となりのメガネ (Page 1)
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   となりのメガネ

「あの人はあのとき、となりにいた」

 新緑が風にゆれる初夏の午後の日差しの中、一人の少女が校舎から校庭の片隅で仲間と戯れているメガネを見つめている。
「真美、なにボーっとしてんの?」
親友の久美子に肩を叩かれ、びっくりして振り向く。
「ちょっと、そんなに驚かないでよ」
「あ、私なにも見てないわよ」
「はあ?」
「あ、いや、なんでもない。なんでもない」
「最近真美変じゃない?」
「え、なんで?」
「だっていつもボーっとしてため息ばかりしてるじゃんいったい何があったのか話してみなさいよ」
「ベ、別に何もないわよ」
「う、そ、私をごまかそうったってそうはいかないわ。・・・まさか男!?いやそれどころか妊娠とか!」
「そんなわけないでしょうが、でも・・・」
「でも!?」
「あ、次は移動だったわね」
「ちょっと待ってよ、真美ー」
「(そうよ私はあの人が好き。別に悪い?でもあの人を振り向かせるにはどうしたらいいのかしら?)」

 彼はみんなからメガネと呼ばれている。それはこのクラスで彼しかメガネをかけていないから。それに彼はとっても知的だから。
 彼はとってもかっこいい。彼の笑っている顔。物憂い顔。真剣な顔。どれもかっこいい。
 でも同じのクラスの「ラム」っていう人に夢中みたい。どうしたら彼は私に気がついてくれるにかしら?

 私と彼が出会ったのは中学3年の夏の夕暮れだった。
 
「じゃあ散歩行ってくるね。いこ、ランスロット」
「ワン」
「ねえランスロット。運命ってほんとにあるのかな?わたしの白馬の王子様っているのかなあ?」
 そのときランスロットが急に走り出してなわを放してしまった。
「あ、ランスロット待ちなさい!」
 ランスロットは一目散に道路に走り出る。そしてダンプカーが道の先から走ってくる。
「ランスロット!」
 わたしはその場に崩れ落ちた。
「ワンワン!」
 ああ、ランスロット。ごめんなさい。
「ワンワン!ハッハッハッハッ」
「ランスロット!よかった無事だったのね」
「おい、こら。」
 見上げるとメガネをかけた男の人が立っている
「あ、ランスロットを助けてくれたんですね?ありがとうございます」
「ま、まあな。ほらっ、なわ。もう放すなよ」
 そして男の人は立ち去ろうとする。
「あ、まって。何かお礼を」
 男の人は振り向き、にこっと笑って言った。
「そんないいことしちゃいないさ」
 彼のあの時の顔は今でも目に焼きついている。
 二学期の始業式。彼の姿を見つけたときは貧血を起こしかけた。そしてなんで今まで気づかなかったんだろうと自分を叱った。
 それからが大変だった。彼の事を調べ、どうにかして彼の進学先をつかむと先生両親の反対を押し切り友引高校に進学した。

 そして今。彼と同じクラスになったときは狂喜して小躍りしたけどそれから何の進展もない。
 部活にて。
「はあ」
「まーた、ため息ついてる」
「久美子・・・」
「あのねえ、そーやって不快音出してくれるとこっちまでいやになってくるのよ。」
「ごめん」
「べつにあやまんなくてもいいけどさ、はやくなんとかしてくんない」
 久美子なら話してもいいかな?
「うーん・・・」
「いったいなに考えこんでんのよ?」
「実は・・・」
「どえええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
「ちょっと!(そんな大きな声ださないでよ)」
 久美子にガバッと両肩をつかまれる。
「ちょ、ちょっと久美子?」
「なんで今まで話してくれなかったのよ。私が協力してあげるわ!」
 うーん、なんだかか久美子楽しんでるような・・・
「うーん。ここはやっぱはりきって告白でしょう!」
「そんなことできるわけないでしょ!・・・ここは彼にわたしを好かせるように仕向けさせるのよ!」
「(真美・・・あんたって結構あくどいってゆうか暗いね・・・)じゃどうするの?」
「思いつけばやってるわよ!」
「しかたないわね・・・じゃあこれは今日の宿題としましょう。さて、帰りますか」

 その夜、真美は自分の部屋のベットの上で寝転びながら考えた。
「・・・・・・・・・・・・・すーすー・・・」
「はっ、つい寝てしまった。それにしてもどーすんのよ彼を好かせるようにって・・・」
 !なんとなく思いついた。紙に書いてみる。
1、彼はラムが好きである。
2、だからほかにはきょーみナシ。
3、とすると、打倒ラム!
「うむむ、打倒ラム!・・・か」
「どうしたら勝てるのかしら・・・?」

 次の日!
「うむむ、打倒ラムか・・・」
 ずーっとそのことを考えながら登校路を歩く。
 すると前から久美子が走ってきた。
「おはよー。って、腕組みしながら何考えてんのよ」
「おはよ、そりゃ昨日の・・・」
「昨日?・・・あっそういえば昨日!」
 どうやら忘れてたらしい。
「昨日のTVみたっ?」
 まったく忘れてるらしい。
「あの、さあ」
「わかってるわかってる。あんたの恋を見事に咲かせてあげようじゃないの」
「しっかり覚えてるじゃない」
 ちょっと残念な気もした。
「で、真美はなに考えてきたの?」

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