うる星やつら ☆赤い花が散るとき☆ 第2話 違和感 ラムは、あたると家に向かって歩いていたが、今朝の花がどうしても気になり 「ダーリン、ウチUFOに戻って着替えてくるっちゃね」そう言うと、あたるの返事も聞かずに飛び去った。そんなラムを見たあたるは 「なんだ?ラムのやつ。あんな慌てた感じで・・・」と言うと (まさかあいつ、まだ昨日の事を?)と思い少し不安になったが今朝のラムの笑顔を思い出し (そんな訳ないか)と思い返し再び家に向かって歩き出した。 ラムはUFOに着くとすぐに花を確認した。花は、相変わらず真紅の色に染まっていた。その花を見たラムは (何でウチは、こんなにこの花の事が気になるっちゃ?)そう思った時、花びらが1つ落ちている事に気づいた。ラムは、何気なくその花びらを手に取ると、たちまち花びらは消えて無くなった。それと同時にラムの中で何かが失われた気がしたが、気づけばラムは何も持っていない自分の手を見つめていた。それを見てラムは 「・・・あれ?ウチ何してるっちゃ?何か持ってた様な気がするけど・・・」そう言うと首をかしげた。しかしすぐに 「まぁ、気のせいだっちゃね。早く着替えてダーリンの所行こうっと」と言って着替えを始めた。 ラムは着替えを終えるとUFOを出てあたるの部屋に向かった。すると途中で因幡と一緒にいるしのぶをみつけ 「しのぶ、何だかんだ言って因幡くんの事手伝ってるっちゃね」と言うと微笑んだ。そして 「せっかくだから2人だけにしてあげるっちゃ」と言うと、あたるの部屋に急いだ。 しのぶと因幡は、花を探しに出たが因幡が方向音痴な為に、なかなか花を落とした辺りに行く事ができなかった。しのぶはたまらず 「ねぇ、さっきはどの辺を探してたの?」と聞くと因幡は 「それが・・・探してた場所が何処かも分からなくなっちゃって」と言って苦笑いを浮かべた。しのぶはそんな因幡に呆れながらも 「仕方ないわねぇ、なら覚えてる景色とかは?」と笑いながら聞くと因幡は 「そう言えばゴミバケツが有りました!」と言った。それを聞いてしのぶは 「随分と、ありきたりな景色」と言って笑ったが、フッと学校でのあたるの言葉を思い出した。 【なぁしのぶぅ、さっき道端に因幡が転がってたぞ】 あたるの言葉にしのぶは、ハッと気づくと 「ゴミバケツが有るのは商店街ね。それであたる君とラムが朝通るとしたら・・・」と言い、スタスタと歩き始めた。しのぶがいきなり歩き始めたので因幡は慌ててしのぶの後を追い 「しのぶさん、どうしたんですか?」と聞いた。しのぶは、振り向きもせずに 「いいから付いてきて」と言った。因幡は 「はい、わかりました」と言うと、しのぶの後に付いて行った。 しのぶは商店街まで歩いて行くと、振り返り因幡に 「この辺じゃない?」と言った。因幡は突然しのぶに聞かれ、あたふたしながら周りを見回すと、倒れたゴミバケツを見つけ、そこに走って行きゴミバケツを指さして 「ここ!ここです!」と言い、しのぶに手を振った。しのぶは因幡の元に駆け寄ると 「ここ・・・なのね」と言うと苦笑いをした。そんなしのぶに因幡は 「でも凄いです、しのぶさん。何で分かったんですか?」と聞くと、しのぶは 「うん・・・まぁ、そんな事いいから早く誰かに聞きましょう。幸い商店街だし、見てる人が居るかもしれないわ」と言った。 しのぶと因幡は商店街の人達に聞いて回ったが、花を持っていた人を見たと言う人は居なかった。それどころか、花そのものを見た人が居なかったのだ。そこでしのぶは因幡に聞いた。 「ところで因幡くん、お花を落とした時気づかなかったの?」しのぶの問いに因幡は、当然と言った顔で答えた。 「そりゃあ気づきましたよ」そんな因幡の答えに、しのぶは拳を握りしめ 「だったら、落とした所を探せばいいんじゃない?」と笑顔を引き攣らせながら言った。