うる星やつら チェンジ・ザ・ライフ 第5章 逆襲 あたるがしのぶより転校生を気にしている事に気づいたラムは、あたるの横に行き 「どうしたっちゃ?ダーリン」と声をかけるとあたるは 「あの転校生…俺の夢の中に居たヤツにそっくりなんだ。まぁ、若干若いけど」と言った。それを聞いてラムは 「え?それってどう言う事だっちゃ?」とあたるに聞くが、あたるは 「そんな事、俺が知る訳なかろう!後で詳しく話すが、アイツには絶対に気を許すな」と言って自分の席にカバンを置いた。そして、面堂達の所へ行き 「例の夢について話が有るから、後で体育館裏に来てくれ」と言うと、面堂が 「ふん、今はお前の夢の事に関わってる暇は無い!クラス中の女子の関心があの転校生に向いてしまっている以上、僕も黙ってる訳にはいかないからな」と言った。それを聞いたメガネが 「まぁ、顔しか取り柄の無いお前にとっちゃぁ深刻な事態だわな」と言うと面堂は 「貴様!さっきも言った通り、僕は顔だけの男では無い!ルックス良し!成績優秀!女子には優しい!おまけに金も有る!どこを取ってもいい所だらけではないか!」と言った。しかし、パーマが 「でも、中身はあたると一緒だよなぁ」と言ってあたるを見た。その瞬間、あたると面堂は同時に 「こんなヤツと一緒にするな!」と叫んび、お互いに睨み合った。するとラムが二人の間に入り 「まぁまぁまぁ、二人とも」と笑顔で言うと、面堂は 「すみませんラムさん。僕とした事がつい感情的になってしまって」と言って頭を下げた。一方あたるは 「なぁにがつい感情的にだ、いつも日本刀振り回して怒ってるではないか」と言うと、それを聞いた面堂は 「貴様!人が大人しくしていればいい気になりおって!」と言い、まるで手品の如く日本刀を取りだした。埒があかない二人にラムも、堪忍袋の緒が切れ 「いい加減に、するっちゃゃゃーーーー!!」と言って、電撃を浴びせた。 バリバリバリバリバリー! 二人は、ラムの電撃を喰らい立ったままプスプスと煙をあげている。そんなあたる達を見つめる目が有った。そう、例の転校生である。転校生は立ち上がると、あたる達の所へ行こうとしたが女子に囲まれていて思う様に動けない様子だった。その時、教室のドアが ガラガラガラ と開くと 「お前ら、席に着けー!」と言う声と共に温泉マークが教室に入って来た。しかし、教室の中は温泉マークの声など聞こえないとばかりに、誰も席に着く者は居なかった。それを見た温泉マークは、怒りに任せ大声で 「お前らーーー!!席に着けと言っとるのが聞こえんのかぁーーー!!!」と叫んだ。この声には流石の2年4組の生徒も、渋々席に戻った。そしてみんな席に着くと、温泉マークが転校生の方を見て手招きをした。すると転校生は席を立ち、ゆっくりと教壇に向かった。そして温泉マークの横に立つと温泉マークが小声で 〈職員室にも寄らずに勝手に教室来られたら困るだろう〉と言った。転校生はそれを聞いて 〈すみません。つい早く親睦を深めたくて〉と小声で答えた。温泉マークは 〈まぁいい、以後気を付ける様に〉と言ってチョークを持つと黒板に 【泉 建太】 と書き 「今日から転校してきた」と言うと転校生の方を向いた。すると転校生は 「【いずみ けんた】と言います。よろしくお願いします」と言って頭を下げた。その瞬間クラスの女子は キャーー と黄色い声を上げ、一方男子は ブーブーブー とブーイングの嵐になった。そこでまたしても温泉マークが 「貴様ら!静かにしろ!」と怒鳴り、健太は自分の席に戻った。 そして昼休み、あたるはラム、面堂、メガネ、パーマ、カクガリ、チビ、しのぶを連れて体育館裏に行った。そして体育館裏に着くと、面堂が 「それで、夢はどうだったんだ?わざわざ僕達をこんな所へ呼び出したんだ、それなりの情報なんだろうな?」と言うと、あたるは 「まぁ聞けよ」と言うと、落書きの事、研究所の事、カードキーの事など、詳しく話した。そしてあたるは最後に 「そして俺も驚いたんだが、転校してきた【泉 健太】が、俺が研究所でカードキーを奪った男だ…」と言った。それを聞いた瞬間、誰もが言葉を失った。最初に口を開いたのはメガネで、メガネは 「間違い無いのか?」とあたるに聞くと、あたるは 「あぁ、間違い無い。少し若いが、それはあの夢が未来だからだろう」と言った。そして更に面堂が 「泉の事はさておき、お前の話だとお前の見ている夢は今の僕達の未来とは別の未来と言う事か?」と言った。