相撲大会の夜(渚×竜之介) (Page 2)
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竜之介は顔面蒼白になった。
「てめえっ!何て事しやがんでえっ!!」
「お前、命拾いしたぜえ。おれは本当はお前に打ち込んだんだ。
とっさに潮渡が、お前を放り投げたから助かったな。
そいつの愛する人ってのは、お前の事だろう。まあ、ホモとは知らなかったがな。ぎゃははははっ!」
竜之介はブチ切れた。
「おれは女だーっ!」
飛び掛かろうとしたが、渚に制され、その隙に大男は逃げ去った。

「何でおれを止めたんでえ。」
息苦しそうに、
「大男は言ったでしょ。・・狙いは、竜之介さまよ。あいつ・・スタンガンを、隠し、持ってた。」
竜之介は驚いた。

倒れている渚の腰に腕を回して、抱き抱えた。
「うう・・・ん・・・。」
「渚、苦しいのか?」
生温かい感触に、掌を見ると血が付いていた。
竜之介は激しく動揺した。
「てめえ、何でおれを庇ったんでい。」
渚は竜之介を見詰めた。
「・・・好き、だか、ら、よ・・・。」 

その時、竜之介の眼から、無意識に涙が零れた。
渚は息も絶え絶えに、
「ねえ、最後の、お願、い。・・・キス、した、い・・の。」
竜之介は、切なさで涙が止まらない。
「最後って・・・。そんな言い方、するんじゃねえよ。キスでも何でもするから。だから・・。」

渚は竜之介の首に腕を回した。
「わすれ、ない、で・・・・。」
渚は眼を閉じた。
竜之介は意を決した。
眼を閉じながら、そっと口づける。
「嬉しい・・・・これで、やっと・・・。」
「渚っ!死ぬなよっ!!おれは、まだっ・・・!」
渚はガックリと項垂れた。

「渚ーっ!!!」

竜之介は号泣した。


翌日。
おやじはいない。
大丼で、飯をガツ食いする渚。
「てめえっ!死んだんじゃねえのか!」
モリはかすっただけだった。
相撲大会で、腹が減り過ぎて気絶したらしい。

「んっ?あたし、とっくに死んでるし。もし身体が滅びても、またウニの涙で蘇っちゃうし。
幽霊は不死身よっ!!」
「だいたい、てめえはなあっ!
最後だとか、忘れないでとか、いちいち大袈裟なんだよっ!!」
まったく、明るい奴だ。
さんざん泣いて、損したぜ。

「さてと、お腹も膨れたし、昨日の続きをしましょうか。」
竜之介は嫌な予感がした。
「続きって?」
「あら、忘れたとは言わさないわよ。キスでも『何でも』するって、言ったじゃないv」
渚は少しイヤらしい眼つきになった。
「バ、バカ。あれはてめえが、死にそうだったからじゃねえか。」
「でも、竜之介さまもあたしの事、好きだって解ったし。もともと許婚だし。だ・か・らv」
「だ・か・らvじゃねえ!誰がてめえを好きなんて言った!」

「なによ!すぐヤキモチ妬くし、あたしを失うと思って泣いてくれたじゃない!
それにもう、キスもしたんだし。あとは・・・・。」
渚が竜之介に、にじり寄る。
「冗談じゃねえっ!!」
身の危険を感じて、一目散に外へ逃げ出した。
「竜之介さまっ!!待ってーっ!!」

        end

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