しかし、因幡は 「それが、落としたのは分かったんですけど、花がどこに落ちたかは分からなかったんです」と言って肩を落とした。するとしのぶは肩を震わせながら 「だ・か・ら、落とした場所・・・」とそこまで言って、因幡の説明の違和感に気づいた。そしてしのぶは (ちょっと待って・・・さっき因幡くんは、どこに落ちたか分からないって・・・道で落とせばそんな言い方しないわよね?)と思うと、因幡に 「じゃ、聞き方変えるけど、お花を落とした時、因幡くんどこに居たの?」と聞くと因幡は、空を見上げ片手を空に向かって指を指し 「あの辺ですかね?」と言った。それを聞いてしのぶは納得した、因幡は空から降ってきたのだと。そしてしのぶは 「つまり、因幡くんは空から降って来たのね。そして空の上でお花を落とした・・・」と言った。すると因幡は 「はい、帰る途中で空間の歪みに落ちてしまって、出た所が空の上だったんですよ」といい、苦笑いを浮かべ頭をかいた。そんな因幡にしのぶはため息をつくと 「これだけ聞いて、見た人も居ないんじゃ」と言うと周りを見た。そして、近くに大きな木を見つけ、その木を指さして 「あの辺の木にでも引っ掛かってるんじゃないかしら」と言った。それを聞いた因幡は 「なるほど!木の上ですか!それは盲点でした」と言うと、大きな木の所に走って行った。因幡が木の上を見ていると、後から来て木の根元を見ていたしのぶが因幡に声をかけた。 「ねぇ因幡くん、その落としたお花って何かケースの様な物に入ってなかった?」それを聞いた因幡は 「はい、でもどうしてしのぶさんがその事を?」と言って振り向くと、しのぶは手に何やらケースの様な物を抱え 「もしかして、これがケース?」と言った。すると因幡は 「あ!それです!それ!」と言って、しのぶの抱えてるケースを指さした。しかししのぶは 「さっき、そこで見つけたんだけど」と言うと木の根元を見た。そして続けて 「でも、中には何も入ってないのよね」と言いケースを覗き込んだ。しかし因幡は 「いえ、しのぶさん!このケースがここに有るって事は近くに花も有るはずです!」と目を輝かせた。そんな因幡にしのぶが 「でも、地面に落ちたのじゃなければ木の上って事になるわよ?」と言うと因幡は木にしがみついて 「僕が登って調べます」と言ったが、木は太く手や足をかけられる場所も無く、因幡は全く登れなかった。それを見てしのぶは 「この木を登るのは無理よ」と言った。するとそこに 「しのぶねぇちゃ〜ん」と叫びながら小さな物体が近づいてくる。しのぶはそれを見て 「あ、テンちゃんじゃない」と言った。するとテンは 「こんな所で、こんなけったいな奴と何しとんのや?」と言うと因幡の方を見た。するとしのぶは 「実は、この木の何処かに、お花が引っ掛かっちゃったみたいで、どうしよかと思ってたの」と言って木の上を見た。するとテンは 「そんなら、わいが見てきてやろうか?」と言い、それを聞いたしのぶはテンを抱きしめると 「ありがとうテンちゃん!テンちゃんは優しいわね」と笑顔で言った。するとテンはデレデレしながら 「当たり前や、わいはあたるのアホとは違うさかい」と言い、続けて 「それで、どんな花なんや?」と聞くと、因幡が 「あ、虹色の花なんです」と答えた。それを聞いたテンは 「お前に聞いたんちゃうけど、まぁええ。わいが見てきてやるさかいな」と言うとプカプカと木の上の方へ上がって行った。 テンは木の上をウロウロと飛び回り、やがて降りてくると 「なんや、それらしいモンないで」と言った。するとしのぶは残念そうに 「そう・・・」と言った後、笑顔でテンに 「でも、ありがとうテンちゃん」と言った。テンは申し訳無さそうに 「ごめんな、しのぶ姉ちゃん。わい役に立たなくて」と言うと 「ほな、わい行くとこ有るさかい、行くな」と言うとプカプカと空に向かって飛んで行った。 