そしてラムも 「ダーリンの話だと、ダーリンが見てる夢の中の未来と、今うち達が居る未来がどこかでリンクしてるって事だっちゃよね?」と言った。するとあたるは 「うん、未来のラムがそんな事言ってたなぁ」と言い、それを聞いたラムは 「そうすると、今のうち達の未来がそうなる可能性も有るって事だっちゃね」と言った。そこにしのぶが口を挟み 「ちょっと待ってよ!そうすると何?泉くんはラムの超能力を奪う準備で下見にでも来たって言うの?」と言った。それを聞いたメガネは 「まぁ、そう言う事だろうなぁ」と言って、パーマを見た。するとパーマも 「あたるの言う事が本当なら、それ以外に考えられんな」と言った。しのぶは、ショックを受けて居る様だ。その時チビが 「で、でもよう、未来のラムちゃんのブレスレット外す手段無いんだろう?どうすんだよ〜」と言い、あたるも 「そこなんだ…カードキーも使えない、ブレスレットを切断する道具も無い…」と言って頭をかかえた。するとメガネが 「ラムさんのUFOなら、ブレスレットを切断できる道具は有るんですか?」とラムに聞き、ラムは 「う〜ん、うちもそのブレスレットを見た訳じゃないから何ともいえないけど」と言い、あたるの方を向き 「ダーリンの話だと未来のうちはUFOを呼べないから道具が無いって言ってたんだっちゃよね?」と聞くと、あたるは 「あぁ、確かそう言ってたと思うぞ」と言った。それを聞いたラムは 「だったら、だいたい見当はつくっちゃ」と言った。するとメガネは 「だったら、その道具でブレスレットを切断すればいいんじゃないか?」と言った。それを聞いてあたるは呆れた様に 「だ・か・ら、UFOを呼べないから悩んでるんだろ?」と言ったがメガネは 「あたる〜、いくら脳ミソにシワが無いと言っても、もう少し考えたらどうだ?今のラムさんならUFOに行けるじゃないか。向こうに道具が無ければ送り届ければいいだけの事だ。おまえの彫ったあの素晴らしい落書き…」と言った瞬間に面堂が日本刀を抜こうとしたが、パーマ、カクガリ、チビに袋叩きにされた。そしてメガネは更に 「落書きは未来に届いた訳だ。つまり、今の時代にあの木の辺りに道具を隠しておけば、未来に届くんじゃないか?」と言った。それを聞いたラムは 「メガネさん、凄いっちゃ!」と言い、メガネは 「いや、この不肖メガネ!ラムさんが苦しむ所なんて見たく有りませんからね」と言ってメガネを直した。そんなメガネにパーマが 「しかしよう、隠すったってあんな場所のどこに隠すんだ?」と言うと、ラムが 「それなら心配いらないっちゃ。こんな時に便利な道具が有るっちゃよ」と言い、あたるに 「ところでいつ行くっちゃ?放課後?」と聞くと、あたるは 「今から行こう。少しでも早い方がいいだろう。道具を未来に送って奴等に逆襲しちゃる!」と言った。するとカクガリが 「午後の授業どうすんだよ」と言い、更に面堂も 「授業をサボるなんて不良の様な真似が僕に出来ると思ってるのか!」と言った。それに加えしのぶも 「わたしも行ったところで、する事無いし」と行かない気満々だったが、そんな連中にメガネが 「お前らそれでも友達か!あたるとラムさんが苦しんでるのに平気なのか!いつも俺たちは共に戦って来た!」と言った所でパーマが 「また始まっちまった」とボソッと呟くと、すかさずメガネは 「おだまり!!」と叫び、続けて 「こんな時こそみんなで力を合わせるべきじゃないのか?俺達の友情はそんなものだったのか?」と言った。しかし、そんなメガネにパーマが 「確か、午後に所持品検査が有ったよな?メガネぇ、お前マズイ物でも持って来ていて所持品検査逃れようとしてるだけじゃないのか?」と言うとメガネは明らかに動揺して 「な、何を言ってる!俺は純粋に友達としてだなぁ…」と言ったが、それを見たあたるは 「明らかに動揺しとる。あいつ、何か持ってきたな」と言いニヤニヤと笑った。 結局、雀の宮にはラムとあたるの二人で行く事になった。結局メガネは 「やめろー、俺は一緒に行くんだ!放せー!」と叫びつつも、パーマとカクガリに引きずられながら教室に戻った。 唐突にあたるはラムに 「ところで、その道具ってのはデカイのか?」と聞くとラムは 「ぜーんぜん、片手に収まる位だっちゃ」と言うと更に 「どうするっちゃ?うちのUFOで行くっちゃ?」て言ったが、あるは 「いや、おまえのUFOじゃ目立ちすぎるから電車で行こう。俺は駅に向かうから、お前は道具を取って駅に来てくれ」と言った。