うる星やつら チェンジ・ザ・ライフ 第8章 逆転 あたるは始発の電車に駆け乗り、ラムの所へ向かった。一方ラムは先日、あたると研究施設を脱け出した事について組織の人間から一切聞かれなかった事を不思議におもいながらも普通に振る舞い、あたるを待っていた。 やがて約2時間後、あたるは雀の宮駅に着きすぐにバス停に向かった。いつの間にかこのバス停がラムとの待ち合い場所の様になっていたのだ。バス停に着いたあたるは辺りを見て呟いた。 「ラムはまだ来ていないみたいだな」あたるはバス停のベンチに腰を下ろすと持ってきたバッグを開け、中を確認した。そこにはちゃんとディメンションカッターが入っている。それを見てあたるは思った。 (よし!何処のどいつだか知らんが、ざまぁみろ。修正できるもんなら修正してみやがれ!)あたるはバッグのファスナーを閉め、ラムを待つ事にした。 それから間もなくラムが 「ダーリーン」とあたるを呼びながら走ってきた。あたるはベンチから立ち上がると、手を振りながら走って来るラムをみて (バ、バカ!そんな目立つ事するな!)と思い、慌ててラムの元に行き小声で言った。 「バカ!俺と居る所を奴等に知られたらどうするんだ!」それを聞いたラムは 「あ!ごめんっちゃ…つい嬉しくて…」と言ったが 「でも、うち…ダーリンに会いたくて仕方なかったんだもん」と言ってあたるに抱きついた。そんなラムを見たあたるは 「でも今はすぐにでもやらなきゃならない事がある」と言い、ラムをそっと引き離すとラムの手を取って、駅の車椅子マークの多目的トイレに駆け込んだ。 トイレに入ると、あたるはすぐにトイレの鍵をかけた。それを見たラムは恥ずかしそうに言った。 「もうダーリンったら……何もこんな所で…うちは構わないけど、どうせならもっとちゃんとした……」あたるはラムの話が終わる前に 「お前は何を考えとるんだ!!」と怒鳴ると、バッグからディメンションカッターを取りだし 「お前のブレスレットを取る事が先決だろうが!」と言った。するとラムは 「あ、あぁ、そうだっちゃね。うちはてっきり」と言って苦笑いをしながらブレスレットの着いた腕をあたるの前に差し出した。あたるはそんなラムに 「ったく、こんな非常時に何を呑気な…」と言うとディメンションカッターをラムの手に握らせた。ディメンションカッターを渡されたラムは、ちょっと戸惑って 「え?ダーリン外してくれないっちゃ?」と聞くとあたるは当然と言った表情で 「俺は使い方知らん」と言ってのけた。それを聞いたラムは説明を始めた。 「簡単だっちゃよ。ここをこうして、ああして、こんな風にして、こうなったら今度はこっちをこうして、こうすると、こうなるから次は…」あたるは永遠続くラムの説明を遮る様に 「んなの!分かるか!!どこが簡単じゃ」と怒鳴った。するとラムは、諦めた様子で 「もう、仕方ないっちゃね。今回だけは、うちがやるっちゃ」と言ったが、それを聞いたあたるは 「こんな事、そう何度もあってたまるか!」と言った。 ラムは 「何年も置きっぱなしだったけど、動く事を祈るっちゃ」と言うと、ディメンションカッターの電源を入れた。するとディメンションカッターは、高音の音を出しながら起動した。それを見てラムは言った。 「大丈夫みたいだっちゃね」ディメンションカッターの電源を入れたラムは、ディメンションカッターをブレスレットに当て、何かスイッチの様なものを入れた。するとディメンションカッターは、更に高音の音を出し始め、やがて音は聞こえなくなった。おそらく、人間の耳には聞き取れない程高音になったのだろう。ディメンションカッターの音が聞こえなくなってすぐにブレスレットがバチバチと放電を始めた。それを見てあたるが言った。 「お、おい!何かそのブレスレット放電してるみたいだが、大丈夫なのか?