そんなテンを見送りながらしのぶは言った。 「木の上に無かったって事は、可能性は2つね」それを聞いて因幡は 「可能性って言うと?」としのぶに聞いた。するとしのぶは 「何者かが持ち去ったか、或いは風で飛ばされたか・・・」と言った。因幡はガックリと肩を落とし 「あぁ、それじゃまず見つからないよぅ」と言った。 少し前、ラムがあたるの部屋に行くと、部屋にあたるの姿は無かった。ラムは下に降り茶の間に居たあたるの母に 「おかあさま、ダーリンは?」と聞くと、あたるの母は 「あら、学校から帰って来たと思ったら、すぐに出掛けたわよ?ラムちゃん一緒じゃなかっの?」と言ったがラムは、あたるの母の問いには答えず (ダーリン!またガールハントに行ったっちゃね!)と思い、すぐに家を飛び出した。 ラムがあたるを探していると、公園で女の子に声をかけてるあたるを見つけ、そんなあたるにラムは大声で 「ダーリン!!」と叫んだ。すると、ラムの声を聞いたあたるは 「ゲッ!ラ、ラム!」と言うと、一目散に逃げ出した。逃げるあたるにラムは 「待つっちゃ!」と叫び両手に電気を貯め始めた。それを見てあたるは (ヤバい!)と思い、咄嗟に細い路地に逃げ込んだ。しかし、ラムも負けずに追いかけ、あたるに向かって 「観念するっちゃ!!」と言いながら電撃を放った。しかし、あたるはヒョイっと電撃をかわすと 「そう簡単に喰らってたまるか!」と言いながら、右へ左へと進路を変えてラムを翻弄した。そんなあたるにラムは 「もう!ちょこまかと!いい加減にするっちゃ!」と叫び一際強力な電撃を放ったが、あたるはその電撃をギリギリで避け 「お前がいくら邪魔しようが、俺はガールハントを辞める気は無いからなー」と捨て台詞を吐くと、ラムの前から姿を消した。そんなあたるにラムは 「もう、ダーリン!帰ったらお仕置きだっちゃ!」と言うと、あたるを探すのを諦めて飛び去った。それを電柱の陰に隠れて見ていたあたるは 「電撃が怖くてガールハントが出来るか!アディオス」と言うと走り去った。 ラムはイライラした気持ちを落ち着かせようとUFOに向かった。UFOに着いたラムは、すぐに拾った真紅の花の前に行き 「それにしても綺麗な花だっちゃね」と言って花を見つめた。すると不思議な事に、さっきまでのイライラが嘘の様になくなった気がした。 「やっぱり花は、気持ちを癒してくれるっちゃね」ラムはそう言うと微笑み、その場を離れた。ラムが側を離れると、花はまた真紅の花びらを1枚落とした。 しばらく経ってラムが花の所に来て、落ちた花びらを見つけ 「あ、花びらが落ちてるっちゃ」と言って、落ちた花びらを掴み上げた。するとまた花びらは消えてなくなった。ラムは、花びらを掴んでいた手を見つめ 「あれ?ウチ何か持ってた様な・・・気のせいだっちゃ?」と言うと首をかしげた。そしてラムは 「うん、気のせいだっちゃね」と言うと、UFOを出てあたるの部屋に向かった。 ラムがあたるの部屋に着くと、部屋にはテンが居たがあたるの姿は無かった。ラムはテンに 「テンちゃん、ダーリン知らないっちゃ?」と聞くとテンは 「わいは知らんで」と言い、更に 「なぁなぁラムちゃん、わいな今日いい事したんやで」と言いながらラムの元に飛んできた。するとラムはテンを抱き抱えると 「ふーん、何をしたっちゃ?」と笑顔で聞いた。テンは、ラムの言葉を待ってましたとばかり 「それがな、わいがな、コタツネコの所へ行く途中な、大きな木の所でしのぶ姉ちゃん見つけたんや。そしたら、しのぶ姉ちゃん何か探してる言うから、わいが木の上を探してやったんや。まぁ、結局何も見つからんかったんやけど」と言った。 ラムはテンの話を聞いて 「しのぶは、誰かと一緒じゃなかったっちゃ?」と聞くとテンは 「前に見たうさぎの格好したけったいなヤツと一緒だったで」と言い、それを聞いたラムは 「あ、因幡くんだっちゃね。