するとラムは 「分かったっちゃ」と言うと急いでUFOに向かった。それを見届けると、あたるも駅に向かって歩き出した。 あたるが駅に着くとラムは既に駅前であたるを待っていて、あたるの姿を見たラムは 「あ、ダーリン!」と言って手を振った。それを見てあたるは (あのバカ!あんな大声で呼びおって!恥ずかしいではないか)と思い、ラムの呼び掛けには答えずにそそくさと、きっぷ売り場に急いだ。しかし、そんなあたるにラムは 「何だかデートみたいだっちゃね」と言ってあたるの腕に抱きついた。するとあたるは 「えーい、離れんか!歩きづらくてかなわん!」と言った。しかしラムは 「嫌だっちゃ」と満面の笑顔で言い、そのまま電車に乗り込み雀の宮に向かった。電車の中でもラムはあたるにピッタリとくっつき、あたるが引き離そうとしても全く離れる気配も無いので、あたるも呆れて諦めラムの顔を見ると、本当に幸せそうな顔をしているのに気づいた。その時あたるの脳裏に夢の中のラムの顔が浮かんだ。それは、今のラムとは対照的なその表情だった事に改めて気づき (ラムは本来、明るく前向きな性格なハズなのに、夢の中のラムは考えられんくらい暗い表情だった。あんなラムの顔を見るのは、もうゴメンだ。だから絶対にブレスレットを切断できる道具を届けなければ)と思った。 やがて電車は雀の宮駅に着き、あたるとラムは電車を降り駅を出るとバス停に向かった。そしてあたるはラムに 「それで、例の道具ってのは?」と聞くと、ラムは制服のポケットから何か取り出しあたるに見せ 「これだっちゃ。これは 【ディメンションカッター】 って言って、マーキングした部分を異次元に転送するっちゃ」と言った。それを聞いたあたるは 「異次元に?間違ってラムの手まで異次元に転送するなんて事ないよな?」と聞くと、ラムは 「心配いらないっちゃ、この機械は無機物にしか反応しないっちゃ」と言ってニコリと笑った。あたるは良く分からないが、ラムが大丈夫と言うのだから大丈夫なのだろうと思い、今度は 「それで、そのなんとかカッターだが、どうやって何年も人に見つからないで隠しておくんだ?」と聞くと、ラムは更に制服のポケットから小さな機械を取り出した。そしてそれをディメンションカッターに取り付けると 「この機械を付けておけばカモフラージュで見えなくなるっちゃ」と言って、小さな機械のボタンを押した。するとディメンションカッターはみるみる透けて行き、やがて完全に透明になって見えなくなった。それを見たあたるは 「き、消えた!それって見えないだけなのか?」と言うとラムの手に自分の手を伸ばし確認した。すると確かにラムの手のひらには何かが乗っているのが分かった。そしてあたるは 「本当に透明になってるんだな」と言った。そんなあたるにラムは 「これを、人が触れない様な場所に置いておけばきっと大丈夫だっちゃ」と言うと、キョロキョロと周りを確認し始めた。そして 「やっぱりこの木しかないっちゃね。この木は、未来でも残ってるのをダーリンが確認してるし」と言った。しかしあたるは 「でも、こんな木のどこに隠すんだ?」とラムに問いかけた。するとラムは 「やっぱり根本に埋めるのが一番安全だと思うっちゃよ」と言った。それを聞いたあたるは 「埋める?じゃあ、透明にしても意味無いじゃないか」と言ったがラムは 「この機械は、ただ透明にするだけじゃないっちゃよ。対象の物を外部からのあらゆる障害から守ってくれるっちゃ」と言うと、あたるに笑顔をみせた。すると突然あたるを強烈な睡魔が襲い、あたるはその場に座り込んでしまった。そんなあたるにラムは 「ダーリン!どうしたっちゃ?」と叫ぶと、あたるの元に駆け寄った。心配そうにあたるを見つめるラムにあたるは 「こ、これは夢の中と同じだ…」と言ったが、ラムは何の事だか分からず 「夢の中と同じって、どう言う事だっちゃ?」とあたるに問いかけた。しかしあたるは 「…ダメだ…説明してる時間は無さそうだから、簡単に言うぞ!俺は、この後多分寝ちまうけど気にするな。ちょっと向こうの世界に行くだけだから」と言いながら、フラフラと近くのベンチに向かい、ベンチに横たわった。ラムも一緒にベンチまで行くとあたるね頭を膝の上に乗せた。そんなラムにあたるは 「はは、やっぱラムはラムなんだな」と言うとラムは 「え?どう言う事だっちゃ?」とあたるに聞いたがあたるは (向こうのラムと全く同じ事しやがって)と思うとラムに答える前に、完全に眠りに落ちた。 