キミと過ごした日々『第5話』ライバルと好きな人 (Page 1)
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キミと過ごした日々

『第5話』ライバルと好きな人





あたるとラムは戦艦の上で、サクラとツバメは指令室で使徒を待ち構えている。

「来た。3時の方向」

あたるの声にラムが反応する。
巨大な水しぶきが真っ直ぐこちらに向かってくる。

「これからダーリンに無駄なく美しいプロの戦い方を見せて上げるっちゃ」


別に美しくなくっても・・・


ラムの集中力を裂いてはいけないので心の中で呟いた。

「さあ、来るっちゃ」
装備されたナイフを抜き構えるラム。
使徒が戦艦の直前でジャンプしてラムに体当たりを仕掛ける。
ラムはそれを受け止め踏ん張りきるが、足下の甲板が衝撃力に耐えきれず陥没する。
そのままバランスを崩し使徒ごと海へと沈んでいく。つまり、必然的にARMORの動きは水圧で悪くなる。

「あっ、おい!」

あたるもラムの後を追って海中へと沈んでいく。










見つけた・・・


ラムは使徒を見失い息ができず苦しみかけている。と、あたるがそのラムの口の中にドロップを入れ、自分も口の中に入れた。

「?・・・苦しくないっちゃ」

「サクラさんに貰ってたんだ。それを舐めている間は水の中でも息ができ・・・・」

「どうしたっちゃ?」
いきなり黙り真剣な目になるあたる。

「正面、使徒」

ラムが前方を見ても何もいない。

「何もいないっちゃ」

言うやいなや前方に使徒の影が現れ、あっという間に近づいて来る。
使徒は鋭い牙を並べた口を大きく開いて接近する。

「いやーー。くちだっちゃーーー!」

「使徒だからなぁ」

鈍い動きながらもなんとか使徒の攻撃をかわす。

「ラム、聞こえておるか?現状を報告しろ、ラム」

「今はそれどころじゃないっちゃ!」

視界の悪い海底では一瞬たりとも気が抜けない。
ラムの代わりにあたるが応答する。

「現在、使徒を見失っています」

「使徒の様子は?」

「はい。今のところ使徒は武器らしい物は見せてません。攻撃は突進によって噛み砕こうとするだけです。ATフィールドも展開していません。あ、あとコアを口の中に確認しました。」

「分かった、しばらく時間を稼げ。その間に作戦を考える」

ラムはサクラとあたるの交信内容を片耳で聞いていた。


しばらく時間を稼げ・・・か、簡単に言ってくれるっちゃね。


ラムの神経が鋭い刃物のように研ぎ澄まされる。

「3時の方向だ」

あたるの言葉に反応して右を見る。何もいなかった場所から使徒が現れる。
ギリギリでかわす。


なんで使徒の場所が分かるっちゃ?!


「ラム、諸星、作戦が決まった。ラムは使徒を無人の戦艦まで誘導するんじゃ。諸星はその間に使徒の口をどうにかして開けるんじゃ」


また無茶苦茶なことを・・・


感慨にふけるあたる。

「ええーー。そんなの無理だっちゃ!できるわけが・・・」

「ラム」

「な、なんだっちゃ・・・・」
あたるはラムの話を遮る。
目を見据えて落ち着かせるようにゆっくりとした口調で話す。

「できる・・・きっとできる。プロなんだろ。ラム」

ラムはあたるに促されるように落ち着きを取り戻す。


そう、うちはラム。小さい時からずっと訓練してきたプロフェッショナルのARMOR適格者。


ラムはニヤリと不敵な笑顔を浮かべる。

「やってやるっちゃ!」

あたるは声を出さずにコクリと頷く。
その表情を見てラムは思う。


やっぱりうち、ダーリンのこと・・・・


「正面だ」

「了解だっちゃ」

暗い視界に使徒が影を見せる。

「いくぞ!」

あたるは正面から口を開けて接近する使徒に頭から突っ込む。
使徒は口を閉じようとするがあたるがそれを許さない。

「このぉ〜!」

だがまだ少ししか口が開かない。

「ダーリン!」

「オレのことはいいから!早くコイツを戦艦まで・・・・!」

「分かったっちゃ。ダーリン、頑張って!」
ラムが進むと使徒もそれを追いかける。


くっ、使徒の力が予想外に強い。だが・・・オレは、負けない!


「開け〜!」

海面に達すると同時に使徒の口が開かれる。
あたるが太陽の光を浴びると同時に二隻の戦艦があたるを後ろから通りすぎるように首から使徒の口に突っ込む。

「ダーリン!」

先に行っていたラムがあたるの腰のあたりを抱きかかえ、空高く舞い上がる。
あたる達の目の前で使徒が爆発する。
ラムは勝利を確信するとあたるを船の上に降ろし、振り向きざまに言った。

「どうだっちゃ、ダーリン?プロの戦いは」

「海底に沈んでいく様はあまり美しくなかったな」

自慢げに言うラムにあたるは笑って応える。








ラムは一人展望台で海を見ていた。
日は傾き、夕陽が空と海をオレンジ色に染める。柔らかい風がラムの髪を撫でる。


勝ったっちゃ・・・初陣で勝利を飾ったっちゃ。
でも、これはあたりまえのこと。これからもうちはトップであり続けるっちゃ。そうでもしなきゃ・・・うち・・・



「なにを黄昏ておる」

ラムが振り向いた先にサクラが手を振って立っていた。

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