つばめとサクラ (Page 1)
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                            つばめとサクラ

サクラ
 私とツバメが出会ったのは高校二年の二学期の始業式の日だった。私はその
日ゆううつだった、なぜなら今学期もほとんどは休んでしまうからだ。これか
らまた始まる退屈な日々・・・今まで何度もそう思ってきたことか。そんなこ
とを考えながら学校の前に着いた、が、人が誰も見当たらない、しまった遅れ
たか?そう思ったそのとき、心臓が苦しくなりまわりがかすんできて力が抜け、
前に倒れかけたとき、「だいじょぶかい、君」と、ささえてくれた、それがつば
めとの出会いだった。

「保健室に行かないと・・・保健室ってどこにあるんだ?」
 彼にささえられながら歩いた
「あっち」
 かすれた声で言いながら指差した。
「こっちだね」
 保健室の前に着いた。
「あの、すみません」
「はいどうしました」
「この子の気分がすごく悪いみたいで」
「あらあら大変ちょっとベットに寝かせてあげて」
「はい・・・だいじょうぶかい?」
 かれは私にたずねた、しかし私はうなずくのが精一杯だった。
 ベットの上に横たわり私は意識がうすれるのを感じた。

 気がつくと白い天井が目に入った。ここは・・・そうだ私はあの人に、思い
出しながらゆっくり起き上がった。
「あらもう起きたの、さっき寝たばっかりなのにまだ寝てなさい」
「いえ、だいじょうぶ、です」
「そう、だめだったら先生に言って帰してもらいなさい。まあでも今日は早く
終わりますからね、あぁそうだちゃんとあの子にお礼言っと着なさい」
「はい、失礼します」
 そう言って保健室を出た。でもあの人の名前もクラスもわからない。どうす
ればいいのだろう。
 どうしようかと考えなが廊下を歩いた、外は残暑の光が暑くさしている。
 教室に着いた。クラスメイトたちはすでに戻っていたが先生は戻ってきてい
ないようでおしゃべりがさわがしかった。席に座ると同時に先生が入ってきた
がおしゃべりは続いた。
「おい静かにしろー席につけー、えー転校生を紹介する」
 おしゃべりがぴたっとやんだ。
「入ってこいー」
 ガラガラッ。
「キャー」
 幾人かの女子が騒いだ。(カッコよかったからだろう)
「尾津乃つばめです、よろしく」
 サクラはびっくりした。さっきの人・・・。
 彼は私に気づいた。そしてたぶん私に向かってほほえんだ。
「みんな仲良くやってくれ、じゃああの空いている席に座って」
「はい」
 そう言って彼はこっちに向かってきた。
「やぁ同じクラスなんだねよろしく」
「え、ええ、あのさっきはありがとう」
「どういたしまして」
 そして彼は私の二つ後ろの席に座った。
 私は彼のことが気になり先生の話はうわの空だった。
 ホームルームが終わると帰りだが彼はみんなの質問責めにあっていた。
 私はかばんを持って教室を出た、靴を履き替え外に出ると暑さで一瞬くらっ
ときた。早く帰ろう。私はそう思った。
 校門を出たとき。
「おーい」
 振り返ると彼が走ってきた。
「あのさ、君の名前教えてくれるかい?」
「サクラ」
 なんで私にかまってくるんだろう?少し不信感を抱いた。
 少し歩く速度を速めた
「あのさ、信じてくれないかもしれないけど」
 そう言いながら彼は私の前に立ちふさがった。
「君が体調悪いのは霊の所為なんだ」
「ええ、わかってる」
 彼を通りこしながら言った。
「どんなにお祓いしても無駄だった」
「そうだったんだ」
「さあおぬしの家に帰れ」
「だめだよ途中で倒れたりしたらどうするんだ」
「だいじょうぶだ」
「そんなわけない。嫌でもついて行くからね」
 二人は黙って歩いた。少したって彼は自分のことを話し始めた。私は黙って
聞いていた。
「さあ着いた。早く帰るがよい」
「へえ、君んち神社やっているんだ。じゃあまた明日ね」
 彼は石段を降りて帰っていった。
 ちょっと悪かったかな。少し後悔した。

 次の日、体調がいつもより悪かった。
「母上」
「どうしたサクラ」母がふすまを開け入ってきた。
「今日は体の調子がすぐれぬので学校は休みます」
「そうかい、連絡しとくね」
「あぁそれとおじうえは?」
「また旅に出ましたよ。そうだそれとねぇそとに制服着た男の人がいるけどサ
クラの友達かい?」
「!!」
 がばっと起き上がった。と同時に体に痛みが走りまた寝た。
 尾津乃が来ている。
「母上、すまぬがその男に休むと伝えてくだされ」
「あいよ」母はふすまを閉め出て行った。
 母と尾津乃の声かすかに聞こえる。
 しかしなぜ尾津乃が来たんだろう。いや、わかっている。でも。
 次の日かばんを持って家を出ると尾津乃が待っていた。
「やあ」
「お、おはよう」
 いっしょに歩くのがすごく恥ずかしかった。帰りもやっぱりついてきて恥ず
かしかった。
 毎日彼は来た。休んだときも学校が終わった後来て話をしたり勉強を教えて
くれるようになった。

 しばらくして秋が訪れ、枯葉がざわめくある日、授業が終わったあと校門で
尾津乃を待っていたとき、足音がした。

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