うる星やつら 赤い花が散るとき 第3話 行く末 あたるとラムが、いつもの様に学校へ行くと、学校ではしのぶが浮かない顔をしていた。ラムがそんなしのぶを見て 「しのぶ、何だか元気ないっちゃね」と言い、心の中で (因幡くんと花を探して見つからなかったからだっちゃね)と思い、あたるに話しかけようとした時、あたるは猛スピードでしのぶの所へ行くと 「しのぶぅ、何浮かない顔してるんだ?は!さては俺に会いたくて仕方無かったのかなぁ?」と言うと、しのぶに抱きつこうとしたが、しのぶは 「人が考え事してるのに、邪魔するなぁぁぁ!」と言うと、机を持ち上げその机であたるを殴り飛ばした。あたるは校舎の屋根を突き破り空の彼方に消えた。ラムはそれを見て 「全く、ダーリンったら…呆れて怒る気にもならないっちゃ」と言うと、しのぶの所へ行き 「それで、因幡くんの落し物は見つかったっちゃ?」と聞いた。するとしのぶは、驚いた顔をして 「え?何で知ってるの?」とラムに聞くとラムは 「う、うん、実は昨日テンちゃんから聞いたっちゃ」と言って苦笑いをした。それを聞いたしのぶは、納得した顔で 「あ、テンちゃんに聞いたんだ」と言った。そして続けて 「それがね、全く見つからないのよ…きっと誰かに拾われてしまったのね」と言った。それを聞いたラムは (なんか、凄く悪い事をしてる気になって来たっちゃ)と思い 「きっと、もうすぐ見つかるっちゃよ」と言ったが、それを聞いたしのぶは 「そうだといいんだけど」と言ってため息をついた。 学校が終わり、あたるとラムは帰り道で公園のベンチに座り項垂れている因幡を見かけた。そんな因幡を見てあたるは 「ん?あそこに座ってるの因幡だよな?」と言うと、スタスタと因幡の方に歩き出した。ラムはあたるの後に付いて行きながら (丁度いいっちゃ。あの花の事をさり気なく聞いて見るっちゃ)と思った。 そして、あたるは因幡の元に行くと 「おい、探し物は見つかったのか?」と聞いた。因幡の姿を見れば聞かずとも分かる事なのだが、あたるは因幡の落し物が何だったのか気になり、あえて聞いたのだ。 あたるの声に顔を上げた因幡は 「あぁ、あたるさんにラムさん。残念ながら探し物は見つかりませんでした」と言った。それを聞いてあたるは 「見つかりませんでした?もうダメみたいな言い方だな?」と言うと、因幡の隣に座った。すると因幡は 「はい、もう絶望的です」と言って肩をおとした。そんな因幡の姿を見てラムは心が痛んだ。 因幡の隣に座ったあたるは、そんな因幡の姿を気にする様子もなく 「ところで、その落し物って一体何なんだ?」と聞いた。すると因幡はうつむいたまま 「はい、それが…」と言って言葉を止めた。そして、あたるとラムの顔を交互に見て再びため息をつくと諦めた様に言った。 「あぁ、もうどうせ見つからないし、いいかなぁ」そして、意を決した様子で言った。 「実は、花を探してるんです」因幡の言葉を聞いたあたるは、予想もしなかった答えに唖然とし 「花?花って…あの花か?」としのぶと同じ反応を見せた。すると因幡は 「はい」と一言答えた。それを聞いたあたるはベンチから立ち上がると 「お前が無くした物だからどんな物かと思えば…花かよ!」と言うと、因幡に背を向けて 「あぁ、アホらしい」と言って立ち去ろうとしたが、ラムがあたるの手を取り 「待って、ダーリン」と引き止めた。するとあたるは振り返り 「ん?何だ?ラム」と言い怪訝そうな顔をした。そんなあたるにラムは更に 「因幡くんの落し物だっちゃよ?ただの花とは思えないっちゃ」と言ったが、あたるは 「どんな花だか知らんが、花は花だろ。無くしたなら、その辺で似た様な花を手に入れればいいだけだろうが」と言った。しかしラムは諦めず 「でも、どんな花なのか聞くだけ聞いてあげてもいいと思うっちゃよ?」と言った。