の横に有る大きな木の前で止まった。あたるはその木を見ながら 「この木…夢の中で見た…」と言った。するとメガネが 「何?すると、あたるが見た夢ってのは本当に予知夢だったと言うのか?」と言った。しかし面堂は 「ふん、どうだかな」と言って鼻で笑った。それを見たあたるは 「なに?」と言ったが、面堂は 「いいか諸星、人の記憶なんて物はとかく曖昧だ。まして、それが夢の中の記憶となると尚更だ。今お前が見ているその木にしても、夢で見た木にどこか似ていれば同じものだと錯覚してしまう。つまり、その木が夢の中で見た木だと言う事にはならないと言う事だ」と言った。しかしあたるは 「いや!俺が見た木は、これで間違いない!」と言った。すると面堂は 「だったら、駅や周辺の建物はどうだ?夢と同じか?」とあたるに問いかけたが、あたるは 「い、いや…その辺は記憶が曖昧で…」と言った。それを聞いた面堂は 「ふん、話にならんな」と言って、首を振った 。その時、二人の会話を聞いていたパーマが 「でもよぅ、あたるが言った【雀の宮】って駅も実在した訳だし、全部夢で片付けるのもどうかなぁ」と言った。するとあたるはナイフを取りだし木に何かを彫り始めた。そんなあたるにメガが 「おいあたる、何やってるんだ?」と言いながらあたるの所へ行き、あたるが何を木に彫っているのか確かめると、吹き出しそうになるのを必死にこらえ た。そんなメガネに続きあたるの落書きを見たパーマ、カクガリ、チビも、メガネ同様に吹き出しそうになるのを必死にこらえていた。そんな四人組の挙動を怪しんだ面堂も諸星の落書きを見ようと木に近付いたが、メガネが慌てて面堂の前に立ち塞がると 「なぁ面堂、そろそろ日も暮れそうだし、帰らんか?」と言ったが面堂は 「貴様ら!何を隠している!」と言って無理矢理にメガネとパーマを押し退けて木の所に行った。そして、あたるが彫った落書きを見るなりわなわなと肩を震わせて 「ふふふふ…諸星、貴様…」と言いながら振り返り、何処からともなく取り出した日本刀を抜き 「よほど僕に斬られたい様だな!!」と叫ぶと鞘を放り投げあたるに斬りかかった。しかしあたるは、ヒョイっと面堂の一太刀をかわすと 「危ないじゃないか、面堂!」と言った。すると面堂は 「あんな落書きを彫った以上、僕に斬られる覚悟があるのだろう。貴様の望み通り、たたっ斬ってやる!」と言い、再びあたるに斬りかかった。あたるは更にかわしながら逃げ回り、面堂はそれ を追い回した。そんな二人を見たラムは 「ダーリンどんな落書き彫ったっちゃ?」と言って木の落書きを見ると、そこには ヒョットコの泣き顔に【うわーん、暗いよ狭いよ】 とセリフ付きで落書きが彫られていた。それを見たラムも 「もう、ダーリンったら」と言って笑った。そんなラムが、あたるを追い回す面堂の視界に入り面堂は 「ラ、ラムさん……」と呟くと、更に逆上し 「諸星!貴様には地獄すらなまぬるい!」と、どこかて聞いた様なセリフを言うと、あたるに全身全霊の一振りを入れた。しかしあたるは、間一髪の所で面堂の一太刀を真剣白羽取りで受け止め 「お、落ち着け面堂!」と言った。しかし面堂は 「これが落ち着いてなど居られるか!」と言い、刀を握る手に力を込めた。あたるは、必死にこらえながら 「あの落書きには意味が有るのだ!」と言った。すると面堂は 「意味だと?一体どんな意味が有ると言うのだ」と問いかけたが、刀を握る手の力は緩めない。あたるも真剣白羽取りの状態のまま 「いいか、俺が夢で見た木は間違いなくあの木だ!だから俺の見た夢が予知夢なら、次にあの夢を見た時に夢の中の木に、俺の落書きが有るはずだ!」