それで探し物は何だったっちゃ?」とテンに聞くとテンは 「なんや、虹色の花ゆうてたな」と言った。それを聞いたラムは愕然として (ま、まずいっちゃ。あの花だっちゃ)と思った。そこでラムはテンに更に聞いた。 「そ、その花って何なんだか聞いたっちゃ?」しかしテンは 「いや、わいコタツネコの所へ行かなあかんかったから、聞かんかったで」と言い、ラムも 「あ、そうなんだっちゃね」と言って、笑った。しかし、その笑顔は引きつっていて、それを見たテンは 「ラムちゃん、どないしたん?大丈夫かぁ」とラムの顔を覗き込んだ。するとラムは 「あ、う、うん、大丈夫だっちゃよ」と言って、精一杯の笑顔を作った。そしてすぐにテンを畳の上に降ろすと 「あ、ウ、ウチ、急に用事を思い出したっちゃ」と言うと、慌てて窓から飛び出した。それを見たテンは 「ラムちゃんどないしたんやろ?」と言って首をかしげた。 ラムはすぐにUFOに向かった。その途中でも (あの花は因幡くんの落し物だったっちゃ、早く返した方がいいっちゃよね)と思った。 ラムはUFOに着くと、すぐに花の所に向かった。そしてラムは真紅の花を見て違和感を覚えた。 「あれ?この花・・・花びらが足らないっちゃ?」と言うと、周囲を探した。しかし、花びらは見つからずラムは諦めて再び花を見た。ラムが花びらの数を数えると、花びらは8枚。見た感じ、花びらは2枚程足らない感じだった。いくらラムが周りを探しても花びらは見つからなかった。ラムは 「まぁ、仕方ないっちゃね」と言うと花をいけた鉢を手に取ったが真紅の花を見ていると、どうしても手放したくなくなり 「・・・・・・黙ってれば、分からないっちゃよね?」と言うと、鉢を再び元のテーブルの上に戻した。 ラムは真紅の花を見つめ 「本当に綺麗だっちゃ・・・1日見てても飽きないっちゃね、きっと」と言った。 あたるはガールハントを終えて家に帰って来たが、部屋にはテンしか居らず、あたるは (ラムのやつ、まだ帰ってないのか)と思うとおもむろに机の上の雑誌を手に取り、ゴロリと横になると読み始めた。それを見てテンは 「なんや、帰ってくるなりマンガか?お前がそんなやからラムちゃんが苦労すんのや」と言った。それを聞いたあたるは横になり雑誌を読みながら 「はいはい、そりゃあすみませんでしたね」と軽く流した。そんなあたるにテンは 「お前、いつかラムちゃんに振られるで」と言ったが、あたるはまるで聞いてる様子が無かった。あたるは雑誌を見ながら (ラムのヤツ、まさか一昨日の事も有って本気で怒ってるのか?)と思い、更に (このまま星に帰るなんて事ないよな?)と思った瞬間、急に不安になった。 その夜、ラムがあたるの部屋に帰って来る事は無かった。 よく朝あたるが目を覚ますとすぐに目に入ったのがラムの顔だった。ラムはあたるを覗き込む様に見ていたのだ。そしてあたるが目を覚ますと満面の笑みで 「ダーリンおはようだっちゃ。やっと起きたっちゃね」と言った。そんなラムの笑顔を見てあたるは 「お前・・・怒ってないのか?」とラムに聞いた。するとラムは首をかしげながら 「ダーリン、何かウチに怒られる様な事したっちゃ?」と逆に聞いて来た。ラムのその質問にあたるは 「い、いや、怒ってないならいい」と答えたが、心の中では (どう言う事だ?昨日の事忘れてるのか?)と思い多少気になったが、本当にラムは怒ってないようだったので、あたるはホッとした。そしてその途端あたるの腹が ギュ〜〜〜〜 と、大きな音を立てて鳴った。それを聞いてラムは 「ダーリンお腹空いてるっちゃね」と笑いながら言い、更に 「早く着替えてご飯たべよう」と言った。あたるはラムの態度に違和感を感じながらも、そそくさと着替えを済ませ、ラムと一緒に茶の間に向かった。 つづく