ラムの言葉にあたるは渋々ベンチに戻り、再び因幡の隣に座ると 「その花は、一体どんな花なんだ?」と面倒臭そうに聞いた。あたるの質問に因幡は 「その花は、特別な力を持った花なんです」と答えた。それを聞くと、あたるの目がキラリと光り 「特別な力?」と更に因幡に聞いた。すると因幡は 「はい、その花は人の感情をエネルギーにして成長します」と言った。すると今度はラムが 「感情をエネルギーに?」と聞いた。すると因幡は 「はい、怒り、悲しみ、喜び、寂しさや幸福感などをエネルギーにして成長するんです」と言った。そして今度はあたるが 「それで、その花は成長したらどうなる」と聞いたが、因幡は 「…分かりません」と答えた。それを聞いたあたるは 「何?分からんだと?」と言ったが、すぐに因幡が 「分からないと言うのは、花を持った人によって違うからです」と言った。するとあたるは 「例えばどんな事が起きる」と因幡に聞き、それに因幡は 「ぼくも詳しくは知らないですが聞いた話だと、願いが叶うとか、嫌な事を忘れられるとか…でも最悪は、記憶を奪われるとか…」と答えた。その話を聞いてあたるは 「なに!願いが叶うだと!」と言って因幡の肩を強く掴むと 「一体何処で落とした!その花はどんな花だ!」と言った。そのあたるの迫力に因幡はたじたじになり 「あ、商店街の近くの大きな木のあたりで…花は、虹色の花びらの花です」と言った。するとあたるは 「分かった!俺が必ず見つけてやる!」と言うと物凄い勢いで走って行った。取り残されたラムは (記憶を奪われるって…)と思い、堪らず因幡に聞いた。 「その花って、どんな風に成長するっちゃ?」ラムの質問に因幡は、不思議そうに 「ぼくも聞いた話ですけど、エネルギーを吸収する度に花びらを1枚落とすそうです」と言った。それを聞いたラムは 「花びらって、元々何枚だっちゃ?」と因幡に迫った。因幡は、ラムの勢いに思わず 「ラ、ラムさん、ちょっと、どうしたんですか?」と言った。するとラムは、ハッと我に返り 「あ、ごめんっちゃ。つい」と言って苦笑いをすると、再び 「それで、花びらは最初は何枚だっちゃ?」と改めて聞いた。すると因幡は 「花びらは、10枚です。でも、ラムさんは何でそんなに花の事が気になるんですか?」と不思議そうにラムを見た。そんな因幡の態度に気づいたラムは (まずいっちゃ…何とか誤魔化さないと)と思い、咄嗟に 「あ、う、うん…実は、ウチの知り合いが似た花を持ってるみたいだから気になったっちゃ」と言った。すると今度は因幡が 「え?それ本当ですか!その人は今どこに居ますか?」とラムに迫った。するとラムは後ずさりをしながら 「あ、でも、良く聞いたら違うみたいだっちゃ」と苦笑いを浮かべると、逃げる様に飛び去った。因幡は飛んで行くラムに向かって 「ラムさーん」と大声で叫んだが、ラムは戻る事は無かった。因幡はその場に立ち尽くすと 「あぁ、やっと手がかりが見つかったと思ったのに」と言うと、その場に座りこんだ。 ラムは、因幡の言った事が気になり花を確認しにUFOに向かった。 ラムはUFOに向かう途中で (確か、今朝見た時に花びらは8枚だった様な気がするっちゃ…もしそうなら…)と思い、不安で押しつぶされそうになりながらもUFOに急いだ。 UFOに着いたラムは、一目散に花の所に向かった。そしてラムは花を見て愕然とした。やはり花びらは8枚だったのだ。ラムは 「やっぱり8枚だっちゃ」と言うと不安が更に膨らんだ。しかし、花を見ているとさっきまでの不安が嘘の様に消えて行くのを感じた。ラムの不安が全て消えた時、花びらが1枚落ちた。花びらはユラユラとテーブルの上に落ち、それを見たラムは 「え?嘘だっちゃ…どうして?」と言うと落ちた花びらを拾い上げた。するとやはり花びらは、スーっと消えてしまい、ラムは自分の手を見つめていた。