と言った。あたるの話を聞いた面堂は 「なるほど、だが仮にそうだったとして、なぜあの落書きなのだ?」とあたるに問うと、あたるは 「あぁ、別に深い意味はないんだが…ついな」と言い笑った。その言葉に面堂は更に怒りの炎を燃え上がらせ 「貴様に今日を生きる資格は無い!」と、またまたどこかで聞いた様なセリフを吐き、刀を握る手に更に力を入れた。 そうこうしてる間に日は暮れた。いつまでも終わらない二人の追いけっこに痺れを切らしたラムが 「もう!二人とも、いい加減にするっちゃー!」と言って電撃を放った。 バリバリバリバリバリー 二人は電撃をもろに喰らい 「うぎゃゃゃゃゃー!!」 と断末魔の叫びを上げると気絶した。そんな二人を黒服達は、そそくさと車に押し込みヘリの所まで運び、ヘリに放り込んだ。 実に見事な連携である。きっと面堂家の黒服達は常にこの様な事態に対処できる様、訓練を怠らないのだろう。その鮮やかな手際に感心しながら他のメンバーもヘリに乗り込んだ。 やがてヘリは面堂家の敷地内に有るヘリポートに着陸したが、未だに面堂とあたるは気絶したままで、目を覚ます気配はまったく無かった。それを見た黒服は 「若、到着しましたよ」と声をかけると同時にどこからか取り出した木槌で立て続けに、面堂とあたるを殴った。その衝撃で二人は目を覚まし、面堂は自分が木槌で叩かれた事を悟ると、黒服に 「貴様!主を木槌で殴るとは何事だ!」と怒鳴ると黒服は 「でも、目が覚めたでしょ?」と言った。しかし面堂は 「アホか!もっと他に起こし方が有るだろうが!」と言った。そんな黒服達を見たメガネは (こいつら手際がいいんじゃなくて、普段面堂にこき使われてる鬱憤を晴らしてるだけだな)と思った。 みんなヘリから降りると、それぞれの家に帰る事にした。帰りは黒服がそれぞれの家に車で送ってくれるらしいので、みんな車に乗り込んだ。 帰りの道中にしのぶが 「私、一緒に行って意味あったのかしら?」と呟いた。それを聞いたパーマは 「意味?そんな物有る訳ないだろう。俺達は、いつだってあたると面堂に振り回されているのさ」と言って笑った。それを見たしのぶは 「はぁ、虚しいわぁ」と言うと、大きなため息をついた。 みんな家に送り届けられ、最後にあたるとラムも家の前で降ろされた。時刻は夜7時を回っていた。 その夜、あたるが寝ようとして布団に潜り込んだ時、押し入れの中からラムが顔を出し 「ダーリン…大丈夫だっちゃ?」と言った。するとあたるは 「あぁ、所詮は夢だからな。それに、同じ夢を見るとも限らん」と言って布団を被った。それを見てラムは 「…ダーリンの落書きが有ったら、予知夢だっちゃね…」と言った。あたるはラムに背を向け 「いいから、もう寝ろ」と言うと目を閉じた。ラムは、そんなあたるを見て 「おやすみ…ダーリン」と言って、押し入れの襖を閉めた。そしてあたるは深い眠りに落ちて行った。 あたるが目を覚ますと、グレーの髪のラムが心配そうにあたるの顔を覗き込み 「あ、ダーリン!大丈夫だっちゃ?」と言った。あたるはゆっくり体を起こすと何やら呆然とした様子で 「ラム…俺は、どのくらい寝てた?」とラムに聞いた。するとラムは 「う〜ん、だいたい30分くらいだっちゃ」と言った。それを聞いたあたるは、勢いよく振り返り 「さ、30分?夢の中では約丸一日経ってたぞ」と驚きを隠せずに居るとラムが 「夢?本当にどうしたっちゃ?ダーリン」とあたるに問いかけた。するとあたるは 「…また高校時代の夢を見たんだが、どうもその夢が気になってな」と言った。それを聞いたラムが 「高校時代の夢?どんな夢だっちゃ?」