爆発したりしないよな?」それを聞いたラムは心配するなとばかりに 「大丈夫だっちゃ。多分うちから吸収した電気エネルギーが漏れ出しているだけだっちゃ」と言ったが、あたるはまだ心配そうだ。 ディメンションカッターでブレスレットの一部は徐々に消え始めていたが、放電は更に激しくなっていった。あたるはあまりの放電に、再びラムに聞いた。 「しつこい様だが、本当に大丈夫なんだろうな?爆発などせんだろうな?」するとラムは、呆れた様子で 「ダーリンも心配性だっちゃね」と言って笑ったが、次の瞬間 ドカーーーーーーン!!! 物凄い音と共にブレスレットが爆発した。あたるとラムは髪はチリチリ、顔は真っ黒、口から煙を吐く始末。咳き込みながらあたるは言った。 「ごほっごほっ、だから大丈夫かと聞いたろうが!」しかしラムは楽しそうに笑いながら 「ははは、ごめんっちゃ」と言った。そんなラムにあたるは 「お前なぁ!もっと慎重にやらんかぁ!ったく、こんな状況でよく笑ってられるな」と言うと、立ち上がりラムのブレスレットを見た。派手な爆発の割にはブレスレットはむきずだった。しかし、一部分は消えている。どうやらディメンションカッターで消失したらしい。ラムはブレスレットをいじりながら言った。 「何だか、昔みたいで楽しいっちゃね」ラムは本当に楽しそうに笑っている。その笑顔を見てあたるは思った。 (ラムのこの笑顔……久しぶりだな)あたるは自然と優しそうな笑顔でラムを見つめていた。あたるの視線に気づいたラムは、あたるの方を向くと 「どうしたっちゃダーリン?とても嬉しそうだっちゃね。うちのブレスレットが外れるのがそんなに嬉しいっちゃ?」と言って、あたるに微笑みかけた。あたるはラムの言葉にハッと我に返り 「な、なにをやってんだ!はよ外さんか」と言うと、ラムの腕を取りブレスレットを外そうとしたが、ディメンションカッターでの消失部分が狭く、ラムの腕が通らない。それを見てあたるは 「もう少しさっきの道具を使わないと腕が通らんな。おい、さっきの道具は?」とラムに聞くと、ラムは足下に落ちていたディメンションカッターであったであろう残骸を拾うと、あたるに見せて言った。 「壊れたっちゃ」あたるはラムの手から残骸を受け取ると 「こ、これじゃあ使えんではないか」と言った。するとラムも 「そうだっちゃね」と言った。ラムのあっけらかんとした態度にあたるは 「お前ずいぶん余裕だな」と言ったがラムは再び笑顔を見せて言った。 「大丈夫だっちゃ。きっとダーリンが何とかしてくれるっちゃ」そんなラムの言葉にあたるは 「お前、それ本人に言う事じゃないだろう」と言いながらもブレスレットを両手で掴むと、力一杯拡げ始めた。それを見たラムは 「ダーリン…それは無理だと思うっちゃよ?」と言ったが、あたるはやめようとせず 「うるさい!お前は黙って見とれ!お前の言う通り、俺が何とかしちゃる!」と言って更に力を込めた。しかし、ブレスレットは全く拡がる気配すら無い。あたるは顔を真っ赤にして力を込めるがブレスレットはビクともしなかった。肩で息をしながら必死にブレスレットを外そうとするあたるを見てラムは 「ダーリン、もういいっちゃよ」と言って抱き締めた。あたるはそんなラムに 「ふざけるな!俺は絶対に諦めん!と言うとラムの手を払い 「剛力招来!!」と掛け声をかけた。すると、ビクともしなかったブレスレットは徐々に開いて行き、最後にあたるが 「ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」と奇声をあげると パリンッ! と言う音と共に真っ二つになった。ラムの腕からブレスレットが外れるとすぐにラムは体の中に力が湧いて来るのを感じた。