キミと過ごした日々『第6話』家族みたいで… (Page 2)
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あたるが思考にふけっているとき、玄関のベルがなった。
「はぁーい」
プシュー
「こんにちはっちゃ♪」
ドアの先にはまだ制服姿のラムがいた。
「あぁ、どうした?」
「うち、この隣に引っ越してきたから挨拶に来たっちゃ」
あぁ、そういえばそんなシステムがあったね
あたるは玄関の壁に寄りかかりながらハアと大きなため息をついた。が、ラムにはそんなサインは通用しない。
「とゆーわけで、お邪魔しまぁす!」
「ふーん、男の子の部屋にしては綺麗だっちゃねぇ」
あたるの部屋を見回す。
「まぁな。じゃ、オレは買い物に行って来るから適当にしててくれ」
「あ、うちも行くー!」
あたるは小さい子供をなだめるように優しく微笑む。
「すぐに帰ってくるから、待ってろって……」
その後もラムはふーん、へぇー、と呟きながら色々なところを見る。例えば本棚、ベッドの下、机と壁の隙間………健全な男子は必ず持っているはずのものを探しているのだ。
「ないっちゃねぇ…………あっ」
あたるの机の上に伏せられた写真たてがあるのを見つけた。
ダーリンとお父様と…………誰だっちゃ?
写真には確かに三人写っているが、まだ小さなあたるを抱いている人の顔の部分だけが切り取られている。
何でこんなことを………
「ただいまー」
ラムが考えにふけっているとあたるが帰ってきた。
「あ、おかえりなさい!」
写真たてを元に戻して玄関まで小走りで行く。
玄関まで来たラムの姿をしばらく呆けたように見つめるあたる。
「?……荷物、持つっちゃよ☆」
「あ、あぁサンキュー」
「今日はカレーなんだ。食べてくか?」
「うん☆うちも作るの手伝うっちゃ!」
10分後
「ま、まぁ、人には向き不向きがあるさ」
ラムに任せたにんじんの残骸をゴミ箱に捨てながらあたるはラムになぐさめの言葉を与えた。
リビングの上で顔を伏せているラム。
ダーリン、なぐさめになってないっちゃ………
さらに20分後
「「いただきます」」
……………
「うん、美味い」
「だっちゃね♪今度はうちがダーリンにご飯を作ってくるっちゃ!」
燃えるラムとは対照的に頭に大きな汗を垂らすあたる。
ま、まだ人参以外に犠牲者を出すつもりか?!
あたるはしばらく考えて。
「…………よ、よし!当番制にしよう!」
「当番制?」
「ああ、ちょっと待ってろよ」
…………
………
……
…
「できた!」
机の上には月曜から日曜までの表が書かれた紙がある。
「これで決めるっちゃ?」
「そう!ジャンケンで負けた方から書き込んでいく」
「いくぞ、ジャンケン………………」
「つーことで、オレが作る!」
「むぅ」
ラムは拗ねて口を尖らせてみせる。
表には全てあたるの名前が書き込まれていた。
「なぁんか納得いかないっちゃねぇ」
「オレは昔からジャンケンは得意なんだよな。とゆーより、読みが外れないわけなんだな」
べぇと舌を出す。
「……………でもまっ、こういうのも良いもんだな」
「何がだっちゃ?」
あたるの言葉が何を指しているのか分からずに頭に疑問符を浮かべるラム。
「家族みたいで」
「えっ?」
ほのかに頬を染めるラム。
それって・・・・・
「…………オレが帰ってきた時、玄関まで迎えてくれただろ?母さん…………ていうのかな?アレが嬉しくて」
嬉しそうに微笑むあたるだが、口に出してみるとやはり恥ずかしい。
「なぁんてな!オレはそんなに暗いヤツじゃねぇーよ」
「うち………」
「え?」
「…………う、うちで良かったら毎日言ってあげるっちゃよ?」
恥ずかしく、モジモジしながら言う。
「………サンキュー」
本日最高の笑顔はこうして生まれた。
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