メガネvs面堂軍団(2) (Page 2)
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イセンを吹き飛ばしたのもコイツだ。(散弾の粒の大きさがピンとこない方は、近くの
釣り道具屋に行き、オモリ売り場の『ガンダマ』を手にすると良い。B・BB・1B・
2Bなど各サイズの噛み潰しオモリがあるが、これらは散弾の粒の大きさの規格から転
用されたものだ)
パーマに覆い被さった私もパターンから外れた仁丹ほどの散弾を二、三粒喰らったよう
だが、アーマーがはじき返してくれている。この距離では殺傷力は弱いとはいえ、もっ
と近距離でマトモに喰らえば痛いでは済まないだろう。
後は、拳銃が二丁の合わせて四人か。
強力なライフル弾を使用する重機関銃とちがい、非力な拳銃弾を使用する軽機関銃には
大理石の台座を貫通するほどの力はない。ましてや散弾銃では大理石の石辺を巻き上げ
るのがせいぜいだ。
敵は散発的に撃って来るだけで、盾にしたビーナスの石像の影から出て来る気配は無
い。
どうやらラムさんが脱出するまでの時間稼ぎをするつもりらしい。
ここでグズグズしているとラムさんが連れ去られてしまう。ここは強行突破の一手だ。
「援護してくれ。なーに、当てる必要はないぞ。撃たれないように銃だけ出して威嚇射
撃をしてくれればいい。その隙に俺がコイツで制圧する」
私は音響手榴弾を取り出し両手に握りしめた。
「わかった。気をつけろよ」
パーマは64式小銃のセレクターレバーをフルオート射撃の『タ』に切り替える。
パーマには言わなかったが、撃たれる確立が高いくとも敵の射撃が中断したらアーマー
の性能を信じて台座の影から身を乗り出して、投げられるだけの手榴弾を投げつけてや
るつもりだ。
「よし、行くぞ。スリー・ツー・ワン・ゴー」
パーマが銃床と独立して下に突き出でたグリップを握り、台座からライフルだけを出す
と拳銃のように片手保持で撃ち始める。
上部に配置されたガス導入管と湾曲していない銃床の効果でフルオート射撃時のコント
ロールはしやすいとは言えそのような撃ち方では、銃口はアッと言う間に上へとせり上
がっていく。
敵の隠れているビーナスの石像の首が砕け散り、天井の照明を打ち砕いたところで銃は
手からもぎ取られて沈黙した。
私はその間に三発を投擲し終え、最後の手榴弾が未だ空中にあるうちにパーマの頭を押
え付けると、再び台座の影にうずくまった。
衝撃。
閃光の方は硬く目を閉じ、台座の影に居たためそれ程の事は無かったが、続けざまの轟
音は衝撃と言った方が正確だった。此方まで頭がクラクラして耳鳴りが収まらない。
これなら、まともに喰らった敵はたまらないだろう。
少し足元がふらついたが、裏庭に通じる通路をめがけ走りだすとやがて収まった。
失神しているサングラス達は三人、逃げた奴がいるらしい。
倒れている中にラムさんを向かえに来ていた奴らは見当たらない。
「だめだ、開かねーぞ。鍵が閉まってる」
先に突き当たりの扉にたどり着いたパーマが叫んでいた。一足先に逃げた奴が閉めたに
ちがいない。
三人を飛び越えパーマの元へ急ぐ。
ドアの鍵は暗礁番号を押すタイプで開ける事は出来そうも無い。
裏庭への通用口の癖に重厚な造りで、飾りの彫刻などが施されている。人目に付かない
所にも手を抜かないのが本当の金持ちなのだろう。
面堂のことだ、一見木製に見えるが中に分厚い鉄板ぐらいは挟んでいるに違いない。
例え扉自体は防弾でもドアノブと鍵の部分は弱い筈だ。
「俺に任せろ」
パーマを下がらせると64式小銃を腰だめに構え、ドアノブ周りをめがけフルオートで
撃ち込む。
次々に撃ち込まれる7,26ミリ・フルメタルジャケット弾によってドアノブと鍵は火花を
散らして撃ち砕かれ、弾け飛んだ金属片がフェースガードの左目保護レンズを破壊し
た。
それでも引き金は緩めず、反動で跳ね上がろうとする銃口を左手で銃身カバーを上から
押え付けてコントロールする。
弾倉の弾丸を撃ち尽くし遊低が後退したままの64式小銃を抱えて、弾痕から煙が立ち
昇るドアを蹴り開け、外に一歩踏み出した途端、壁際に身を潜め銃弾をやり過ごしてい
たサングラスが横から踊り出て組み付いてきた。
銃尻で頭に一撃を見舞って相手を振り解き、左足を一歩踏み込みながら鳩尾に槍のよう
に銃口を突き入れる。相手は思わず銃身を握り締め、焼けた銃身で火傷をおこす。
もしも銃剣が着剣されていたら致命傷を与ただろうが、それでも敵は悶絶している。
とどめに前のめりに突き出された顎を右足で蹴り上げると仰向けに崩れ落ちた。
逃げたのは少しでも時間稼ぎをするためのようだ。敵ながら見上げた奴である。
ヘリを見るとちょうど飛び立つ所だ。
ラムさんの乗ったヘリを見送ったノッポのサングラスが、此方に向け走り寄ってくる。
館の中も騒がしくなってきた。新手のお出ましのようである。
このままでは挟み撃ちになる。
「ちくしょう。間に合無かったか。どうする、降参するか?」
「バカ。未だ諦めんぞ。こっちだ」
弱音を吐くパーマをしかりつけると、踵を返して建物一角に向け走る。

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