あたるは目を覚ますと周りを見た。するとそこは街角のベンチで、ラムの姿も無い。あたるは 「ラムは帰ったらしいな」と言って立ち上がると、薄明かるくなった空を見上げた。どうやら、そろそろ夜が明けるらしい。そん空を見上げながら (過去の夢の中の出来事…まるで俺達の過去と違ってたなぁ…でも、向こうではいつも夜寝てからこっちで目覚めてたけど、今回は違った)と思うと、ラムのディメンションカッターの事を思いだし 「しまった!何処に埋めたか分からんではないか!そもそもラムはちゃんと木の根本に埋めてくれてるのか?」と言うと、急に不安になり慌てて駅前のバス停に向かった。 あたるはバス停に着いて我が目を疑った。なんとそこに有るはずのモノが無かったのだ。そう、あのあたるが落書きを彫った木が無くなっていたのだ。あたるはすぐに木の有った場所に行くと、そこには木が有った形跡すら無いではないか。かなり前に伐採された様だった。それを見たあたるは思わず 「何で?確かにここに木が有ったハズだ…」と呟いた。そんなあたるをバス停のベンチで見ていたお婆さんが 「そこには木が有ったんじゃが、突然消えてしまったんじゃよ」と言った。それを聞いたあたるは (消えた?)と思い、ハッと何かに気づきお婆さんの所に駆け寄ると 「お婆ちゃん、消えたって…その木が消えたのっていつ?」と聞いた。するとお婆さんは 「う〜ん、いつだったかのう?昨年だったかのう?いや、5年位前かのう?はたまた昨日じゃったか、良く覚えとらんのう」と言うと首をかしげた。それを聞いたあたるは (昨日かもって…ダメじゃ完全にボケとる)と思い、再び木の所に行くと (しかし、実際に木が無いんだから本当に消えたのかもしれん…だとすると、もしかして)と思うと、あたるは木が有った所に手を伸ばした。しかし、あたるの手は無情にも空を切った。あたるは、ラムのあの機械が木に何か影響を与えたのではないかと思ったのだ。それなら、目に見えないだけで木は、そこに有るハズだと思ったのだが、現実はそんなに甘くはなかった。せっかくブレスレットを切断できる道具が手に入ると思っていたあたるは、落胆を隠せなかった。そんなあたるに、またお婆さんが 「そこには木が有ったんじゃが、突然消えてしまったんじゃよ」と声をかけた。あたるはそんなお婆さんの方を向くと 「お婆ちゃん、その木が消えたのはいつ?」と、ダメ元で聞いてみた。するとお婆さんは 「う〜ん、いつだったかのう?昨年だったかのう?いや、5年位前かのう?はたまた昨日じゃったか、良く覚えとらんのう」と言った。あたるは激しいデジャブに襲われた。あたるは諦めて、何か手がかりは無いかと木が有った場所を調べていると、またバス停のベンチからお婆さんが 「そこには木が有ったんじゃが、突然消えてしまったんじゃよ」と言った。あたるは、振り返ると 「もう!ええっちゅうんじゃ!!」と叫んだ。するとお婆さんは 「最近の若い者は、人の言う事も聞けんのかのう」と言った。あたるは、もうお婆さんの事は相手にしない事を心に誓うと再び手がかりを探し始めた。 あたるはしばらく調べてみたが何も手がかりになる様な物は発見できず、木が有った場所の土を掘り返してみても何も出てこなかった。その時後ろから 「ダーリン!!」と声が聞こえ、振り返るとラムがこちらに向かって走って来ていた。あたるは立ち上がり振り返ると、ラムはあたるに抱きついて来て 「良かったっちゃ、本当に心配だったっちゃ」と言った。するとあたるは 「だから、大丈夫だって言ったろうが」と言った。ラムはあたるの顔を見てニッコリと笑うと 「うん!」と頷いた。そして、あたるの後ろを見て 「あ!木が!」と言った。それを聞いてあたるは 「あぁ、そうなんだ…木が消えちまった」と言った。するとラムは 「何でだっちゃ?昨日まで有ったのに」と言って木が有った場所をマジマジと見つめた。そんなラムにあたるは 「実は、過去のラムがあの木の根本に、なんちゃらカッターってのを埋めてこちらに送ってくれたハズなんだが、肝心の木が消えちまったんだ」と言うと、ラムは 「え?もしかして、ディメンションカッターだっちゃ?」と言い、あたるは 「あぁ、確かそんな名前だったかなぁ」と言った。そして更に 「それで、木が有った場所を探してみたんだが、それらしき物は見つからんのだ」と言った。ラムはあたるの話を聞くと 「もしかして、昔のうち達の行動が未来を変えてしまったのかもしれないっちゃ」と言った。 第6章 変化に続く