つばめとサクラ (Page 2)
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「つばめ」
 顔を上げると3人の女子が立っていた。
「ちょっとあんた顔貸してもらおうか」
 囲まれながら校舎裏につれてかれた。
 一人の女が言った。
「あんたさームカツクんだよ、尾津乃さんにひっつきやがって」
 もう一人が言った。
「そうだよ、あんたなんか言ってみなよ」
 そう言って顔をのぞきこんだ。
 三人めの女が言った。
「シカトだってえ、すましちゃって」
「ちょっと痛い目にあわしてやろうよ」
「どうすんの?」
「そりぁ・・・」
 女が口を開いたとき
「やめろーっ」
「つばめっ」
「サクラさんに何をするんだ」
 つばめは私の前に立ちふさがった。
「えっえっ、あのその」
 一人がかけだした。
「あっ、待ってよー」
 そうして残りの二人もかけだしていった。

「だいじょうぶかい?」
「ええ」
「帰ろうか」
「うん」
 なんだかとても幸せだった。
 帰り道。つばめが急に止まった。
「どうしたの」
「「あの、さ。うーん」
「いったいどうしたんだ腹でもこわしたか?」
 つばめはまっすぐ自分の目を見つめた。
「僕は君のことが・・・」
 なんだか一瞬時が止まったように感じた。
「つばめ・・・」
 二人は近づき目をつむり・・・
「おぬしらなにをしておる」(ドッカーン)
「お、おじうえ帰ってきてらしたのですか」
 おじうえはつばめの顔をのぞきこみ言った。
「うーむ。サクラをめとるからには相当の霊力がなければならぬぞ」
「は、はい」
 おじうえはくるっと向きを変えた。
「まあよいそこで飯でも食ってくか?」
「いらん、おじうえの飯など食べたら腹をこわす」
「そんなこと言わずに食ってけ」
「いらんと言っとろうが、行くぞつばめ」
「あ、うん」
「(つばめか・・・あの男相当苦労するな)」
 家の前に着いた。
「じゃあまたね」
「ああ」
 つばめは帰っていった。私はさっきのことを思い出して赤面した。

 それから数ヶ月が通り過ぎつばめの勉強のおかげで三年になれた。
 穏やかな春の午後の帰り道桜並木を通った。桜の花が美しく舞っている。
「サクラ」
「なんじゃ、つばめ」
「実は・・・僕ヨーロッパに行くことにしたんだ」
「えっ、つばめ本当か・・・?」
「ああ・・・でも」
「いやじゃいやじゃいつまでも私のそばにいておくれ」
 つばめの肩をつかんで揺さぶった。
「ごめん・・・どうしても行かなくちゃいけないんだ」
「なんじゃなんじゃ今まで勝手に引っ付いてきたくせに・・・つばめのバカッ」
 つばめを突き押して走り出した。涙が出てきた。
 しかしつばめはすぐに追いついてきた。
 私の腕をつかんで言った。
「ごめんサクラ・・・でも僕だって君と分かれるなんていやだ、僕だって」
 つばめの声は最後には涙声になった。
「わかった・・・」
 泣きながら言った。
「いいかつばめ。絶対月に一度手紙を出すのじゃぞ、いや毎週じゃ」
「うん」
「絶対毎日私のことを思い出すのじゃぞ」
「うん」
「他の女に手え出したら許さんぞ」
「うん」
「絶対、絶対私のことを忘れるんじゃないぞ」
「忘れるわけないじゃないか。僕は君のことを愛している」
「つばめ・・・」
 二人は口付けをした。
 そしてつばめは旅立っていった。
 しかしつばめのいない毎日はつらかった。体調がよくても学校を休んだ

 ある日つばめからの最初の手紙が届いた。それには一枚の写真が同封されて
いた。
 写真にはつばめの元気そうな笑顔が写っていた。
 それを見てサクラは立ち上がった制服に着替えかばんを持ち学校に向かった。
 苦しかったけど走った。
 なぜか涙が出てきた。
 そして思った次に合うとき笑顔で迎えられるように今のうちに泣いておこう
と。


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