キミと過ごした日々『第1話』あたる、襲来 (Page 1)
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キミと過ごした日々

『第1話』あたる、襲来







上空には綺麗な青空が顔を出している。だが、街はしんと静まり返り、その街のビルに挟まれた道路を3メートルくらいの黒い影がゆっくりと歩いていた。






此処は第三新友引町の電話ボックスだ。諸星あたるは電話をかけていた。

「ダメかぁ」

ガチャと受話器をおく。回線は不通だった。

「うーむ、一体どんな人なんだ?………まッ、こぉんなことする人なんだから大体は想像できるだけどな」

そう言ってあたるが制服のポケットから取り出した写真。そこには綺麗な黒髪の美女が膝に手をつき、まるで胸を強調しているかのような格好をし、こちらにピースサインを送っている。父の手紙と一緒に送られてきたものだ。

あたるは人の気配を感じたような気がして道路の方を見た。

「ん?」

そこには少女が立っていた。太陽の光を浴び、腰までのばされた碧色の髪がらんらんと輝いていた。
あたるは何となく不思議な雰囲気を出しているその少女を見る。

ドーン!

あたるの耳に騒音が届いた。あたるが見上げた空には無数の戦闘機がいた。爆弾をどこかに落としたたようだ。あたるは慌てて少女の方に向き直る。

「お………」

『おい』と言いたかったが、その言葉を受け取る者はいなかった。だが、あたるにはそのことに驚いている暇はなかった。

「!!」

爆発による煙の中から出てきた生命体があたるを驚愕させることとなった。ソイツは黒い体に頭らしきものが人間でいうと胸のあたりにあり、手足は細く、不気味な雰囲気を漂わせていた。

ヤバい、あたるはそう直感した。だが、ソイツはあたるの考えなど関係なしと近寄ってくる。

「(どうする?いっくらオレでも化け物を相手にしたことはないし………)逃げるか。」

あたるが逃げようと後ろを向いた時

ドカッ

「あん?」

あたるが再び振り向いた先に見た光景。そこでは化け物が青いロボットに蹴り倒されていた。
そのロボットは鬼のような顔をもち、腕や足の一部からは人の肌が見られる。中身は人間だ。

キキィィィ

あたるの前に急ブレーキとともに滑り込んでくる青い車。
素早くドアが開く。

「すまぬ。待たせたな」

余裕の笑みを浮かべた女性がそこにあった。






「おばさん、どこ向かってるんですか?」

お・ば・さ・ん、だとぉ〜………私はまだ20代じゃい

こめかみをこれ以上ないくらいピクピクさせながらも平然を装う。

「遅れてすまなかったな。お姉さんは20歳のサクラじゃ、諸星あたる君。」

お姉さんというとこらと20歳というところに強くアクセントをいれて自己紹介をする。

「あぁ、写真のおば………」

その続きをあたるが言おうとした瞬間、射るような視線を飛ばす。

「あー、お姉さん」

冷汗をかきながらも言い直すあたる。

こんなときにつまらないことにこだわるなー

「サクラさん、街には人がいなかったけどどうして………」

「ああ、みんな避難しているからじゃ」






あたるは車のバックミラーであの化け物を見る。

「あれは何ですか?」

「使徒、人類を滅ぼそうとする敵じゃ」

あたるはバックミラーで上空のヘリを次々に破壊している化け物を見ながら復唱する。

「シト、人類の敵………」








「目標は依然健在。現在も友引町に向かい、進行中」

「総力戦だ。厚木と人間を全て挙げろ。」

「出し惜しみはなしだ!!何が何でも目標をつぶせ!!」

ミサイルが使徒に向けて投下された。しかし、使徒は片手でミサイルを受け止めると、バラバラに切り裂いてしまった。
通常の火力ではもはや対処できないのだろうか。
爆煙の中から使徒が無傷のまま現れる。

「なぜだ!?直撃のはずだ!」

慌てる軍首脳達を尻目に、会話をかわす2つの黒い影。

「やはりATフィールドやろか」

「そや、アイツに対して通常兵器では役に立たへん」

「そうだ、M2を使え」

軍首脳のうちの一人が部下に電話で命令を下した。
次の瞬間、まるで核爆発を思わせる爆発が起こり、巨大な火球が使徒を包み込んだ。

「残念ながら、君たちの出番はなかったようだな」

軍の高官が二人の黒い影に勝ち誇ったように語りかける。
だが………

「その後、目標は?」

「電波障害のため確認できません」

「あの爆発だ。ケリはついてる!」

「センサー回復します」

「爆心地にエネルギー反応」

「何だと!?」

使徒の姿がモニターに映った。
その姿にどよめく一同。

「我々の切り札が………」

「なんてことだ」

「化け物めっ!!」

軍人の一人が悔しそうに拳を机に叩きつける。
焦土と化した地上に立つ使徒。まるで呼吸するかのように動くエラ状のもの。さらにそれまで頭部だったものを押し退けるようにして顔を出している新しい頭らしきもの。
多少のダメージはあるが、使徒は未だ健在だ。





爆心地では使徒が身体に受けたダメージを回復しつつある。

「予想通り自己修復中かいな」

黒い影のうちの一人………ノームがモニターを見ながら言う。


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