ラムは自分の手を見つめ 「…あれ?ウチ…何してるってちゃ?」と言うと首をかしげた。そしてラムは 「うーん、何か大事な事を忘れてる様な…」と言い、なんとか思い出そうとしたが、どうしても思い出せなかった。その時ラムは、フッと思った。 (あれ?ウチ何でUFOに居るっちゃ?)そしてラムは、自分の記憶を辿った。 (確か、ウチはダーリンと一緒に帰る途中で、公園のベンチで落ち込んでる因幡くんを見つけたっちゃ)ラムは、そう思うとウンウンと頷き自分を納得させた。そして更に (それでダーリンと因幡くんの所へ行って……行って…どうしたっちゃ?その後が思い出せないっちゃ。その後、何か理由が有ってウチはUFOに来たはずだっちゃ)そう思い、ラムは必死に思い出そうとしたが何も思い出せない。ラムが何気なく花を見た時、花びらが7枚なのに気づき 「あれ?確か今朝は、花びら8枚有ったはずだっちゃ」と言い、テーブルの周りを探したが、花びらを見つける事は出来なかった。ラムはその花に、なんとも言いようのない恐怖を感じ、思わずUFOを飛び出した。そしてラムは (何だっちゃ?何だか凄く悪い予感がするっちゃ)と思うと、深呼吸をして気持ちを落ち着かせると 「とにかく、もう一度因幡くんの所に行って話をしてみるっちゃ」と言って公園に向かった。 その頃あたるは商店街近くの大きな木の周りに花が落ちてないかと探していたが、どうにも見つからず木の上を見上げ 「これだけ探して無いなら、もう木の上しかないな」と言うと、木を登り始めた。普通なら、人が登れる様な木ではないのだが、あたるにW普通Wは通用しない。まるで猿の如く木を登り始めた。そして、一通り木の枝などを調べたが花が見つかる事はなかった。あたるは 「くそっ、やっぱり誰か拾ってしまったか…」と言うと、スルスルと木を降りた。あたるは下に降りると 「きっと今頃、花を持ってった奴は訳も分からず鉢にでも生けてるんだろうな」と言いながら、フッと因幡の言った事を思い出した。 「そう言えば因幡のヤツ、他にも何か言ってたな…」あたるは呟くと、その場に座り込み腕を組んで考え出した。そして、因幡の言った事を思い出し顔を上げた瞬間、あたるの目に写ったのは世にも恐ろし形相で、あたるは心臓が止まりそうになった。 あたるの目前に居たのは錯乱坊で、錯乱坊は 「こんな所で昼寝か?」と言ったが、あたるはすぐに立ち上がると錯乱坊の頭にゲンコツを振り下ろし 「おい、チェリー!お前は俺を殺す気か!!」と叫んだ。しかし錯乱坊はゲンコツをものともせず 「いやな、お主が死んでおらんか心配での」と言った。あたるは更に錯乱坊を足蹴にすると 「お前のせいで、死ぬかと思ったわ!!」と言い、更に 「いつもいつも変な出方ばかりしおって!」と言って、錯乱坊を蹴りまくった。そのせいであたるの足元は土煙で錯乱坊が見えなくなるくらいだった。すると、あたるの背後から 「そんなに地面を蹴って楽しいのかのう」と声が聞こえ、あたるは激しくコケた。あたるは体制を建て直し振り向くと、そこには地面に座布団を敷いてお茶を啜る錯乱坊の姿が有った。あたるは何処からともなくフライパンを取り出し、そのフライパンで錯乱坊を叩き飛ばし 「いい加減にしろ!この妖怪坊主がぁぁぁー!」と叫んだ。 その頃ラムは因幡を探して公園に行きベンチの所へ行ってみたが、そこに因幡の姿はなかった。ラムは 「え?何処行ったっちゃ。?」と言うと、慌てて辺りを見渡した。しかし、いくら探しても因幡の姿は見当たらなかった。ラムは公園を離れ他を探す事にしたが (一体どこに行ったっちゃ?)と思い公園の上空から見つけようと、周辺が見渡せる所まで上昇して辺りを見回した。すると商店街近くをトボトボと歩く白い影を見つけた。 「あれだっちゃ!」ラムは、そう言うと一目散に因幡の元に向かった。 