ラムの髪の毛も、徐々に以前の緑色に戻って行きラムは自分の両手を見ると、右手を前に突きだしバス停の時刻表に向かって電撃を放った。 バリバリバリバリバリバリ 時刻表はラムの電撃で黒焦げになり、それを見たラムは振り返りあたるに抱きつくと言った。 「ダーリン!うち、力が戻ったっちゃ!ありがとう!」力を出し尽くしたあたるは、ぐったりしながらも 「あぁ…良かったな……て事で、少し休ませてくれ…」と言うと、ラムの腕の中で眠りに落ちた。ラムは、そんなあたるに囁いた。 「ダーリン…本当にありがとうだっちゃ」ラムはあたるをベンチに寝かせると、あたるの頭を膝の上に乗せ優しく頭を撫でた。 あたるが目を覚ますと、そこは………… バス停だった。そして、あたるが目を覚ますと同時にラムが 「ダーリン!目が覚めたっちゃね」と言った。あたるはゆっくりと起き上がり回りを見渡して言った。 「ここは…元居た世界…何故過去に戻って無いんだ?」あたるの様子を見たラムは 「どうしたっちゃ?ダーリン?」と聞くと、あたるは 「夢を見なかった…過去の夢を見なかったんだ!」と言った。ラムはちょっと考えてから言った。 「もしかして、うちのブレスレットが外れた事で過去との接点がなくなったっちゃ?」それを聞いたあたるは 「なるほどな…と言うこは、もう過去には行けないってことか…」と言って、二つになったブレスレットを拾い上げ 「まぁ、ブレスレットは外れたんだし、もう過去には用は無いか」と言って、壊れたブレスレットをゴミ箱に捨てようとした。しかし、その時ラムが慌ててあたるに言った。 「あ!ダーリン待って!」あたるは捨てる寸前にラムの声で思いとどまり 「ん?何だ?こんな物いらないだろう?」と言ったがラムは 「それが有れば研究所に潜り込めるっちゃ」と言った。しかしあたるは 「いや、さすがにあそこはもうヤバいだろう?騒ぎを起こしちまったしな」と言うと首を振った。ところがラムはそんなあたるに予想外の事を言ったのだ。 「それなんだけど、ダーリンは家に帰ってたから知らないと思うけど、何故か全く騒ぎになって無いんだっちゃよ」思いもよらないラムの話にあたるは思わず声をあげた。 「そんなバカな事有るか!研究員2人からIDカードと、カードキーを奪ってるんだぞ!気付かないハズが無い」確かに気付かないのは不自然だった。そこでラムは一つの可能性について話した。 「これは、あくまで可能性の話だっちゃよ。もしかすると組織内部にうちらに協力してくれている人が居るかもしれないっちゃ」確かにそうだったら、騒ぎにならなかった事にも頷ける。そこであたるはラムに言った。 「もしそうだったとすると、そいつは研究所に居るはずだよな?」するとラムはニコリと笑い 「だから、研究所に潜り込む必要が有るっちゃ」と言った。そんなラムを見たあたるは呆れた様な顔で 「そんな笑顔で言う事じゃなかろう」と言いつつも、重大な事に気づいた。 (ハッ、ブレスレットが無ければ研究所が有る異空間に行けんではないか!)そう思ったあたるは2つになったブレスレットをくっつけてみた。しかし当然ながら、元に戻るハズもなかった。それを見たラムは 「ダーリン、大丈夫だっちゃよ、うちに任せるっちゃ」と言うと、あたるの手からブレスレットを取りウインクをして上空に飛び上がった。久しぶりに空を飛ぶラムを見たあたるは思わず見とれてしまっだが、すぐに我に返り呟いた。 「そうだった…ラムは飛べるんだよな」 ラムは上空でUFOを呼び寄せるとすぐに中に入った。一年間も放置されていた割には中は思いの他綺麗だった。どうやら、お掃除ロボットがちゃんと掃除をしてくれていた様だ。ラムはすぐにブレスレットを何かの機械にセットすると機械はガタガタと音を立てて動きだし、やがてブレスレットは機械から出てきた。