キミと過ごした日々『第4話』ラム (Page 1)
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キミと過ごした日々

『第4話』ラム






あたるは夢を見ている。

碧色のキレイな髪を腰まで伸ばし、頭には二つの黄色いリボン。白いワンピースを着た可愛い女の子の夢だ。



………
……………
…………………
………………………

ここはどこかの公園。空は赤く染まり、遊んでいる子供は一人しかいない。
子供時代のあたるだ。砂場であたるはお城を作っている。

「一人で何してるっちゃ?」

あたるが顔を上げると女の子がお城の前に立っていた。

「僕、お城作ってるの」

「ふーん、上手いっちゃねぇ…………ね、うちも一緒に作ってもイイっちゃ?」

「うん!」

あたるは心底嬉しそうだ。




やがて……………

「ラムー、帰るでぇ」

どこからともなく声が聞こえてきた。

「はぁい!…………ね、お前何ていう名前だっちゃ?」

「僕、あたる。諸星あたる。」

「あたる、クン……………だっちゃね♪うち、ラムだっちゃ」

「ラムちゃん?」

「だっちゃ♪あたるクン、明日もうちと一緒に遊ぼう!」

「うん!今度も仲良くしようね!!」






景色は変わり、ある晴れた日の公園。あたるはラムと鬼ごっこをしている。

「ラムちゃん、待ってよぉ」

「えへへ、あたるクン、がんばるっちゃ♪……………ちゃっ!?」

ラムの前に男の子が立っていたためぶつかってしまった。

「あたる〜、女の子と遊んでないでこっち来いよ!そんなことしてたらまた“あたるちゃん”って呼ばれるぜぇ?」

ハッハッハと馬鹿にして笑う。
あたるは目に涙を浮かべた。

「むぅ〜、ダメだっちゃ!!あたるクンはうちと遊ぶんだもん、べぇーだっちゃ!」

「この!」

男の子は顔を赤くしてラムの髪を引っ張る。

「あっ」

ラムの黄色いリボンが外れ、ツノが露わになる。

「返すっちゃあ!!」

「わぁ、コイツ鬼だぜぇ?!
あたる、早く離れろよ!」

ラムは涙目になってあたるを見る。
あたるはそれを見てアッとなる。

「返せよ!僕はラムちゃんと遊ぶんだもん!」

リボンを奪う。

「ふん、俺知らねーぞ!」

男の子は走って行った。

「はい、ラムちゃん。リボン取り返したよ。」

ラムは顔を伏せ、あたるを見ようとしない。

「あたるクン、うちのこと怖くなったっちゃ?」

「なんで?」

「だって!かあちゃんがツノを見られたらダメだって言ってたっちゃ!それにさっきの子も――――――」

「僕、ラムちゃんが鬼でも怖くないもん!ラムちゃんのこと好きなのは変わらないもん!」

ラムはハッと顔を上げた。

「ほ、本当け?あたるクン、うちのこと好きだっちゃ?!」

「うん!」

「うちとずっと仲良くしてくれるっちゃ?!」

「うん!」

「うちをおよめさんにしてくれるっちゃ?!」

「うん!」

「う、うち…………うち嬉しいっちゃ!うちら、両想いだったっちゃ〜」

ラムはあたるに抱きつく。

「ダーリン、うちのことはこれからラムって呼ぶっちゃ!うちらは夫婦だっちゃ♪」

………
……………
…………………
………………………









気持ちの良い朝。どこからかラジオ体操の音が聞こえてくる。


ジュー


今朝、なぁんか夢見てた気がするけど………………なんだったかなぁ



あたるは制服の上にエプロンを着て朝食を作っている。
フライパンの上の玉子焼きの美味しそうな音と匂いが部屋をいっぱいにする。


ピンポーン


「はーい」

フライパンの火を止めてあたるは玄関まで急ぐ。


プシュー


「おはよー」

「朝早くにすまぬな」

扉の先にはしのぶとサクラが立っていた。

「二人ともどうしたんだ?―――――まぁ、上がってくれ」







「あのね、あたる君がご飯に困ってないかなーって思って。料理を持ってきたんだけど……………その心配もなかったみたいね」

あたるの完璧な朝食に目を向ける。

「丁度よい、私が諸星のご飯を食べてくれよう。」

「はあ?なんでオレの朝飯を」

「ふっ、しのぶのためじゃ」

「とか言って、本当は食いしん坊なだけだろ?」

サクラをジト目で見つめる。

「ぐっ………………」

朝から楽しい朝食が始まった。




「ところで諸星、食事がすんだらちょいと海のど真ん中まで行くぞ」


ブウウゥゥゥ


あたるは口に入れていたお茶を吹き出す。
それはあたるの前にいる人物、サクラめがけて飛んでいった。

「……………おぬし、私に恨みでもあるのか?」

サクラはハンカチで顔を拭きつつ、あたるに冷たい視線を向ける。

「当たり前だ!転校初日に学校を休む生徒がどこにいるんじゃい?!しかも理由が海!
一体何しに行くんだよ?!」

「仕方あるまい。学校には連絡している。何よりも司令命令だ。“02を迎えに行け”とな」


命令には逆らえないあたるだった。







船の上

雲一つない透き通るような青い空。その空を鏡で映し出したかのような海。
移動している船の踊り場の柵に手をかけ、あたる達の乗るヘリをじっと見つめる少女がいた。彼女は太陽に背を向けているために顔が影で見えない。

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