因幡は、項垂れながら 「はぁ、また怒られるなぁ…今度はどんな罰を受けなきゃならないんだろう」と言うと、大きなため息をついた。 その時 「やっと見つけたっちゃ!」と言う声と共に、目の前にラムが降りて来た。因幡はラムを見て 「あ!ラムさん!」と言って、すぐにラムに 「ラムさん!教えて下さい!さっき言ってた人は誰ですか?」と言って迫った。ラムは突然因幡が訳の分からない事を言って迫って来たので、慌てて飛び上がり 「いきなり何だっちゃ?」と叫んだ。すると因幡は 「ラムさんがさっき言ってた人の事を教えて欲しいんです!」と叫んだ。しかし、ラムは因幡が何を言ってるのか分からず 「さっきの人って誰だっちゃ?」と聞くと因幡は 「何を言ってるんですか、さっきラムさんが似た様な花を持ってる人が居るって言ったんじゃないですか」と言った。ラムは因幡の言葉を聞いて愕然とした。 (…全く覚えてないっちゃ…やっぱり、記憶の一部が完全に消えてるっちゃ)ラムは、そう思うと因幡の真剣な顔を見て決心した。 (やっぱり因幡くんに話した方がいいっちゃね)そう思うとラムは、ゆっくりと地上に降りた。 ラムはまず 「因幡くん、実を言うとウチ…さっきの記憶がないっちゃ…」と言った。それを聞いた因幡はラムが何を言っているのか理解で出来ず 「何を言ってるんですか?ラムさん」と言った。しかしラムは、因幡の問いには答えず、意を決した様に話し始めた。 「因幡くん、怒らないで良く聞いて欲しいっちゃ」ラムは、何か言いたげな因幡を静止して、話を続けた。 「実は、因幡くんが探している花は…」そう言ってラムは因幡の目を真っ直ぐ見ると 「ウチが持ってるっちゃ…」と言った。因幡はラムの予想もしないカミングアウトに戸惑いながら 「え?ラムさんが?」と問い返した。ラムは小さく頷くと因幡に聞いた。 「あの花って何だっちゃ?」それを聞いた因幡は 「さっきもいいましたが、あの花は人の感情をエネルギーにして成長するんです」と言った。するとラムは 「成長?だっちゃ?」と言った。それを聞いて因幡は 「本当に覚えてないんですね」と言うと、ハッと何かに気が付いた様な顔をすると、因幡の顔は一気に青ざめ 「ま、ま、まさか…もう花びらが…」と言った。するとラムは何も言わずに頷き、それを見た因幡は 「た、た、大変だ!一体どうすれば!」とあたふたと行ったり来たりし始めた。そんな因幡にラムは 「とにかく落ち着くっちゃ!」と言い聞かせると、因幡は我に返り再びラムの方を向くと 「そ、それで今、花びらは何枚ですか?」と聞いた。ラムは俯き加減で 「7枚だっちゃ」と言った。それを聞いた因幡は、ガクンと膝を地面に着き 「7枚…手遅れだ…」と言った。そんな因幡にラムは 「え?手遅れ?手遅れって、どう言う事だっちゃ?」と言って、膝まづいている因幡の襟首を掴んだ。因幡は全く抵抗せず 「あの花は10枚の花びらを持っていて、人の感情を吸収する度に花びらを1枚落とします。そして、一人の人の感情を3回、つまり花びらを3枚落とした時点でリセットは不可能になってしまうんです。今花びらが7枚と言う事は、既に3枚の花びらが散った事になります」と言った。ラムは因幡の襟首から手を離すと 「つまり…どう言う事だっちゃ?花びらが全部散ったら、ウチはどうなるっちゃ?」と言った。そして因幡は悲しそうな顔で言った。 「それは僕にも分かりません。ある人は願い事が叶ったと、またある人は、記憶を全て失い廃人の様になってしまったと、そしてまたある人は…」とそこまで言った時、ラムが 「もういいっちゃ!もう…」と言い、俯いた。そして俯いたまま 「何か方法はないっちゃ?」と聞くと因幡は 「それは分かりません。ぼくも調べて見てますが、期待しないで下さい」と言った。ラムは、ただ黙ってその場に立ち尽くした。 つづく