そして、ブレスレットはラムの腕から外れる前の状態に戻っていて、ちゃんと機能している様だった。それを見てラムは 「よし、出来たっちゃ」と言うとそのブレスレットを持って急いであたるの元に向かった。 その頃あたるはラムの帰りをバス停で待って居たが、暇をもて余していた所に駅から若い女性が出て来るのを見て (お!綺麗なねぇちゃん。ここで声をかけなければ一生後悔する)と思うと、一瞬でその女性に近づくと女性の肩に手を回して言った。 「お嬢さん。是非僕と一緒にお茶でも飲みませんか?」女性が、突然現れて肩に手を回してきた男に驚き戸惑っていると、あたるは更に 「僕は、君の様に美しい人を見た事がない!二人で親睦を深めましょう」と言って、女性の手を握った。女性は 「は、はぁ」と未だ現状が把握できてない様子。そしてあたるは畳み掛ける様に 「僕がいい所に連れて行ってあげますよ。にゃはははは」とだらしない笑顔を見せたが、次の瞬間あたるは背中に強烈な殺気を感じ、恐る恐る振り返った。するとそこには怒りの形相のラムが立っていて、硬直したあたるに言った。 「へぇ〜、いい所って何処だっちゃ?うちも連れて行って欲しいっちゃね」ラムは、パチパチと放電している。そんなラムを見たあたるは突然滝の様に汗を流しながら握っていた女性の手を離し 「ラ、ラム、落ち着け、なっ」とラムをなだめようとしたがラムは 「ちょっと目を離せば、すぐこれだっちゃ!」と言うと更に激しく放電を始めた。あたるは慌てて 「ま、待て!早まるな!」と言ったがラムは聞かず 「うちは1年も電撃使えなかったから、1年分おみまいしてあげるっちゃ!」と言うと手を十字に重ねた。まるでウルトラマンの必殺技の様だ。それを聞いたあたるは孟ダッシュで走りだし 「バカ野郎!1年分の電撃なんて喰らったら死んでしまうだろうが!」と叫んだが、ラムは一向に聞く耳を持たずに 「ダーリンだったら大丈夫だっちゃ!うちの電撃の味を思い出させてあげるっちゃよ」と言うと電撃を放った。あたるは間一髪の所で避けて難を逃れたが、ラムは更に 「ちょこまか動くんじゃないっちゃ!」と言って再び電撃を放った。そして今度はあたるも避けきれずに、モロにラムの電撃を喰らってしまった。 バリバリバリバリバリバリ あたるはその場に倒れプスプスと煙を上げている。ラムはあたるに近づくと、あたるに言った。 「これに懲りたら、もう他の女にはチョッカイ出さない事だっちゃね」あたるはフラフラと立ち上がると小声で呟いた。 〈ラムの超能力も戻って、この一年間単調だったガールハントにも、スリルと言うスパイスが加わったんだ。チョッカイ出すなと言う方が無理と言うもんだ。にゃはははは〉そんなあたるの呟きをラムは聞き逃さなかった。ラムは 「今、何か言ったっちゃ?」とあたるに詰め寄ると、あたるは 「べ、別に何も言っとらんが…」と言ってそっぽを向いた。そして、誤魔化す様に別の話題を切り出した。 「ところで、ブレスレットはどうなったのだ?」あたるが話題を切り替えたのでラムは、少し不満そうに言った。 「もちろん直ったっちゃよ。しかも、今度は簡単に外れる様にしたっちゃ」それを聞いたあたるは 「簡単に外れるって、お前またそれ着ける気か?」と驚きの表情を見せるとラムは 「これ、装着してないと起動しないみたいなんだゃよね」と言って自分の腕に装着した。するとたちまちラムの髪は緑からグレーへと変化を始めた。それを見てあたるは 「おい!もしまた外れなくなったらどうするんだ!」と言ってブレスレットをしたラムの手を取った。するとラムは 「大丈夫だっちゃよ。このボタンを押せば簡単に外れるっちゃ」と言って小さなボタンを押した。すると カチャッ と言う音と共にブレスレットは簡単に外れた。ラムの髪も今度はグレーから緑色に変わっていって元通りに戻った様だった。