と聞くと、あたるは 「何だか良く分からん夢なのだが、その夢の中の俺…つまり高校生の俺は、今の俺達の状況を夢で見たと言っていてな」と言った。それを聞いたラムは 「う〜ん、良く分からないっちゃ。どう言う事だっちゃ?」と再びあたるに説明を求めた。するとあたるは 「う〜ん、つまりだな、夢の中の高校生の俺が夢で、今の俺とラムの事を見たと言っててな、それが予知夢じゃないかと言ってるんだ」と言った。それを聞いたラムは 「つまり、ダーリンが夢で見た高校生のダーリンは、過去のダーリンで過去のダーリンが今のうち達の夢を見たって事だっちゃ?」と言った。するとあたるは 「あぁ、そうだ。それで、過去の俺は面堂達とこの駅を見つけ出し、このバス停の横の木」と言うとバス停横の木の方を向き、その木を指差して 「つまり、この木に落書きを彫った」と言った。それを聞いたラムは 「木に落書きを彫った?」と戸惑いを隠せずにいると、あたるは 「あぁ、多分この木が未来の俺達の世界にも有る事を覚えていて、自分が見た夢が本当に未来の事なのか確かめようとしたんだろう」と言い、バス停横の木の方に歩きだした。ラムもあたるの後を追って木の所に行くと、あたるは木の前で呆然と立ち尽くしていた。ラムは、あたるの背中越しにあたるの視線の先をみると、そこにはヒョットコの泣き顔に【うわ〜ん、暗いよ狭いよ】と彫られた落書きが有った。それを見てラムは 「ダーリンの夢の中のダーリンが彫った落書きって、これだっちゃ?」と言った。するとあたるは 「あぁ、確かにこの落書きだ…でも、俺は高校時代にここに来てこの落書きを彫った記憶は無い…」と言うと、ラムの方に振り返り 「お前はどうだ?」とラムに聞いた。しかしラムも 「うちもダーリンがこの落書きを彫った記憶は無いっちゃ」と言った。それを聞いたあたるは 「一体どう言う事だ?」とラムに問いかけるとラムは 「多分、ダーリンが夢で見た昔のダーリンの居る世界と、今うち達が居る世界は元々別の時空系列に存在していたっちゃ。でも、何かがきっかけで決して交わる事の無い2つの世界がどこかで交差したっちゃね…今は、2つの世界がお互いに干渉しあってるから昔のダーリンの行動が今のうち達の世界に影響をもたらしてるっちゃ」と言った。それを聞いたあたるは 「すると、過去の俺がとった行動でこの世界が変わって来るって事か?」と言うとラムは 「うん、でもこの落書きみたいな小さな事なら変化するけど、世界を大きく変えてしまう様な事は時空に歪みを生じてしまうから多分変化せずに強制的に修正されてしまうっちゃ」と言った。するとあたるは 「なるほど、良く分からんがとにかく過去の俺が何か行動がを起こせば、何かを変えられるかも知れないって事だな」と言ったが、ラムは 「そんな簡単な事じゃないとおもうっちゃよ」と言った。しかしあたるは、ラムの言葉など聞いて居ないかの様に 「とりあえず今は過去の事より、お前のブレスレットを外す事を考えねばな」と言った。そしてラムに 「その研究所みたいな所って、何処に有るんだ?」と聞くと、ラムは 「それが、良く分からないっちゃ」と言った。それを聞いたあたるは 「なに?良く分からないって、毎日行っとるんだろ?」と呆れた様に言うとラムは 「そこは亜空間に有るんだっちゃよ。それも、毎回場所が変わるんだっちゃ」と言いった。するとあたるは 「なんだと!じゃあ、毎日どうやって行っとるんだ?」とラムに聞き、あたるの質問に対してラムは 「場所は、このブレスレットが案内してくれるっちゃ」と言ってブレスレットを見た。あたるも、ブレスレットをまじまじと見ると 「なるほどな、じゃあそのブレスレットが無ければ研究所に行けない訳だ」と言った。