「ザット・クレイジー・サマー」第九話・前編 (Page 2)
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面堂「な〜〜んで了子が出てくるんだ!貴様こそ、ラムさんをこれ以上貴様の毒牙にかけるわけにはいか〜ん!絶対なら〜〜ん!ラムさんは僕だけのもんだ、貴様には豚に真珠、月にすっぽんだ〜〜〜!!
   諸星!いざ尋常に勝負!でやあああああああああああああ!!!」
あたる「おりゃああああああ!!!」


ラム「…………はぁ…………」


一方本部テントでは。

しのぶ「依然昨日と同様圧倒的軍事力を誇る面堂選手、電撃をものともしない諸星選手が一騎打ちの展開となっています!ただ今両者による白兵戦が行われているもよう……」


チビ「あたるも面堂もアホだね〜」
パーマ「いつか持ってきた占いの機械は正しかったってわけか、ラムちゃんの星の科学力はナメられんな」
メガネ「……………………」
    (アホどもの正体見たりやはりアホ。
    
    しかし当のラムさんがあの様子じゃ昨日のことなぞ信じてくださる可能性など微塵もないし………八方ふさがりか、こりゃあ…)
    「はああ〜〜〜ぁあ〜〜ぁあ!!」

チビ「!メガネ、どう…」
パーマ「放っとくのが一番!」
チビ「で、でも…………」
パーマ「放っとくのが一番!下手に立ち入ると地獄を見るぞ」

メガネ「ダメだこりゃ、俺ゃお呼びでないのか、ガチョ〜〜ンってかぁ??!!!」


チビ「………だね」
パーマ「……だろ」

メガネ「…………………………………………………………………はぁ…………」






…………メガネさん…………


メガネ「はあっっ?!?!!?!」


このこえは間違いない!おれが聞きちがえるはずなどない!


ラム「…………メガネさん…………」

メガネ「!!は、はぁあい!この不肖の下僕メガネめになんでごぜえましょう!」

ラム「……………十一時ちょうどに……………」
メガネ「ちょーどに?!」
ラム「校門の前の桜の木の下に……来てほしいっちゃ……………あんまり人のよらない……ところが……いいっちゃ…、じゃ……まってるっちゃ」
メガネ「                 」


   (これは罠か?いやいやい〜やいや、まさか!いやなんかよくわからんがとにかく午前十一時きっかりに桜の木の下だな!)


パーマ「今、何が起きたんだ?」
チビ「なんか………歴史的瞬間だったような…………」

メガネ「やまがうごいたあああああ〜〜ああああっっっっっ!」
チビ・パーマ「「わあっっっ、心臓に悪い!」」



運命の十一時きっかり。

ラム「呼び出したりしてごめんっちゃ」
メガネ「どうしたんですか、急に改まって?」
ラム「朝のダーリンと終太郎のけんかとやり取り見たっちゃ?」
メガネ「モニターで見ましたが」
ラム「うち、なんだかばからしくなったっちゃ」
メガネ「………」
ラム「……うち、いっそのこと、………」
メガネ「………」
ラム「…………いっそのこと、」
メガネ「………」(いっそのこと、なんだぁああっあ?!!?!)
ラム「うちのこと、真剣に思ってくれてる人に、任せようかなあって…………身も心も……あげようって…思ったっちゃ……………」
メガネ「…………」(↑っておれ?)
ラム「メガネさん、付き合ってほしいっちゃ!もうダーリンのことなんかきれいさっぱり忘れるっちゃ!うちをハーレムの一人としでだけしか見てくれないダーリンなんか、もう御免だっちゃ!」
メガネ「…………………」(失神するな、失神するな俺!いつかみたいに屋根にもぼって拡声器で叫んだりするなよサトシ!)
ラム「メガネさん………いいっちゃ?」
メガネ「ラムさん……」
ラム「ラムって呼んでほしいっちゃ……」

首を縦に振った。

ラム「………………………」おもむろに瞳を閉じ、顎を少し上げた。

ああ、人気の少ないところにと指定したのはこのためだったんだ、すぐ気付いておくべきだった、昨日風呂に入っておくんだった、歯なんか十ぺんぐらい磨いておくんだった、気の利いた一言でも言えるように予行演習を怠るんじゃなかった、
学生服のホコリと靴の泥を落としておくんだった、男ならこんな時ぐらいキリリと赤フンをつけておくべきだった悔しいなあ、にきびをつぶした後がみっともないなあ、もっとリラックスすべきだろ俺、いや今は目の前に集中しろ!
ああ、運命の瞬間である!万感の思い!
夢にまで見ていた。それが、こうやってもう手の届きそうなところにあると、今までの脳内予行演習――たいていの世間一般の大衆はこれを妄想と呼ぶ――はすべて吹っ飛び頭は真っ白、言葉が出ないものである。
ええい、どうにでもなれ!意を決し、
メガネをおもむろに外す!右……いや、利き手じゃない左手で持った方が何かと絶対いい!左手でメガネの右側のつるを持つ!
そして私ことメガネは…………



ん?




いっぺん、メガネをかけなおすメガネ。

もういっぺん外し、息をまんべんなく吹きかけ曇らせ愛用のメガネ拭きで拭く。

もういっぺんかけなおす。




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