となりのメガネ (Page 2)
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「それはね・・・『打倒ラム!』」
 と、握りこぶしを作って言った。
「うっ、ぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ」
「なにがおかしいっ!」
「いや、ごめんごめん。うん、悪い案じゃないわね。で?」
「で、って?」
「だからどうすんのよ?」
「それを今考えてんのよ」
「・・・あ、そーなの」
「なによその顔は。久美子の考えはどーなのよ」
「ふっふっふ・・・。わたし、プールでバイトしようと思うの」
「はあ?」
「あのさ、これから夏でしょ?プールへ行くでしょ?わたしかバイトしてタダ券をもらってくる、そしてキミはメガネ君を誘い水着で誘惑する!どう!完璧でしょ!」
「・・・・・・・・」
「ちょっと!聞いてるの?」
「・・・・・・・・・・だめ」
「なんで!」
「あ、あのねえ」
「ふっふっふ、でももう遅い。もう算段ついちゃったもんねー。来週に面談だもんねー」
「ちょっ、ちょっとー」

 今日の授業は一時間目から体育だ。
 男子がとなりのコートでサッカーをしている。そしてわたしたちは・・・
「はーい、みなさん今日は突然ですが運動テストを行います」
「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 みんなのブーイングが飛ぶ。
 ラムは聞いてなかったかのような顔をしている。
 久美子が話し掛けてきた。
「ねえ、チャンスじゃない?」
「え、なんの?」
「ばかね!ここでいいとこを彼に見せつけるのよ!それにラムも自分がすごいとこ見せつけてやって打ち負かすのよ!」
「なるほど!久美子って天才!」
「でも・・・真美。運動得意だっけ?」
「・・・と、とりあえずがんばるわ」
 まずはけん垂、ラムの隣になるように並ぶ。
「はい、じゃあスタート!」
 腕に力をこめる。でも体は少しも上がらない。
「うーん、だめだっちゃ」
「(そうだわたしは負けられない!)」
 もう一度腕に力をこめる。でもやはり体は上がらない。
「ラムさんがんばってください」
 かっ、彼の声!が、しかし声をかけられている相手はラム!くっ、くやしい!
 そのとき体が上がった!様な気がした。
 が!隣りではラムがなんと楽にけん垂しているではないか!
「ラムさん飛んじゃだめです!」
 先生の声が飛ぶ。
 結局彼に見せつける事はできなかった。でもラムには勝ったのかしら?
「(まあけん垂できたら怪力女とか思われかもしれないしね)」
 さて次は50mだ。
「なんとしてもいいところを見せるのよ!」
「位置について」
「よーし全力で走るのよ!」
「よーい・・・」
「真美さんフライングです」
 げっ!
 はっ、恥ずかしー!
 かっ、彼は!彼は見てないわよね!
 男子ほぼ全員こっちを見てる、彼もいた!
 恥ずかしい・・・。
「位置について」
 こんなとこ見られるなんて・・・。
「よーい」
 ああああああ、どうしよう。
「ドン!」
 あ、まずい走らなきゃ!
 ラムの後姿が見える。
 少しずつ差が広がってゆく。
「このままじゃ負けちゃう!」
 ん!ラムが少し浮いて・・・浮いてる!
 と、そのとき真美は思い切りつま先に石を当てていた。
 次の瞬間真美の体は宙に浮き頭から地面にぶつかった。
「いたたたたた」
 世界がぐるぐる回る。
 みんなが駆け寄ってくる。
「大丈夫!真美」
「うーん。だめ」
 わたしはぱたりと倒れた。

 目が覚めるとベットに寝ていた。
 薬品の匂いがする。白い天井とカーテン。観葉植物が見える。
 保健室?
 自分のほかに誰もいないようだ。
 そのとき。
 コツコツ・・・。
 誰かの足音。
 ドアにシルエットが写る。
 ガラガラッ。ドアが開く。出てきたのは・・・
 彼!

 保健室に若い男女が二人きり、これはもしや!
「(キャアキャアキャアキャアキャアキャアキャアキャアキャアキャアキャアキャアキャアーー)」

つづく?

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