そしてラムは更に 「行けないだけじゃなくて、帰っても来れないっちゃ。帰り道も、このブレスレットが頼りだっちゃ」と言った。するとあたるは考えながら 「とりあえず今は、ブレスレットを外す事が先決だな」と言った。それを聞いてラムが 「でも、どうやって外すっちゃ?道具もないのに」と言うと、あたるは 「簡単な事だ、お前が毎日行ってる研究所みたいな所では外すんだろ?」と言った。ラムもあたるが言おうとしている事を悟って 「あ、あそこで外した後にダーリンが…」と言ったが、残念そうに 「でもブレスレットを外す時は、うち眠らされてしまうっちゃ」と言った。しかしあたるは 「バカだなぁ、誰がブレスレットを外したお前を助け出すと言った」と言い、それを聞いたラムは 「どう言う事だっちゃ?」とあたるに聞問いかけた。あたるは 「カードキーが無ければ外せないなら、カードキーで外せばいい」と言ってニヤリと笑った。そして更に 「ラム、お前はいつも通りにブレスレットを外してもらえ。俺は、その隙にカードキーを盗み出す」と言った。それを聞いたラムは 「あ、なるほど!ダーリン凄いっちゃ!!」と目を輝かせてあたるを見つめた。そんなラムの目を見たあたるは、気分が良くなり 「よし!今すぐ行こう!」とラムの手を掴んだ。 ラムはブレスレットを見ながら、街の路地や人の家の庭などを通り進む。あたるもそれに続くが、あまりにも変な場所ばかり通るものだから 「おい、本当に道はあってるのか?」とラムに聞いたが、ラムは 「うん、大丈夫だっちゃ。うちに任せるっちゃ」と言うと振り返りニコリと笑った。あたるはその屈託の無い純粋な笑みに弱かった。思わず目を逸らすと 「ほんまかいな」と減らず口を叩きながらもラムの後に続いた。 やがてラムは立ち止まると 「ここだっちゃ」と言った。立ち止まったラムの目の前には古びた神社の鳥居が有った。ラムは 「ここをくぐれば亜空間だっちゃよ」と言うと、何の迷いも無く鳥居をくぐった。すると鳥居をくぐった途端にラムの姿は溶ける様に消えた。それを見たあたるは驚きながらも (まずい、俺も早く行かなくちゃ)と思うと、覚悟を決めて鳥居をくぐった。すると鳥居の先に有ったはずの神社の社は無く、そこには研究所らしき建物が有った。ラムは、あたるが来たのを見て 「ダーリン!良かったっちゃ。遅いから心配事したっちゃよ」と言った。しかしあたるはラムの後にすぐに鳥居をくぐったはずだから、さほど時間は経って無いはずだと思い 「何言ってんだ、遅いってたかが2〜3分だろ?」と言った。しかしラムは 「え?うち、30分は待ったっちゃよ?」と言った。それを聞いたあたるは 「何?俺は、お前の後にすぐに鳥居をくぐったぞ!30分も経ってるはずがない!」と言った。するとラムは 「本当に?だったら、この空間は時間の流れが外の世界とは違うっちゃね」と言った。そして 「ところでダーリン、どうやって中に入るっちゃ?」とあたるに聞くと、あたるは 「お前はどうやって入ってるんだ?」と逆にラムに聞いた。するとラムは 「うちは、入る時にこのブレスレットで認証を通過してるっちゃ」と言い、それを聞いたあたるは 「なるほどな、つまりそのブレスレットが無ければ中には入れないって事か」と言うと考え込んだ。そしておもむろに 「ところで、ゲートの所に人は居るのか?」とラムに聞くと、ラムは 「そう言えば居ないっちゃね、考えてみればこの施設ほとんど人を見かけないっちゃ」と言った。それを聞いたあたるは 「だったら何とかなるかもしれんな」と言うと不適な笑みを浮かべた。 第4章 真実に続く