キミと過ごした日々『第3話』覚醒 (Page 1)
Page: 01 02

キミと過ごした日々

『第3話』覚醒






「おぬしの父は…………死んだ」

サクラの言葉は病室一面に響き渡った。

あたるはただ唖然とする

「そ、そんな…………オレは父さんに呼ばれたんだ。その父さんがいないワケがあるか?!」

「その手紙は死する前に書いてあったものだ。おぬしの父はこのような事態になると分かっておったのであろう……………」

「それなら、何でもっと早く知らせてくれなかったんだよ?!オレが…………オレが事情知ってたら協力しないと思ったのか?!どうでもいいことだとでも思ったのか?!」

「あ、あの時は―――――」

「結局、あんたもズルイ大人なんだろ…………父さんがいないんじゃあ、オレが逃げるとでも?だからオレに黙って――――――」

「ええい、私の話を聞け!!おぬしの父が事が一段落するまで黙ってるように言ったのだ!おぬしのために!」

「オレの、ため……………?」

「敵の力は強大じゃ。おぬしがいくら強くとも戦いに集中できなければ負ける確率は増す。現に、今回の戦闘も危なかったではないか」

「………………」

「行くか?」

サクラはあたるがやっと黙ったのを見て小さくため息をすると、あたると共に自分の愛車へと足を向けた。







墓地

「……………」

あたるは父の墓の前に座り、静かに手を合わせている。

「ッたく、勝手に死ぬなよな。オレには連絡もよこさない、かまってもくれない。顔だってずっと見てなかったのに…………」

ザッ――――――

ザアアァァァ

まただ…………
涙げ出そうになると決まってこれだ。
テレビのモニターが壊れたかのようなイメージ。
そして空一面にどす黒い雲、その雲から絶えず雨が振ってくる光景。
思いだそうとすると思い出したらいけないと自分の中の何かが叫ぶ。


これじゃあ、泣きたくても泣けないじゃないか……………悲しいはずなのに――――――


スゥ

あたるの前を黒い影が被う。

「おぬしの父は病であった。自分ぬもしものことがあったら、おぬしのことは頼むと言われてな。……………しかし、おぬしにはまだまだ使徒と戦ってもらわなければならない。酷なこととは思うが、そうでもしないと私達に未来はないんじゃ。
……………協力してくれるか?」


…………もうオレには母さんのブレスレットと父さんとの約束しか残されていない。

合わせていた手を戻し、あたるは静かに立ち上がった。


オレは―――――――


「やります」


強くなるんだ









友引マンション

あたるとサクラは炎天下の中マンションの前にいる。

「と、いうことで。おぬしにはここに住んでもらう。荷物ももうじき届くし、明日からは学校じゃ。
良いな、諸星?」

「良いも何も、オレ、こんなところに住んでも良いのか?」

このマンションはいわゆる億ション。とても高校生が一人で住むところではない。

「あったりまえだ。おぬしがしていることも『仕事』だからな。鬼星の仕事じゃ。ついでに給料は口座に振り込んでおいた。それと―――――」

スッ

「鬼星のIDカードじゃ」

あたるは受け取ってみると改めて緊張感が身体中を駆け巡る。

「これで最後だが、ここには――――」

サクラが言い終わる前にあたるの後ろのから少女の声が発せられた。

「あ・た・る・君♪」

あたるが振り向いた先には制服姿のしのぶがにこやかに立っていた。

「しのぶじゃないか。どうしてここに?」

「あー、おぬし達は世界の誇るARMORの適格者じゃ。そういう重要人物を他が放っておくまい?だから警護しやすいように一ヶ所に集めとるわけじゃ」

「そ。そんなわけだから、よろしくね!」





同時刻、司令室

意味もなく広い部屋。その中央にポツンと机があり、何故か威圧感を感じさせる。

「んで、予定はどーなっとるんや?」

『明日、船で海を渡るだけです。』

デーモンは電話をしている。相手の声は少し弱々しいが男の声だ。

「よっしゃ、こちらからも迎えを出すさかい気ぃつけて来や」

『了解』








友引マンション

ドサッ

ベッドに勢いよく横になる。上を見上げると本日二度目の知らない天井が目に入る。今回の出来事を思い起こす。





あたるの回想

使徒の攻撃でビルまで吹っ飛び、頭ががっくりと下がっているあたる。
表情は見えないが口元が微かに動き、何かを呟いているのが分かる。
その時………………………


パキイィィン

あたるの右手のブレスレットが二つに割れる。
それと同時にあたるの意識は深い深い暗闇の中へと堕ちていく。





………
……………
…………………
………………………

これは……………檻?


あたるはまるでライオンの檻のようなものを見つける。
檻の中に人がいる。


『ふっ、なかなか粘ったじゃないか』


自分だった。
あたるは目の前のことが信じきれず、目を見開く。


お前は一体………………


『オレはあたる、諸星あたる。キミではないもう一人の諸星あたるさ。

Page 2
戻る
Page: 01 02