あたるはそんなラムを見て 「だ、だけど、そのボタンが壊れる可能性も有るから充分注意しろよ」と言った。するとラムは、そんなあたるに 「やっぱりダーリンは、うちの事心配してくれてるっちゃ」と言って抱きついた。ラムに抱きつかれたあたるは、回りを気にしながらラムを引き離すと 「いちいた抱きつくな!俺はただ、またそのブレスレットを外す為に苦労したくないだけじゃ」と言うと、続けて言った。 「それより、早く研究所に行こう」 ラムがブレスレットを着けて、亜空間を次々に移動していく。あたるはラムからはぐれない様に必死に後をつけていると、やがて二人はあの研究所の前に到着した。そこであたるが言った。 「お前はブレスレットが有るから問題なく入れるが、俺はどうしたらいいんじゃ」そんなあたるの言葉にラムはニヤニヤしながら言った。 「うちにピッタリくっついて行けば大丈夫なんじゃないっちゃ?」あまりにお粗末なあたるの作戦を皮肉たっぷりに言うラムにあたるは 「う、うるさい!そんな事より、何か考えろ!」と言った。ラムは困った様子で 「そんな事言ったって、この前みたいに誰か来てくれれば何とかなるけど……」と言った。するとその時、後ろから誰かが話しかけた。 「おい!お前ら、こんな所で何してる」その声を聞いてあたるとラムは振り返った。すると、その瞬間3人は同時に 「あっ!!」と叫んだ。そこに居たのは前にあたるとラムが捕獲してIDカードを奪った研究員だったのだ。研究員はすかさず 「お前たちは、この前の!」と言った。しかしあたるとラムがこのチャンスをのがす訳が無かった。あたるとラムはお互いの顔を見てニヤリと笑うと研究員に飛びかかった。研究員は後退りしながら叫んだ。 「や、やめろーー!」結局研究員は、研究服とIDカードをあたるに奪われ、ロープです巻きにされてしまった。 あたるとラムは研究施設の中に入ると一直線にいつもラムが電気エネルギーを奪われている部屋に向かった。ラムはあたるに小さく頷くとなに食わぬ顔で中に入った。あたるはその様子をドアの隙間から伺っていた。あたるが部屋の中の研究員をもう一度よく見ると、やはり泉だった。泉はラムに近づきながら言った。 「ラムさん。どうやらブレスレットを外す事に成功した様ですね」それを聞いたラムは驚き、思わずブレスレットを外し後ろに飛び退き言った。 「お前!どうして…」泉はラムの質問には答えずに、あたるが隠れているドアの方を向くと 「諸星くん、警戒する事は無いよ。出て来てくれないか?」と言った。あたるは突然の泉の言葉に驚きながらも 「バレちまっちゃあ、仕方ない」と言いながら部屋の中に入って行った。泉はあたるに対して笑いかけると操作盤のボタンを押した。すると ガチャッ という音と共にドアが閉まりロックされた。あたるは一端ドアを見たが、すぐに泉の方を向き質問した。 「お前はどっちなんだ?」それを聞いた泉は 「さすがだね、こんなに早く気づくとは思わなかったよ」と言った。あたると泉の会話を聞いていたラムは訳が分からず、思わずあたるに聞いた。 「ダーリン、どう言う事だっちゃ?」するとあたるは泉から目を離さずに言った。 「こいつの名前は【泉 健太】おそらく、組織の人間じゃない」あたるの言葉に泉は 「ほう、僕の名前まで分かっているんだね」と言った。そしてあたるとラムの方に近づきながら 「過去で僕に会ったかな?」と言うと、ニヤリと笑った。あたるは驚き、思わず叫んだ。 「な、何で!」泉はあたるとラムの少し手前で立ち止まると 「なぜか?それは、僕が諸星くんの意識を過去の君とリンクさせたからだよ」と言って不敵な笑みを浮かべた。それを聞いたあたるとラムは、あまりの衝撃に言葉を失った。 そして泉は、研究服を脱ぎ捨てると言った。 「さぁ、これで形勢逆転だ」 第9話 目的に続く